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市場開放問題苦情処理推進会議第3回報告書(平成8年3月18日) [本部決定] [フォローアップ]

5-(2) 海外建設資材の品質審査・証明事業の改善

○ 問題提起者:韓国貿易協会

○ 所管省庁:建設省

○ 問題の背景

我が国の公共工事では、仕様書又は設計図面により、その工事で使用する材料の品質が規定されるため、これに適合した材料でなければ当該工事で使用することはできない こととなっている。

建設省及び建設省関係公団が発注する土木工事では、それぞれの発注機関の「土木工事共通仕様書」において、主な材料についての品質が各品目に対応する規格(JIS等)又はこれと同等以上のものでなければならないという形で規定されている。

「海外建設資材品質審査・証明事業」は、海外で生産された建設資材を国内の建設市場において使用する場合の品質確認手続きを適正かつ迅速に行い、建設生産物の良質な品質確保を図りつつ、海外資材の円滑な活用に資するため、土木工事共通仕様書で定める材料品質の規定に適合するか否かの確認を、発注者に代わって審査証明機関((財)土木研究センター及び建材試験センター)が行うものである。工事施工者は、審査証明機関によって事前に発行された証明書を発注者に提出することにより、当該資材の使用が認められることになる。

本事業は、平成5年6月から試行されていたが、平成6年6月には、建設費の内外価格差の縮小や規制緩和の促進等の要請に応え、海外資材をより一層積極的に活用していくために、

1) 試行期間中は特定の工事での使用に対する証明に限定されていたものを、使用する工事を特定することなく当該資材の品質について証明し、証明の有効期間(1年間)内であれば複数工事について使用可能とする、
2) 試行期間中は品質審査証明の申請者は当該工事の施工者に限定されていたものを、当該建設資材の製造者、工事施工者又は製造者の委任を受けた代理人でも申請可能とする、
3) 試行期間中、対象品目は、JISで定めるセメント、鋼材等の中で指定した18品目に限定していたが、これを39品目に拡大し、また、39品目以外でも申請があれば、基本的には土木工事共通仕様書で品質を定めるすべての材料を対象とすることとする、
4) 試行期間中は申込料及び審査証明料併せて1品目当たり100 万円だったものを50万円に引き下げる

等の改正を行った。

審査内容は、品質性能の審査、品質管理体制の審査、輸送・保管体制の審査となっている。

○ 問題提起内容

(1) 海外建設資材の品質審査証明事業は、海外で生産された建設資材の使用が円滑に行われることを目的として導入されたもので、望ましい制度であると考えられる。

しかし、同審査は、ISO認証(9000シリーズ)を取得している企業と取得していない企業の区別なく運用されており、ISO認証を取得している企業の場合、提出資料はISO認証の際の提出資料とほとんど重複している。そこで、ISO認証を取得した企業の製品に限っては、海外建設資材の品質審査を不要とし、同審査で証明を受けたものと同等に取り扱うべきである。

(2) 同審査証明の有効期間は1年間だが、公共工事は期間の長いものが多いので、同一の建設資材に対して毎年審査証明を更新しなければならず、負担となっている。セメント等の建設資材は農産物等のように商品毎に品質が異なるというものではなく、同一工場においては同品質の規格商品であるので、これを毎年再審査するというのは人的、物的な無駄である。したがって、同審査証明の有効期間を現行の1年間から5年間以上あるいは公共工事の平均期間まで延長すべきである。

(3) 同審査に必要な経費(審査料金50万円、更新料金10万円)も過大であるので、審査料金を引き下げるべきである。

○ 検討結果

公共工事は国をはじめとする公共発注機関が調達者であるので、外国企業の参入が困難であるとの批判が外国から寄せられることのないよう自ら範を示さねばならない。このような点から考えても、本審査証明事業の改善を図り、その利用を促進することは極めて重要である。このことは同時に、資材の品質を確保した上で、海外の安い資材を受け入れることを通じて、公共工事のコストの引下げにも資するものであることから、所管省においては以下の点につき前向きに取り組むべきである。

(1) 所管省においては、ISO9000シリーズの認証は、認証された企業又は工場の品質管理体制等を保証するものであり、これが直接、その企業又は工場において生産される個々の製品がそれぞれに定められた規格を満足することを意味するものではないため、同認証取得の如何に関わらず、海外建設資材の品質審査証明は基本的に必要であるが、ISO認証取得企業の製品については、本審査証明事業の審査項目のうち、品質管理体制に関係する部分を省略している。しかし、今後更に審査内容を精査し、本審査証明事業とISO認証とで審査内容が重複する項目の有無については、平成8年度の早期に更に検討し、審査を省略できるものについては省略すべきである。

また、所管省においては、セメントのように、JIS規格は存在するがJIS製品として生産・納入されない製品については、JIS規格又は同等以上の品質であることを証明するミルシート(品質保証書)を添付して提出すれば、必ずしも所定の品質審査証明を行わなくても国内産と同様に使用に付すことができる旨を平成7年9月に各関係機関に周知し、国内産資材の取扱いとの整合化を図ったところである。こうした手続きの簡素化については工事施工者にも周知を図ることは重要である。

(2) 品質審査証明の有効期間については、工業製品のように品質の安定した建設資材については、JISの改定等により公共工事で使用すべき資材の品質性能を変更する場合等特段の事情がない限り、毎年審査を行うことの意味は薄いと考えられるので、可能な限り延長すべきである。所管省においては、今回の問題提起を受けて、平成8年度より、同証明の有効期間を、現在の1年から3年程度に延長する方向で検討している。

(3) 審査料金については、審査証明機関の公益法人としての役割にも鑑み、外国企業の参入を促進するために最小限の必要経費を計上するという観点に立った引下げが必要である。特に、審査項目が省略されるISO9000シリーズ認証取得企業の製品については、当該省略に応じ、更に引き下げるべきである。所管省においては、今回の問題提起を受けて、このような観点に立って平成8年度より審査料金を最大4割程度引き下げる方向で検討している。

こうした対応を通じて、同審査証明事業の一層の活用が図られ、公共工事への外国企業の参入が促進されることが期待される。


OTO対策本部決定(平成8年3月26日) [報告書] [フォローアップ]

5-(2) 海外建設資材の品質審査・証明事業の改善

海外建設資材の品質審査・証明事業とISO認証とで審査内容が重複する項目の有無について平成8年度早期に更に検討し、審査を省略できるものについては省略する。

平成8年度より品質審査証明の有効期間を現在の1年から3年程度に延長し、審査料金については最大4割程度引き下げる。


フォローアップ(平成9年5月12日) [報告書] [本部決定]

5-(2) 海外建設資材の品質審査・証明事業の改善

海外建設資材の品質審査・証明事業とISO認証とで審査内容が重複する項目の有無について検討し、ISO9000シリーズの認証を得ている工場の場合は製造管理、品質管理等の項目については審査を省略することとした。

また、品質審査証明の有効期間を1年から3年に延長し、審査料金を最大4割引き下げることとした(海外建設資材品質審査・証明要領の改正平成8年9月27日施行)。