OTO推進会議平成7年度第8回専門家会議議事要旨
(平成8年2月22日)
日時 平成8年2月13日(火)15:00〜17:00
場所 経済企画庁特別会議室(1230号)
出席者
(推進会議)
議長 増田議長
議長代理 内村委員、行天委員、久米委員、谷村委員、八城委員
委員 金森委員、兼重委員、児玉委員、松下委員
(問題提起者)
東京商工会議所 下島国際部長 他
(所管省庁)
運輸省 海上技術安全局 岩井検査測度課長 他
(OTO本部・事務局)
河出審議官、照井貿易投資調整官、道上OTO対策官 他
議題
1) 輸入ヨットの相互承認の徹底
2) 船舶用中小型エンジンの相互認定
3) 船舶用主機関・推進装置のJG輸入検査の簡略化
審議の概要
○ 事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明
問題の所在:1) 外国政府又は外国船級協会での承認、認可等を受けた船舶及びエン
ジン等の物件の日本での承認、認可
2) 海外検査機関(船級協会を含む)、メーカーの検査データの受入れ、
試験方法等のすり合わせ
3) 検査の簡素化
○ 問題提起者から提起内容につき説明
(問題提起内容)
・ 英国から英国の船級協会の検査を受けたヨット(ただし、船灯等の艤装品について
は英国以外の国の製品も搭載)を輸入し、使用に際して日本小型船舶検査機構の検査
を受けたところ、船灯の日本製品への交換を余儀なくされた。外国の検査に合格して
作られた船灯を日本で再度検査する必要はないのではないか。
・ 船舶用中小型エンジンは、欧米先進国で実績のあるエンジンもその検査証やデータ
は採用されず、再度、材料試験、図面審査、耐久検査等が求められる。また、現行で
は現場の検査担当者の裁量に任されている部分があり、公平性、透明性の面で疑問で
ある。先進国で製造され当該国家機関あるいは特定の検査機関の検査や認定を受けた
機種は、その証明書があれば国内の認定事業場が製造し所定の検査を受けたものと同
等に扱ってほしい。
・ 現行法下、日本政府の設計検査済のエンジンであっても、日本政府(日本小型船舶
検査機構を含む)の検査を工場において出荷前か輸入時に受けなければならないが、
輸入時の検査の場合、メーカー以外でエンジンを部分開放するとメーカーの保証が受
けられない。設計検査済のエンジンであれば、メーカーによる出荷検査のみで承認し
てほしい。もしメーカーによる検査では不十分というのであれば、少なくとも世界の
主だった船級協会(米国のABS、ノルウェーのDNV、ドイツのGL等)の検査合
格品については書類審査のみにしてほしい。また、海外の検査機関のデータについて
は、試験方法等を申請者が示さなければならず、負担が大きい。日本政府は、海外の
試験機関と試験方法等をすり合わせ、外国試験データの活用を一層進めるべきである。
○ 所管省庁から対処方針につき説明
(対処方針)
・ 船舶には、海上に孤立して存在する、一旦事故が起こると脱出が困難である、エン
ジンの故障により漂流する等の特殊な危険性がある。小型船舶は特に危険性が高く、
海難が直ちに人命の損傷に結びつく恐れが大きい。
・ SOLAS条約の基本理念は旗国主義(船舶の検査は旗国が責任をもって行う)で
あるが、これは言い換えれば旗国自らが船の検査を行い、他国の検査をそのまま信用
しないという言わば相互不信の原則に立っている。また、旗国の検査結果に他国は異
を唱えないということである。条約にはエンジン等についての規定はあるが、極めて
一般的な要件のみのものも多く、この下に各国はそれぞれの基準で検査を行っている。
小さな船はこの条約の対象外であるが、各国がこの条約の趣旨に則って検査を行って
いる。しかし、いい加減な検査、監督等を行う国もあり、そうした船舶が重大事故を
起こすことが近年急増しているため、他国の検査に対しては国際的に一層の不信感が
高まっており、IMOにおいては寄港国による他国船舶の検査(ポートステートコン
トロール)を条約上強化し、船級協会への検査の委任を厳格にするよう締約国に求め
ている。
・ 小型ボートについては、EUが機械全般の相互承認の一環として小型ボートの相互
承認に取り組んでいる。また、ISOでもボートの国際基準について検討しているが
、難航している。この基準作りには日本も参加している。EUの域内相互承認ができ
た場合は、日本とEUの交渉という形になると思われ、相互承認は今後の課題と考え
ている。
・ 検査の合理化、簡略化を図る制度としては、型式承認、認定事業場制度等を整備し
ている。外国製品についても現在11か国、105型式を型式承認している。また、
配付資料に示すように公的検査機関の試験データの受入れも実施している。
・ 我が国は、日本海事協会(NK)に国の検査の一部を委ねているが、船級協会は世
界に約60あり、その中には信用できない団体も多い。IMOにおいても旗国から船
級協会への検査委任を厳格化するガイドラインを策定し、96年1月より発効させて
いる。なお、外国船級協会の検査規則、試験方法等の勉強の必要性は感じているが、
約60ある船級協会の規則等をすべて勉強するには至っていない。
○ この後、審議
(委員の主な発言)
・ 旗国主義で相互承認が困難というが、国によってその検査が信用できるか否かは違
うのではないか。ある程度の技術力、伝統のある国についてもその検査の信頼性を認
めないのか。船級協会についても、ロイド、ABS等はNKよりも歴史が長く、国際
的にも認められており、問題ないのではないか。外国の検査を受けた船と日本の検査
を受けた船とで、事故率に違いがあるのか。
・ 艤装品の問題は、その物の品質というよりは、艤装の仕方の問題ではないのか。艤
装の仕方に係る国際基準を作るために努力すべきではないか。
・ 大きな船はともかく、今日の議題の船についてはもっと市場に任せるべき。海外か
ら航海してくるような船について、そのルールを厳格にするのはもっともだと思うが、
本件のような小さい船舶等については、海外で認められているものは特段の理由がな
い限り、国内規制をもっと緩和すべきではないか。
・ 検査に自由裁量が多いと、大概厳しい方向で運用される。また、民間サイドとして
は役所に睨まれたくないと思うのでよくない。技術進歩により検査の自由裁量が増え
るというのでは、新技術に関しては基準不明の検査を受けることになる。外国の優秀
な検査基準の受け入れ、ISO9000シリーズの活用等により、客観的な検査基準
を早期に作るべきではないか。
・ メーカーの技術力が向上した今日、出力確認を行う必要性が疑問。エンジンの部分
開放や耐久試験の意義も疑問であり、試験を行っても船舶の安全が保証されるとは思
えない。実態上どうしても必要な試験のみとすべきではないか。能率のよい現代的な
法律体系とすべきで、国際的に利用できる基準やデータは、探せばいくつもあると思
う。国際的に基準を統一することで我が国の検査を省略できる。早く実施すべきでは
ないか。
・ 輸入ヨットの割合はどのくらいか。ヨットの場合外国の方が進んでいるのであれば
輸入品についてあまり厳しい検査をしなくてもよいのではないか。
(所管省の応答)
・ 国際的にも相互承認の例はなく、最終的な判断は旗国で行うが、外国の責任ある機
関の試験データは大いに活用することにより、物品の流通に阻害を来すことがないよ
うにできると考えており、欧州ではそうしている。ただし、我が国においては、例え
ば英国政府検査官立ち会いにより行われた試験のデータを活用し、型式承認した物件
についても、その後、基準不適合が判明した事例が見受けられる等、先進国の検査デ
ータにも問題がある。外国の検査を受けた船舶と日本の検査を受けた船舶の事故率に
ついては、本日データを持ち合わせていない。
・ 国がやるべき検査をNKに委任しており、NKの職員は公務員に準じた罰則等が適
用される。外国の船級協会について同様に扱うのは法的に難しい。今後、ロイド等有
名な船級協会の研究を行い、データ活用ができるかどうか研究する必要がある。ただ、
船級協会は民間機関で船級の争奪競争があり、ずさんな管理体制のところもある。ロ
イドの合格品にもSOLAS条約に不適合であった事例もあり、船級協会に対する不
信感はロイドも例外ではない。
・ 船灯等艤装の仕方については衝突予防条約という国際基準が既にある。なお、米国
では内水面(東海岸の沖州に囲まれた海域、ミシシッピ、五大湖等)のみを運行する
場合の独自の緩和された規則があり、この規則の合格品がその旨を周知されずに輸入
される場合がある。こういう誤解が生じないような努力を今後ともしていく。
・ 客観的な検査基準整備の必要性についてはご指摘のとおり。技術の進歩に応じて整
備してきている。検査官の裁量が曖昧との指摘だが、技術の進歩、メーカーの創意工
夫等に柔軟に対応できるように裁量の余地を設けている。検査の簡素化についても、
例えばエンジンの開放検査についてはファイバースコープを使う等、技術の進歩に対
応した合理化を図っている。規制緩和の観点からさらに検討中であり、今後も努力し
たい。海外試験機関のデータの活用についても機会をとらえて広報活動をしており、
今後も努力したい。
・ 陸上試運転の意味は、例えば100%を超える出力まで回し、エンジン全体のバラ
ンス等総合的な機能を確認することにある。船舶用エンジンは型式が多く、自動車と
は事情が異なる。開放試験は全品やっているわけではない。型式承認に加えて、認定
事業場の認定を受ければメーカーチェックに任せる制度があり、この制度は海外メー
カーでも利用可能である。
・ プレジャーボートの年間の輸出入は、輸入艇が1200隻、輸出艇が200隻程度
である。ヨットの性能、デザイン等については、欧米に比べて日本は遅れており、ポ
テンシャルは高くない。しかしながら、日本周辺の海域は地球気象学的にバミューダ
海域と並ぶ世界2大難所であり、気象海象条件が厳しく、また、漁船内航船等船舶の
往来が輻そうしている。また海上保安庁の統計によると、要救助海難のうち3分の2
がプレジャーボート等の小型船舶である。したがって、一定以上の余裕を持った基準
の下に丁寧な検査を行う必要があると考えている。
○ 議長による総括及び意見
ここまで委員から出された意見に私(議長)の意見を加え、総括したい。
・ プレジャーボート、船舶用エンジン、推進装置等には国際的な技術基準がないにし
ても、外国政府の安全基準、世界の主要な船級協会の検査基準等を日本政府が積極的
に調査検討し、特に問題がないのであれば外国の基準を受入れ、外国政府や外国船級
協会の証明書等による書類審査のみで、日本国内での使用を認めるべきではないか。
また、日本と外国とで安全基準が異なるのであれば、積極的に整合化を図るべきであ
る。特に先進国、主要な船級協会の検査基準等については早急に検討し、結論を出す
べきではないか。
・ 検査が必要な場合でも、海外検査機関の試験データの受入れを一層拡大するために、
現在試験データを受け入れていない機関と、検査方法等について積極的にすり合わせ
を行い、申請者の負担を減らすよう努力すべきではないか。主要な船級協会の試験デ
ータについては一層の受入れを図るべきであり、特にIACS加盟の船級協会のデー
タについては原則として受入れ対象とすべきではないか。
・ 検査の簡素化について、ISO9000シリーズの活用を図るなど、メーカーの自
主検査に任せる方向で検討すべきではないか。
・ その他、型式承認制度の改善、認定事業場制度の改善、検査項目の削減、検査手続
の簡素化等を積極的に進めていただきたい。
・ 以上の点で委員の意見の一致をみていると思われるので、その方向で、今後事務局
の方で、問題提起者、所管省庁とも調整の上で、できるだけ具体的な改善内容とその
実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、議長に報告してもらいたい。その報告
を受けて必要に応じ更なる検討を行いたい。こういう整理でよろしいか。
−−−委員から特に異議はなかった−−−
−−−以上−−−
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問い合わせ先]
経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
直通 3581−5469