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市場開放問題苦情処理推進会議第2回報告書(平成7年3月14日) [本部決定] [フォローアップ]

4-(3) 輸出船舶に係る就航航路等の制限の廃止

○ 問題提起者:駐日台北経済文化代表事務所

○ 所管省庁:運輸省

○ 問題提起の内容

臨時船舶建造調整法(昭和28年)は、我が国の国際海運の健全な発展に資することを目的としており、同法に基づき、造船事業者が総トン数 2,500t以上又は長さ90m以上で、遠洋区域又は近海区域を航行区域とする鋼製の船舶を建造しようとするときは、その建造の着手前に運輸大臣の許可を受けなければならないこととされている。運輸大臣は、当該船舶の建造が、それを配船しようとする航海区域又は航路における船腹の需給状況からみて著しく過剰となるおそれのないこと等同法の基準に適合する場合は許可をしなければならないこととなっている。

運輸省においては、近海船(載貨重量12,000t以下の一般貨物船。原木、合板、雑貨、鋼材等の輸送を行う。)について、その主要貨物である南洋材の輸入量が激減し船腹過剰の状態が続いていることから、昭和47年以降、臨時船舶建造調整法に基づき、建造規制を行っている。この建造規制としては、輸出船については、本邦に配船されないことが明確なもののみ建造を許可することとしており、この確認のため、船舶を発注した者から日本発着貨物を積み取らない旨の確約書(「念書」と呼ばれている。)の提出を求めている。

問題提起者からは、外国船の貨物の積取りを制限することにより、自国船の利益を保護する規制は、自由競争の原則に反したものであるので、廃止すべきであるとの問題提起があった。

○ 検討結果

現在の国際経済環境の下で、我が国は、自由競争体制を維持・強化するため率先して努力し、財の輸入のみならず、海運業等のサ-ビス分野を含め、市場アクセスの一層の改善を図っていく必要がある。また、規制緩和を推進し経済の活力を維持していくためには、競争制限的な経済的規制については、原則として撤廃していく方向でその必要性を不断に厳しく見直していく必要がある。

本規制は、我が国で建造された外国船による我が国発着の貨物の積取りを不可能とすることにより、海運の分野での自由競争を制限するものであり、問題である。また、我が国が世界で優越的な地位にある造船国であること、外国船について我が国で建造されたものについてのみこうした規制を実施することは差別的であることに鑑みれば、問題提起者が本規制の廃止を求めるのは、当然のことと考えられる。

更に、本規制は20年以上もの長期にわたり実施されてきたものであるが、本規制の根拠法の本来の目的である我が国の国際海運の健全な発展の観点からは、むしろ国際間の競争が活発に行われるよう環境整備を図っていく必要があると考えられ、需給調整を理由にこうした競争制限的な規制を今後も継続することは不適当である。

以上から、我が国建造の外国船による我が国発着貨物の積取りを不可能とする本規制については、速やかに廃止すべきである。


OTO対策本部決定(平成7年3月28日) [報告書] [フォローアップ]

4-(3) 輸出船舶に係る就航航路等の制限の廃止

近海船(2,500総トン以上の輸出船舶)の建造許可を行う際に船舶を発注した者から提出を求めている念書(日本発着貨物を積み取らない旨の確約書)については、平成7年6月を目途に当該念書の新たな提出を求めないこととするとともに、平成8年度末までに制度全体を廃止することとする。


フォローアップ(平成8年5月27日) [報告書] [本部決定]

4-(3) 輸出船舶に係る就航航路等の制限の廃止

近海船(2,500総トン以上の輸出船舶)の建造許可を行うのに際して「念書」の提出を求めないこととした(平成7年6月16日付け、事務連絡)。なお、平成8年度末には制度全体を廃止することを予定している。