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市場開放問題苦情処理推進会議第4回報告書(平成9年3月17日) [本部決定]

4-(2) 高速フェリー建造に係る提出書類の軽減・秘密保持の確保

○ 問題提起者:駐日オーストラリア大使館

○ 所管省庁:運輸省

○ 問題の背景

船舶整備公団(以下「公団」という)は、船舶及び港湾運送に関連する設備の整備等について、その資金の調達が困難である海上旅客運送事業者、海上貨物運送事業者、港湾運送事業者等に協力することにより、適正かつ円滑な海上運送及び港湾運送の確保に資することを目的としている。

公団は、財投資金を利用し海上旅客運送事業者(以下「事業者」という)と共有で国内旅客船を建造することにより、事業者の船舶整備に対し財政的及び技術的支援を行うことを主要な事業の一つとして、国内海運の近代化・合理化を推進している。

公団が事業者と共有で旅客船を建造する場合、当該旅客船に関する採算性及び技術的な妥当性、事業者の選定した建造造船所の技術的能力等を調査するとともに、公的資金を財源としているため、予定船価を定め、適正な建造契約が締結されるよう措置している。

共有制度のメリットとしては、共有方式であるため、公団の持分に対応する資金については担保が不要であり、公団が分担した建造資金については、事業者は船の耐用年数に合わせて長期間で返済することが可能である。事業者は、公団が分担した資金について共有期間を通じ元金均等割賦弁済方法で、毎月その元金及び利息を公団持分の「使用料」として公団に支払い、共有期間満了時に公団持分を残存簿価で買い取る。

なお、建造造船所については事業者が選定することを原則としており、事業者が希望すれば海外での建造も可能である。現在2隻の共有旅客船がオーストラリアで建造されている。

○ 問題提起内容

公団の方針、特に船会社に対して行うファイナンスに際しての方針が、日本市場への外国造船会社の参入の障壁になっている。公団から求められる情報は膨大なもので、かつ、技術や財務状況の詳細など企業の秘密に属するものにまで及び、これらの情報の秘密保持確保が不十分である。

この一因は、公団が行っている標準価格の積算にあるが、市場の船価は公団の標準価格を大きく下回っており、こうした積算は不必要である。また、契約条項には、交渉による変更の余地はなく、これは国際慣行に反する。さらに、公団は検査についても運輸省の保安検査に加えて、共同所有権者という理由で、品質保証のために公団の基準により船を検査している。

なお、公団の資料あるいは標準契約書等は全て日本文のみであるので、海外の造船会社が理解しやすいよう英文化をして欲しい。

公団は、日本の船舶購入手続きを見直して、通常の国際的な慣行に沿ったものにすべき。

○ 検討結果

国際的な相互依存関係の深化とともに、これまで主として国内事業者のみを対象としていた政府関係機関の事業についても、市場アクセスの改善という観点から国際的なビジネス慣行にのっとって事業や手続を見直すことが必要となっている。

公団は船舶の共有建造の発注において、従来から国内造船所と同一の競争条件の下で海外建造を受け入れており、共有建造に当たっては、建造造船所に技術資料、図面等の提出を求めていたとのことであるが、問題提起を受け、所管省の指導のもと、公団は提出書類の軽減・秘密保持の確保等の実務的かつ技術的な問題について、積極的に取り組み、問題提起内容を踏まえそれぞれ措置を講ずることにより解決を図ることとしている。こうした所管省及び公団の前向きな対応は、問題提起者からも国際的ビジネス慣行への整合化への努力として評価されているところである。

なお、契約書については、公団が標準契約書の見直しを実施しているとのことであり、その改訂に際しては国内の造船所と同様に海外の造船業者からの意見も参考にするとともに、その英訳についても、同種の事業を行う他の政府関係機関の例も参考に積極的に対応し、海外造船所の便宜を図るべきである。


OTO対策本部決定(平成9年3月25日) [報告書]

4-(2) 高速フェリー建造に係る提出書類の軽減・秘密保持の確保

船舶整備公団における船舶の共有建造に際し、提出書類の軽減・秘密保持の確保等の実務的かつ技術的な問題について、国際的ビジネス慣行への整合化のために必要な措置を講じる。さらに、公団の標準契約書の改訂に際しては、国内の造船所と同様に海外の造船業者からの意見も参考にするとともに、その英訳についても、同種の事業を行う他の政府関係機関の例も参考に積極的に対応し、海外造船所の便宜を図る。