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市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書(平成12年3月16日) [本部決定] [フォローアップ]

3-(4) けん引自動車及び被けん引自動車に係る車検制度の改正等

○ 問題提起者:駐日米国大使館

○ 所管省庁:運輸省

○ 問題の背景

(1) 我が国では、被けん引自動車は、新規登録時の検査の際には、けん引自動車と連結した状態で検査を受けることとなっている。これは、被けん引自動車単独では道路を走行し得ないこと、及び道路運送車両の保安基準への適合性を確認する際に、連結状態で同基準への適合性も確認する必要があることによる。保安基準の各規定への適合性の確認は、けん引能力の他に、けん引自動車と被けん引自動車の連結状態における最小回転半径、灯火の作動状況、制動能力、けん引自動車による後写鏡の視界の範囲等について行われる。

(2) 被けん引自動車の自動車検査証備考欄には保安基準への適合性を把握できたけん引自動車の車名及び型式(型式が不明な場合は車台番号のうち、製作一連番号や製作工場等、個々の自動車により異なる番号が付与される事項を除く部分)が記載される(道路運送車両法施行規則第35条の3第15号)。

(3) また、被けん引自動車の新規登録時の検査や、けん引自動車の型式を自動車検査証に追加記載するための検査申請時には、連結するけん引自動車毎に連結仕様検討書の作成を行うこととなっている。同検討書には、被けん引自動車をけん引するために必要なけん引車の駐車ブレーキ力等を記載することとなっている。複数のけん引自動車の車名及び型式を追加して被けん引自動車の自動車検査証に記載するためには、上記連結仕様検討書によって、そのけん引自動車でもけん引できることが被けん引自動車のみの登録検査により確認できれば良いこととされている。

○ 問題提起内容

車検制度上の制約により、自己の保有する自動車に、レンタルにより借り受けたキャンプ用トレーラー(被けん引自動車)を連結させてキャンプ等を行うことは、事実上、不可能となっている。キャンプ用トレーラーは比較的高額であり、保管場所の確保も困難であることから自己保有することは難しい面があるものの、レンタルであれば利用したいとする潜在的ニーズは非常に大きいものと考えられる。また、キャンプ場周辺までは自己の自動車で行き、そこでキャンプ用トレーラーをレンタルすれば、道路交通や環境等の面でも望ましいと考えられる。しかしながら、現在は、こうした形態での輸入トレーラーの普及が妨げられている。

(1) けん引自動車等の単独の検査の実施及びけん引能力の表示の義務化

我が国においては、現行の車検制度上、被けん引自動車については、型式(型式が不明な場合は車台番号)によりけん引自動車が限定されることとなっており、新規登録時の検査の際には、被けん引自動車単独で車検を受けることはできない。しかし、連結して確認すべきとされる保安基準のけん引能力を除く各規定に関しては、自動車の最小回転半径についてはけん引自動車の性能のみに依存する。灯火の作動状況については被けん引自動車の新規登録時の検査において、任意のけん引自動車等を用いて確認できる。また、後写鏡の視界の確保については取扱説明書等の文書による指示で十分に設定することができる。よって、いずれの基準についても連結状態での確認の必要性はないと考える。

一方、欧米においては、けん引自動車に自動車のけん引能力が表示されており、利用者は、そのけん引能力に応じて被けん引自動車を選択することができる。

したがって、けん引自動車と被けん引自動車それぞれが単独で新規登録時の検査を受けることができるように制度を改正し、その際、けん引自動車のけん引能力の表示を義務付け、これを利用すること等によって、被けん引自動車を自由に選択し利用することができるようにすべきである。

(2) 連結仕様検討書作成等手続きの簡素化等

連結するけん引自動車毎に必要な連結仕様検討書は、申請する側が作成しなければならないが、検討書に記載すべき値の算出には、専門業者に依頼しなければできないような複雑な計算や持ち込み検査等が必要である。しかし、近年の自動車では、それらの項目は、けん引自動車と被けん引自動車の車両重量からおおむね算出できるはずである。

したがって、けん引自動車と被けん引自動車の車両重量等の対比表により、けん引自動車の車両重量が被けん引自動車をけん引するために必要な重量があると判断される場合を明示化し、その場合には連結仕様検討書の作成を不要とする等、同検討書作成にかかる負担を軽減するべきである。その際、現行の保安基準において、連結時駐車ブレーキ力の基準は、被けん引車をけん引するためには過大であるため緩和した上で上記措置を取るべきである。

○ 検討結果

所管省によれば、日本ではこれまでトレーラーの主流が貨物運送用の大型セミトレーラーであったため、キャンピングトレーラーに関する知見が十分になかったとのことである。また、道路運送車両の保安基準に基づき、走行性能や駐車ブレーキ力等、連結状態での安全性を確保することが必要であり、連結仕様検討書は安全性の確認を効率的に行うために必要とのことである。しかし、近年キャンピングトレーラーの普及が著しいことを踏まえ、重量、制動装置、最小回転半径から判断して、キャンピングトレーラー等の軽量トレーラーについては、安全性の確保を前提として、連結時の基準適合性に係る手続きの簡素化の余地はあるとし、簡素化に向けて今後、自動車の性能と車両重量の相関関係を調査するなどによって検討するとしている。

新しい製品を既存の制度の枠組みで処理できない場合には、その制度を見直すことが必要である。その際、安全性の確保は重要ではあるが、既に欧米で実施されている方法を我が国に導入するか否かの検討には長い期間をかけるべきではない。

以上を踏まえ、所管省においては、けん引自動車及び被けん引自動車に係る検査・登録に関し、以下の対応をとるべきである。

キャンピングトレーラーのレンタルでの利用に向け、キャンピングトレーラーを予め登録した自動車以外のものでもけん引を可能とするために、個々の自動車に、その自動車がけん引可能な車両の重量の上限を自動車製作者が表示するという欧米型の方式を導入することの可否を含めて、キャンピングトレーラーの登録時の手続きの簡素化について、直ちに検討を開始し、遅くとも平成12年中にはその検討結果を出すべきである。


OTO対策本部決定(平成12年3月21日) [報告書] [フォローアップ]

3-(4) けん引自動車及び被けん引自動車に係る車検制度の改正等

けん引自動車及び被けん引自動車に係る検査・登録に関し、以下の対応を取る。

・キャンピングトレーラーのレンタルでの利用に向け、キャンピングトレーラーを予め登録した自動車以外のものでもけん引を可能とするために、個々の自動車に、その自動車がけん引可能な車両の重量の上限を自動車製作者が表示するという欧米型の方式を導入することの可否を含めて、キャンピングトレーラーの登録時の手続きの簡素化について、直ちに検討を開始し、遅くとも平成12年中にはその検討結果を出す。


フォローアップ(平成12年12月7日) [報告書] [本部決定]

3-(4) けん引自動車及び被けん引自動車に係る車検制度の改正等

遅くとも平成12年中に結論を得るべく、キャンピングトレーラーのレンタルでの利用に向け、キャンピングトレーラーを予め登録した自動車以外のものでもけん引を可能とするために、個々の自動車に、その自動車がけん引可能な車両の重量の上限を自動車製作者が表示するという欧米型の方式を導入することの可否を含めて、キャンピングトレーラーの登録時の手続の簡素化について検討中である。