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市場開放問題苦情処理推進会議第4回報告書(平成9年3月17日) [本部決定]

3-(1) 内燃機関の承認の規制緩和

○ 問題提起者:在日米国商工会議所

○ 所管省庁:通商産業省

○ 問題の背景

非常用予備発電装置の設置に当たっては必要に応じ工事計画の事前届出が必要であるが、その際、届出がなされた設備が技術基準に合致している等の条件を満たしていない場合は、工事計画の変更又は廃止を命ぜられる(電気事業法第48条)。条件を満たしているかどうかの審査は届出を受けた通商産業省本省又は地方通産局が行う。

一方、(社)日本内燃力発電設備協会による自家用発電設備の認定制度が存在し、非常用予備発電装置についても対象となっているが、現行法令上は本制度による認定を受ける義務は明示されていない。かつては自家用発電設備について、通商産業大臣による使用前検査を受ける義務があり、協会の認定を受ければ使用前検査を免除する制度があったが、平成7年に電気事業法が改正され、非常用予備発電装置等については使用前検査の対象から外すという規制緩和が行われたところである。

協会の認定制度において用いられる認定基準は、通商産業省の技術基準をすべて網羅した上で、さらに細かい自主基準が存在する。また、通商産業省の技術基準は、日本国内における使用状況等を考慮して作成されており、国際的な基準であるISO等とは必ずしも整合性がない。

○ 問題提起内容

問題提起者から、非常用予備発電装置の設置について、以下のような問題提起があった。

通商産業省の技術基準の下では、非常用予備発電装置について、エンジンの型式や等級、発電機の型式、コントロールパネルの型式等の認証が求められている。これらの個々の認証を経た上で初めて装置のセットとして認められる。認証の際には、設計図や性能、販売歴、メーカーの品質管理や組織等の大量かつ詳細な書類が要求されている。一方、(社)日本内燃力発電設備協会という団体が存在し、この団体が設置している「自家発電設備認定委員会」という、通商産業省等の行政側も参加している委員会が発行する認定証を与えられている装置は、これらの手続を踏むことなく、ほとんど自動的に通商産業省の技術基準に適合するとの認定を受けると当方は理解している。民間においては協会の認定が法的なものと認識している顧客が多く、納入先の企業から強く求められた結果、協会の認定を受けると一筆入れないと契約できなかったほどである。したがって、同協会の認定を受けるべく手続を進めたが、実地検査を受けさせられ、協会の規格に適合させるために改造することになり、費用がかなりかかった。この費用は結局日本の消費者によって負担されなければならなくなる。

当方の装置は国際的な基準であるISO等に適合しており、日本以外のほとんどの国では、こうした国際的な基準に適合していれば追加的な試験や構造変更の必要がなく、自由に販売できる。国際的な基準を日本政府は受け入れるべきである。そうすれば、非日本企業にとって、日本市場において製品を販売したり品質や安全性を高めたりするのが簡単になり、また価格を抑えることもできるようになる。

○ 検討結果

我が国の規格・基準について国際的な基準への整合化を図ることは、自由な取引を促進し、かつ我が国制度の透明性を高めることから、今後とも推進する必要がある。所管省は、現行の国の技術基準について、保安上必要な性能のみで基準を定めるという基準の機能性化を図るべく、本年3月末を目途に検討を進めており、この基準は、JISの他、アメリカの技術基準であるASME(The American Society of Mechanical Engineers)にも適合させるとのことであるので、このことは評価できる。

民間において、主に安全の確保という観点から政府によって設定される技術基準とは別に、自主的な基準を設定することがあるが、このような基準は、規格の標準化によるコストダウンや品質の向上のほか、消費者の商品選択に資する有益な情報を提供するという可能性がある。しかしながら、それが国際的な基準と整合的でない場合は、国際的な基準に適合した外国製品を再度その基準に適合させることが必要となる結果、外国製品の輸入を阻害する障壁となり得るばかりでなく、政府による基準以上に外国人事業者からは透明性に欠けるものとなりかねない。さらに、政府が基準等の規制を緩和したとしても、民間団体が同種の基準を残し認定活動を行う場合、実質的に規制緩和の意義が失われ、輸入阻害要因となりうる。これは、高コスト構造是正や構造改革という観点からもマイナスである。こうしたメリット・デメリットを具体的に事例に即して検討することが重要である。

(社)日本内燃力発電設備協会(以下「協会」という。)が行う自家用発電設備の認定制度は協会の独自事業であり、その認定基準も協会独自のものがある。所管省によれば、協会の認定を受けなければ装置の設置ができないという法的規制はなく、また、協会の認定を受けたからといって、電気事業法に基づく技術基準に適合しているということが自動的に認められるということもないとのことである。しかしながら、民間取引においては、国の認定との関係について一部に誤解があるなど、依然として協会の認定が重要な役割を持っており、これが市場開放を阻害する要因になるおそれがある。

以上を踏まえ、所管省においては、以下の措置をとるべきである。

(1) 我が国の基準が国際的な基準と整合的であることは、市場アクセス改善のために必要であり、本年3月末までに、内燃機関に関する法令に基づく技術基準を、ISO等の国際的な基準に整合的なものにすべきである。

(2) 自家発電装置の需要者・供給者双方に、協会の認定制度は、法令や国の認定制度等と関係ないことを積極的にPRするとともに、認定制度を受ける法的義務があるような外観を作り出さないよう、協会に対して強力に指導すべきである。特に協会の紹介パンフレットについては平成9年6月までに改訂し、第三者に誤解を与えないようなものとすべきである。また、この認定がない製品を認めないという民間慣行が外国製品の輸入を妨げているようであれば、これを助長しないように努めるべきである。


OTO対策本部決定(平成9年3月25日) [報告書]

3-(1) 内燃機関の承認の規制緩和

(1) 平成9年3月末までに、電気事業法に基づく技術基準を、ISO等の国際的な基準に整合的なものにする。

(2) (社)日本内燃力発電設備協会の自家発電装置の認定制度は同法令や国の認定制度等と関係ないことを積極的にPRし、また、同協会の紹介パンフレットについては平成9年6月までに改訂すること等、認定制度を受ける法的義務があるような外観を作り出さないよう同協会を指導する。また、同協会の認定がない製品を認めないという民間慣行が外国製品の輸入を妨げているようであれば、これを助長しないように努める。