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市場開放問題苦情処理推進会議第5回報告書(平成10年3月17日) [本部決定] [フォローアップ]

5-(1) 建設業の許可等に係る規制緩和

○ 問題提起者:駐日欧州委員会代表部

○ 所管省庁:建設省

○ 問題の背景

(1) 建設業に係る制度の現状

建設工事の適正な施工の確保、発注者の保護及び建設業の健全な発展のため、軽微な工事のみを請け負うことを営業とする場合を除き、建設業を営もうとする者は、建設業の許可を受けるものとされている。(建設業法第1条、第3条)

1) 建設大臣の許可と都道府県知事の許可
二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて建設業を営もうとする者は建設大臣の、 一つの都道府県の区域にのみ営業所を設けて建設業を営もうとする者は当該都道府県知事の許可を得なければならない。

2) 一般建設業の許可と特定建設業の許可
発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部について、一定額以上となる下請契約を締結して施工しようとする者は特定建設業の許可をその他の者は一般建設業の許可を受けなければならない。

3) 業種別の許可制度
28の建設工事の種類ごとの業種別の許可制度が設けられている。

4) 建設業許可の有効期間
許可の有効期間は5年であり、許可の更新が必要(平成6年6月の建設業法改正で3年から延長)。

5) 許可の主な基準(建設業法第7条及び第15条)
1] 常勤役員のうち、少なくとも一人は、許可を受けようとする建設業について、経営業務の管理責任者として一定の経験が必要。(外国における経験者を同等以上の能力を有するものとして建設大臣が認定することができる。:建設業法第7条第1号ロ、第15条第1号)
2] 一定の資格又は実務経験等を有する専任技術者の設置。(外国における有資格者を同等以上の能力を有するものとして建設大臣が認定することができる。:建設業法第7条第2号ハ、第15条第2号ハ)
3] 請負契約の履行に関する不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
4] 請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用があること。

(2) 建築士に係る制度の現状

1) 外国の建築士免許を受けた者で、日本の建築士になろうとする者は、一級建築士については建設大臣が、二級又は木造建築士については都道府県知事が同等以上の資格を有する者と認める者は、建築士の試験を受けないで免許を受けることができることとされている(建築士法第4条第3項)。
2) なお、諸外国においても建築設計に係る資格制度を法又は民間制度として実施している例がほとんどである。しかしながら、日本のように外国の免許を取得した者に対する扱いを明示している例は少なく、二国間の相互承認により相互の資格の同等性を確認している例が多い。現在、各国の建築設計職能団体が相互承認を行うための基準づくりを行う動きがあり、日本の団体も参加している。

○ 問題提起内容

建設業の許可は、工事の種類ごとに28もの種類があり複雑な上に、特別な資格を持った従業員の雇用や、地方自治体が求める地方の営業所の設置等、それを維持するコストは高額である。また、一つの都道府県の区域のみに進出する場合には、都道府県知事から許可を得ればよいが、さらに他県等へ広域展開を行う場合には、もう一度、建設大臣許可を得直す必要があり煩雑である。

建築士資格取得の条件については、以前よりも改善されてきたが、依然として条件は厳しいままである。例えば、海外の同等の資格保有者に対する考慮もなく、建設省や地方自治体による日本語の試験に合格する必要がある。加えて、海外での業務経験に加えて3年間の日本での業務経験を求められる。

こうした現状を踏まえ、以下の措置を講ずべきである。

(1) 建設業の許可の種類の削減

(2) 建設業としての許可取得に係るコストの軽減

(3) 許可取得及び更新における手続の簡素化

(4) 欧州の建築の免許のうちいくつかの技術資格を日本の一級建築士と同等であると承認すること

○ 検討結果

(1) 建設業の許可

28業種区分のあり方については、本制度導入時から現在までの技術進歩にかんがみると、見直しを検討してもよい時期に差しかかっているといえる。また、現行制度において、建設業許可を受けた業種以外の業種に対応する工事であっても、一式工事における専門工事や付帯工事を請け負うことが可能であり、かつ、技術的要件を満たせば自らその施工を行うことも可能である。しかし、外国企業によっては、各業種の定義や一式工事、付帯工事の意味等がなじみにくく、これが対日投資意欲をそぐことにつながる可能性も考えられる。

他方、建設業の許可を得るためには営業所に必ず専任技術者を置かなければならないが、その専任技術者に必要な要件を満たすことができる資格が業種によっては共通している。したがって、建設業許可に関する現在の業種区分を関連業種ごとに大括りすることにより、実質的に許可の種類を減らすとともに、許可を簡素化することが可能であると考える。この点については、中央建設業審議会においても、業種区分のグループ化に向けた検討を行うべきという建議が示された(10年2月4日)。

そもそも、建設業許可のような市場への参入規制は、必要最小限のものに留める必要がある。さらに、市場メカニズムを通じた選別の観点から、建設業者の技術力等に関する情報を公開することも重要である。

以上を踏まえ、所管省としては、以下の対応をとるべきである。

1) 英文パンフレットの作成等により、建設業許可制度の仕組みに関する広報活動の強化を平成10年中に行うべきである。
2) 建設業許可における業種区分の見直しにつき、総合的な検討を行い、早期に結論を得るべきである。併せて、建設業者に関する情報の公開についても、検討を行うべきである。
3) 建設業の許可取得及び更新等における手続については、許可の一本化運用や、許可の有効期間の延長、許可の更新時等における添付書類の一部省略等、各般の簡素化が実施された点は評価できるが、更なる簡素化を検討すべきである。

(2) 建築士の認定

建築士法において、外国の建築士免許を受けた者が我が国において建築士として認められるための方法に関する規定が明示してある点は評価できる。しかしながら、その認定基準等運用基準が明文化されていない点は、外国からいわれのない批判を招く原因となりうる。例えば、問題提起者が見直しを求めている日本語による試験の必要性についても、所管省によれば、場合により外国語による論文提出も可能ということであるが、日本語試験免除の基準が所管省外に対して明確になっていない。

したがって、所管省においては、「行政の透明性の確保」という行政手続法の精神を活かし、以下の対応をとるべきである。

建築士法第4条第3項の運用基準を、平成10年中に作成・公表すべきである。


OTO対策本部決定(平成10年3月23日) [報告書] [フォローアップ]

5-(1) 建設業の許可に係る規制緩和

(1) 英文パンフレットの作成等により、建設業許可制度の仕組みに関する広報活動の強化を平成10年中に行う。

(2) 建設業許可における業種区分の見直しにつき、総合的な検討を行い、早期に結論を得る。併せて、建設業者に関する情報の公開についても、検討を行う。

(3) 建設業の許可取得及び更新等における手続の更なる簡素化を検討する。

5-(2) 建築士の認定基準の明確化

建築士法第4条第3項の運用基準を、平成10年中に作成・公表する。


フォローアップ(平成11年11月16日) [報告書] [本部決定]

5-(1) 建設業の許可等に係る規制緩和

(1) 建設業の許可に係る規制緩和

1) 建設業許可制度において業種区分を超えて契約可能な附帯工事及び一式工事の説明を含め解説した英文パンフレットを平成10年12月に作成し、外国企業に対し制度に対する正しい理解を促すこととした。
2) 平成11月3月、告示改正により、建設業許可において業種を実質的に区分している営業所専任技術者の資格要件について、技術的な共通性の強い業種間での実務経験年数の振替えを認める緩和措置を行った。また、建設業者の経営事項審査の結果について、平成10年7月1日以降の審査に係るものから公表を開始した。
3) 平成10年6月、省令改正により、経営事項審査の添付書類である工事経歴書について、許可申請書の添付書類又は毎営業年度終了後の届出として既に同一のものを提出している場合には、提出を省略できることとした。

(2) 建築士の認定基準の明確化

平成10年11月に建築士法第4条第3項の運用基準を作成・公表した。