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市場開放問題苦情処理推進会議第4回報告書(平成9年3月17日) [本部決定]

1-(1) 農林水産省検疫と厚生省検疫の手続きの一元化

○ 問題提起者:東京商工会議所

○ 所管省庁:農林水産省、厚生省

○ 問題の背景

(1) 海外から輸入される偶蹄類の動物(牛、豚等)、馬、鶏等及びこれらの畜産物(以下「指定検疫物」)等については、これらを介して、我が国への家畜の伝染性疾病の侵入を防止するため、家畜伝染病予防法に基づき、農林水産省において輸入検査(動物検疫)を実施している。これら、指定検疫物の輸入にあたっては、同法第37条の規定により、輸出国政府機関より発行され、かつ、その検疫の結果家畜の伝染性疾病の病原体を広げるおそれのないことを確かめ、又は信じる旨を記載した検査証明書を添付してあるものでなければ輸入してはならないとされている。

(2) 食肉及び食肉製品の輸入に際しては、食品衛生法第5条の規定により、厚生省は疾病にかかっているかまたはへい死した獣畜等の肉の輸入等による食品衛生上の危害の発生を防止するため、輸出国政府が発行した衛生証明書を必ず添付することを求めている。この衛生証明書には、食品衛生法施行規則で食品衛生上確認が必要となる事項として、屠殺した年月、加工処理を行った年月等の記載を求めている。

(3) 上記のように、農林水産省の検査証明書は家畜の伝染性疾病の我が国への侵入を防止する観点から求めており、一方、厚生省の衛生証明書は、食品衛生確保の観点から求めるものである。

(4) また、食品衛生法第7条の規定に基づき、食肉製品の規格基準を定めており、生ハムについては、非加熱食肉製品の製造方法の基準に適合したものでなければ輸入することができない。この製造方法の基準においては、微生物による食品衛生上の危害の発生を防止する観点から、塩漬の際の塩分濃度を規定している。

○ 問題提起内容

フランス産食鳥肉、イタリア産生ハムの輸入に際し、最初に行われる農林水産省の動物検疫用衛生証明書が、厚生省が行う食品検疫の際に不備となることがある。

例えば部位ごとにカットされた肉とカットされていない肉が混載されている場合、食品検疫では加工処理日の証明が追加で要求される。また、生ハムについては塩分の濃度基準が厚生省のほうが厳しい。日本の縦割り行政に基づく輸入審査制度の違いが対外的に理解されないケースがあり、通関の遅れ又は積み戻しの原因となる。農水・厚生両省は、対外的に日本の国内法及び検疫制度のPRに努めるとともに両者で統一衛生(検査)証明書(health certificate)に同意すべき。

さらに、厚生省は、衛生証明書のフォームを各輸出国に提示し、輸出国に実行を要請すべきである。また、輸出国に対して、厚生省が衛生証明書に要求する事項がはっきり伝わっていないため、輸出国現場検査官に衛生証明書の様式及び各欄に記入すべき具体的記入例を見せて理解を求めるべきである。さらに、衛生証明書の記入事項を簡素化すべきである。

○ 検討結果

輸入検査手続については多数の省庁が関連する問題であり、それぞれの省庁において手続きの簡素化を図るのはもちろんのこと、相互に連携を図り、全体として簡素化・迅速化に努める必要がある。

所管省によれば、問題提起されたイタリア産生ハムについて、イタリア政府からの要求に対処するため、平成8年12月より農林水産省及び厚生省双方が求める基準を満たすよう両省で内部調整を行ったとのことであり、現在、この結果の受入れ及びイタリア政府が発行する検査証明書に当該事項を記載することの受入れについて、イタリア政府家畜衛生当局に提示しているところであり、これが受け入れられれば、当該衛生条件及び食品衛生に係る条件に沿った検査証明書は統一した証明書として我が国に提示されるとのことである。

(1) このような両省の前向きな姿勢は評価できるものであり、今後とも、関係省庁による協力をより積極的に推進し、関係国との二国間協議等を通じて日本の基準を説明し、証明書の記載事項が農林水産省及び厚生省双方が求める基準を満たす内容となるように努め、不都合がないようにすべきである。

(2) 厚生省は、衛生証明書の記載事項の不備を解消するため、輸出国に対して衛生証明書の記入事項の周知徹底を図るべきである。

(3) さらに、厚生省は、衛生証明書に記載される事項のうち、処理加工された食肉については、屠殺年月が判明している場合には、処理年月を不要とすることの検討を行うとしているが、こうした記載事項の簡素化についての検討は平成9年度までに結論を出し、速やかに実施すべきである。


OTO対策本部決定(平成9年3月25日) [報告書]

1-(1) 農林水産省検疫と厚生省検疫の手続きの一元化

(1) 農林水産省の動物検疫に係る検査証明書と厚生省の検疫に係る衛生証明書については、関係省庁による協力をより積極的に推進し、関係国との二国間協議等を通じて我が国の基準を説明し、証明書の記載事項が農林水産省及び厚生省双方が求める基準を満たす内容となるように努め、不都合がないようにする。

(2) 衛生証明書の記載事項の不備を解消するため、輸出国に対して衛生証明書の記入事項の周知徹底を図る。

(3) 衛生証明書に記載される事項のうち、処理加工された食肉については、屠殺年月が判明している場合には、処理年月を不要とすることの検討を早急に行う。さらに、こうした記載事項の簡素化についての検討は平成9年度までに結論を出し、速やかに実施する。