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市場開放問題苦情処理推進会議第1回報告書(平成6年5月13日) [本部決定] [フォローアップ]

4-(1) 鋼構造建築物の耐火性能試験の国際的整合化

○ 問題提起者:駐日米国大使館

○ 所管省庁:建設省

○ 問題提起の内容

建築物の柱、はり、壁、床等の主要構造部については、火災時の加熱に対する耐火性能を判定するために耐火性能試験が行われている。耐火性能試験は主として加熱試験によるが、これは、主要構造部の試験体を加熱炉で所定の温度で一定時間加熱し鋼材の温度を測定することにより、耐火被覆材の断熱性能を試験するものである。

日本における加熱試験は、昭和44年建設省告示第2999号に基づいて行われている。

第一に、同告示により、鋼材温度の許容範囲(柱、はりの場合、鋼材温度の平均が350℃以下)が定められているが、これは諸外国の基準に比して低く設定されている。

第二に、鋼材温度の判定には、加熱終了後の温度上昇も含めた最高温度を測定する方法が採用されているが、諸外国では加熱終了時の鋼材温度を最高温度としている。

第三に、実際の測定に当たっては、はりの場合、諸外国と異なり、測定点の平均温度が鋼材の三つの部位(上部フランジ、ウェブ、下部フランジ)毎に求められ、そのそれぞれが定められた許容温度以下であるかどうか判定される。

以上により、問題提起のあった耐火被覆材の場合、日本においては、諸外国に比して少なくとも 1.5倍、場合によっては約3倍の厚さが必要とされる。

このため、申立者からは、以上の3点について、日本の基準及び測定方法を諸外国のそれと同様なものとするとともに、外国で受けた認証を受け入れるべきとの問題提起がなされた。

○ 検討結果

耐火性能試験については、現在ISOにおいて、国際標準の確立に向けての調整が行われている。所管省においては、ISOの作業に対応して、総合技術開発プロジェクト「防耐火性能評価技術の開発」(平成5〜9年度)により、耐火性能試験方法の国際的整合化の具体的方策を検討中であり、成案がまとまり次第、同プロジェクトの期間中であっても可及的早期に整合化が図られるべきである。また、それ以前の段階においても、安全性の確保の上で支障がない限り、ISOの調整の方向を踏まえ可能な限り諸外国の試験方法との整合化が図られるべきである。

具体的には、問題提起のあった第一の点(最高温度)については、鋼材の強度は火災時の温度上昇に応じて低下し一定の温度に達すると荷重を支え切れなくなるので、必要な強度水準を確保するためには許容されている荷重の限度にあわせてどの程度の鋼材温度の上昇を許容するかという問題であり、諸外国において許容されている最高温度と荷重限度との関係についての考え方についても十分に調査した上で、国際的調和の観点から、総合的な視野に立って検討されるべきである。第二及び第三の点(温度測定方法)については、基本的には、加熱試験の実施に係る実務的事項であり、その根拠となる考え方、ISO及び諸外国における方法を調査した上で、所要の国際的整合化が速やかに図られるべきである。

所管省では、問題提起を受けて、第一の点については、鋼材は一定の温度に達すると荷重を支え切れずに建築物が倒壊するおそれがあることから、極めて慎重な対応が図られるべきであるとしており、本年6月末を目途に検討の方向付けを行うとしている。第二及び第三の点については、本年8月末を目途に、上記総合技術開発プロジェクトの中で所要の実験により安全性を確認した上で問題提起を受けた改訂案を取りまとめる方針としており、これにより論理的な解決が図られるべきである。

また、建築分野における基準・認証制度の国際的調和を図る観点から、所管省では、相互認証制度の導入を推進することとしており、外国関係機関との協議を進めているところであるが、本件に係る制度を含め、相手国との協議結果を踏まえ相手国の認証機関による性能評価の受入れが速やかに推進されるべきである。


OTO対策本部決定(平成6年6月24日) [報告書] [フォローアップ]

4-(1) 鋼構造建築物の耐火性能試験等の国際調和

国際調和の観点から以下の対応を取る。

(1) ISOにおける国際標準の改訂後速やかに耐火性能試験方法の国際調和を図ることとし、このための技術開発プロジェクトを推進する。

耐火性能試験は、鋼構造建築物の構造安全性確保のため極めて重要なものであり、まず上記プロジェクトの中で、6月末を目途に、国際調和に向けての検討の方向付けを行う。
また、今般の問題提起に関連する一部の試験実施方法については、8月末を目途に、所要の実験により安全性を確認した上で改訂案を取りまとめる。

(2) 外国関係機関との協議により、本件に係る制度を含め、建築分野における相互認証制度の導入を推進する。


フォローアップ(平成7年6月5日) [報告書] [本部決定]

4-(1) 鋼構造建築物の耐火性能試験の国際的整合化

(1) ISO(国際標準化機構)での試験方法の改訂作業を踏まえながら、耐火性能試験方法の国際調和化を図るため、引き続き、建設省総合技術開発プロジェクト「防耐火性能評価技術の開発」を実施する。この検討に際しては、従来の加熱試験に加えて、載荷加熱試験を我が国に導入することを基本とするという方向付けを平成6年6月に行った。

更に、平成6年11月には、上記プロジェクトの成果を踏まえて、耐火性能試験方法の一部(鋼材温度の平均の取り方、鋼材の最高温度の測定時点)について国際整合化を行ったところである。

(2) 本件に係る制度を含め、建築分野における相互認証制度の導入を推進するため、外国関係機関との協議を進めている。各国関係機関との協議成立を踏まえ、速やかに相互認証制度の導入を行う。

(注)

加熱試験:

載荷加熱試験: