OTO推進会議平成7年度第11回専門家会議議事要旨
(平成8年3月1日)
日時 平成8年2月20日(火)15:00〜17:00
場所 経済企画庁特別会議室(1230号)
出席者
(推進会議)
議長 大河原議長
議長代理 内村委員、行天委員、久米委員、谷村委員、増田委員
委員 片岡委員、金森委員、兼重委員、児玉委員、細川委員
オブザーバー デュボワ特別委員
(問題提起者)
議題1 駐日フランス大使館
(所管省庁)
議題1 法務省 入国管理局
(OTO本部・事務局)
河出審議官、照井貿易投資調整官、道上OTO対策官 他
議題
1) 上陸審査基準等の見直し
2) 個別に順次審議することとされている案件以外の案件等についての検討状況
3) その他
審議の概要
議題1
○ 事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明
問題の所在:在留資格の取得・変更の要件の緩和について
○ 問題提起者から提起内容につき説明
(問題提起内容)
仏企業が日本に投資する際、在留資格の問題でしばしば混乱する。1年以上の経験、
報酬、事務所の確保等様々な条件がある。本件は仏企業が日本に留学している若い仏
人と契約した際に在留資格が付与されなかったという問題である。日本への投資はコ
ストがかかる。また、代表事務所を作ることは対日投資の第一歩である。しかし日本
の法律では、在留資格を取得するためには日本にある企業と契約する必要があり、代
表事務所は法人格を有していない。そのため日本への投資は厳しいものとなっている。
仏はジェトロ、通産省等の支援を受けて対日貿易・投資拡大のためのキャンペーンを
実施しているが、この在留資格の取得条件は仏の対日投資を妨げている。このような
在留資格の審査内容、基準等は法の解釈により出来る限り柔軟に対応してほしい。
○ 所管省庁から対処方針につき説明
(対処方針)
・ 混乱するとのことだが、日本の在留資格の基準は外国に比べても明確になっており、
また、国籍による差別はない。
・ 就労するための在留資格は16あり、今回のケースでは「企業内転勤」、「投資・
経営」、「人文知識・国際業務」、「技術」等が考えられるが、本件はそれらの資格
の条件のいずれにも当てはまらなかった。
・ 「技術」、「人文知識・国際業務」の在留資格による活動は、外資系企業も含め日
本にある公私の機関との契約に基づく必要がある。これは、企業を通じた外国人の適
正な管理を図る意味もある。外国人が雇用契約によらずに個人として働きたいという
のはこの資格では認められない。「公私の機関」の施設・陣容については、法人格は
要件ではないが、資金、事務所、活動の実態等から、総合的に体制が整っているかを
審査する必要がある。
・ 「投資・経営」の「相当額の投資」の明確な基準はないが、2名以上の従業員、事
務所としての通常のスペースの確保、事業を遂行できる立地条件、設備等が必要であ
り、これらを揃えるための投資は必要である。
・ 外国の基準については、審査基準が非公開なので具体的なことは不明。各国とも国
内の雇用情勢が厳しく、外国人の就労条件も厳しいものと承知している。
○ この後、審議
(委員の主な発言)
・ 「技術」、「人文知識・国際業務」の在留資格における「本邦の公私の機関」につ
いて、総合的に体制が整っているかを審査する必要とのことだが、それはどこに定義
され、申請者はどのようにしてその基準を知ることができるのか。日本の制度は明確
とのことだが、本件は「本邦の公私の機関」の解釈が問題であり、その基準が不明朗
であるので、透明性の高い制度にすべきである。
・ そもそも代表事務所を作るために、日本の企業等とのつながりが全くない外国人が
入国することはできるのか。
・ 「短期滞在」の資格の有効期限はどのくらいか。また、この資格で就労することは
できるのか。
・ 本件のケースでも「短期滞在」なら可能なのか。駐在員として活動することができ
るのか。
・ 外国にその国の事情に明るい自国人がいれば、その人を代表者として事務所を開設
することは当然のことだと思う。このような当たり前のビジネスができないというの
はなぜか。
・ 対日投資促進のため、93年に「対日投資サポートサービス会社」が開設された。
94年にはジェトロ内に「ビジネスサポートセンター」が開設され、ここでは専門職
員が事務所開設、スタッフの雇用等の相談に応じている。仏にはこういう組織を利用
してほしい。日本が対日投資に協力的でないとは思ってほしくない。また、法務省は
本件のようなケースを一つ認めると、無差別に留学生が日本に居つく等の問題がでる
ことを懸念していると思われる。この問題も、法律上の議論をするだけでなく、話し
合えば解決できると思う。
(所管省の応答)
・ 「本邦の公私の機関」の要件の具体的定義はなく、法の解釈として運用している。
法人格は条件ではないが、ほとんどの場合法人格をもっている。
・ 代表事務所として稼働している場合、そこへ「企業内転勤」の資格で本国から転勤
してくることは可能である。
・ 「短期滞在」の資格で代表事務所をセットアップすることは可能。この場合、日本
の企業等との契約は無関係である。
・ 「短期滞在」の滞在期間は90日間。本国から報酬を受けつつ事務所の設立のため
の商談、契約、連絡等を行うことは可能だが、日本国内で報酬を得る活動はできない。
・ 簡単に長期的な滞在を認めると、いろいろな国からいろいろな形での受入幅が広が
る。就労できる資格として受け入れる在留資格については、労働政策、外国人労働者
の管理の問題もある。
○ 議長による総括
・ 我が国にとって、対日投資を拡大することは大切である。対日投資に対する種々の
阻害要因を撤廃していく必要があり、これは基本的な方針となっている。
・ 本件のように外国人が我が国に新たに企業を設立しようとする場合に、その代表者
に在留資格を与える、又は、在留資格の変更を認めることは事実上ほとんど不可能と
いうのはおかしい。法務省が不良外国人や不法就労者が増加することを懸念するのは
もっともであり、理解できないわけではないが、本件のような場合については、対日
投資の促進という考え方に基づいて、現行法令の運用の見直し等により、何らかの対
応をとるべきであり、柔軟な対応をお願いしたい。
・ 委員の意見はその方向であると思われるので、事務局の方で、問題提起者、所管省
庁とも調整の上で、できるだけ具体的な改善内容とその実施時期を盛り込んだ報告書
の原案を作成し議長に報告してもらいたい。その報告を受けて必要に応じ更なる検討
を行いたい。
議題2 個別に順次審議することとされている案件以外の案件等についての検討状況
1) 1月22日の専門家会議で「個別に順次審議すべきとされた案件」以外の案件の報
告をした際、特に委員から指摘があった案件を中心に、その後の検討結果について、
OTO事務局より説明した。その内容等について、出席委員から以下のような意見
があった。
(委員の主な発言)
・1−8) 動物飼料添加物の指定制度の見直し
野外効果試験について見直しを開始することは評価するが、検討の結論を得る
時期と内容を具体的に示すべき。
・1−12) フェザーミール等肥飼料原料の輸入手続きの簡素化
・1−16) 植物検疫の透明化・簡素化
1−12)の「内容も検査せずに再消毒を命じたか否か」と1−16)の「情報を開示
せずに高額な燻蒸料金のみを支払わせたか否か」の2点について、問題提起者と
所管省の水掛け論である。しかし、もう少し問題提起者の立場に立って、対処方
針を示すべき。
・3−13) 化学品の税関検査の簡素化
問題提起にある担当官がかわった際の対応については、回答がなされていない。
・3−2) 輸入絹織物の事前確認手続きの簡素化
地方通産局経由でも受付できるようにするなど、早急に対応がなされることは
大変評価するが、記入項目の簡素化については、引き続き一層の努力をお願いし
たい。
・3−6) 高圧容器の認証の国際的整合化
対処方針には「数年程度の検討期間を勘案する必要がある」とあるが、数年と
いっても範囲が広い。実施時期をもっと具体的に示すべき。
・7−9) 特恵原産地証明書に係る輸入手続きの簡素化
早急に対応がなされたことは評価するが、制度改善の実績をあげるためにも
「特恵原産地証明書の提出を要しない」範囲を明確にすべき。
○議長による総括
本日の案件の中には、前向きな対応を図って頂いているものもあるが、問題提
起者の納得を得られていないものもまだいくつかあり、所管省庁におかれては、
来月の報告書の取りまとめに向けて、本日の各委員からのご意見を踏まえた上で、
なお、出来る限りの対応を図って頂きたい。
各委員からは所管省庁に具体的改善を求める意見があったので、そうした意見
を報告書に盛り込み、また、所管省庁の対応の時期的目途と具体的内容をその中
で可能な限り明確化して頂きたい。各委員の意見の中で、1−8)、3−2)、3−
6)、7−9)の4案件については、特に重要と考えるが、それ以外にも必要な案件
があればそれらも含めて具体的な意見を報告書に盛り込んで頂きたい。
また、これら以外の案件については、各委員の発言を踏まえ、所管省庁におい
て、引き続き可能な限り適切な対応を検討して頂きたい。これらの案件について
は、昨年同様に、問題提起の内容と所管省庁の対処方針を報告書に記載すること
としたい。また、問題提起者から理解の得られている案件については、その旨明
らかにして頂きたい。
2) 「労働者派遣事業の見直し」及び「職業紹介事業の見直し」の2件について、O
TO事務局よりその後の検討状況について説明。
○ この後、審議
(委員の主な発言)
・労働者派遣事業については、昨年12月に公表された中央職業安定審議会の建議を
踏まえて、法律改正の予定があるときいているが、昨年のOTO専門家会議での
審議結果との関係を明確にしつつ、労働者派遣事業については法律改正内容も含
めて、労働者派遣事業と職業紹介事業の2件についてその後の検討状況を説明し
て欲しい。
・両事業とも、手続きの簡素化については、所管省の資料にある検討状況でははっ
きりしないので、OTOへの問題提起に対応する形で具体的な中身を明確化して
欲しい。原則自由化の問題、ILO96号条約については本日は避けたい。
・手続き関係は法律事項ばかりではなく、運用で改善できるものも多いので、昨年
のOTO専門家会議での指摘を踏まえて、所管省の積極的なイニシアティブで前
向きかつ具体的な改善策をその明確な実施時期とともに報告書に盛り込むべき。
(所管省の応答)
・労働者派遣事業については昨年12月の建議を踏まえて、現在、改正法案を準備中
であり、具体的には以下のとおり。 1労働者派遣契約の中途解除に係る措置、 2
苦情処理体制の充実、 3派遣先の適正化、 4育児・介護休業取得者の代替要員に
係る特例、 5一般労働者派遣事業の許可の有効期間の延長等については法律事項
である。また、教育訓練の充実、労働・社会保険の適用促進は予算上の措置であ
り、適用対象業務の拡大は政令事項である。
・有料職業紹介事業については、関係団体からのヒアリングや調査等を含めて現在、
検討を進めている。具体的には、昨年のOTO専門家会議で指摘のあったように
取扱対象業務の範囲、許可の在り方、手数料等幅広く検討対象事項としている。
また、許可の手続きの簡素化については、年度内に必要な措置を講ずる予定であ
る。
・労働者派遣事業の手続きの簡素化については、法律事項は少ないが、その中で関
係のある全ての事項を簡素化する予定であり、具体的には以下の2点である。 1
取扱対象業務の種類の変更の際、種類が減ずる場合は現行の許可制を届出制とす
ること。 22以上の事業所を設けている際、共通する事項については1つの事業
所のみ変更の届けを提出するだけですますこと。
・事業の必要性に関する基本的な事項である事業所のフロアースペースに関しては、
緩和できない。兼業の規制については、両事業の形態が異なるので、労働者保護
の観点から事業所を一緒にはできない。添付書類、申請書類は主に省令以下の事
項であるが、減らしてまいりたい。
○ 議長による総括
所管省はさらに以下の点について、より具体的な対応策を積極的に行うべき。
両事業について、対象業務・職業の範囲の規制の緩和、許可に関する様々な規制
の撤廃・緩和、手続きの簡素化、また職業紹介事業については手数料の規制の緩
和といった点について、今後事務局と所管省庁とで調整の上、是非とも具体的な
改善内容と実施時期を報告書に盛り込んでいただきたい。また、ILO条約との
関係についても、もう少し深く考える必要がある。
3) 総括的所見について
例年報告書においては、委員の意見の総論的部分を集約する形で、総括的所見
を冒頭に示しているが、今年も、各委員の意見を踏まえて、議長が原案を作成し、
推進会議に諮りたい。
−−−−以 上−−−−
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問い合わせ先]
経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
直通 3581−5469