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市場開放問題苦情処理推進会議第4回報告書(平成9年3月17日) [本部決定]

6-(1) マイクロフィルムによる文書保存の規制緩和

○ 問題提起者:在日米国商工会議所

○ 所管省庁:大蔵省

○ 問題の背景

税法上の記帳義務と帳簿書類の保存義務は、申告納税制度の下で適正・公平な課税を担保するために必要なものとされているが、例えば、青色申告法人は所定の帳簿書類を備え付け、これにその取引を記録し、かつ、その帳簿書類を、脱税の場合の更正、決定等の期間制限と同期間の7年間にわたって保存しなければならないこととされている(法人税法第126条、同法施行規則第59条第1項)。

この期間は、昭和56年度の税制改正において、従来5年と定められていた期間が7年に延長されたものであるが、その延長された2年間(6、7年目)については、一定の要件を満たしたマイクロフィルムによる保存が認められている(法人税法施行規則第59条第5項、大蔵省告示「法人税法施行規則第59条第5項に規定する保存の方法」)。

マイクロフィルム等による文書保存については、近年の情報化の進展に対応し、各省庁とも所管する法令の改正や解釈通達等で措置し又は措置することの検討を進めているところである。規制緩和推進計画においても、総論として高度情報通信社会推進本部制度見直し作業部会等の検討結果を踏まえて所要の規制緩和措置を実施することが盛り込まれており、当該部会の報告書(平成8年6月)においては電子データ(マイクロフィルムもこれに準じて扱うとしている。)による保存については、「特に周到な検討を要する場合も、平成9年度末までに右検討を了し、できるかぎり速やかに所要の措置(法改正が必要なものについては、法案を提出)をとる」とされている。

○ 問題提起内容

問題提起者から、マイクロフィルムによる文書保存について、以下のような問題提起があった。

法人税法は、税務関係書類の7年間の保存を義務づけており、6年目と7年目はマイクロフィルムによる保存を認めているが、最初の5年間はオリジナルの書類により保存しなければならない。商法、民事訴訟法においても税務関係書類の保管が義務付けられているが、共に全期間マイクロフィルムによる保存が認められている。また、通商産業省、労働省等においても、書類保管期間を設けているが、全期間マイクロフィルム等による保管を認めている。

アメリカ等他の先進国においては、マイクロフィルムは裁判上の証拠として使用が認められているため、結果として政府や商業上の書類の保存にマイクロフィルムが使用される。特にアメリカにおいては、1949年に定められた連邦法により、マイクロフィルムについては、原本が普通の方法で作成されたこと、コピーが通常の方法で作成されたこと、コピーが正確に再現されること、コピーが十分に原本と同一であると認められることが確認されれば、いかなる裁判・行政手続においても証拠物件に用いることを認めている。州政府においても同様の内容を持つ法を規定しているところが多い。

政府の規制緩和により、商取引に関する帳簿書類の保存規制は緩和されつつあるが、法人税法による緩和が認められない限り合理化が進まない現状にある。他省庁はマイクロフィルムの安全性、信頼性、効率を認めており、法人税法においても、マイクロフィルムによる保存を認めるべき。

○ 検討結果

政府による規制は、技術革新に応じて随時見直す必要がある。特に、現在、情報・通信技術の進歩には著しいものがあり、規制制定当時とは事情が大きく異なるものもあることから、諸制度の目的に配意しつつ、見直しを行う必要がある。諸外国においては技術革新の成果を取り入れた規制となっている一方、我が国において旧来の規制となっている場合には、輸入や対日投資といった面で市場アクセスの障害となることもあり得る。本件についても、文書保存技術が進歩した現在、海外の規制においてはこうした技術革新の成果が取り入れられていることにかんがみ、我が国において、文書保存についてこれまでの規制を続けることは、外国企業から見ても経済活動を妨げるものと見なされる可能性があり、国際的に魅力ある事業環境の整備あるいは対日投資の促進の観点からは好ましくないことから、帳簿保存の制度目的にも配意しつつ、早急に対応すべきである。

所管省庁(国税庁)においては、昨年7月に税法上の帳簿書類の保存等の在り方について研究会を発足させ、電子データによる保存について、どのような条件とすべきか等につき検討を進めており、本年3月末に報告書を出すということである。マイクロフィルムによる文書保存の問題については、この検討結果を勘案しつつ、今後検討を進めるとのことであるが、上記の観点から、所管省庁においては以下の方向で措置すべきである。

(1) 税法上保存義務がある帳簿等については、経済全体のコストベネフィットも考慮し、電子データによる保存を容認する場合の条件を勘案しつつ、税負担の公平確保の観点から必要な条件等の検討を行い、保存すべき全期間においてマイクロフィルムによる保存を認める。

(2) そのために法律改正が必要であるとしても、平成9年度中に、措置のための全ての手続を終わらせる。


OTO対策本部決定(平成9年3月25日) [報告書]

6-(1) マイクロフィルムによる文書保存の規制緩和

税法上保存義務がある帳簿等については、帳簿保存の制度目的に配意の上、経済全体のコストベネフィットも考慮し、電子データによる保存を容認する場合の条件を勘案しつつ、税負担の公平確保の観点から必要な条件等の検討を行い、保存すべき全期間においてマイクロフィルムによる保存を認める方向で措置する。また、平成9年度中に措置のための全ての手続きを終わらせる方向で措置する。