OTO推進会議平成7年度第2回専門家会議議事要旨

(平成7年12月14日)
日時
平成7年12月12日(火)15:00〜17:00
場所
経済企画庁特別会議室(1230号室)
出席者
(推進会議) 議長 行天豊雄
議長代理 谷村昭一
オブザーバー トーマス・ジョルダン、李鎬允
委員 片岡一郎、金森房子、児玉一彌、細川清澄
(問題提起者)
議題1 日本貿易会(東京商工会議所は欠席)
議題2 フランス大使館
議題3 フランス大使館、在日米国商工会議所
(所管省庁) 議題1 大蔵省
関税局 塚原業務課長他
議題2 労働省
及び3 職業安定局 森山民間需給調整事業室長他
(OTO本部・事務局)
小林事務次官、河出審議官、照井貿易投資調整官、道上OTO対策官

議題

(1)輸入許可前貨物引取承認申請に係る担保の対象官署の共通化

(2)労働者派遣事業の見直し

(3)職業紹介事業の見直し

(4)その他

審議の概要

議題1 輸入許可前貨物引取承認申請に係る担保(以下、BP担保という)の対象官署の共通化

○ 事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明

問題の所在:ニーズの多寡とNACCS(貨物通関情報処理システム)の改変に要する期間 等

○ 問題提起者から提起内容につき説明

(問題提起内容)

・各税関官署ごとに提供している担保を1つの税関管轄内で共通に使用できるようにして欲しい。

・次に包括納期限延長制度に倣って、全国共通で使用できるようにして欲しい。

○ 所管省庁から対処方針につき説明

(対処方針)

・複数の税関官署に据置担保を提供している利用者は52社、複数税関に担保を提供している利用者は9社であり、包括納期限延長担保提供者(約1,100社)に比し僅少で あるが、いずれにせよ、今後、他の輸入者、関係団体の意見を聴取した上で、法令面を 含めて検討を行い、本年度末を目途に実施の可否等につき結論を出したい。

○ この後、審議

(委員の主な発言)

・包括納期限延長制度とBP制度の利用者数にはかなり開きがあるが、これはBP制度がNACCSで処理されておらず不便だからか、それとも本質的に利用者が少ないのか。

・ニーズの多寡を検討する必要があると言っているが、複数の税関官署に据置担保を提供している利用者が52社、複数の税関に据置担保を提供している利用者が9社で輸入許可件数が約16万件では、コンピュータ化するのに採算がとれないという懸念があるのか。

・NACCSの改変に要する期間というのは、いつ改定を行うかというスケジューリングの問題と理解してよいか。

・BP制度の利用が16万件(全輸入申告件数の2.2%)というのは、件数としてはかなりあるのであろうから、システム開発をして、できるだけ利便性が高まるように前向きな対応を図られたい。

(所管省の応答)

・BP制度は、例えば生鮮まぐろを輸入する際、市場でのせりにかけなければ課税価格が確定しないような例外的な場合の制度であり、それに比して包括納期限延長制度は通常の輸入手続の中で関税・消費税の納期限を延長するというものであり、その利用率は高い。BP担保も包括納期限延長用担保と同様NACCSで管理している。

・システム変更のコストという面もないわけではないが、平成9年度の地方消費税の導入や平成11年に予定されているSEANACCSの全面更改といったスケジュールの中でどのタイミングでやるかということである。NACCSの改変に要する期間とはスケジューリングの問題と考えてもらってよい。

・BP制度の利用会社の中には事業部毎に担保を積んでいるところもあるかもしれないので、全国共通化しても利用するのかといった点も見極めたいと考えている。

○議長による総括

・BP担保を他の税関でも共通に利用したいというのは、手続面での簡素化を図る上でも大事なことである。包括納期限延長制度が全国共通で利用できるのであれば、BP担保についても利用者の便宜を図る方向で検討すべきである。年度末までに結論を出すということだが、是非前向きの結論を出すよう努力して頂きたい。

・改善するとなればシステム変更のスケジューリングを検討して、実施時期をできるだけ早く明確に示して頂きたい。

・今後、事務局の方で、問題提起者、所管省とも調整の上、できるだけ具体的な改善内容と実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、議長に報告してもらいたい。その報告を受けて必要に応じ更なる検討を行いたい。

┌─議題2 労働者派遣事業の見直し

└─議題3 職業紹介事業の見直し

○事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明

(問題の所在)

(1)労働者派遣事業について

1)適用対象業務に係る制限の緩和・撤廃

2)許可に関する見直し

┌ 同一事業者が職業紹介事業を併せて行おうとする場合におけるそれぞれの事業を行う事業所の区分

├ 一定の職務経験を有する派遣元責任者の選任の義務づけの緩和

└ 派遣労働者数に応じた派遣元責任者数の規制及び事業所のスペースに対する

規制の緩和 等

(2)職業紹介事業について

1)取扱職業範囲に係る制限の撤廃・緩和

2)許可に関する見直し

・事業所ごとの許可を企業ごとへ

・許可の要件 ─┌─紹介責任者の経験年数

├─同一の事業者が労働派遣事業を併せて行おうとする場合におけるそれぞれの事業を行う事業所の区分

└─事業所のスペースに対する規制

・許可の有効期間等

・情報提供

・許可の手続きの簡素化

3)紹介手数料の規制の見直し 等

○問題提起者から提起内容につき説明

(問題提起内容)

1)労働者派遣事業について

・労働者派遣事業においては、適用対象業務の範囲が16業務に限定されており、特にブルーカラーとオフィスワークの一部には認められていないが、これを原則自由化にすべき。

・事業所ごとの許可制となっており、許可の要件が多く煩雑である。例えば100人の派遣労働者に対して1人の派遣元責任者の雇用の義務づけ、その責任者にはアシスタントが必要である等の規制がされている。日本では規制が厳しく、コストがかかり過ぎる。したがって、これらの規制を緩和・撤廃すべき。

2)職業紹介事業について

・外国企業が優秀な人材を採用するためには、日本政府による職業紹介のみでは不十分であり、民間の職業紹介業の活用によってニーズが満たされ得る。

・取扱職業の範囲についてはネガティブリスト方式を導入し、非道徳的な分野、例えば児童の労働等といった特定分野のみ取り扱えないようにすべき。

・許可に際して、不必要な要件が定められており、例えば、申請書類が米国に比べ大量かつ複雑である。記載事項の一部には職業紹介事業の運営と直接関係のないものまで含まれている。これらについては緩和・撤廃すべき。

・紹介責任者における一定の職務経験は、職業紹介には必要ない。

・現行の料金規制では企業は存続しえないので自由化すべき。

○所管省庁から対処方針につき説明

(対処方針)

1)労働者派遣事業

・労働者派遣事業は雇用主と使用者が分離しているといった極めて特殊な雇用形態であることから、労働者保護に欠けるおそれがあるため、各国とも制限を行っている。例えばフランス、ドイツでは更新を含めた派遣期間を限定する、制限に違反した場合の派遣先への直接の雇用責任を課する等の措置を講じているが、我が国では労使のコンセンサスにより適用対象業務の範囲を限定するとともに、派遣期間については労働者派遣が継続的に行い得る方式を採用している。

・現在、中央安定審議会において審議が行われており、労使間の議論を踏まえたうえで、12月中にも結論を出す。適用対象業務の範囲を拡大し、他方、労働者の保護の措置を追加的に講じることとなろう。

・許可制とその要件については、労働者保護のためにも適切であるものと考える。

2)職業紹介事業

・我が国は一定の規制の下に民営有料職業紹介を認めるILO第96号条約第3部を批准しており、これに基づいて規制を行っている。フランス等が批准している第2部は国が独占。

・本件については、取扱職業範囲等に関し、現在、公労使3者構成の中央職業安定審議会において審議を行っている。

○この後、審議

(委員の主な発言)

・労働者の保護を理由に数々の規制を行っているが、その論理は説得的でない。規制緩和が進めば進むほど自由市場の力が働き、自由が労働者に与えられ、労働者に様々な選択肢が与えられる。保護を行うよりも自由市場の力を使うようにもっと規制緩和すべきではないか。

・手数料についても市場メカニズムにより、様々な形で手数料を提供することができれば、労働者の選択肢も沢山生まれてくるのではないか。

・対象となる職種の範囲の制限についてももっと緩和すべきではないか。

・問題提起内容にあるような規制緩和を行った場合、労働者が不利益をこうむるような事態は考えづらい。労働者保護を理由に現行の規則が全て必要であるという論理は疑問であり、真に必要なもののみに規制を限定すべきではないか。

・許可のための申請書類については、大いに改善を行い、労働者保護に本当に必要なものに限定し、プライベートな事項は排除すべきではないか。

・兼業の際、事業所を区分することが労働者の保護につながるのか疑問である。

・職業紹介における規制緩和の3つのデメリット(1)機会均等に反する紹介、2)不的確な紹介、3)不当・違法な紹介)については、1)に関しては、機会均等は別の対応をとるべきで職業紹介業の規制で対応すべきではない、2)、3)に関しては、民間でやることを基本に、不的確、不当な事態が生じた時に対応すべきと思われるので必ずしも賛成できない。また、手数料は市場で自ずから調整されてそのことが労働者を保護することにつながるのであり、政府が決定するべき問題ではないのではないか。

・事業所のスペースや職務経験についての規制については過剰ではないか。

(所管省の応答)

・労働者派遣事業については労働条件に齟齬が生じやすいので、諸外国でも臨時の雇用としては派遣労働者を用い、長期の就労は直接雇用としている。

・職業紹介事業は発足以来、現在まで11度にわたり取扱職業の範囲を拡大している。米国やドイツでは性や年齢に係る雇用差別を禁止する法律等があり、労働市場全体に関する法律の在り方も考慮する必要がある。

・近年、職業紹介の違反例が多く、対象職業範囲を拡大した場合以下の3つの問題が考えられる。1)性別、高齢者といった就職の機会均等に反する紹介、2)能力、経験面からの不的確な紹介、3)手数料が高いといった不当・違法な紹介である。 したがって、拡大の際には、労働者側の意見も十分に聴く必要がある。

・書類については、多くなり過ぎている面もある。許可のための申請手続については、簡素化に向けて、逐次工夫をし、見直しを行ってまいりたい。今回の労働者派遣事業の見直しにおいても、同様の問題がでてきており、簡素化の方向で進めている。

・兼業の際の事業所の区分については、往々にして例えば家政婦の紹介などで派遣と混同されることがあり、区別して整理すべき。

・事業所のスペースに関する規制については、求職者が来て相談できるスペースを設けるという趣旨である。また、職務経験年数については、専門的な職業に習熟していくための年数を考慮している。

・対象業務、取扱職業については、審議会において労使の意見を十分に聴き、社会的情勢、必要性を踏まえて規制を行っている。

・近年の規制緩和の流れを十分踏まえて対処する所存である。

(議長の総括)

・本件は、サービスの輸入の面や外国の企業が日本に進出する等の対日直接投資の面から、OTOとして重大な関心を持つべき重要な問題。各委員のご意見は概ね以下の通りであった。

1)労働者派遣事業

・対象業務の範囲については、時代の変化を考慮し、企業の要望を踏まえ、労働者に選択肢が与えられるよう拡大すべき。

・許可については、兼業、職務経験年数、派遣元責任者と派遣労働者との比率、事業所のスペース等々、広範な分野にわたり規制がされているが、労働者保護のためにそれ程厳しい規制が必要なのか疑問。これらの規制が対日投資、外資系企業の参入の障害となるという懸念は正当であるように思えるので、最大限規制緩和の方向で改善すべき。

2)職業紹介事業

・取扱職業の範囲については、労働者派遣事業と同じく、できるだけ拡大すべき。また、ネガティブリスト方式の採用も含めて検討すべき。

・許可についても、労働者派遣事業と同じく、できるだけ規制を緩和し、外資系企業が日本で円滑に活動が行えるようすべき。

・手数料については、より市場メカニズムが活用されるようにすべき。

まとめ

・今後、事務局の方で、問題提起者、所管省とも調整の上、できるだけ具体的な改善内容と実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、議長に報告してもらいたい。その報告を受けて必要に応じ更なる検討を行いたい。所管省においては是非とも前向きな対応を期待している。

────以上────

(速報のため事後修正の可能性あり)

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