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市場開放問題苦情処理推進会議第3回報告書(平成8年3月18日)

2-(2) 医療用具の輸入手続の簡素化

○ 所管省庁:厚生省

○ 問題提起内容

(1) 米国製機器の輸入の際、米国FDA(食品医薬品庁)の許可取得済であっても治験薬事許可の手続を要求される。治験には多額のコストと時間がかかるためFDA許可のものはFDA書類及び現地での治療データの確認のみとすべき。

(2) 眼鏡レンズを輸入する場合、医療用具輸入品目許可申請書を提出後許可までに約6か月かかり、また国名及び製造業者が変われば追加申請で更に2〜3か月かかる。外国では必要なかったり、あっても非常に簡単な手続で済むようである。医療用具申請手続の簡素化をすべき。

(3) 国内で薬事承認済の承認番号のあるものは、その承認を取った輸入販売業者しか輸入できない。一定の薬事承認への見返りを払うことで、輸入品の販売許可をとった業者或いはその他の要件を満たした者に、並行輸入を許可すべき。

医療機器の輸入販売業の許可を得ている会社が、すでに承認を受けている製品の他社承認番号を税関に示すことにより、当該製品を通関し、販売することができるようにすべき。

また、今まで他社から購入していたのと同一の製品を、自社で輸入し、従来と同様に自社製品と組み合わせる場合、組合せ機器としての承認を取り直さなくても済むようにすべき。

○ 所管省庁における対処方針

(1) 外国で実施された医療用具の臨床試験成績の取扱いについては、昭和60年6月の厚生省薬務局長通知「外国で実施された医薬品等の臨床試験データの取扱いについて」に示されているとおり、外国臨床試験データの受入れの要件に合致していれば、「生体に移植して利用されるもので生体適合性に影響を及ぼすような医療用具」以外の医療用具については、申請の際に外国での臨床試験成績資料を審査資料として受け入れている。(国内の臨床試験データを補完データとして求めていない。)

本件は、MRI(核磁気共鳴映像診断装置)及びCTスキャナーに係る事例であり、これらは「生体に移植して利用される」ものではなく、上記通知により外国での臨床試験成績資料のみの添付で差し支えないものである。

(2) 医療用具輸入販売業者が新たに眼鏡レンズ等を輸入する際、薬事法第14条に基づく承認及び第18条に基づく品目追加許可が必要である。承認及び品目追加許可は通例同時に処理し、要する標準的事務処理期間は4月である。

医療用具で厚生大臣が指定する日本標準規格(JIS)に適合するものは、上述の承認が不要であり(薬事法施行規則第18条)、眼鏡レンズの場合はほとんどがJIS適合品で承認は不要である。この場合、品目追加許可は必要であるが、要する期間は3月程度である。

なお、本件に係る事例は昭和63年にJIS規格が制定され、輸入手続の簡素化が図られる以前のことである。

また、品目追加許可申請においては、輸入先国名、製造業者名の記載を求めているが、その変更は昭和60年の省令改正により、届出事項に改められており(薬事法施行規則第26条の17)、製造業者名のみの変更であるなら、届出のみを要した事例であったと考えられる。

上記のように、本件については、既に、省令改正等により、解決されていると考える。

(3) 医療用具の輸入販売業者が輸入承認を取得することで、医療用具の輸入販売は可能である。

また、この承認又は許可の申請に係る医療用具が並行輸入品であることを理由に承認又は許可を与えないことはない。これまでにも、並行輸入医療用具は承認・許可され、輸入販売されている。

他社が承認を取得した物についても承認が必要なことについては次のように考えている。

承認を取得した製造(輸入販売)業者は、市販後においても、当該医療用具について、保健衛生上の観点から

1) 国内出荷時の試験検査等による品質確保の実施
2) 使用者等に対する製品の使用方法の指導・訓練等の実施
3) 使用者に対する事故等安全性情報の提供
4) 副作用等の情報の収集、厚生大臣への報告

等の行為を適正に遂行しなければならないこととなっている。(薬事法第65条、第69条及び第77条の3)。

これら業務の履行は、当該用具に適切な試験法及び基準値の設定、当該用具の構造・機能・使用方法、保守点検・修理の方法、人体への有害作用等、当該医療用具の内容を熟知していなければ行い得ないものである。輸入の場合であれば、当然製造元から、当該医療用具について詳細な情報提供を受けていなければならず、承認審査に際してはその内容等を評価しているものである。

一方、輸入販売業許可は、人的・構造的要件を審査して与えるものであり、特定個別品目について熟知していることが要件ではない。逆に言うと、承認を有しない者が輸入を行うことは、上述の業務を適切に成し得ず国民が健康被害を被る可能性が小さくないと考えられる。

このように、医療用具の承認については、当該製品の保健衛生上のリスクマネージメントの観点からも、他社が承認を取得している場合にあっても必要であると考えている。

なお本件は、他社が承認を得ている製品をそのまま販売するのではなく、自社製品に組合せたいとのことであるが、このような場合、組合せ機器としての有効性及び安全性を評価しなければならないため、組合せ機器として、別途承認を取得する必要がある。

例えば、がん治療用放射線治療計画装置(病巣の状態を判断し照射線量を決定するための装置)を組合わせた装置の設計にあたっては、情報転送のためのフォーマット共通化、計画装置が放射線発生装置の適正な制御による目的部位への必要時間、必要線量等の照射を担保する必要がある、これが行われないと、患者は不必要な放射線被曝を受けることになる。

また、血液回路セットのように医療用具を組み合わせて一つの回路を組み立ててガス滅菌する場合には、個々の医療用具の滅菌に関する有効性及び安全性が確認できていたとしても、回路構成の複雑さから、組み合わせたものについても滅菌条件等を検討したうえで適正な滅菌がなされていることを確認する必要がある。

このように組み合わせて使用する医療用具の場合には、主にシステム安全等の立場から、そのものの有効性及び安全性を総合的に評価することが必要である。

また、他社から購入していたものと同一のものを自社で輸入し、従来と同様の方法で組合せ販売するにあたっては、当該組合せ製品の承認書の記載内容、医療用具の特質等詳細を承知しておらず、一概には言えないが、承認の変更手続を要しない場合もある。(他方、例えば現行承認書において、他社の承認番号を引用してこれに限り使用する旨記載されているのであれば、新たに自社で輸入するにあたっては、承認書の当該箇所の変更が必要である。)

このような具体的申請手続き等に関する相談業務を、従来、(財)医療機器センター及び厚生本省において、恒常的に行っているところであり、要すればご活用いただきたいと考えている。

(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
(1)、(2)に関して、「今回の対処方針に満足」