OTOデータベース HOME

市場開放問題苦情処理推進会議第3回報告書(平成8年3月18日) [本部決定] [フォローアップ]

6-(3) 上陸審査基準等の見直し

○ 問題提起者:駐日フランス大使館

○ 所管省庁:法務省

○ 問題の背景

(1) 我が国に入国・在留している外国人は、出入国管理及び難民認定法に定める在留資格のいずれか一つを付与されており、個々の在留資格に応じてどういう外国人が該当するか、あるいはどういう活動を行うことができるのかを法令により明確に定めている。一般的に企業が我が国に進出するためには、初めに日本国内に事務所を開設する方法があるが、それらの事務所において外国人が就労しようとする場合には「投資・経営」、「研究」、「技術」、「人文知識・国際業務」、「企業内転勤」等の在留資格が考えられる。

1)「投資・経営」の在留資格が付与されるためには、事業所として使用する施設が本邦に確保され、かつ2名以上の常勤職員が従事している事業の経営又は管理に従事すること等が前提となっている。
2)「研究」、「技術」、「人文知識・国際業務」の在留資格が付与されるためには、本邦の公私の機関との契約に基づいて就労すること等が前提であり、例えば外国本社との契約に基づく就労は認められない。
3)「企業内転勤」の在留資格が付与されるためには、外国にある本社、支社等において1年以上在籍している者が我が国の本社、支社に転勤の形態により就労すること等が前提となっている。

上記の資格においては、外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合には月額25万円以上の、その他の業務に従事する場合には日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受ける必要がある。

(2) なお、「短期滞在」の在留資格が付与された場合には、本邦に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類する活動が可能である。この中では、外国にある会社等の職員が本国から報酬を受けつつ、契約交渉、取引の立会、調印、本邦にある本店、支店営業所等との連絡等の活動を行うことは認められるが、本邦で収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動は認められない。また、滞在期間は90日間となっている。

(3) 我が国に在留中の外国人は、その有する在留資格の変更を受けることができる。この場合、法務大臣は在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。

(参考)
対日投資促進のため、平成5年に通産省等の支援により「(株)対日投資サポートサービス(FIND)」が開設された。また同年、赤坂ツインタワービル内に「ビジネスサポートセンター」が開設され、ここでは対日輸出等の活動の拠点となるオフィスの提供、コンサルテーション、ビジネスセミナーや研修、商談の場の提供等を行っている。

○ 問題提起内容

フランスの有名な会社が大阪に代表事務所を開こうとした。そこで、技術面にも言語面にも精通した在日フランス人を代表者に任命したところ、そのフランス人がそれまで有していた在留資格が切れ、「人文知識・国際業務」への在留資格の変更が認められなかったために、日本に在留できなくなった。

一旦帰国したフランス人は、再来日に際して「技術」の在留資格で申請したところ、また認められなかった。

理由は、本件申請がフランスにある本社との契約に基づくものであることから、「技術」、「人文知識・国際業務」の在留資格を付与するための要件である「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う活動」とは認められなかったためである。

このような在留資格の認定に係る問題が、フランスの企業から大使館へ出されることは多い。事務所の開設は日本への投資の第一歩であり、このようなケースでの在留資格の審査内容、基準等については、現行法の解釈により出来る限り柔軟に対応すべきである。

○ 検討結果

我が国は今日では対日投資を拡大することが基本的な方針となっており、対日投資に対する種々の阻害要因を撤廃して行く必要がある。

所管省によれば「短期滞在」の在留資格を得て我が国に在留した上で代表事務所を開設することは可能とのことであるが、その後の在留資格変更はやむを得ない特別な事情に基づくものに限られること、「短期滞在」の在留期間は90日間に限られること、本邦で報酬を得る活動ができないこと等の制約がある。

このため、本件のように外国人が我が国に新たに企業を設立しようとする場合に、その代表者等に在留資格を与える、又は、在留資格の変更を認めることが困難という現状は改めるべきである。就労を目的とする外国人の受入れについて政策的に一定の制限を設けることは必要とはいえ、在留資格該当性及び上陸審査基準をより透明性の高いものとするため、規定の解釈等を明確に示すべきである。また、本件のように、外国人が外国企業との契約に基づいて、健全な経済活動を行うことを目的として、日本国内に新たに事務所等を開設しようとする際に、現行法令の運用の見直し等により、在留資格を与える(在留資格の変更を認める)方向で改善策を講ずるべきである。


OTO対策本部決定(平成8年3月26日) [報告書] [フォローアップ]

6-(3) 上陸審査基準等の見直し

外国人が我が国に入国・在留する際の在留資格該当性及び上陸審査基準をより透明性の高いものとするため、規定の解釈等を明確に示す。また、外国人が外国企業との契約に基づいて、健全な経済活動を行うことを目的として、日本国内に新たに事務所等を開設しようとする際に、現行法令の運用の見直し等により、当該外国人に在留資格を付与する(在留資格の変更を認める)方向で改善策を講ずる。


フォローアップ(平成9年5月12日) [報告書] [本部決定]

6-(3) 上陸審査基準等の見直し

今回提起された案件については、平成8年5月に「企業内転勤」(在留期間1年)の在留資格への変更を許可した。

在留資格及び基準の解釈を明確に示すことについては、既に一部の在留資格(「興行」「就学」)に関して対外的な広報を行っているところ、今後インターネット等のメディアを活用しつつ入国・在留手続を含めた形で分かりやすい広報に努め、平成9年秋を目途に順次実施する。

また、我が国に新たに事務所等を開設したことを理由とした入国・在留許可に係る審査処理に関しては、事業内容や規模等を総合的に勘案しかつ在留画策の手段として悪用されないよう留意しつつ、本件と同様の事情が認められるものについて、個別に地方入国管理局から法務省本省に案件を進達させた上で、個別に許否を判断するような形で柔軟な対応を行うこととしている。