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市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書(平成12年3月16日) [本部決定] [フォローアップ]

3-(2) 高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗り禁止規制の撤廃

○ 問題提起者:駐日米国大使館

○ 所管省庁:警察庁

○ 問題の背景

自動二輪車(側車付きのものを除く)の運転者は、道路交通法第71条の4第3項の規定により、高速自動車国道及び自動車専用道路(以下「高速自動車国道等」という)においては、運転者以外のものを乗車させて自動二輪車を運転すること(以下「自動二輪車の二人乗り」という)は禁止されている。

高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗り禁止については、首都高速道路及び名神高速道路の供用後、二人乗りによる死亡事故が多発したことから、昭和40年に道路交通法を改正して導入されたものである。

高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗りは、

(1) 自動二輪車の二人乗りはそもそもバランスを取りにくいところ、高速自動車国道等において継続して高速走行を行う場合には危険性が極めて高いこと。

(2) 日本の高速自動車国道等は、欧米に比べ、カーブが多く、見通しも利きにくいこと、車線や路肩の幅が狭いこと等、条件が異なること。

等から禁止されている。

○ 問題提起内容

我が国では、道路交通法によって、高速自動車国道等での自動二輪車の二人乗りは禁止されている。

しかしながら、日本、そしてその他多くの国の事故データによると、自動二輪車やその他の車両にとっては、高速道路の方が一般道路よりも、また、二人乗りの方が一人乗りより安全であり、また、具体的には以下の根拠によって、日本における自動二輪車の二人乗り禁止規制が適切な措置ではないことは明らかである。

(1) 二人乗り禁止規制は、二人乗り自動二輪車を高速道路からより危険な一般道路に追いやっている。

(2) 二人乗り自動二輪車は、一人乗り自動二輪車と比べて、より安全かつ慎重に運転される傾向にある。

(3) 最新の大型自動二輪車は、1960年代や1970年代の自動二輪車と比べて、大幅に改善されており、高速道路での走行速度で安全に運転者と同乗者を乗せて走行できるように製造されている。

(4) 米国の保険会社は、自動車専用道路で同乗者を乗せることが多い大型ツーリングバイクに割引料率を適用している。

(5) 年齢、職業、教育、及び収入から判断すると、大型自動二輪車を所有する日本人は、社会において分別と責任のある階層である。

(6) 日本の自動二輪車愛好家や日本の自動二輪車製造業者も二人乗り禁止の撤廃を支持している。禁止は国際基準にのっとっておらず、警察庁は安全性に関わる客観的な証拠を何も提示していない。

したがって、高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗り禁止規制は、米国製造業者の日本市場への参入機会を不当に制限しているだけでなく、日本の高速自動車国道等の安全性をかえって低下させていることになり、所管庁は同規制の撤廃をするべきである。

○ 検討結果

所管庁によれば、自動二輪車の二人乗りはバランスが取りにくく、高速自動車国道等において継続して高速走行を行う場合には危険性が極めて高いこと、高速道路における自動二輪車の死亡事故率(死亡事故件数/人身事故件数)、致死率(死者数/死傷者数)は他の車種に比べて高いこと、また、我が国の標準的な高速道路は、他の先進国に比べ線形や車線・路肩の幅等の条件が異なること、さらに、自動二輪車の後部座席の安定性に疑問があること等から、自動二輪車の二人乗りについて、禁止を解除することは適当ではないとのことである。しかし、高速道路では一人乗りは認められていること、一般道路では二人乗りが認められていること等から問題提起者は納得していないとみられる。

一方、長時間高速で走行する場合の同乗者の疲労等に起因する危険性を考慮する必要がある。また、我が国においては、自動二輪車の危険な運転を行う者が見られることなどから、自動二輪車の走行が安全でないとの認識が国民の間に根強くあり、現状のままでは、二人乗り禁止規制の解除は困難であると考えられる。したがって、所管庁は関係機関、関係団体等と連携して、自動二輪車の運転者による危険な運転を防止し、安全な運転を定着させるための対策をさらに強化していく必要がある。自動二輪車の運転者は、自ら安全な運転を励行し、マナーアップに努めるべきである。また、自動二輪車の後部座席のハード面での安全性が確保される必要がある。なお、そもそも自動二輪車の利用スタイルは欧米諸国と日本とでは異なることも予想され、免許制度等にも違いがあると考えられる。こうした点については、OTO事務局において、海外の動向について幅広く調査すべきである。

なお、本議題に関しては、平成5年度にも問題提起がなされ、平成6年6月のOTO対策本部決定においては、「最近の大型自動二輪車の二人乗り走行の安全性について、問題提起者から提出されるデータ等の検討を行い、安全性に問題がなければ規制を見直す。」とされた。最近まで問題提起者と所管庁の間でのデータ提出のやりとりが行われているが、無用の誤解の発生を避けるため、OTO事務局を介して行われるべきである。

以上を踏まえ、所管庁等においては、自動二輪車の二人乗り禁止規制に関し、以下の対応を取るべきである。

(1) 所管庁は、自動二輪車の運転者のマナーアップを図り、自動二輪車の安全な運転を定着させるため、広報啓発活動を推進し、二人乗りに関する講習をはじめとする運転者教育を充実させ、危険運転に対する取締を強化すべきである。

(2) OTO事務局は、自動二輪車について、その利用スタイルや利用に関する国民の意識、また、免許制度等について、幅広く、海外の動向も含め調査し、平成12年中にその結果を得るべきである。


OTO対策本部決定(平成12年3月21日) [報告書] [フォローアップ]

3-(2) 高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗り禁止規制

自動二輪車の二人乗り禁止規制に関し、以下の対応を取る。

(1) 自動二輪車の運転者のマナーアップを図り、自動二輪車の安全な運転を定着させるため、広報啓発活動を推進し、二人乗りに関する講習をはじめとする運転者教育を充実させ、危険運転に対する取締を強化する。

(2) 自動二輪車について、その利用スタイルや利用に関する国民の意識、また、免許制度等について、幅広く、海外の動向も含め調査し、平成12年中にその結果を得る。


フォローアップ(平成12年12月7日) [報告書] [本部決定]

3-(2) 高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗り禁止規制

(1) 本部決定(1)について
自動二輪車の運転者のマナーアップを図り、自動二輪車の安全な運転を定着させるため、関係機関・団体とも連携しつつ、次の施策を推進している。

1) 関係機関・団体と連携し、各種イベント等の機会をとらえたマナーアップ・キャンペーンの実施等広報啓発活動を推進している。

2) 自動二輪車関係団体による自動二輪車の安全運転教育を支援するとともに、警察庁において各都道府県警察における先進的な取組みを全国警察に対して紹介し、二人乗りに関する講習の充実を推進するなど、運転教育の充実を図っている。

3) 無免許運転、速度超過、信号無視等重大交通事故に直結する悪質・危険・迷惑性の高い交通違反の取締りを推進するとともに、集団による爆音暴走、山岳道路等での競争行為等の危険運転を行う暴走族に対する取締りも重点的に実施している。

(2) 本部決定(2)について
自動二輪車に関する基礎調査を終了し、現在、その調査結果につき取りまとめているところ。基礎調査では、自動二輪車に関する1)保有台数・免許取得者数、2)利用スタイル、3)免許制度、4)安全対策、5)利用に関する国民の意識、の5項目について、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、オーストラリアを対象に文献・インターネット等による調査を行った。
なお、調査結果については、とりまとめ次第ホームページへの掲載を行う予定である。