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市場開放問題苦情処理推進会議第1回報告書(平成6年5月13日) [本部決定] [フォローアップ]

1-(3) 酪農製品の検査手続きの簡素化及び外国検査データの受入れ

○ 問題提起者:駐日オーストラリア大使館

○ 所管省庁:農林水産省、厚生省

○ 問題提起の内容

酪農製品のうち、「畜産物の価格安定等に関する法律」(畜安法)及び「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」(不足払い法)に定める指定乳製品等(バター、脱脂粉乳、れん乳等)については、(特)畜産振興事業団(LIPC)の売買の対象となることがあり、畜安法及び不足払い法でその成分規格等が定められている。

このため、(特)畜産振興事業団が指定乳製品等を輸入する場合には、(特)畜産振興事業団の委託を受けた(財)日本乳業技術協会(JDTA)により、(財)日本乳業技術協会の定める「指定乳製品等検査規定」に基づき検査が行われている(その検査項目は、畜安法及び食品衛生法等の関連法令に定める成分規格に関するものである)。

また、一般に食品を輸入する場合、食品衛生法により、輸入者は、検疫所に輸入の届け出を行うこととされているが、酪農製品を輸入する場合には、当該製品が「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(厚生省令)に定める規格基準に適合するものでなければならない。

一方、オーストラリアでは、輸出管理法(The Export Control Act 1982)に基づき、酪農製品については、輸出前に公衆衛生の観点から指定検査機関(全豪検査機関協会(NATA)の認定を受けた検査機関)で検査が行われ、その結果を第1次産業エネルギー省検疫検査局(AQIS)が認証した製品しか輸出できないことになっている。

したがって、申立者からは、日本で再度同様の検査を行う必要は認められないので、以下のとおり検査手続きの簡素化及び外国検査データの受入れを行うべきとの問題提起がなされた。

(1) オーストラリアから輸入されるバター及び脱脂粉乳は、輸出前にAQIS及び政府酪農庁により畜安法施行規則等に定める成分規格等を満たしていることが確認できるので、再度検査を行わず、AQISの認証を得た検査データが受け入れられるべきである。

(2) AQIS及びNATA認定検査機関では、輸出対象国で必要とされている検査項目に応じた検査・認証を行うことが可能であり、既に米国、英国、ニュージーランド及び香港では政府間の協定によりオーストラリアの検査データが受け入れられているところである。しかしながら、(財)日本乳業技術協会の行う検査内容には次のような問題がある。我が国に輸入される酪農製品一般の検査方法は、「飲食料品及び油脂の格付方法」(農林水産省告示第1074号)に定める基準によることとされているが、(財)日本乳業技術協会の定める「指定乳製品等検査規定」における検査内容には、食品衛生法に関する検査項目が含まれている上、検査の合否の基準が同告示より厳しいものとなっている。したがって、(財)日本乳業技術協会の行う検査基準を同告示と整合化すべきである。

(3) 厚生省が導入することとしている輸出国登録工場制度の適用を受ければ、輸入時の食品衛生法上の検査を省略できることになるが、オーストラリアの酪農製品製造工場で生産される酪農製品は厚生省の求める衛生水準に達しているので、同制度へのオーストラリアの酪農製品製造工場の参入を認めるべきである。

その際、オーストラリアの個々の酪農製品製造工場の衛生状況等については、既に輸出管理法に基づいてAQISに登録されているので、AQISからの情報提供に基づいて登録できるよう日豪両国政府間で協定を締結すべきである。

(4) 酪農製品を輸入する際、添加物又は保存料が含まれていないことの証明について、輸出国政府の発行する証明書の提示を求められることがあるが、これらについては、オーストラリア国内で既に公的検査機関の検査を受けたものであるから、このような措置は撤廃すべきである。

○ 検討結果

(1) (特)畜産振興事業団は、食品衛生法に基づいて実施している指定乳製品の輸入検査に係る検査項目の外国検査データの受入れについては、輸入食品等事前確認制度(輸出国登録工場制度)の施行のもとで、登録後直ちに実施すべきである。

一方、畜安法及び不足払い法に基づいて(財)日本乳業技術協会が実施している検査に関しては、申立者は輸入国が必要とする検査項目に応じた検査を行うことが可能であるとしており、NATAの認定を受けた検査機関が行った検査結果は、実際に我が国より遠方の国(英国等)で受け入れられている実績もあるとしている。このため、外国検査データの受入れは基本的に望ましいことに鑑み、(特)畜産振興事業団は、(財)日本乳業技術協会が行う検査の項目に係る外国検査データの受入れの可能性に関し、できるだけ速やかに申立者と右主張の裏付けの確認を含む意見交換を行い、早期に結論を得るべきである。

(2) また、(特)畜産振興事業団は、現行の(財)日本乳業技術協会の検査基準・方法が分かり難いとの申立者からの指摘を踏まえて、ガイドブックの作成等必要な対応を行うとともに、外国検査データを受け入れることとした場合には、その検査基準・方法について分かりやすく申立者に示すことが必要である。

(3) 厚生省においては、オーストラリア政府を通じてオーストラリアの酪農製品製造工場から登録の申請があった場合には、当該工場、食品等が必要な衛生要件を満たしていることを速やかに審査し、要件を満たしている食品等を登録すべきである。

厚生省は、衛生要件を確認するにあたり、オーストラリアでは既にAQISに工場の登録が行われていることを考慮し、その登録データを活用することについて検討すべきである。

(4) 酪農製品の輸入届出に当たっては、添加物又は保存料が含まれていないことを証明するために、輸入者が輸入届出書に添えて輸出国政府発行の証明書を提出する必要はないことが審議の過程で確認された。


OTO対策本部決定(平成6年6月24日) [報告書] [フォローアップ]

1-(3) 輸入食品等事前確認制度の活用等による食品の輸入検査手続の簡素化・迅速化

先般施行された輸入食品等事前確認制度(輸出国登録工場制度)については、所要の条件を満たす工場、食品等を申請を受けて速やかに登録する。その際、オーストラリアの第一次産業エネルギー省検疫検査局の登録データを活用することを検討する。

また、地方空港における輸入食品に係る検査業務については、今後とも外国人事業者等からの具体的改善要望がある場合には適切に対処する。


フォローアップ(平成7年6月5日) [報告書] [本部決定]

1-(3) 酪農製品の検査手続きの簡素化及び外国検査データの受入れ

(1) 輸入食品等事前確認制度は、平成6年3月に導入された制度であるが、平成7年2月に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)基準認証小委員会及びFAOの主催する食品の輸入手続に関するワークショップ(キャンベラ)においてその広報を行い、本制度の普及に努めたところである。輸出国政府を通じて書面により申請があれば、速やかに審査を行い、日本の衛生基準を満たしている場合には、当該工場、食品等を登録し、輸入時の検査を省略することとしている。

したがって、本制度の下で輸入される乳製品については、現在(財)乳業技術協会が行っている食品衛生面の検査は不要となる。

(2) 平成6年7月に在京オーストラリア側関係者と、また、平成7年2月にはオーストラリアにおいてオーストラリア酪農庁関係者と意見交換を行い、畜安法及び不足払い法に基づく溶解度等品質面の検査項目については通関上必要とされるものではなく、ユーザーからの要請を踏まえ、輸送中の事故による品質劣化等を調べるという意義も有する等の旨を説明した。今後は、商取引上の意見交換を継続していくことで合意している。

(3) (財)日本乳業技術協会における現行の検査基準・方法についての詳細な英文のガイドブックを作成し、平成6年7月にオーストラリアに手交し、説明した。

(4) (1)を参照。

なお、登録に際しての、検疫検査局の登録データの活用については、オーストラリア側からの申請に対する審査の中で検討する。