29.海上運送法、内航海運業法

(1) 法律・制度の目的
海上運送法・・・・・・海上運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、海上運送の利用者の利益を保護するとともに、海上運送事業の健全な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。
内航海運業法・・・内航運送の円滑かつ適確な運営を確保することにより、内航海運業の健全な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。

(2) 法律・制度の概要
内航海運業の運賃及び料金については、他の多くの国内輸送機関のそれらが認可制等となっているのと異なり、当事者間の交渉に委ねられる、いわゆる自由運賃制が原則となっている(内航海運業法)。ただし、貨物定期航路事業については、賃率表を公示しなければならないとされている(海上運送法第19条の6)。なお、内航海運業法は、「海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律」により、船員法、船員職業安定法とともに大幅に改正された(平成16年6月公布)。参入規制の許可制から登録制への緩和、事業区分の廃止(内航運送業及び内航船舶貸渡業の区分の廃止)、運航の安全の確保のための運航管理制度の導入等が図られた。

(3) 政省令
海上運送法施行令
海上運送法施行規則
内航海運業法施行規則
内航海運業報告規則

(4) 規制等の概要
1)対象
船舶運航事業、内航海運業(内航運送業及び内航船舶貸渡業の区分は、平成16年の内航海運業法改正により廃止された)

2)規制等の概要
i. 規制等の内容
一般旅客定期航路事業を営もうとする者は、航路ごとに、国土交通大臣の許可を受けなければならない(海上運送法)。総トン数百トン以上又は長さ30m以上の船舶による内航海運業を営もうとうする者は、国土交通大臣の行う登録が必要(内航海運業法)。

ii. 申請手続
一般旅客定期航路事業を営もうとする者は、氏名又は名称及び住所(法人は代表者の氏名)、事業計画等を記載した申請書を国土交通大臣に提出する(海上運送法)。内航海運業を営もうとうする者は、氏名又は名称及び住所、当該事業の種別、等を記載した申請書を国土交通大臣に提出する(内航海運業法)。

iii. 許可・登録制度
一般旅客定期航路事業の許可には、当該事業に使用する船舶等の適応、当該事業の計画の安全性、等の基準に適合するかどうか等の審査が必要となる(海上運送法)。内航海運業の登録申請書には、申請書には、資金計画、船員配乗計画その他の国土交通省令で定める事項を記載した事業計画を添付しなければならない(内航海運業法)。

(5) 最近の法令等改正の要点
1)海上運送法の一部を改正する法律(平成12年10月施行)
この法律は、旅客船事業に係る需給調整規制を廃止し、事業者の創意工夫に満ちた多様で高度なサービスの実現を図るとともに、離島の生活航路の維持や安全の確保、利用者保護等市場原理の導入により利用者に様々な問題の生じかねない部分については、所要の措置を講じるものである。

2)その他:申請手続の簡素化
FAX・FDによる提出:一般旅客定期航路事業における事業計画の軽微な事項の変更の届出、貨物定期航路事業の開始の届出事項の変更の届出、運賃及び料金の変更届出、事業計画の軽微な事項の変更の届出、等

3)海上運送法施行令の一部を改正する政令(平成14年7月1日施行)
地方運輸局の業務につき、地方のことは地方で完結できるようにすることを一層担保するため、地方運輸局長への職権の委任の範囲を拡大する。具体的には、従来、海上運送法施行令で一部大臣の職権として留保していた一般旅客定期航路事業に係る職権は、原則としてすべて地方運輸局長に委任する。

4)内航海運業法施行規則の一部を改正する省令(平成17年4月1日施行)
内航海運業法の一部改正(平成16年6月公布)に伴い、以下の各点について省令を改正。
i. 内航海運業の登録に関する事項
内航海運業への参入規制が許可制から登録制に改められたことに伴い、登録申請書に関する規定を以下のとおり定める。
ア.登録申請書には、使用する船舶の長さ、所有者の氏名等を記載するものとする。
イ.登録申請書には、資金計画書、船員配乗計画書等の書類を添付するものとする。
ウ.登録を拒否する要件として、以下の事項等を満たさないものと定めることとする。
・総トン数100トン以上又は長さ30メートル以上の船舶を有すること
・船舶安全法の規定に基づく船舶の検査に係る費用及び船員に関する法令の規定に基づく労働環境の整備に係る費用等について、資金計画上適切に計上されていること

ii. 内航運送約款に関する事項
運送約款制度が設けられたことに伴い、以下の規定を定める。
ア.内航運送約款を定める船舶は、ロールオン・ロールオフ船、コンテナ船とする。
イ.内航運送約款を届出る期限を定める。

iii. 運航管理制度に関する事項
運航管理制度が設けられたことに伴い、以下の規定を定める。
ア.運航管理規程及び運航管理者を届出る期限を定める。
イ.運航管理規程には、以下の事項等を記載する。
・船舶の運航の管理の組織に関する事項
・運航管理者及び運航管理員の勤務体制に関する事項

iv. 内航海運業者の報告に関する事項
定期的に、経営の実態に関する事項及び財務状況を報告するものとする。

(6) 参考情報
問い合わせ先:
国土交通省海事局
http://www.mlit.go.jp
国内旅客課
Tel 03-5253-8622
国内貨物課
Tel 03-5253-8627