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市場開放問題苦情処理推進会議第5回報告書(平成10年3月17日) [本部決定] [フォローアップ]

8-(2)外国銀行に対する源泉徴収免除証明書制度の廃止

○ 問題提起者:駐日韓国大使館

○ 所管省庁:大蔵省

○ 問題の背景

(1) 外国法人へ国内源泉所得を支払う場合の源泉徴収義務

外国銀行等の非居住者・外国法人が我が国で受け取る利子は、日本の融資先等が利子を支払う際の徴収により課税されることが原則となっている(所得税法第212条第1項)。

(2) 国内に恒久的施設を有する外国銀行等の受ける国内源泉所得の課税の特例

国内に支店等(恒久的施設)を有する外国銀行等に支払われる貸付金利子に関しては、支店に帰属する所得は申告に基づき納税され、また、外国銀行等が所轄税務署長の証明書(源泉徴収免除証明書)の交付を受け、その証明書を借主に提示すれば、借主(国内源泉所得の支払者)は、特例として源泉徴収を行う必要はない(所得税法第180条、租税特別措置法第42条の2)。この源泉徴収免除証明書は、源泉徴収義務者たる融資先が利子を支払う際、その利子が 1)支店に帰属するものか(この場合、源泉徴収免除可)、2)本店に帰属するものか(この場合、源泉徴収必要)の区分を承知するために必要とされている。

なお、従前は、外国銀行等からの貸付利子に係る源泉徴収が免除されるためには、源泉徴収免除証明書を借主に提出する方式がとられていたが、平成7年3月に、外国銀行に対する源泉徴収免除制度の原則は維持しつつも、制度の簡素化を図る趣旨で、提示方式に改められた。

(3) 外国法人が課税の特例の適用を受けるための主な要件

・外国普通法人となった旨の届出書を提出していること。
・登記が必要な外国法人は、その登記をしていること。
・源泉徴収免除の適用を受けようとする国内源泉所得が、法人税に関する法令等に基づき法人税を課される所得のうちに含まれること。
・当該外国法人が不正に所得税又は法人税を免れたことがないこと。(所得税法施行令第304条)

○ 問題提起内容

源泉徴収免除証明書については、従来の交付方式から提示方式に変わったものの、外国銀行の在日支店は、所轄税務署から同証明書の交付を受け、それを融資先(利子支払者)に提示するために、実際は支店の判断で証明書のコピーを融資先に送付しており、当該外国銀行にとっては同制度による不便さは改善されていない。外国銀行の在日支店から貸出を受けた融資先が支払う利子に対し、所得税の源泉徴収義務免除を定めている「所得税法第180条」を改正し、外国銀行も日本の銀行と同様に、融資先に対して源泉徴収免除証明書を提示しないで済むようにすべきである。

○ 検討結果

所管省によれば、外国銀行の支店と本店とは法的に一体であり、税務上の所得の帰属は、費用との適正な対応関係等を考慮して決定される。このため、外国銀行在日支店から国内事業者への事業資金の貸付により発生した利子所得については、源泉徴収義務者である借主(国内事業者)が金銭貸借契約書を見ても、最終的に当該外国銀行の在日支店の所得となるのか、もしくは国外の本店の所得となるのかが不明であるといったことが、外国銀行等による源泉徴収免除証明書の提示義務の重要な根拠となっている。すなわち、同証明書の提示以外の方法では、借主には、自らが支払う利子が国内支店もしくは国外の本店のどちらの所得として帰属するかを判断する方法がなく、本制度抜きには源泉徴収課税の義務が果たせない場合があるということである。

したがって、本制度が有効に機能するためには、外国銀行等から同証明書の提示がない場合には借主に源泉徴収義務が生じるということを、外国銀行等から融資先への通知や政府の広報により、外国銀行等から借り入れを予定している国内の全事業者に周知徹底しておく必要がある。

源泉徴収免除証明書の有効期限は1年であるということであるが、そもそも「恒久的施設」を有することに加えて一定の要件を満たすことが同証明書交付の前提となっており、これらの要件は当該外国銀行等が日本国内に存在する以上変更のないものが多いことにかんがみれば、有効期限を1年のみに限る必然性は高くないとの意見があった。しかしながら、所管省によれば、この期限を延長すれば、源泉徴収漏れに伴う借主への負担(証明書が取り消された場合等、借主に源泉徴収義務が生じた場合の源泉税の納付と後日の外国銀行への求償)がそれだけ過重になるということや、源泉所得税の徴収権の消滅時効との兼ね合いの問題があるとのことである。

また、源泉徴収免除証明書の交付が1通しか行われない場合には、複数の融資先に機動的に対応しづらいという問題がある。

以上を踏まえ、所管省においては、以下の対応をとるべきである。

(1) タックスアンサー及びインターネットの活用等により、外国銀行等の貸付利子に関する源泉徴収免除制度及び源泉徴収免除証明書が交付されている外国銀行等の名称等に関する広報を強化する。

(2) 外国銀行等の事務負担にかんがみ制度の簡素化を図った平成7年の源泉徴収免除証明書提出方式から提示方式への変更の趣旨を一層徹底するため、金融分野における内外無差別原則及び外国法人に対する適正課税の確保に配慮しつつ、証明書の交付枚数や有効期間を含め具体的方策につき、直ちに検討を開始し、平成10年中に検討結果を出し、その後所要の措置を講ずるべきである。


OTO対策本部決定(平成10年3月23日) [報告書] [フォローアップ]

8-(2) 外国銀行に対する源泉徴収免除証明書制度の簡素化の徹底

(1) タックスアンサー及びインターネットの活用等により、外国銀行等の貸付利子に関する源泉徴収免除制度及び源泉徴収免除証明書が交付されている外国銀行等の名称等に関する広報を強化する。

(2) 外国銀行等の事務負担にかんがみ制度の簡素化を図った平成7年の源泉徴収免除証明書提出方式から提示方式への変更の趣旨を一層徹底するため、金融分野における内外無差別原則及び外国法人に対する適正課税の確保に配慮しつつ、証明書の交付枚数や有効期間を含め具体的方策につき、直ちに検討を開始し、平成10年中に検討結果を出し、その後所要の措置を講ずる。


フォローアップ(平成11年11月16日) [報告書] [本部決定]

8-(2) 外国銀行に対する源泉徴収免除証明書制度の廃止

(1) 外国銀行等の貸付金利子に関する源泉徴収免除制度の概要及び源泉徴収免除証明書が交付されている外国銀行等の名称等(交付状況一覧表)に関する広報については、毎年3月末にパンフレットを3万部作成し、全国524の税務署で配布等を行っているほか、平成10年4月からは、新たにタックスアンサー及びインターネット上のホームページを活用して周知するなど広報を強化している。

(2) 現行の源泉徴収免除証明書の交付・提示と借主による確認は、適正課税の確保等のために必要であるが(注)、

1) 源泉徴収免除証明書の交付枚数については、交付申請書に希望する枚数を記載して申請する方式としている。
2) また、源泉徴収免除証明書の有効期間(現在1年)については、徴収権の消滅時効や適正課税の確保に配慮し、更新時(2回目以降)において、過去5年間にわたり連続して期限内に法人税の確定申告書が提出されている場合には、5年間に延長する措置を講じている(平成11年5月24日付「外国銀行等に対する源泉徴収の免除証明書等の様式及び交付手続等について」(事務運営指針)を発出済)。

(注)内国法人の支払利子など、日本国内に源泉がある所得には、日本で課税することが大原則である。外国銀行等の在日支店が関係する外国銀行からの貸出には、
1] 在日支店経由の本店貸出、
2] 在日支店の貸出、
があり、これらは借主が源泉徴収することにより課税されることが原則であるが、源泉徴収義務を持つ借主が、在日支店からの借入れが2]に該当することを借入れごとに確認することにより、特例として源泉徴収義務が免除されており、この確認のための手段として、外国銀行の在日支店が「源泉徴収免除証明書」を借主に提示することとされている。