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市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書(平成12年3月16日) [本部決定] [フォローアップ]

2-(1) 栄養補助食品に関する規制緩和

○ 問題提起者:駐日米国大使館

○ 所管省庁:厚生省

○ 問題の背景

(1) 国民の健康に対する関心の高まりとともに、現在、二次的・補完的に栄養素を補給する、いわゆる栄養補助食品が数多く流通販売されている。この栄養補助食品に関しては、米国等では、食品自体の有効性、予防効果を踏まえ、栄養補給の食材に関する法的な整備がなされているが、我が国では栄養補助食品に関する法的位置づけはなされていない。

(2) 我が国では、人が経口的に摂取する物は食品と医薬品及び医薬部外品(以下、医薬品等とする。)に分類される。医薬品等に該当するか否かは、その物の成分本質、形状(剤型、容器、包装、意匠等をいう。)及びその物に表示された使用目的、効能効果、用法用量並びに販売方法、販売の際の演述等を総合的に判断して、通常人が薬事法に掲げる目的を有する物であるという認識を得るか否かによって判断しており、その基準として局長通知で「医薬品の範囲に関する基準」が定められている。従って、外国で食品として販売されているものであっても、その剤型や成分等によって国内では医薬品に該当するものもある。また、効能効果等の表示についても規制を受けることとなる。なお、同基準の一部改正により、平成9年3月からビタミンの一部、平成10年3月からハーブの一部、平成11年3月からミネラルの一部が医薬品に該当しないものとして取り扱われ、食品として流通することが可能となっている。

(3) 一方、外国から栄養補助食品を食品として輸入するためには、食品素材、食品添加物等が全て日本で食品に使用することが可能な成分でなければならない。したがって、医薬品製造過程での使用が認められていた添加物が、食品衛生法上の食品添加物として指定されていないために、実際には食品として使用できない場合がある。さらに、ビタミンやミネラルが、栄養補助食品の主な成分となる場合でも、食品添加物としての規制がかかる場合がある。

(4) なお、平成10年12月のOTO対策本部決定「栄養補助食品のカテゴリーの決定等」を受け、所管省では現在、「いわゆる栄養補助食品の取り扱いに関する検討会」及び「医薬品の範囲基準の見直しに関する検討会」において検討を行っている。

○ 問題提起内容

(1) ある種の食品の栄養補助食品としての定義及び栄養補助食品制度の法制化

米国において食品の範疇に入る栄養補助食品に対して行われていることと同様のことを日本で行うため、栄養補助食品の定義とその制度が法制化されるべきである。栄養補助食品制度は、成分、形状、用法、栄養補助食品の成分の食品添加物の定義からの除外、健康効能の表示などといった多くの要素からなるものであり、以下のように法制化されるべきである。

1) 「栄養補助食品」という用語は、以下の栄養成分をひとつまたはそれ以上含む栄養分を補給することを意図した製品を意味する。

ビタミン、ミネラル、ハーブ又はその他の植物、アミノ酸及びたんぱく質、脂肪酸及びそのグリセリド、食物繊維及び炭水化物、栄養を補給するために人に使用される栄養物質、上記成分の濃縮物、代謝物、構成物、抽出物、混合物、加えて、グルタチオン、CoQ10やタウリンといった栄養物質は、医薬安全局の医薬品の範囲に関する規制においてもっぱら医薬品として使用される物質(1-a)、という分類から除外すべきである。これらは食品の構成物であり、海外では栄養補助食品の成分として使用されている。

2) 栄養補助食品を含む食品は、消費者にとって安全で使いやすく、品質維持に適したどのような形状もとることができるようにすべきである。
3) 栄養補助食品に対しては、用法及び用量の表示や詳細指示に制限をすべきではない。
4) 栄養補助食品として使用される、または使用を意図される上記の成分は、食品衛生法における食品添加物の定義から除外するべきである。これは、食品添加物のポジティブリストに列挙されていないという理由から、栄養補助食品の成分が規制されることを避けるためである。
5) 健康増進等の効能効果的表示は、人の構造や機能に影響を与えることを意図する栄養成分の役割を記述するとともに、栄養成分がそうした構造や機能に影響を与えるメカニズムを特徴づけるものである。こうした健康効能の表示は、消費者が自らの健康のために適切にインフォームされた選択ができるようにするため、そうした役割やメカニズムを科学的に実証できる場合には、栄養補助食品については可能とすべきである。これらの健康効能表示は、「人または動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすもの」という薬事法の医薬品の三番めの定義から除外すべきである。

(2) 食品添加物の定義からの除外

1) ビタミン・ミネラル栄養補助食品におけるビタミン(その種々な化学的形態及び化合物を含む)やミネラル化合物は、それ自体がそうした栄養補助食品の主成分であることから、食品添加物ではなく食品とみなされるべきである。食品衛生法上の食品添加物の定義は、添加物とは食品の製造の過程においてまたは食品の加工もしくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するものをいう、とされている。
2) ビタミン、ミネラルやハーブといった複数の成分を含む複合補助食品は、欧米の市場では一般的である。そのような場合、たとえ上記の記述が受け入れられたとしても、栄養補助食品の主な食品成分以外の他の成分は、食品添加物と解釈されてしまう可能性がある。このため、上記(1)-1)は、そうした場合に全ての成分を食品添加物から除外するために必要である。

(3) 1日摂取量上限の撤廃

厚生省が最近推奨される栄養所要量を設定したことから、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンK、ビオチン、パントテン酸、葉酸等のビタミン類、亜鉛、クロム、セレン、マンガン、モリブデン、銅、フッ素、ヨウ素等のミネラル類の1日摂取量上限は撤廃すべきである。

○ 検討結果

所管省によれば、栄養所要量が設定された成分については1日摂取量上限の廃止に係る所要の措置を平成11年度中に行うとのことであり、その点は評価できる。

規制緩和の結果、平成9年3月からビタミン、ハーブ及びミネラルの一部が順次、薬事法上、医薬品に該当しないものとして取り扱われ、食品として流通することが可能となったとのことであるが、問題提起者によると、実際には食品衛生法の食品添加物の規制がかかり、製品の輸出という点から見ると何も変わっていないとのことである。一方、所管省によれば、問題提起は米国の現状のみを踏まえたものであり、食品の国際規格を検討するコーデックスあるいはその他の多くの国では、問題提起にあるような栄養補助食品制度は整備されておらず、また栄養補助食品に含有される成分のうち食品添加物に該当する物質については、米国を除く諸外国でもポジティブリストに列挙されたものしか使用できないこととされているとのことである。

OTO対策本部決定を踏まえ、所管省では、「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」(以下「検討会」という。)において、現在、ビタミン、ミネラル、ハーブ等の栄養補助食品のあり方について検討を行っており、平成12年4月1日までに最終報告を公表するとのことである。

OTOでは第2回OTO専門家会議(平成11年12月)において本件を審議し、その際、検討会における所管省の対応が、OTO対策本部決定に反したものであると問題提起者が受けとめているとすれば重大な問題であり、所管省は、OTO対策本部決定の趣旨を踏まえた対応を取るべきであるとの議長総括を行った。

その後、所管省は、ビタミン、ミネラル、ハーブ等の栄養補助食品について、消費者の選択に資するため、科学的根拠に基づき、過剰摂取などに対する注意喚起表示を義務付けるとともに、栄養成分の機能等に関する表示を認めることなどを骨子とする中間報告を公表した。また、所管省によると、平成12年4月1日までに公表される最終報告を踏まえ、制度の実施に向け、個別の成分ごとの規格基準や表示基準等を検討し、順次、実施を図る予定であるとのことである。さらに、いわゆる栄養補助食品に係る食品添加物規制のあり方についても、食品衛生調査会の毒性・添加物合同部会において検討を開始したとのことである。

以上を踏まえ、所管省においては、栄養補助食品のカテゴリーについて、以下の対応を取るべきである。

(1) 通常海外で栄養補助食品として流通・販売されているものが我が国でも医薬品として規制されることなく食品として取扱いできるように、OTO対策本部決定に即し、栄養補助食品のカテゴリーのあり方について決定するとともに医薬品の範囲基準の見直しの結論を得るべきである。

(2) 食品添加物については、通常海外で栄養補助食品として流通・販売されているものが我が国で適切な取扱いがされるように栄養補助食品に係る食品添加物規制のあり方について、平成12年度中に検討し、結論を得るべきである。

(3) 栄養補助食品のカテゴリーのあり方については、平成12年度の早い時期に、OTO推進会議に対し報告を行うべきである。


OTO対策本部決定(平成12年3月21日) [報告書] [フォローアップ]

2-(1) 栄養補助食品に関する規制緩和

栄養補助食品のカテゴリーに関し、以下の対応を取る。

(1) 通常海外で栄養補助食品として流通・販売されているものが我が国でも医薬品として規制されることなく食品として取扱いできるように、OTO対策本部決定に即し、栄養補助食品のカテゴリーのあり方について決定するとともに医薬品の範囲基準の見直しの結論を得る。

(2) 食品添加物については、通常海外で栄養補助食品として流通・販売されているものが我が国で適切な取扱いがされるように栄養補助食品に係る食品添加物規制のあり方について、平成12年度中に検討し、結論を得る。

(3) 栄養補助食品のカテゴリーのあり方については、平成12年度の早い時期に、OTO推進会議に対し報告を行う。


フォローアップ(平成12年12月7日) [報告書] [本部決定]

2-(1) 栄養補助食品に関する規制緩和

(1) 本部決定(1)及び(3)について

栄養補助食品のカテゴリーのあり方については、表示については、食品衛生調査会において、保健機能食品という分類を設定し、一定の要件を満たせば、食品又は食品中に含まれる栄養成分が身体の構造又は機能に影響を与える旨を表示することができることとする制度について、今年度内の設定を目途として検討しており、11月20日に食品衛生調査会合同部会の報告書がとりまとめられたところである。現在、パブリックコメント等により、内外からのコメントの募集を行っているところ。
なお、栄養補助食品に係る医薬品の範囲基準の見直しについては、栄養補助食品制度の創設を踏まえて、行っていくこととしている。

(2) 本部決定(2)について

食品添加物規制のあり方については、食品衛生調査会において、保健機能食品であってカプセル、錠剤等通常の食品形態ではない食品に用いられる食品添加物についてこれまでの食品添加物とは別枠で取り扱うことを検討しており、11月20日に食品衛生調査会合同部会の報告書がとりまとめられたところである。現在、パブリックコメント等により、内外からのコメントの募集を行っているところ。