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OTO諮問会議報告書(平成5年4月12日) [本部決定] [フォローアップ]

4-(1) 親子間配当に係る所得税率の引下げ

○ 問題提起者:欧州ビジネス協会(EBC)、在日米国商工会議所(ACCJ)、経済団体連合会

○ 所管省庁:大蔵省

○ 問題提起の内容

89年度までは「支払配当軽課制度」により、法人の所得のうち配当に充てられた所得に対する法人税については、内部留保された所得に適用される基本税率(42%)よりも軽減された税率(32%)が適用されていたが、90年度に法人税負担を引き下げる改正が行われた際、同制度は廃止され、法人の所得にはすべて一本化された法人税率(37.5%)が適用されるようになった。法人が他の法人に対して配当を支払う場合、当該配当には上記の法人税相当額を負担させられるほか、20%の所得税が源泉徴収されることとなっているが、外資系企業の日本子会社が外国親会社に対して配当を支払う場合には、日本が当該配当に課す所得税率は当該外国との間で締結された二国間条約(所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約)によることになり、ほとんどの先進国との間で当該所得税率は10%と定められている。ただし、「支払配当軽課制度」の廃止後に締結されたルクセンブルク、ノルウェー及びオランダとの二国間条約では、当該所得税率は同制度が廃止されたことを理由に、77年のOECDモデル条約に準拠して5%と定められている。

申立者からは、こうした支払配当に課す所得税率に関し、以下のような問題提起がなされた。

(1) 「支払配当軽課制度」が廃止された結果、外国親会社が日本子会社から受け取る配当は同制度の廃止前よりも少なくなり、外資系企業の税負担が増加したが、これは対日直接投資の促進という政府の方針に反し、海外の対日直接投資の意欲を減退する方向に働くものである。日本は、「支払配当軽課制度」による比較的低い法人税率の適用がなくなった以上、同制度を前提として各国との租税条約で定められた10%という比較的高い所得税率を、同制度の廃止後に締結されたルクセンブルク、ノルウェー及びオランダとの租税条約と同様に、OECDモデル条約に規定する5%まで引き下げるべきである。

(2) 今後各国との租税条約を改定するには長時間を要すること、OECDモデル条約を支持・強化することが日本の長期的利益につながること、対内直接投資における日本と欧米諸国との間の著しい不均衡を是正する必要があること等の要素を包括的に考慮すれば、日本は、自ら租税条約の改定を相手国政府に申し入れるとともに、その改定交渉を待たず、自主的に引き下げることが必要である。

○ 検討結果

日本と外国との間の親子間配当に対する所得税の軽減税率の適用は、従来から相互主義に基づき二国間の租税条約により行っており、これは国際的なルールでもある。このような相互主義に基づく二国間の条約事項は、そもそも我が国のみが国内法の改正によって一方的に税率を引き下げるべき性質のものではない。仮にこのような相互主義に基づく二国間の条約事項を我が国が国内法で引き下げると、条約相手国のみならず世界各国に対して一方的に軽減税率を適用することになるが、これは、国際的にみても、また、我が国の租税政策上の観点からみても、現実的な対応とは言い難い。このため、このような相互主義に基づく二国間の条約事項については、従来からの国際的なルールに従い二国間の条約交渉により処理することが適当である。

日本と外国との間の親子間配当に対する所得税率は、現在、多くの先進国との間の租税条約において10%と定められているが、これは、我が国の法人税における「支払配当軽課制度」の存在を前提とした税率であり、同制度が廃止された現在、少なくとも、日本側としては、この税率を維持する理由は乏しいものと考えられる。したがって、そのような二国間の租税条約については、早急に改定し、相互主義に基づき、OECDモデル条約に定める5%まで引き下げるべきである。実際、同制度の廃止後に締結されたルクセンブルク、ノルウェー及びオランダとの間の租税条約では、まさに同制度の廃止を理由として5%と定められており、他の先進国との間の租税条約についても、行政庁は引き続きこのような方針に従って対処していくべきである。

租税条約は、親子間の配当のみならず、所得に対する課税関係を包括的に律するものであることから、相手国の事情や全体的なバランスも考慮する必要があるが、我が国が自らのイニシャティブにより対日投資環境を整備し、対日直接投資の促進を図っていくという必要性にかんがみれば、条約相手国からの税率引下げの要望を待って動くというのではなく、むしろ、我が国の方から積極的に税率の引下げを提案し、迅速にその実現を図っていくべきである。所管省庁においても、租税条約を巡る諸般の事情を踏まえつつ、できる限りその方向で対応することとしている。


OTO対策本部決定(平成5年5月27日) [報告書] [フォローアップ]

我が国と外国との間の親子間配当に対する所得税率について、相互主義に基づき、その引き下げを実現するため、租税条約の締結及び改正を推進する。


フォローアップ(平成6年4月25日) [報告書] [本部決定]

4-(1) 親子間配当に係る所得税率の引下げ

大蔵省においては、一部の先進国と親子間配当に係る限度税率の引下げを含む租税条約交渉を開始済であり、今後とも随時機会を捉えて各国に対する働きかけを行うこととしている。