2.植物防疫法

(1) 法律・制度の目的
輸出入植物及び国内植物を検疫し、並びに植物に有害な動植物を駆除し、及びそのまん延を防止し、もって農業生産の安全及び助長を図る。

(2) 法律・制度の概要(輸入検疫関係)
1)省令で定める地域から発送され、又は当該地域を経由した植物で、省令で定めるもの、2)検疫有害動植物(注)、3)土又は土の付着する植物、4)これらの物の容器包装、は輸入してはならない(第7条第1項)。輸入する植物及びその容器包装は、輸出国の政府機関により発行された検査証明書又はその写しが添付されていなければならない(第6条第1項)。植物を輸入した場合は、遅滞なく、植物防疫官から、輸出国の政府機関により発行された検査証明書又はその写しが添付されているかどうか、輸入禁止品であるかどうか、検疫有害動植物が付着しているかどうかについての検査を受けなければならない(第8条第1項)。省令で定める種苗(果樹苗木類、いも類、花き球根類等)については、検査の結果、検疫有害動植物があるかどうかを判定するためなお必要があると認めるときは、隔離栽培を実施する(第8条第7項)。

(注)検疫有害動植物とは、まん延した場合に有用な植物に損害を与えるおそれがある有害動植物であって、1)国内で存在が確認されていないもの、2)既に国内の一部に存在しており、かつ、国により発生予察事業その他防除に関し必要な措置が取られているもの、をいい、植物防疫法施行規則第五条の二に掲げられた有害動植物(非検疫有害動植物)以外のものをいう。

(3) 政省令
植物防疫法施行令
植物防疫法施行規則

(4) 規制等の概要
 1)対象
輸入植物検疫の対象となる植物は、苗木、種子、球根類、いも類、果実、野菜、切り花、穀類、豆類、木材(製材等の加工品を除く)、香辛料等。なお、これらを原料に一次加工したものであっても検疫有害動植物が付着する可能性がある場合については、検疫の対象となる。

 2)規格・基準、検査等の概要
i. 輸入の禁止
次のものは輸入が禁止されている(第7条第1項)。
ア.省令で定められた地域から発送され、又は当該地域を経由した植物で、省令で定めるもの
イ.検疫有害動植物
ウ.土又は土の付着する植物
エ.これらの物の容器包装
このうちア.については、我が国が侵入を特に警戒している重要な病害虫で輸入時の検査では的確な植物検疫が困難なもの(チチュウカイミバエ、ウリミバエ、コドリンガ、アリモドキゾウムシ、たばこべと病菌、火傷病菌等)について、これらの検疫有害動植物が分布する地域及びこれらの検疫有害動植物が寄生する植物が、省令で定められている。したがって、ある国で生産されたある植物が輸入禁止となっていても、同じ植物であっても禁止対象となっている検疫有害動植物が分布していない国からの輸入は可能である。
また、輸入が禁止されている植物について、輸出国側で禁止対象検疫有害動植物の完全殺虫・殺菌方法が確立され、その実効性について我が国の専門家が評価を行った場合には、一定の条件付きで輸入が可能となる。
イに関連して、輸入検疫において有害動植物が発見された場合であっても、それが検疫有害動植物でなければ、消毒等の措置は必要とされない。

ii. 輸入の制限
ア.輸出国の政府機関により発行された検査証明書又はその写しを添付してあるものでなければ、輸入してはならない。ただし、栽培の用に供しない植物であって、検疫有害動植物が付着するおそれが少ないものとして省令で定めるもの(うこん及びトチュウの乾燥したもの並びにアーモンド、カシューナッツ、ココやし、こしょう、ピスタシオナッツ、ぺるしやぐるみ及びマカダミアナッツの乾燥した種子)は、検査証明書の添付は必要としない(第6条第1項)。

イ.省令で定める地域から発送される植物は、輸出国の政府機関によりその栽培地で行われた検査の結果省令で定める検疫有害動植物が付着していないことを確かめ、又は信ずる旨を記載した検査証明書又はその写しを添付しなければならない(第6条第2項)。

ウ.植物類を郵便物で輸入する場合には、小型包装物及び小包郵便物以外の郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)第2条第3項に規定する信書便物として輸入してはならない(第6条第4項)。
 このうち、イ.については、種子又は栽培用の苗等であって、輸入時点の検査では検疫有害動植物の検査が困難であるが、栽培中においては比較的検査が容易な検疫有害動植物(えんどう萎ちょう病菌、いんげんまめ萎ちょう病菌、すいか果実汚斑細菌病菌、とうもろこし萎ちょう細菌病菌、テンサイシストセンチュウ、バナナネモグリセンチュウ等)について、これらの検疫有害動植物の分布する国に対して、栽培中における検査が必要としたものである。

iii. 輸入検査
ア.植物を輸入した者は、遅滞なく、植物防疫所に届け出て検査を受けなければならない(第8条第1項)。
イ.省令で定める種苗(ゆり、チューリップ等の球根、ばれいしょの塊茎、さつまいもの塊根、かんきつ類、りんご等の果樹苗木、さとうきびの生茎葉及び地下部)については、隔離栽培を実施して検査を行う(第8条第7項)。

iv. 検査後の処置
ア.輸入検査の結果、輸出国政府機関により発行された証明書が添付されており、栽培地検査を要する植物等については当該検査に合格した旨の証明書が添付されており、輸入禁止品に該当せず、かつ、これに検疫有害動植物の付着がないときは、合格となる(第9条第4項)。

イ.輸入検査の結果、検疫有害動植物があった場合は、発見された検疫有害動植物の種類により、消毒、選別、焼却、積み戻し等の措置が命じられる。消毒、選別等が確実に実施された場合には、合格となる(第9条第1項)。

輸入検査のフローチャート
(5)最近の法令等改正の要点
輸入農産物の増大・多様化等の植物検疫を巡る情勢の変化に対応し、植物検疫制度の今後のあり方について検討するため、平成15年5月より「植物検疫に関する研究会」が開催され、平成16年5月21日にその報告書が公表された。
当該報告書において、
 1)植物検疫の重点化を図り、メリハリを付けたものとすることが必要であることから、リスク管理に先立ち、科学的な知見に基づくリスク評価を、IPPC等における国際的な基準も参酌し、機動的かつ弾力的に行い、リスクに応じた適切な植物検疫措置を講じることが望ましい

 2)検疫有害動植物については、輸入植物の用途や輸送形態も考慮し、可能な限りリスクの定量的な評価を含めて、随時適切な病害虫危険度解析(Pest Risk Analysis:PRA)を実施し、それぞれのリスクに応じた措置となるよう検証し、対応していくことが適当であるとされたことを踏まえ、外国政府から非検疫有害動物への追加要望がなされている害虫の取扱いについて検討がなされた。

その結果、平成17年4月に植物防疫法施行規則が改正され、それまで非検疫有害動植物としてあげられていた63種類の有害動植物に、新たに46種類の有害動植物が追加された。また、新たに害虫1種を栽培地検査要求病害虫として指定するとともに、栽培地検査要求病害虫1種について対象地域を追加した。さらに、輸入禁止対象病害虫3種の対象地域及び寄主植物を追加した。

(6)透明性の確保
植物防疫法第7条1項の規定により輸入を禁止している植物であっても、これらの病害虫に対する消毒技術が確立したり、病害虫の発生していない地域を確立した等、病害虫の侵入を防止する措置が確立した場合には,輸入を解禁している。こうした輸入解禁を要請する関係国等に対して、輸入解禁手続のための一連の科学的、技術的な検討過程を明かにする観点から、「植物検疫における輸入解禁要請に関する検証の標準的手続」が定められている。この手続では、検討過程に準じて、試験又は調査の計画の公表、試験又は調査の結果の概要の公表、現地確認試験又は現地確認調査の計画の公表、現地確認試験又は現地確認調査の結果の概要の公表等が行われる。

(7)参考情報
問い合わせ先:
農林水産省消費・安全局植物防疫課
Tel 03-3502-3383  http://www.maff.go.jp 
植物防疫所ホームページ
http://www.pps.go.jp


植物防疫所所在地、連絡先

http://www.pps.go.jp/list/index.html
横浜植物防疫所
〒231-0003横浜市中区北仲通5-57 Tel 045-211-7152〜5
Fax 045-211-0611

名古屋植物防疫所
〒455-0032名古屋市港区入船2-3-12 Tel 052-651-0112〜4
Fax 052-651-0115

神戸植物防疫所
〒650-0042神戸市中央区波止場町1-1 Tel 078-331-2376, 2384
Fax 078-391-1757

門司植物防疫所
〒801-0841北九州市門司区西海岸1-3-10 Tel 093-321-1404, 2601,2809
Fax 093-332-5189

那覇植物防疫事務所
〒900-0001沖縄県那覇市港町2-11-1 Tel 098-868-2850, 1679
Fax 098-861-5500

(参考)
輸入禁止植物
輸出国での栽培地検査が必要な主な植物
世界の色々な病害虫