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市場開放問題苦情処理推進会議第1回報告書(平成6年5月13日) [本部決定] [フォローアップ]

1-(2) 植物防疫制度の改善

○ 問題提起者:在日オーストラリア、ニュージーランド商業会議所、駐日フランス大使館、駐日オーストラリア大使館、駐日コロンビア大使館

○ 所管省庁:農林水産省

○ 問題提起の内容

植物防疫法令に基づき、輸入の制限、禁止、検査等が定められており、植物を輸入した者は、直ちに植物防疫所に届け出て植物防疫官の検査を受けなければならないこととされている。検査の結果、有害動植物等が発見されない場合は、合格証明書が交付されて、その植物は輸入することができる。有害動植物等が発見された場合には、その種類に応じ消毒、廃棄等の措置を行うことになる。

また、省令で定められた地域から発送される省令で定められた植物等については、輸入が禁止されている。しかし、輸出国において、その禁止対象病害虫の完全殺虫(殺菌)方法が確立され、我が国においてその方法の確実性を認めた場合には、一定の条件付きで輸入が認められる。この場合も、輸入に際しては植物防疫官の検査を受ける必要がある。

なお、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)の一般的例外として、同協定第20条(b)では、「人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置」を採用すること又は実施することが認められている。衛生又は植物検疫に係る措置に関する一般的例外の適用のための規則として、ウルグアイ・ラウンドにおいては、衛生及び植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)が合意され、検疫・衛生措置は人及び動植物の生命又は健康を保護するために必要な範囲内で科学的原理に基づいて適用されなければならないこととされている。

また、国際植物防疫条約(IPPC)事務局においては、現在、こうした検疫措置の基準等についてのペスト・リスク・アナリシス(PRA)のガイドライン案の作成及びリスク管理手続きの検討を行っているところである。

在日オーストラリア・ニュージーランド商業会議所からは、具体的には、以下の1)及び2)の問題提起がなされた。
1) キウイの輸入に係る燻蒸処理の撤廃
ニュージーランドのキウイについては、ナミハダニが付着している場合には燻蒸処理が要求されるが、日本にも生息しているナミハダニであり植物防疫上のリスクはないと考えられるので撤廃すべきである。
2) アスパラガス等の輸入に係る燻蒸処理の見直し
ニュージーランドから日本に輸入するアスパラガス等に害虫が付着していた場合燻蒸処理が要求されるが、その害虫の大部分は日本にも生息する害虫であり、この処理は必要ない。地域植物防疫組織やFAOによって目下検討中であるペスト・リスク・アナリシスを受け入れ、こうした燻蒸処理による農産物への不必要な損傷を避けるべきである。

駐日フランス大使館からは、以下の問題提起がなされた。
3) 農産物の輸入に係る衛生要件の緩和
フランス産のりんご等の果実及び野菜は、チチュウカイミバエ及びコドリンガの発生を理由に輸入が禁止されているが、衛生要件を緩和し輸入を認めるべきである。

駐日オーストラリア大使館からは、以下の4)から8)の問題提起がなされた。
4) 切り花の輸入に係るゼロ・トレランスの撤廃
切り花の輸入に際し、日本はその害虫が自国の農業にとって危険な害虫であるか否かにかかわらず、1匹でも害虫が発見されれば燻蒸処理をとるゼロ・トレランスを政策として採っているが、国ごとの輸入品の科学的なペスト・リスク・アナリシスを行い、検疫の必要な害虫と不必要な害虫を区別すべきである。
5) フルーツ・フライ・エリア・フリーダムの指定地域の拡大
日本は、チチュウカイミバエ等の発生を理由に、オーストラリア産の果実の輸入を禁止している。しかし、西オーストラリア州を除くオーストラリア本土については、チチュウカイミバエは根絶されているので、日本も米国と同様にこれらの地域をチチュウカイミバエについてのエリア・フリーダムに指定すべきである。
6) オーストラリア産りんごの輸入解禁
オーストラリアのりんごは、コドリンガ、チチュウカイミバエ及びクインスランドミバエの発生を理由に輸入が禁止されている。オーストラリアは長年りんごの解禁を求めてきており、最近タスマニア産ふじりんごに要求を絞っているが、オーストラリアは日本の技術的検討の遅さに失望している。他国との協議と並行してオーストラリア産りんごの解禁を早急に進めるべきである。
7) オーストラリア産マンゴウの輸入解禁
オーストラリア産マンゴウについては、チチュカイミバエ及びクインスランドミバエの発生を理由に輸入が禁止されているが、輸入解禁の手続きを早急に進めるべきである。
8) オレンジ及びレモンの輸入に係る低温処理及び日本側植物防疫官による確認業務の委譲
オーストラリア産のオレンジ及びレモンは、低温処理及び低温処理についての日本側植物防疫官による確認を条件に輸入が認められているが、この確認は、輸出者に費用の面で負担となっている。この確認は、日本以外の国との間ではオーストラリア側植物防疫官が行うこととなっているので、日本も、オーストラリア側植物防疫官による確認を認めるべきである。

駐日コロンビア大使館からは、以下の9)及び10)の問題提起があった。
9) コロンビア産切り花の輸出前検疫制度の導入
コロンビア産切り花の日本市場への参入の促進のため、日本側植物防疫官が輸出国において検査を行う輸出前検疫制度をコロンビアに導入すべきである。
10) コロンビア産生鮮果実の輸入解禁
以下のコロンビア産生鮮果実について輸入を解禁すべきである。
・コロンビア産いちごについて、米国はコロンビア政府の検疫証明をもって、ECは何らの条件なく、輸入を認めている。日本は、米国産いちごについてはメチルブロマイド燻蒸により輸入を認めているので、コロンビア産についても同様の処理により輸入を認めるべきである。
・米国は、全ての国からのマンゴウについて温湯処理により輸入を認めている。日本も同様にコロンビア産のマンゴウについて同処理による輸入を認めるべきである。
・コロンビア産ピタヤは、他の国では温湯処理により輸入が認められているので、日本も同処理による輸入を認めるべきである。

○ 検討結果

輸入促進の観点からは、植物の輸入についても、技術的に可能な限り、輸入検査手続を簡素化し輸入禁止措置を必要最小限のものとすることが、求められている。

したがって、合意されたSPS協定に示されているように、これら植物防疫措置は、我が国への病害虫の侵入を阻止するため必要な範囲内で科学的根拠に基づいて行われるべきであり、その根拠、検査等の手続き等については明確な説明が必要である。

また、今般問題提起のあった各項目については、解禁等申立者の要望する改善措置を講じるための条件及び手続きをそれぞれ明確化して、輸出国当局と可能な限り速やかに協議を進め、各申立者の納得を十分に得られるよう輸出国側の見解を十分に聴取するとともに必要な情報提供を積極的に行い、可能な限り速やかに科学的な論理に基づく結論を得るべきである。

さらに、我が国の制度についての諸外国の理解を得るための努力は極めて重要である。したがって、英文のパンフレット等については、理解をより容易にする等の観点から内容の充実を図っていくべきである。

今般問題提起のあった各項目のうち、第1に、輸入時の検査及び燻蒸処理等に関するものについては、所管省では、以下の対応によることとしている。

1)のニュージーランド産のキウイから発見されるナミハダニについては、日本に存在するものと薬剤抵抗性の面で差があることについてのデータをニュージーランドに提示したところであるが、さらに、現在同国との間で日本国内に分布するナミハダニと同一の系統であるか否かを科学的に実証する方法について検討中である。
2)の同国産のアスパラガス等から発見される害虫についても、同国検疫当局からの具体的な病害虫の提示を待って、同様の検討をしていくこととしている。
4)のオーストラリア産の切り花の害虫については、豪州検疫当局からの具体的な害虫の提示を待って、 1)と同様の検討を行っていくこととしている。また、検疫に当たって標本の抽出方法及び大きさについては、申立者の要請に基づき、提供するとしている。

これらについては、科学的根拠に基づき、検疫の対象としない害虫を可能な限り明確に示すことを将来的課題として、今般問題提起のあった害虫等が国内で分布するものと同一の系統であるか否かを実証する方法の開発を推進する必要があるとともに、こうした手続についての国際的合意の形成に向けてIPPCのPRA等の作業に積極的に協力していくべきである。

第2に、輸入禁止植物の解禁については、所管省では、以下の対応を進めている。

3)のフランス産のりんごについては、1993年12月、フランスから具体的なデータを添えて解禁要請が再度あったため、専門家間で技術的検討を行っている。
6)のオーストラリア産のりんごについては、昨年9月に開催された同国との植物検疫専門家会合で同国側から提出された技術データに関して、試験方法等についての提案を行ったところ、同国が提案に同意し現在追加試験を実施しているところであるため、その結果を待って解禁手続きを進めることとしている。
7)のオーストラリア産のマンゴウについては、昨年9月の同会合で、オーストラリア側で行った試験が問題なしと認められ、本年2月に実施した現地確認でも問題がなかったので、本年開催される同会合で検疫措置についての合意が得られれば、解禁の手続きを進めることとしている。
10)のコロンビア産の果実のうち、ピタヤについては、蒸熱処理によるチチュウカイミバエ殺虫のための技術協力について調整中であり、また、コロンビア専門家の受入研修を行っているところである。ピタヤ以外については、コロンビア側からの具体的要望を待って今後蒸熱処理による輸入解禁について専門家協議等の場で検討していくこととしている。

これらについては、解禁のための条件及び手続き等についての具体的な情報を十分に提供するとともに、技術協力を可能な限り積極的に行い、協議の迅速化を図るべきである。

第3に、5)のエリア・フリーダムについては、所管省では、オーストラリア当局からの具体的データの提出を受け、調査により対象害虫が分布しないことが確認されれば認めることとしている。
西オーストラリア州を除くオーストラリア本土のエリア・フリーダムについては、申立者が指摘しているように、既に米国等が認めているものであるため、その際の調査結果をも活用して速やかに所要の確認を行い、指定を行うことを検討すべきである。

第4に、8)の低温処理の日本側植物防疫官による確認については、所管省では、低温処理を行うことが輸入解禁の条件であり、低温処理温度記録上のトラブルが発見されたこともあるため、日本側植物防疫官による確認は今後とも必要であるとしている。
申立者が指摘するように、オーストラリアから日本への輸入に際しては、この確認に加えて輸入時に検疫が行われているため、これらによる検査負担の軽減方策については十分に検討し、関係当局間で納得の得られるように論理的な結論を可能な限り早期に得るべきである。

最後に、9)のコロンビア産切り花についての輸出前検疫制度の導入については、所管省では、平成5年4月のコロンビア政府からの要請を受け、同年9月に両国の植物検疫システムの概要を文書で交換し、その可能性を検討しているところである。
これについては、緊密な情報交換に基づき可能な限り速やかに結論を得るべきである。


OTO対策本部決定(平成6年6月24日) [報告書] [フォローアップ]

1-(2) 植物防疫制度の改善

植物防疫措置については、我が国への病害虫の侵入を阻止するため必要な範囲で、根拠、検査等の手続等を明確にし、科学的根拠に基づいて行うとの方針の下、改善措置を講じるための条件を明確化して協議を進め、速やかに結論を得る。

(1) 輸入時の検査等における害虫の取扱

検疫の対象としない害虫を可能な限り明確に示すことを将来的な課題として、今般の問題提起に係る以下の害虫等が国内で分布するものと同一の系統であるかを実証する方法の開発を推進するとともに、こうした手続についての国際的合意の形成に向けての国際植物防疫条約事務局におけるペスト・リスク・アナリシス等の作業に積極的に参画する。

・ニュージーランド産のキウイから発見されるナミハダニ
・同国産のアスパラガス等から発見される害虫及びオーストラリア産の切り花の害虫(輸出国検疫当局からの具体的な病害虫の提示を受けて対応)

(2) 輸入禁止植物の解禁

解禁のための条件及び手続等についての具体的な情報を十分に提供し、以下の対応を取る。

・フランス産のりんごについては、同国からの解禁要請を受けて現在両国の専門家間で行っている技術的検討を速やかに進める。
・オーストラリア産のりんごについては、同国が現在実施している追加試験の結果を受けて、解禁手続を速やかに進める。同国産のマンゴウについては、本年に開催する同国との植物検疫専門家会合において検疫措置についての最終合意を得て、解禁手続を速やかに進める。
・コロンビア産ピタヤについては、同国専門家の受入研修等技術協力を積極的に行い、他の果実については、同国からの具体的要望を待って、それぞれ今後蒸熱処理による輸入解禁について専門家協議等の場で検討する。

(3) フルーツ・フライ・エリア・フリーダムの指定

オーストラリアから問題提起のあったフルーツ・フライ・エリア・フリーダムの指定地域の拡大については、同国からの具体的データの提出を受け、米国等が認めた際の調査結果をも活用して、速やかに所要の確認を行う。

(4) 低温処理

オーストラリア産のオレンジ及びレモンの低温処理の日本側植物防疫官による確認については、検査負担の軽減方策を十分に検討し、関係当局間で速やかに調整する。

(5) 輸出前検疫制度

コロンビア産切り花についての輸出前検疫制度の導入については、平成5年4月の同国からの要請を受け、同年9月に両国の植物検疫システムの概要を文書で交換したところであり、その可能性の検討を速やかに進める。

(6) 我が国の制度についての理解の増進

我が国の制度についての英文資料等については、理解をより容易にする等の観点から内容の充実を図る。


フォローアップ(平成7年6月5日) [報告書] [本部決定]

1-(2) 植物防疫制度の改善

(1) 輸入時の検査等における害虫の取扱

国際連合食糧農業機関(FAO)の植物検疫措置に関する専門家委員会(Commitee of experts on Phytosanitary Measures -CEPM)に、平成6年5月及び平成7年5月に委員を派遣した。この会合では、植物検疫に関する基準案の検討が行われた。また、病害虫の危険度の評価等の基準の検討を行っている基準作成ワーキンググループ会合には、平成6年8月及び平成7年3月に出席した。両会合とも、今後も積極的に参画していく予定である。

ニュージーランド産のキウイから発見されるナミハダニについては平成7年4月に供試体の提供を受け、薬剤抵抗性比較試験の準備を行っている。

ニュージーランド産のアスパラガス等から発見される害虫及びオーストラリア産の切り花の害虫については、相手国から具体的な病害虫の提示を受け次第、適切に対応していくこととしている。

(2) 輸入禁止植物の解禁

フランス産のりんごについては、平成6年5月に専門家協議を開催し、フランス側で行うべき試験について合意し、現在フランス側で殺虫試験を実施している。その試験データが提出され次第、その技術的評価を行う予定である。

オーストラリア産のりんごについては、同国から平成6年10月に追加試験データが提出されたが、りんご生果実に寄生したコドリンガが完全に殺虫されることを証明する試験において試験規模が小さすぎ安全性の評価ができないので、平成7年4月に補足試験データの提出を受け、現在その技術的評価を行っている。同国産のマンゴウについては、オーストラリア側の検疫措置に問題がないと認められたため蒸熱処理を行うこと等一定の条件の下に、平成6年10月、輸入を解禁した。

コロンビア産ピタヤについては、平成6年5月にコロンビア専門家3名の受入研修を行っており、平成7年4月には、蒸熱処理によるチチュウカイミバエ殺虫のための技術協力受入体制等の調査のため、コロンビアに専門家を派遣したところである。今後この調査の結果を踏まえ、効果的な技術協力の方針を策定する予定である。その他の果実についてはコロンビアからの具体的要望を待って、輸入解禁について検討していくこととしている。

(3) フルーツ・フライ・エリア・フリーダムの指定

平成6年7月オーストラリア当局から提出のあった現地におけるミバエの発生状況、エリアフリーダムの対象として提案のあった果樹園の状況、ミバエが発見された場合の措置等の詳細なデータについて米国が認めた際の調査方法も参照し、総合的に検討しているところである。技術的評価が終了し、エリア・フリーダムを認めて差し支えないと判断された場合には、必要な検疫措置の合意、公聴会の開催、省令改正の手続を取ることになる。

(4) 低温処理

オーストラリア産のオレンジ及びレモンについては、低温処理を行うことが輸入解禁の条件であるが、日本側植物防疫官による処理確認の結果、温度記録の不備等の事例が認められたことから、平成6年9月に開催された日豪植物検疫定期協議においてオーストラリア側に具体的事例を示し低温処理の適切な実施を要望している。今後オーストラリア側の低温処理実施の改善状況及び検疫上の安全性を勘案し、低温処理実施確認に関し検査負担の軽減に資するべく日豪植物防疫官の業務分担を検討していくこととしている。

(5) 輸出前検疫制度

コロンビアとはその後平成6年3月、7月と文書の交換による検討を続けてきたが、平成7年3月には、日本側から年間を通じて安定した輸出量があるかどうか、検査施設の体制整備等について最終的な質問を行っており、これらの条件が整うことが確認できた場合には、両国間の合意事項について速やかに、通達を発し、同国において輸出前検疫を実施する。

なお、その実施に際しての条件の確認として、上記質問事項に対するコロンビアの回報結果に基づき、同国への植物検疫の専門家を派遣し、切り花の輸出前検査のための事前調査を行うこととしている。

(6) 我が国の制度についての理解の増進

平成7年3月に我が国の植物検疫制度の全体像についての英文資料(QUARANTINE OF IMPORT PLANTS AND PLANT PRODUCTS) を作成し、在外公館、在京大使館等に配付したところで、今後も配付していくこととしている。