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市場開放問題苦情処理推進会議第1回報告書(平成6年5月13日) [本部決定] [フォローアップ]

2-(2) ラジアタ松に係るJAS規格の改善

○ 問題提起者:在日オーストラリア・ニュージーランド商業会議所

○ 所管省庁:農林水産省

○ 問題提起の内容

林産物については、用途に応じたJAS規格が存在し、強度試験の結果に基づき等級区分されている。

申立者からは、JAS規格における強度の評価方法に問題があるため、ニュージーランドの主要人工林産物であるラジアタ松が不当に低い等級に区分されているので、以下のJAS規格について改善すべきとの問題提起があった。

(1) JAS143:針葉樹の構造用製材

ラジアタ松は他の樹木と比べて成長速度が速く、平均年輪幅と強度の相関関係が弱く、また、髄及び髄心部の強度がそれ以外の部分に比べて低い。

このため、JAS600(2×4工法構造用製材)では、ラジアタ松に限り強度の基準として、平均年輪幅に関する基準が適用除外され、髄心部又は髄に関する基準によることとされている。

しかしながら、平成3年に新設されたJAS143においては、ラジアタ松についても平均年輪幅の基準が用いられており整合的でないので、JAS600同様髄心部又は髄に関する基準を採用すべきである。

(2) JAS702:機械による曲げ応力等級区分を行う枠組壁工法構造用製材

製材の強度に応じた等級区分を行うため、機械による強度の測定を行った後に、目視による測定を行うことになっているが、その中に製材の材縁部(板の長辺に沿った縁に近い部分)における節の量に関する規制がある。製材の材縁部における節の量と強度の相関関係は薄いと考えられるので、この規制を撤廃、又は緩和すべきである。

(3) JAS601:集成材、及びJAS2054:構造用大断面用集成材

当該規格においては、針葉樹の樹種に応じてA1からB2の等級に区分されており、ラジアタ松はB2(最低ランク)に分類されている。

しかしながら、製材の等級区分は試験結果に基づいて行われるべきであり、試験を行えばラジアタ松は必ずしもB2に区分されるものではないと考えられるので、現在の等級区分の見直しを行うとともに、個々の製材の試験結果に基づきその都度等級区分を受けられるよう当該規格を見直すべきである。

○ 検討結果

(1) ラジアタ松は、その大部分が6mm以上の平均年輪幅をもつが、強度試験の結果に基づき、2×4工法用建築に使用される小断面の製材についての規格であるJAS600においては、十分な強度があるとされており、製材の強度について平均年輪幅に関する基準が適用除外され、それに代わるものとして髄心部又は髄に関する基準が設けられている。一方、従来の軸組工法用建築に使われる中断面の製材についての規格であるJAS143においては、平均年輪幅に関する基準が適用されるために、ラジアタ松が低い等級に区分され、又は、JASの等級外となるものが多いとの申立者の主張は理解できるものである。

しかしながら、JAS143に係るラジアタ松については、平均年輪幅のデータ、強度試験のデータ及び平均年輪幅と強度の相関関係のデータが存在していないのが現状である。

したがって、JAS143に係るラジアタ松について、平均年輪幅に関する基準に代えて髄心部又は髄に関する基準を設けることの可能性については、申立者からの必要なデータの提出に基づき、速やかに技術的な検討を進めるべきである。

(2) 製材の材縁部における節の量と強度の相関関係については、所管省と申立者の間でデータ等に基づいて共通の理解を得られるように意見交換を行うべきである。

(3) JAS601及び2054の規格改正作業に当たっては、申立者が検討過程への参加を求めた場合にはこれに応じ、客観的な試験結果に基づき、ラジアタ松をより上位の等級に区分する可能性を検討し、論理的な解決が図られるべきである。

また、低い等級に区分されている樹種であっても、個々の製材においてはより上位の等級に区分されている樹種と同等の強度を有するものも存在し得るので、データ等に基づき、その都度機械による測定により等級区分を行う基準の導入についても併せて検討すべきである。


OTO対策本部決定(平成6年6月24日) [報告書] [フォローアップ]

2-(2) 木材のJAS規格

ラジアタ松の特性に配慮し、以下の対応を取る。

(1) JAS143(針葉樹の構造用製材)については、JAS600(2×4工法用製材)同様、ラジアタ松に関する品質の基準として、平均年輪幅に関する基準に代えて髄心部又は髄に関する基準を設定する可能性について、具体的試験方法、実施方法等についての問題提起者との意見交換に基づき、速やかに技術的検討を進める。

(2) JAS702(機械による曲げ応力等級区分を行う2×4工法用製材)については、材縁部における節の量と強度との相関関係について共通の理解を得るよう速やかに意見交換を行う。

(3) JAS601(集成材)及びJAS2054(構造用大断面用集成材)の規格改正作業に当たっては、ラジアタ松をより上位の等級に区分する可能性、及び個々の製材についてその都度等級区分を行う基準の導入を併せて検討し、平成7年11月を目途に結論を得る。


フォローアップ(平成7年6月5日) [報告書] [本部決定]

2-(2) ラジアタ松に係るJAS規格の改善

(1) JAS143(針葉樹の構造用製材)については、平成6年5月在京ニュージーランド大使館と打合せを行って試験方法を提示し、試験データの提出を依頼しているところであり、必要な試験データの提出を受けた後、1年間を目途に規格の改正を行うこととしている。

(2) JAS702(機械による曲げ応力等級区分を行う2×4工法用製材)については 、平成6年5月在京ニュージーランド大使館と技術的な問題について意見交換を行ったところであり、今後とも引き続き意見交換を行うこととしている。

(3) JAS601(集成材)及びJAS2054(構造用大断面用集成材)については、両規格を統合した新たな構造用集成材規格の制定作業を進めているところである。この中で、ニュージーランドの意見を踏まえ、ラジアタ松を含めた樹種区分を見直すとともに、集成材を構成する個々の板であるひき板について曲がりにくさを示す曲げ応力を測定し、これに基づいて等級区分を行う制度を導入することとしている。このことにより、個々の製材毎に等級区分を行うことも可能になる。

以上の制度改正については、JAS専門委員会及びJAS調査会の開催等を行った上で、WTO通報等の必要な手続を経て、新たな構造用集成材のJAS規格を本年11月を目途に告示する予定である。