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市場開放問題苦情処理推進会議第3回報告書(平成8年3月18日) [本部決定] [フォローアップ]

1-(1) 輸出前の生果実の蒸熱処理のための植物防疫官の派遣

○ 問題提起者:駐日タイ大使館

○ 所管省庁:農林水産省

○ 問題の背景

植物防疫法に基づき、国内未発生であり、かつ、侵入した場合、農業生産に重大な被害を及ぼすおそれのある病害虫の発生地域からの当該病害虫の寄主植物の輸入は禁止されている。タイの場合、ミカンコミバエ及びウリミバエという重大害虫が発生しているため、それらの寄主植物であるマンゴウ、パパイヤの輸入は禁止されている。ただし、タイ王国から日本へのマンゴウの生果実の輸入は、特定4品種であって農林水産大臣が定める基準に適合しているものに限って認められている。その基準は農林水産省告示で示されており、そこには輸送方法、生産地における検査及び証明事項、生産地における消毒方法、こん包及びこん包場所等が規定されているが、その中で日本への輸出前にタイ側で蒸熱処理を実施し、その確認をするために日本側植物防疫官が派遣されることが規定されている。つまり、タイ国植物防疫機関により検査され、かつ、その検査の結果、有害動物及び有害植物が付着していないことを認め、又は信じる旨記載されているタイ王国植物防疫機関が発行した植物検疫証明書には、検査及び消毒の実施を確認した旨の日本の植物防疫官による付記がなされることが必要と規定されている。この日本側植物防疫官の滞在中の費用はタイ側が負担することで合意されている。

○ 問題提起内容

問題提起者から、タイの業者は日本政府がミバエ等による輸入果実の汚染を憂慮していることは十分理解しており、このために蒸熱処理を受ける意欲も用意もあるが、日本側の基準の緩和について以下の問題提起があった。

マンゴウは、タイから12カ国に輸出されているが、植物防疫官の派遣はおろか蒸熱処理を行っているのは日本だけであり、他国はタイ政府の証明書で受け入れている。タイ側で負担している日本側植物防疫官の滞在中の費用は、日本への輸出コストを上昇させている。また、たとえ、タイ国内の他の地域に蒸熱処理をする施設を増やし、植物防疫官派遣を要請しても、十分な数だけ日本から派遣してもらえないのではと懸念する。

蒸熱処理については、タイの専門家も日本で研修を受け、日本の機械を使っており、昭和61年以来十分経験を積んでいる。したがってタイ当局で十分管理できるので、検疫証明書にコンピュータによる温度の記録を添付してそれを確認することとし、平成9年からは、タイの専門家だけによる蒸熱処理の管理を行うこととすべきである。

○ 検討結果

所管省は、タイ側で将来において施設の増加等があっても業務に見合う日本側植物防疫官の派遣を行う用意があるとしているが、それに加えて以下のような対応をとるべきである。

(1) 所管省はタイ側と現場で技術者同士の話し合いをしているというが、タイ側と所管省には現場であったとされる問題事例等に係る事実認識の違いがあり、また他国におけるタイ産マンゴウの受け入れの条件についても認識の違いがあるので、まずきちんと事実の確認をすべきである。

(2) 蒸熱処理による完全殺虫技術は、我が国専門家の技術協力の結果開発されたものであり、タイ側の技術者もまた我が国で研修を受けているので、蒸熱処理については、日本側植物防疫官による確認を不要とすることの可能性及びそのための条件(例えば適切な設備と研修を受けた技術者の配置)について、上記の事実確認を含め、日・タイ間で早急に話し合いを行うべきである。

(3) 費用の問題については、たとえ派遣するにしてもその滞在期間を全体として短くする等の簡素化を行う等、タイ側の負担軽減の可能性及びそのための方策について、日・タイ間で早急に話し合いを行うべきである。


OTO対策本部決定(平成8年3月26日) [報告書] [フォローアップ]

1-(1) 輸出前の生果実の蒸熱処理のための植物防疫官の派遣

タイ側で将来マンゴウの処理施設の増加等があっても業務に見合う日本側植物防疫官の派遣を行うとともに、以下の対応をとる。

(1) 蒸熱処理については、現場であったとされる問題事例等に係る事実確認をまず行うとともに、日本側植物防疫官による確認を不要とすることの可能性及びそのための条件(例えば適切な設備と研修を受けた技術者の配置)について、日・タイ間で早急に話し合いを行う。

(2) 費用の問題については、たとえ派遣するにしてもその滞在期間を全体として短くする等の簡素化を行う等、タイ側の負担軽減の可能性及びそのための方策について、日・タイ間で早急に話し合いを行う。


フォローアップ(平成9年5月12日) [報告書] [本部決定]

1-(1) 輸出前の生果実の蒸熱処理のための植物防疫官の派遣

日・タイ経済協議農産物専門家会合(平成8年4月26日)等において、以下の対応がなされた。

(1) 現場であったとされる問題事例については、基本的であるが重要な技術的措置の実施に問題があったこと、具体的には温度センサーの調整の不備、施設における開孔部の締め切りの措置の不備等の事実があったことを確認した。

(2) タイ側も蒸熱処理施設の維持管理に問題があったことについては認識しているため、日本側植物防疫官の派遣の必要性を認めた。

(3) 費用の問題については、両国の連絡を密にし、日本側植物防疫官の必要最小限の滞在日数を設定することにより、両国が合意し、タイ側の負担軽減を図っているところである。