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市場開放問題苦情処理推進会議第4回報告書(平成9年3月17日)

1-(2) 植物検疫制度の簡素化・明確化

○ 問題提起者:日本貿易会、東京商工会議所

○ 所管省庁:農林水産省

○ 問題提起内容

(1) 生鮮青果物の輸入通関時に検査を受けるが、日本にも存在する害虫も対象とされている。植物防疫法では、全ての病害虫が対象となっているが日本にも存在する虫を燻蒸により殺虫する必要はないと思われるので、植物防疫法の対象害虫を見直し、現実に即したものにしてほしい。

また、輸入通関手続に時間がかかり、コストの増加を伴い、余分な燻蒸のため品質劣化を招いているので、輸入通関手続を簡素化すべき。

(2) 日米間で燻蒸方法を統一しているにもかかわらず、米国で燻蒸してきたものを日本で検査したり、日本から検査官を派遣し現地でサインまでしているものでも日本到着後再度検査する等、全く意味がないと思われる検査が多い。例えば、臭化メチルの場合、米国農務省(USDA)のオフィサーの証明サイン付き書類が添付されていても日本到着後検査をし、一方燻蒸無しで来て日本で燻蒸した場合は燻蒸後に一切検査をしないといった不公平な扱いがなされている。燻蒸条件(方法)が厳格に守られておらず、温度も計らず燻蒸倉庫に入れさせられ高い費用だけ取られることもある。外国で日本の農林水産省が認めた燻蒸方法で行われたもので証明書が添付されているものは、日本でもフリーパスとすべき。

(3) 燻蒸費用の取り決めが細かすぎて、担当者でも細かい説明ができないケースがあるので、細分化された燻蒸費用をできるだけ簡素化すべき。また、燻蒸費用も高すぎるので、業者についても、複数の燻蒸業者を認可すべき。

○ 所管省庁における対処方針

(1) 「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」(SPS協定)を受けて、平成7年10月にFAOにおいて採択された各国の検疫対象病害虫を具体的に決定するための病害虫の危険度評価(PRA)に関する国際基準(ガイドライン)を踏まえて、我が国の実態に応じた病害虫の危険度評価(PRA)の在り方について検討し、この検討結果に基づき検疫措置を決定することとし、平成8年6月に植物防疫法の一部改正を行った。

検疫の対象となる病害虫については、現在は植物を加害する全ての病害虫を対象としているが、この改正により、今後は、我が国に侵入・まん延して有用な植物に損害を与えるおそれのある病害虫であって、次のいずれかに該当するものを「検疫有害動植物」として新たに定め検疫の対象とすることとなった。

1) 国内に存在することが確認されていないもの。
2) 既に国内の一部に存在しているが、国により発生予察事業その他防除に関して必要な措置が取られているもの。

なお、植物検疫の輸入検査手続については、これまでも関係者等の要望を踏まえ、輸入状況等を勘案しながら執務時間の延長等を行っている。

また、植物検疫手続の電算システム化及び当該システムと通関手続の電算システムとのインターフェイス化の推進により、輸入手続全体の迅速化を図ることとして作業を進めているところで、平成9年度中の供用開始に向けて現在機器の導入等を行っている。

(2) 我が国は、コドリンガ等農業生産に重大な被害を及ぼし、果実の内部に食入する等水際での検査において発見することが困難な病害虫の寄主植物の輸入を禁止しているが、米国産サクランボ及びリンゴのように、輸出国においてこれらの病害虫を完全に殺虫・殺菌できる技術が開発された場合には、輸出国における当該消毒等の実施を条件に輸入を解禁している。

一方、輸入禁止対象病害虫の寄主植物ではない米国産イチゴのような植物については、輸出国での消毒は義務づけていない。

輸入解禁条件の一つとして、輸出国で実施される消毒は、コドリンガ等輸入禁止対象病害虫の対象としたもので、すべての病害虫を殺虫・殺菌できるものではないため、輸入禁止対象病害虫以外の病害虫については、その有無を輸入時に検査する必要がある。

輸入される植物は、輸出国での消毒の有無にかかわらず、輸入検査が行われ、検査の結果、病害虫が発見されなければ、直ちに輸入が認められることになり、病害虫が発見された場合には、消毒を実施した後、輸入が認められることとなっている。

また、日本側植物防疫官が現地において行っているサインは、輸入禁止対象病害虫の侵入防止を図るために、輸出国との間で合意された植物検疫措置が輸出国植物防疫機関により適正に実施されたことを確認した旨を証明するためのものであり、輸入禁止対象病害虫以外の病害虫が存在しないことまで証明するものではない。

なお、輸入時の検査で発見された病害虫に対する燻蒸は、当該害虫の種類、消毒温度等に応じて薬量、消毒時間が定められており、その燻蒸基準は輸出国において輸入禁止病害虫に対して行われている消毒基準とは異なる。

(3) 輸入検査の結果、病害虫付着により不合格となり消毒を命じられた場合、輸入者は民間の燻蒸業者との商契約により消毒を実施することとなる。この際の燻蒸基準は、官報に公示されている。しかし、その金額の水準及び内容については、当事者間で取り決められるものであり、政府として関与すべき問題ではなく、また権限も有していない。

なお、燻蒸料金については、昨年度にも問題提起があり、当省では燻蒸関係業者と輸入者等関係者との意見交換の実施を促した。成田空港においては平成7年8月に話し合いが行われ、燻蒸料金について改善が図られたと聞いている。

また、燻蒸業者の数は制限していない。

(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
(1) に関して、「今回の対処方針に満足。」
(2) に関して、「当面はこの対処方針で了解。」