OTOデータベース HOME |
市場開放問題苦情処理推進会議第4回報告書(平成9年3月17日) |
![]() |
○ 問題提起者:在日米国商工会議所
○ 所管省庁:農林水産省
○ 問題の背景
日本国内では、漁業種類ごとに操業区域、操業期間、漁船の隻数・大きさ・性能等のルールを定め、水産資源の保護及び秩序ある漁業の維持を図っている。
農林水産大臣は、漁業調整その他公益上の見地から漁船の建造を調整する必要があると認めるときは、根拠地の属する都道府県の区域別又は動力漁船の種類別に漁業に従事する動力漁船の隻数若しくは合計総トン数の最高限度又は性能の基準を設定することとされている。(漁船法第3条)
漁船を建造、改造及び転用する場合、漁船法第3条の2により、農林水産大臣又は都道府県知事の許可が必要であり、漁船の推進機関に関しては、漁船法第3条の規定に基づき「動力漁船の性能の基準(昭和57年7月農林水産省告示)」が定められており、トン数別にエンジンの最高限度を定めている。
漁船法においては、シリンダの数及びボア(シリンダーの直径)に基づき算出される推進機関の馬力数を測定することとしており、具体的には漁船法施行規則で以下の算式が定められている。
漁船法における推進機関の馬力数 CDDN
C:シリンダ直径とピストンの行程との比によって定められる常数
D:ボア
N:シリンダ数
○ 問題提起内容
漁船法では、船体の大きさ及びそれに応じた推進機関の馬力数等についての規制がある。エンジニアリングの観点からはエンジンの性能はエンジンの回転数、空燃比(注1)、圧縮比(注2)等から決まる最大馬力や最大トルク(注3)で判断されるが、同法における推進機関の馬力数は、ボアと経験則に基づく計算から導き出される数値で表される。これは総排気量にかかわりなく、エンジンの行程(ストローク、注4)を長くすることを許すもので、日本のエンジンの実情に合致したものとなっている。諸外国では実際のエンジンの馬力、総排気量でエンジンの大きさを規定している。エンジンの技術が発展してきたので、すべてのエンジンメーカーは内外を問わず、物理的にボアが変わらなくても実際の馬力を増すことができているのが現状であるので、最低限、日本においても、実際の馬力が十分に反映される規制とし、それを明確に規定し公表すべきであり、電子制御あるいは総排気量に関連した工学的な基準で規制されるべきである。
○ 検討結果
水産資源の保護のために何らかの規制が必要だとしても、目的達成のために最も有効な手段を用いて規制すべきであり、また、その手段は外国人事業者にとって分かりやすく合理的なものでなければならない。所管省は水産資源保護のためには漁船用推進機関の出力を規制することが必要としている。しかし、出力の規制が必要な場合であっても漁船用推進機関の出力算定方法は、国際的整合性があり、また、可能な限り客観的・科学的データに基づいて策定されるべきである。
所管省では現在、漁船用推進機関の出力算定方法の見直しを進めているとのことであるが、その際には、以下の対応を取るべきである。
(1) 漁船の推進機関の出力算定方法については、出力を規制することの必要性を含め平成9年度中に見直すべきである。
(2) 実馬力による規制は法定検査後の変更が容易であるため採用していないとのことだが、諸外国においても同様の問題はあるはずである。したがって、平成9年度中に諸外国の制度を十分に研究し、国際的整合性のとれた規制を取るべきである。特に、総排気量は客観的な基準として活用できるはずであるので採用すべきである。
(3) 新たな基準の策定に当たっては、漁業団体及び漁船関係団体から意見を聴取するだけでなく、工学的な問題も含まれているので、できる限り幅広い関係者から意見を聴取する機会を設け、それらを踏まえた基準を策定するべきである。
OTO対策本部決定(平成9年3月25日) |
![]() |
(1) 漁船の推進機関の出力算定方法について、出力を規制することの必要性を含め平成9年度中に見直す。
(2) 平成9年度中に諸外国の制度を十分に研究し、特に、総排気量を客観的な基準として活用するなど国際的整合性のとれた規制とする。
(3) 新たな基準の策定に当たっては、漁業団体及び漁船関係団体から意見を聴取するだけでなく、工学的な問題も含まれているので、できる限り幅広い関係者から意見を聴取する機会を設け、それらを踏まえた基準を策定する。