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市場開放問題苦情処理推進会議第5回報告書(平成10年3月17日) [本部決定] [フォローアップ]

7-(2) 税関事後調査方法の改善

○ 問題提起者:東京商工会議所

○ 所管省庁:大蔵省

○ 問題の背景

(1) 消費税

1) 税関による事後調査
税関職員による消費税に関する事後調査は、消費税法やその他の法律で記録、保存が義務づけられている帳簿書類等(例えば、法人税や消費税については、約7年間の保存が義務づけられている)について、2)の質問検査権に基づき行われている。

2) 税関職員の質問検査権等
税関の職員は、消費税に関する調査について必要があるときは、課税貨物を保税地域から引き取る者等に質問し、又は課税貨物若しくは帳簿書類その他の物件を検査することができる(消費税法第62条第3項)。この質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこの検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、十万円以下の罰金に処せられる(消費税法第68条)。

(2) 関税

1) 税関による事後調査
税関職員による関税に関する事後調査は、関税法以外の法律で記録、保存が義務づけられている帳簿書類等について、2)の質問検査権に基づき行われている。

2) 税関職員の質問検査権等
税関職員は、職務を執行するため必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、輸入された貨物について、その輸入者等に質問し、又は貨物若しくは貨物についての帳簿書類を検査することができる(関税法第105条第1項本文及び第6号)。この質問に対して答弁せず、若しくは偽りの陳述をし、またはその職務の執行を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五十万円以下の罰金に処せられる(関税法第114条第5号)。

(3) 加算税

税関の事後調査により把握された申告漏れ税額の動向にかんがみ、関税等の納税者間における課税の公平を維持し、より適正な納税申告を確保するために、平成9年10月から、輸入品に課せられる関税及び内国消費税に過少申告加算税及び無申告加算税が導入された。

過少申告加算税は、税関の調査により、納税申告が適正でないとして修正申告又は更正が行われたときは、原則として、当該修正申告等により増加した税額に10%(一定の場合には15%)を乗じた金額を課すものである(関税法第12条の2第1項)。無申告加算税は、納税申告が必要な貨物について、輸入時までに申告されずに、税関の調査により税額の決定が行われた場合及び決定後に更正が行われた場合、原則として、これらの決定又は更正により納付すべき税額に15%を乗じた金額を課すものである(関税法第12条の3第1項)。

○ 問題提起内容

(1) 消費税の事後調査の実施の必要性

消費税に係わる輸入申告について、税関事後調査が実施されているが、事業における輸出入のバランスからいって、修正申告を行ったとしても結局消費税が仕入控除又は還付される輸入者にとっては、調査の負担ばかりが大きい。したがって、消費税に関する事後調査については、調査対象企業の選定を適切に行うべきである。

(2) 税関の事後調査対象の絞り込み

税関の事後調査が、4年に1度本社を管轄する東京税関で一括して行われるが、その対応のために地方で通関した商品の通関関連書類を、すべて東京にて集中管理することになる。また、年度により調査の対象が変わるため、銀行の送金証明、為替レート証明、先方のインボイス、諸掛かり請求書等、膨大な書類の管理が求められている。全件を対象とせず、一定金額以上の案件に絞るべきである。

○ 検討結果

税務調査は、調査する側の都合だけでなく、調査される側、すなわち納税者がその準備に要するコストや作業能率を考慮した方法で行われるべきである。所管省によれば、調査の際、必要最小限の書類しか要請していないとのことである。しかしながら、問題提起者の実感は、実際に調査する書類に比較して事前に用意させられる書類の量が非常に多いなど、納税者に必要以上の負担が強いられているというものである。

また、関税及び消費税については、平成9年10月より新たに加算税が導入され、納税者が適正な申告を行うインセンティブは以前にも増して高まっていることが予想される。したがって、税関の事後調査のやり方を緩和の方向で見直す余地が生じているものと考えられるとの意見もあった。

所管省によれば、現在でも、申告実績が優良な企業に対しては調査頻度を少なくする等の措置を講じているとのことである。このような対応は評価できるが、調査書類の明確化等、さらに適正申告を促すとともに輸入者の負担を軽減するための工夫をすべきである。

また、フロッピーディスク等で保管されている証拠資料も既に調査において活用しているということであるが、第4回報告書(平成9年3月17日)で付した意見に基づき法人税法において電子データによる保存が容認されることを踏まえ、電子データの活用を一層進めるべきである。

以上を踏まえ、所管省においては以下の対応をとるべきである。

調査の対象となる帳簿書類の利用のあり方や、そのうち電子データ保存されるものの活用、調査に関する広報の強化等、税関による事後調査のあり方につき、納税者の負担軽減と徴税事務の効率化の観点から直ちに検討を開始し、平成10年中にはその検討結果を出すべきである。


OTO対策本部決定(平成10年3月23日) [報告書] [フォローアップ]

7-(2) 税関事後調査方法の改善

調査の対象となる帳簿書類の利用のあり方や、そのうち電子データ保存されるものの活用、調査に関する広報の強化等、税関による事後調査のあり方につき、納税者の負担軽減と徴税事務の効率化の観点から直ちに検討を開始し、平成10年中に検討結果を出す。


フォローアップ(平成11年11月16日) [報告書] [本部決定]

7-(2) 税関事後調査方法の改善

納税者の事務負担を考慮して、調査の対象となる書類等が電子データで保存されている場合には、その電子データを検索し確認するなどして事後調査事務への活用を図るとともに、調査を実施する場所については、貿易業務が行われており、審類等の保存がされている事務所で実施することに一層配慮することとして、納税者の負担軽減を行った。
また、調査に関する広報については、調査事例・調査実績の新聞発表、税関ホームページ及び貿易関連専門誌への掲載を行ったところであり、引き続きその充実に努めることとした。