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市場開放問題苦情処理推進会議第5回報告書(平成10年3月17日) [本部決定] [フォローアップ]

6-(1) JPNICによるインターネット・ドメインネームの登録方針の改善

○ 問題提起者:駐日オーストラリア大使館、在日オーストラリア・ニュージーランド 商業会議所

○ 所管省庁:郵政省

○ 問題の背景

(1) JPNICの設立

我が国のドメイン名の登録、割当事務等に関しては、民間団体である社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が一元的に行っている。

JPNICは、インターネットサービスプロバイダー及び学会の代表で構成されるJCRN(研究ネットワーク連合委員会)の支援により平成3年12月に設立されたJNICを前身として、平成5年3月に設立され、平成9年3月31日に郵政省、文部省、通商産業省、科学技術庁共管の社団法人として認められた。

(2) ドメイン名の登録要件

JPNICは、商標権に関わる問題の発生やドメイン名ブローカーの出現を未然に回避する目的で、ドメイン名の登録方針として、先願主義、一組織一ドメイン名、移転制限、地域関連性(日本国内で登記している企業等)の4点を挙げている。

また、必要に応じて、ドメイン名を登録する際に、登記簿謄本や代表者の印鑑証明といった身元を証明する書類の提出を求めることがある。

(3) 諸外国の登録要件等

オーストラリアにおいては、1企業に対して複数のドメイン名が認められていない。また、ドメイン名の登録申請には Business Registration の登録番号の記載が必要である。

ニュージーランドにおいては、複数のドメイン名が認められており、企業の所在地に関する制限もない。

○ 問題提起内容

(1) 一社につきドメイン名を一つに制限しているが、同一社内における各部署や各プロジェクト毎に独立したドメイン名を使用することが可能となるよう、一社につき複数のドメイン名を割り当てられるようにすべきである。

(2) 日本で登記されていない法人に対して、日本のドメイン名(www.….co.jp)は与えられていないが、未登記の外国企業に対しても日本のドメイン名を与えられるべきである。

(3) 競争原理の導入等によるJPNICの登録料金の引き下げ、申請システムのオンライン化による申請手続の簡素化を図るべきである。

○ 検討結果

ドメイン名登録申請の数に関する制約及び申請者の地域要件には、国際的に統一された運営方法が存在せず、先進国間においてもその運営方法が様々であることから、JPNICの運営方針が国際的にみて特に市場閉鎖的であるとは必ずしもいえない。また、ドメイン名登録申請手続については、オンライン登録申請が1991年12月より可能となっている。登録料は、国際的にみて高水準とはいえず、JPNICに直接登録する場合は現在2万円であるが、JPNIC会員であるインターネットサービスプロバイダーを通じた登録の場合は、各々の会員により登録料が設定されており、会員間で競争原理が働いているといえる。

しかしながら、米、英、独等、一組織複数ドメイン名や我が国よりも緩い地域要件を採用している国も既に多数存在することも考慮し、ドメイン名の登録方針の違いが、対日投資を含む我が国市場へのアクセスを阻害する可能性の有無についても留意すべきである。

JPNICのような公益法人については、民法上その業務が主務官庁の監督下にあり、必要な命令をすることができるとされており、本推進会議建議(平成9年6月18日)でも提言したとおり、たとえその内部方針であっても市場アクセスの観点から適切なものでなければ、主務官庁において所要の対応を行うべきである。

所管省としては、平成10年3月から、ドメイン名の管理のあり方について研究会を開催し、幅広い検討を開始しているとのことであるが、国際的動向を勘案しつつ市場アクセスや対日投資促進の観点からも検討し、平成10年中に結論を出すべきである。その上で必要があれば、JPNICに対しドメイン名の運営方針の改善を働きかけるべきである。


OTO対策本部決定(平成10年3月23日) [報告書] [フォローアップ]

6-(1) JPNICによるインターネット・ドメインネームの登録方針の改善

ドメイン名の管理のあり方について、国際的動向を勘案しつつ、市場アクセスや対日投資促進の観点からも検討し、平成10年中に結論を出す。その上で必要があれば、日本ネットワークインフォメーションセンター (JPNIC)に対しドメイン名の運営方針の改善を働きかける。


フォローアップ(平成11年11月16日) [報告書] [本部決定]

6-(1) JPNICによるインターネット・ドメインネームの登録方針の改善

平成10年3月より7月まで郵政省において「インターネット・ドメインネームに関する研究会」(座長:早稲田大学理工学部後藤滋樹教授)を開催し、ドメイン名管理のあり方について検討を行い、最終報告書「21世紀ドメインネームの新時代への展望」を発表した。
駐日オーストラリア大使館及び在日オーストラリア・ニュージーランド商工会議所より提出されていた、JPNICによるインターネット・ドメインネームの登録方針の改善要望についても同研究会において、市場アクセスや対日投資促進の観点から、外国企業の代表者を含む専門家による検討を行ったところであり、各要望に対する検討結果は以下のとおりである。

(1) 1社につき複数のドメイン名を割り当てるべきである。

○ 検討結果

早急な措置困難、引き続き検討。

一組織一ドメインの原則は、ドメインスペースの有効活用、商標に関するトラブルの未然防止等の観点から採用されているものであり、国際的に見ても、オーストラリアを含むOECD加盟国の半数以上が採用している。
提出要望のドメインネームを用いたマーケティング活動については、各企業のネットワークにおけるサブドメイン構造の採用等により対応可能であると考えられる。
JPNICにおいては、今後の登録方針の在り方について、「jpドメイン名グランドデザイン1999」を策定中であり、現在そのたたき台をJPNICウェブサイト(http://www.nic.ad.jp)において公表している。その中において、今後一組織が複数のドメイン名を登録できるようにする方向で検討を行っていく旨表明しているところ。

(2) 日本で登記されていない外国企業に対してもjpドメイン名を与えるべきである。

○ 検討結果

早急な措置困難、引き続き検討。

jpドメイン名の取得に際して、日本における登記を要求しているのは、jpドメインとgTLDの違いを明確にするため、何らかのローカルプレゼンスを求める必要があることによるものである。海外のユーザが多くのドメイン名を登録し、ドメインスペースの不足から日本のユーザが必要なドメイン名を登録しにくくなることは、jpドメイン名の趣旨に合致しないものである。
このような趣旨から、諸外国においても、ccTLDについては、オーストラリアを含む多くの国において、何らかのローカルプレゼンスをドメイン登録の要件としている例が多く見られ、日本だけが国際的に異質であるという主張は当てはまらない。
JPNICにおいては、「jpドメイン名グランドデザイン1999」のたたき台において、今後も何らかのローカルプレゼンスに関する要件は変更しないが、登記よりも簡易な条件を採用する方向で検討を行う旨表明しているところ。

(3) 競争原理の導入等によるJPNIC登録料の引き下げ、申請システムのオンライン化による申請手続の簡素化

○ 検討結果

一部事実誤認、一部引き続き検討。

jpドメインの登録業務については、すでにJPNIC会員のISP経由でも申請可能となっており、すでに競争が導入されている。
また、登録料についても、ISP経由の場合は、競争によりJPNICに直接申請した場合よりも低く設定されている。JPNICに直接申請した場合の登録料20,000円/件についても、コストに基づいて算定されたものであり、諸外国と比べても著しく高いものとはなっていない。ただし、登録時のみに徴収するという料金構造については、「JPドメイン名グランドデザイン1999」のたたき台において、gTLDや他のccTLDとは異なるものとなっているため、国際的な整合性を図る観点から、見直す方向で検討する旨表明しているところ。
申請システムのオンライン化については、すでに実現されているところ。

(注)

ccTLD:country code Top Level Domain
.jpなど、ISO-3166によって定義されている2文字の国コード(Country Code)に基づき設けられているTLD。当該国によって管理されている。
gTLD:generic Top Level Domain(一般トップレベルドメイン)
現在は.com、.net、.orgがこれにあたる。すなわち、居住地などに関わらず、誰でもSLDを取得することができるTLD。
TLD:Top Level Domain(トップレベルドメイン)
ドメインネームは階層構造になっているが、そのうちの最も上位にあたる部分のドメインネーム。.jp、.com等が該当する。また、www.mpt.go.jpでいうところのgoは第2レベルドメイン(SLD:Second Level Domain)という。