55.意匠法

(1) 法律・制度の目的
意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与する。

(2) 法律・制度の概要
出願された意匠は意匠法に基づき審査した結果、登録される。
国内の模造品については、基本的に意匠権者が自己の意匠権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求できる(第37条)。

(3) 政省令
意匠法施行令
意匠法施行規則
意匠登録令
意匠登録令施行規則

(4) 規制等の概要
1)対象
工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次にあげる意匠を除き、意匠登録を受けることができる(第3条)。
i. 意匠登録出願前に国内又は外国において公然知られた意匠
ii. 意匠登録出願前に国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠 又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠
iii. それらに類似する意匠

2)規制等の概要
i. 意匠権
意匠権は、各国ごとに各国の法律により成立する。ただし、同盟国に意匠の保護を義務づけたパリ条約がある。意匠の国際登録制度を構築するヘーグ協定の第3のアクト(改正協定)として、平成11年7月2日にヘーグ協定ジュネーヴアクトが採択され、平成15年12月23日に発効した。なお、意匠権の有効期間は登録の日から15年をもって終了する(第21条)。

ii. 申請手続
意匠登録を受けようとする者は、1.意匠登録出願人の氏名(名称)および住所(居所)ならびに法人の場合には代表者氏名、2.意匠の創作をした者の氏名および住所(居所)、3.意匠に係る物品等の事項を記載した願書に、意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付して、特許庁長官に提出しなければならない(第6条)。

(5) 最近の法令等改正の要点
平成10年に、デザインの創作レベルの向上を促すとともに、デザイン開発実態の多様化、巧みな模倣の実態に対応するため、意匠権の保護を強化する意匠法関係法令の改正を行った。主な改正点は以下のとおり。

i. 部分意匠制度(第2条)
従来、意匠登録は物品全体を対象としており、独立した製品として取引の対象とならない物品の一部分に特徴があってもその部分のみの登録は認められていなかった。今回の改正では、物品の一部分について独創的な意匠が行われた場合、その部分の意匠の模倣を有効に防止できるよう部分意匠として保護する制度が導入された。
部分意匠制度

ii. 組物の意匠(第8条)
複数の物品で構成しているが一意匠として出願し、意匠登録を受けることができる「組物の意匠」が、従来、13品目に限定されていたが、物品のセットとして登録が認められる品目が大幅に増加した。例えば、システムキッチンや応接セット、テーブルセットなどである。

iii. 関連意匠制度(第10条)
従来の類似意匠制度が廃止され、関連意匠制度が創設された。従来の類似意匠制度では、類似意匠に独自の効力が認められていなかったため、他人の意匠が本意匠と類似していなければ権利行使が難しい場合があった。新設の関連意匠制度では、本意匠に類似する関連意匠にも通常の意匠権と同じ独自効力が与えられ、同一人の類似する意匠について広く権利を取得できることとなった。関連意匠として意匠登録を受けるためには、本意匠と同じ日に関連意匠を出願しなければならず、後日、関連意匠出願した場合、自分で先に出願した本意匠によって拒絶される。

iv. 特徴記載制度(施行規則第5条の2)
審査の適正化・迅速化を目的に、出願人が自ら意匠の特徴を主張できる特徴記載制度が導入された。これにより、審査官が出願者の意図を的確に判断することも期待される。

v. 願書図面記載要件の多様化・簡素化
従来の提出図面の作成方法は正投影図法に限られていたが、今回の改正で、願書・図面の記載要件が多様化されかつ簡素化された。出願意匠の表現方法が増えるため、従来とは異なる表現技法により、従来よりも少ない図面で出願意匠を特定することも可能となった。

vi. その他、諸外国の制度との調和など
ア.創作容易性水準の引き上げ
国内の周知意匠に基づいて判断していた創作容易性の判断水準が引き上げられ、国内及び外国で公知となった意匠に基づいて容易に創作することができる意匠も意匠登録を受けることができない(第3条の2)。

イ.機能にのみ基づく意匠の保護除外
機能にのみ基づく意匠は意匠登録を受けることができない旨が明記された。今回の改正で物品の部分に係る意匠が保護対象となることによって、弊害が顕著になることに配慮したもの(第5条)。

ウ.先願の地位の見直し
従来、拒絶が確定した先願意匠に類似する後願意匠は拒絶され、さらにそれに類似する後願も拒絶されていた。改正法では、拒絶査定・拒絶審決が確定したり放棄された出願についても、先後願の判断についてその意匠登録出願は初めからなかったものとみなされ、先願の地位を認めないこととなった(第9条3)。

(6) 参考情報
問い合わせ先:
特許庁
http://www.jpo.go.jp
総務部国際課
Tel 03-3581-1898
審査業務部出願支援課
Tel 03-3593-0485
〃 方式審査課
Tel 03-3501-6733
〃 意匠課
Tel 03-3580-6920
〃 出願支援課登録室
Tel 03-3580-6843