個別苦情個票

ＯＴＯ番号	658	各省庁番号	国交-3
受付日付	平成15年1月30日	受付省庁	内閣府
担当省庁	国土交通省	関係法令	港湾法等
苦情申立者	国内個人	輸入先	中華人民共和国
事例名	高松港Ｆ地区「－10ｍ」岸壁等の使用拒否に係る輸入障壁の改善
処理内容	1．苦情の概要高松港Ｆ地区「－10ｍ」岸壁等の使用許可権限を有する香川県知事（受任者：高松港湾管理事務所長）は、中国からの天然砂（コンクリート骨材の川砂）の輸入に係る平成13年３月以降の当該港湾施設（係留施設、野積場）の使用許可申請を全て不許可処分としている。天然砂の輸入については、１万トン級の船舶を係留する必要があり、高松港においては、当該岸壁のみがこれに対応するものであることから、当該岸壁等の使用の不許可処分は、同港を利用した天然砂の輸入を不可能とするものである。高松港において天然砂を輸入することができないという上記の状況は、高松市所在の輸出入会社にとって、大きな輸入障壁であり、国土交通省は、この状況を改善し、高松港において、当該岸壁等を使用した天然砂の輸入ができるよう迅速な対応をとるべきである。 (1) 本件輸出入会社は、香港の親会社と契約して中国福建省の天然砂を輸入するため、香川県管理港湾「高松港」の「Ｆ地区－10ｍ岸壁等」の使用許可を申請しているが、香川県知事（受任者：高松港湾管理事務所長）は、平成13年以降その全てについて、粉塵等を理由に不許可処分としている。しかし、本来、港湾施設の使用許可制は、施設使用が重複せず、円滑な利用が図られるよう使用調整をする必要があることから設けられた制度と考えられ、香川県による粉塵等を理由とした不許可処分は、この制度の趣旨にそぐわないものである。さらに、高松港においても、港湾施設の使用許可制が使用調整のために行われるべきことは、香川県港湾管理条例において何ら許可条件が規定されていないことからも明らかであり、香川県が本件不許可処分理由の根拠とする香川県の内部規則（香川県行政手続条例による許可申請に対する「審査基準」）は、港湾法に違反するものと考えられ、また、このような内部規則の恣意的作成・運用は、国の港湾政策及び国土交通省の見解に反するものと考える。 (2) この点、国土交通省の出先機関は、香川県に対して指導を行ったようであるが、同県は、地方分権を理由に指導を拒否し、改善が見られていない。 (3) 高松港に近い四国、中国、近畿地区の平成12年度以降の輸入実績をみても、天然砂は、松山、今治、宇和島、新居浜、高知、宇野、水島、福山、和歌山、浜田、尼崎、姫路、堺、岸和田、大阪、敦賀、舞鶴などの港で輸入されており、主な港では、高松港のみが天然砂を輸入できない状況となっている。また、上記各港においても、使用許可制は、使用調整の必要性の範囲内で取られているに過ぎない。以上を踏まえ、国土交通省は、高松港において、同港Ｆ地区「－10ｍ」岩壁等を使用し中国から天然砂を円滑に輸入することができるよう、迅速な対応をとるべきである。（平成15年２月10日意見No.２） (1) 本件苦情処理申立は、法令や条例の解釈を求めたものではなく、たとえ、法令や条例に違反していなくても、現実に存在する輸入障壁の排除を求めるものである。 (2) 国土交通省の回答文書には、「粉塵を理由とするものであり、周辺への影響等を考慮したもので合理的な理由であると判断される」と記載しているが、平成13年以降の使用許可申請には、完全な「袋入り川砂」で粉塵を理由とできないものも含まれている。 (3) 本件苦情処理申立に係る輸入障壁の中には香川県職員が輸入天然砂を運搬中の外国船に対して瀬戸内海などの強制水先区に進入させないようにするため輸出入会社の契約した水先人に対し強制水先をしないようにしている。水先人の対応も含めて厳格に調査されたい。 (4) 上記(3)の輸入妨害行為は、海洋法に関する国際連合条約第24条、第17条の規定にも違反する。更に、港湾法第13条第２項の規定にも違反する。本件事実関係を明確に把握されたい。（平成15年２月24日意見No.３）本件苦情処理申立の趣旨は、国土交通省に対して法令や条例の解釈を求めたものではなく、本件の現実の輸入障壁（港湾施設の使用不許可処分）が法令や条例に違反していなくても、現実に存在する輸入障壁の排除を求めるものである。国土交通省は、市場アクセスの一層の改善を図り輸入の円滑化に資するため、現在、高松港Ｆ地区において本件川砂の輸入ができない状況を改善し、今後、高松港Ｆ地区においてその輸入が可能となるよう、直ちに適切な措置を講ずるべきである。（平成15年３月24日意見No.４）本件苦情申立書の趣旨は、若し仮に、現在の措置が適法であると仮定しても、本件輸入障壁の除去を求めるものであって、国土交通省の法令解釈や言い訳を求めるものではない。（平成15年４月18日意見No.５）（意見№４と同趣旨）（平成15年５月13日意見No.６）（意見№４と同趣旨）（平成15年５月28日意見No.７）　内閣府市場開放問題苦情処理対策室においても、具体的な輸入障壁の排除について検討されたい。（平成15年６月18日意見No.８）国土交通省の回答文書は、香川県の港湾施設使用許可申請に対する不許可処分が違法でないとの持論を述べるだけで、具体的な「輸入障壁の排除」について何ら検討しようとはしていないので、本件不許可処分の違法性の有無に関係なく「輸入障壁の排除」について具体的に検討されたい。なお、本件苦情申立者の主張する本件不許可処分の違法性は下記の通りであるので若し仮に、香川県の不許可処分が適法であると思料する場合は、その法的根拠を明示されたい。記 (1) 本件外国船舶に関する係留施設使用許可申請に対する不許可処分は、海洋法に関する国際連合条約に違反し本件不許可処分は違法または無効の処分なのである。 (2) 「海港ノ国際制度ニ関スル条約及規程」第１条、第２条等は本件外国船舶に関する係留についても適用される。 (3) 本件外国船舶に関する係留施設使用許可申請に対する不許可処分は、港湾法第13条第２項の規定にも違反する違法又は無効の処分なのである。 (4) 本件外国船舶に関する係留施設使用許可申請に対する不許可処分は、地方自治法第244条第２項及同条第３項の規定にも違反する違法又は無効な処分なのである。 (5) 本件外国船舶に関する係留施設使用許可申請に対する不許可処分は、香川県港湾管理条例８条第２項の規定にも違反する違法又は無効の処分なのである。香川県港湾管理条例第８条第２項の規定では、何らの許可要件も規定していない。香川県港湾管理条例第８条第２項の解釈・運用に際しては、海洋法に関する国際連合条約の「通航自由の原則」や「海の自由使用の原則」から、「原則許可制」として運用する必要があるのである。（平成15年９月22日意見No.９）本件不許可処分の違法性の有無に関係なく、現実に存在する「輸入障壁」の排除について具体的に検討されたい。記 (1) 国土交通省は、公共の港湾施設を使用させない屁理屈を付けるのではなく、現実の「輸入障壁」の排除の方策を検討すべき。 (2) ＯＴＯ室においては、単に各省の反論を国民に送付するだけでなく、現実に存在する「輸入障壁」の排除を検討すべき。 2．担当省から以下のとおり回答。（平成15年２月７日回答）香川県は、条例により、港湾施設を使用しようとする者は知事の許可を受けなければならないこととしているが、港湾法では、港湾管理者は係留施設を利用する船舶に対して必要な規制を行うことができることとしている。また、当該規制を行うに当たり内部規則を設けることは、不合理な差別をもたらすものでない限り、港湾法上問題のあるものではない。今回申立にある輸出入会社の申請に対する不許可処分については、粉塵を理由とするものであり、周辺への影響等を考慮したもので合理的な理由であると判断される。国土交通省としては、香川県の対応が苦情申立内容からは港湾法上問題があるものとは認められないことから、申立に対応することは不可能である。（平成15年２月21日回答）ＯＴＯ番号658に係る再意見により、具体的事実関係に関する記述があったことから、これを基に地方機関を通じ、事実関係の調査を行った。調査結果によれば、高松港において、平成13年から平成14年にかけて本件輸出入会社は、港湾施設に関する使用許可申請等を港湾管理者（香川県）に対し８件行っており、そのいずれもが不許可とされている。その不許可理由は、そのいずれも合理性のあるものと判断され、港湾管理者がその管理する港湾の状況に応じて行う係留施設を利用する船舶に対する規制の範囲で行われているといわざるを得ない。また、港湾管理者が係留施設の利用に当たり、当該規制を自ら基準を設け、すべての申請者に対して同様の基準が適用されるのであれば、当該規制が、港湾法（昭和25年法律第218号）第13条第２項に定める不平等な取扱いに当たるとは、認められない。さらに、本件調査時に、平成13年５月から本件輸出入会社と香川県との間で港湾施設の不許可に関連する訴訟が行われていることが確認され、平成15年１月20日には、高松地方裁判所において、本件輸出入会社の主張は合理性を欠いており、香川県の違法性を認めることはできないとして、棄却判決が出されたところである。なお、苦情申立人は、香川県の行った行為が貿易障害であるとしているが、国土交通省としては、香川県の対応が港湾法上問題があるものか否かの観点から判断するのみであり、港湾法上問題が認められないことから、申立てに対応することはできない。高松港Ｆ岸までの水先については、港湾を管理している香川県高松港湾管理事務所が、当該船舶の入港を許可しないため、高松港入港までの水先要請に応じられないと判断したものであり、本船側への説明もなされていることから、今回の水先人の対応は、正当な事由によるものである。（平成15年３月19日回答） (1) 港湾法第13条第２項関係苦情申立人は、香川県の行った行為が貿易障害であるとしているが、国土交通省としては、香川県の対応が港湾法上問題があるものか否かの観点から判断するのみであり、香川県が行った行為が港湾法上問題が認められないことから、申立てに対応することはできない。なお、当省にて香川県に対し調査を行った際、香川県より高松港において、香川県の定める港湾施設の許可基準等に適合した申請がなされた場合には、これを許可することは可能であるとの回答を得ているところである。 (2) 国連海洋法条約上の瀬戸内海の取扱昭和52年６月、我が国は瀬戸内海が内水であることを明示し、在京各国公館及び国連を通じて各国に通報済みである。したがって、申立人の主張には根拠がない。 (3) 高知沖合いの日本の領海の範囲資料（海上保安庁資料）のとおり、高知県沖合いには国連海洋法条約第7条に規定する直線基線が設定され、また、同条約第８条の規定により直線基線の陸地側は内水となっている。したがって直線基線から12哩沖合いまでが我が国の領海である。 (4) 内海水先区水先人会の対応ＯＴＯ番号658再調査に対する回答のとおり、水先人会の対応に問題点は全くなく、申立人の主張する「脅迫行為」がなされた事実はない。（平成15年４月17日回答）国土交通省としては、香川県の対応が港湾法上問題があるものか否かの観点から判断している。香川県の行う規制が特定の者に対してではなく、すべての申請者に対して同様に適用されるのであれば、当該規制が港湾法第13条第２項に定める不平等な取扱いにあたるとは認められない。（平成15年５月９日回答）平成15年４月17日回答と同じ。（平成15年５月26日回答）平成15年４月17日回答と同じ。（平成15年９月19日回答（総務省との連名）） (1) 海洋法に関する国際連合条約に定める無害通航権は、別紙のとおり解釈されるところ、香川県が、地方自治法及び港湾法に基づき香川県港湾管理条例（以下「管理条例」という。以下同じ。）を制定し、高松港の適正な管理及び運営を図る観点から、港湾施設の使用に関して規制を行うこと自体は、国連海洋法条約に抵触するものではないと考えられる。 (2) 「海港ノ国際制度二関スル条約及規程」は、別紙のような趣旨と解釈され、高松港も当該規程上の「海港」に該当すると考えられるところ、管理条例は、船籍、船種、仕向地・仕出地等の如何にかかわらず一般的かつ一律に適用されるものであり、港湾の適正な管理及び運営を図る観点から必要かつ合理的なものと考えられ、運用上も船籍等の如何にかかわらず一般的かつ一律に適用されていることが認められるものである限り、当該規程に抵触するものではないと考えられる。 (3) 香川県が高松港Ｆ地区での砂の陸揚げを認めていないのは、港湾の適正な管理及び運営を図る観点から、砂荷役に伴う粉塵が与える周辺への影響等を考慮した合理的な理由に基づくものであり、また、当該管理条例は、船籍等の如何にかかわらず一般的かつ一律に適用されるものであることから、当該管理条例は港湾法第13条第２項に抵触せず、当該管理条例に基づく香川県の外国船舶に対する係留施設使用不許可処分は港湾法第13条第２項に照らしても適法である。 (4) 現在、当該案件については、総務省において港湾施設の不許可処分にかかる再審査請求を審理中であるので、地方自治法違反とする照会に対する回答は差し控えさせていただきたい。（※） (5) 海洋法に関する国際連合条約に定める無害通航権の解釈は、別紙のとおり。また、香川県が、管理条例に基づき、外国船舶の港湾施設使用を不許可としているのは、高松港Ｆ地区が香川県下でも有数の物流拠点であり、飛散等のおそれのある土砂の陸揚げを行うことが他の荷役の妨害となったり、周辺地域に悪影響を及ぼすおそれが高いことを理由とするものであって、その規制の目的は、港湾の適正な管理及び運営を図るという港湾法の趣旨に符合すると考えられる。（参考）担当省回答別紙（外務省「ＯＴＯ番号658に係る第８回主張書面で指摘の国際法の解釈について」） 1)国際法上、一般的に、内水(群島水域に係る規定を除くほか、領海の基線の陸地側の水域。海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」という。以下同じ。)第８条１)においては、国家がその領土において有すると同様の完全な領域主権を有し、領海におけるような外国船舶の無害通航権（国連海洋法条約第17条）は認められていない。そもそも、国連海洋法条約第18条１は、通航とは、同条１(a)(b)のことのために「領海を航行すること」をいうとしており、内水の航行又は港への寄港の権利を意味しない。（注）国連海洋法条約第7条に規定される直線基線により、新たに内水とされた水域においては、無害通航権は存続する。 2)「海港ノ国際制度二関スル条約及規程」（以下「規程」という。以下同じ。）は、航海船が平常出入し、かつ外国貿易のために使用される港を「海港」と定義し（規程第１条）、海港における均等待遇の許与（規程第２条）等を定めたものである。 3．平成16年６月21日　第22回ＯＴＯ推進会議苦情処理部会において、苦情の基礎を同じくするＯＴＯ番号659と併せ、扱いについて以下のとおり部会長により総括された。 (1) 本件苦情は、高松港Ｆ地区の港湾管理者である香川県が、粉塵等を理由に同地区における川砂の輸入に係る港湾施設の使用許可申請を全て不許可処分としていることが輸入障壁となっている、とするものである。 (2) 苦情申立者は、粉塵等のおそれはなく、また当該不許可処分は港湾法や国連海洋法条約に違反している等の主張を行っているが、国土交通省は、当該処分には合理的な理由があり、港湾法上の問題は認められない、また、国連海洋法条約との関係でも、外務省の解釈に照らし、同条約に抵触するものではないと考えられる、としている。 (3) 一方、香川県に使用許可申請を行った輸入業者は、本件苦情申立てと並行して、ほぼ同様の主張により、香川県の不許可処分は違法であるとの訴えを起こしたものの、高松地裁および同高裁において、当該処分は港湾法の趣旨に照らして違法ではなく、また国連海洋法条約にも反しない、等の判決言渡が既になされている。 (4) 香川県の不許可処分については、上述の通り既に裁判所において公益性の観点から正当性が与えられていることから、当該処分を輸入障壁であるとする本件苦情を審議することは、裁判所の法解釈を議論することにつながる。したがって、本件苦情を当部会で審議することは適当でない。 (5) また、苦情申立者は、香川県の処分について、違法性の有無を問う以前に、輸入障壁としてこれを排除すべき旨主張しているが、我が国として砂の輸入を制限しているものではなく、また高松港でも他の地区では砂の陸揚げが認められていることなどに鑑みれば、同港Ｆ地区で陸揚げを認めていないからといって、このことが直ちに輸入障壁であると解することはできない。 (6) ＯＴＯとしてはこれまで、苦情申立者に対して情報提供等の面で要望に応じてきたところであるが、上述の裁判所の判断に照らせば、本件苦情は、その論拠を失っているといえる。本件苦情については、経緯的に行政当局側の説明にも十分でなかった面があったのではないかとの受け取り方もあったものの、申立者の側で香川県の処分を輸入障壁とする論拠を明確に示していないことから、本件苦情は処理を進めることができない状態にある。個別苦情には処理中と処理済の２つの扱いしかないところ、本件は処理済とするのが相当である。
処理分類	処理済（平成16年６月21日）	検討の方向
備考	平成15年２月７日付文書にて回答。平成15年２月21日付文書にて回答。平成15年３月19日付文書にて回答。平成15年４月17日付文書にて回答。平成15年５月９日付文書にて回答。平成15年５月26日付文書にて回答。平成15年９月19日付文書にて回答。（※）当該請求については、平成15年10月9日、棄却された。平成16年６月21日第22回ＯＴＯ推進会議苦情処理部会において、本件苦情を部会の審議に付することについて検討。

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