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市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書(平成12年3月16日) [本部決定] [フォローアップ]

4-(1) コンテナ貨物に係る税関検査体制の改善

○ 問題提起者:東京商工会議所

○ 所管省庁:大蔵省

○ 問題の背景

貨物を輸入する場合には、輸入者又は代理人である通関業者(以下、通関業者等)がNACCS(通関情報処理システム)を利用して税関に対して輸入申告を行い、税関はこの輸入申告事項の内容の審査を行ったうえで必要に応じて検査を実施する。輸入貨物がコンテナ貨物(コンテナ詰めされた状態で輸入される貨物)の場合の検査方法としては、見本検査、一部指定検査及び全量取出検査の3種類がある。

コンテナ貨物が検査の対象となった場合、税関は検査の通知をNACCSを通じて通関業者等に送信し、検査通知を受けた通関業者等は、税関指定の検査場にコンテナを搬送し、全量取出検査の場合には検査対象貨物を全量コンテナから取卸し、検査を受けることとなる。この際、通関業者等は、港湾内での運送事業の免許を自ら有しない場合には、免許を受けた港湾運送業者等に委託して検査場へのコンテナ搬入と貨物の取卸・開梱包等の作業を行わせる。

こうした業務に関する料金は、輸入者が負担することとなっている。また、全量取出検査には時間を要するため、輸入者の貨物引取が遅れることとなる。

○ 問題提起内容

コンテナ貨物の全量取出検査を実施する場合、税関は指定した検査場にコンテナを搬送させて当該貨物の取卸しを行わせ、必要に応じて開梱包させて検査を行うが、これらの費用が高額でその一切が荷主(輸入者)の負担となっている。しかも、こうした作業は免許を受けた港湾運送事業者しか行うことができないため競争が働きにくいことから非効率であり、検査にかかる期間も2〜3日を要し、通関の遅れによる損失も輸入者の負担となっている。

密輸取締や虚偽申告のチェック等が目的であれば、そもそもコンテナを移動するような余裕は与えず、税関職員の出張検査で抜き打ち的に対応すべきであり、これらの目的のためにコンテナを移動させて全量取出検査を行うことの有効性はない。

それでもコンテナを移動させて全量取出検査を実施するということであれば、その費用は税関が支払うべきである。また、所要時間を短縮するとともに、輸入者に対し文書により全量取出検査を受ける理由を事前に説明し、また、事後に検査結果の報告をすべきである。

○ 検討結果

コンテナ貨物の全量取出検査は、当該貨物を検査する理由が示されずに強制的に実施されるため、貨物に問題がなかった場合には、輸入者の側に、「結果的に問題がなかったのに、検査に係る費用負担と通関の遅れという不利益を一方的に強いられた」との不満を惹起することとなり、同様の不満はこれまでにも寄せられてきたところである。

他方、麻薬、けん銃等の社会悪物品は主として全量取出検査により摘発されている(税関が平成11年に水際で摘発した不正薬物は過去最高の約2.2トン、うち約1.1トンが全量取出検査により摘発)。確かに、全量取出検査において、摘発された件数と問題のなかった件数を比較すれば、後者の方が多いことは事実であるが、全量取出検査がなければこのような社会悪物品が摘発できなかったことを考慮すれば、全量取出検査の社会的意義は大きいと考えられる。

所管省によれば、検査に係る情報については、摘発件数以外に検査の理由や検査件数の情報を公表すると密輸を企む者に税関側の検査手法を開示することとなり、今後の検査に支障が生じるおそれがあるため公表できないとのことであり、また、諸外国においても同様の理由から公表している国はないようである。また、検査に係る費用を輸入者が負担することについても、諸外国で一般的とのことであるが、検査がなかった場合に比べて過大な費用負担とならないようにすべきである。

以上のような、社会悪物品の摘発と輸入者の負担の軽減という双方の要請を満たすことのできる方策として、諸外国で既に導入されている、コンテナを輸送トラックに載せたまま内部の貨物を透視検査できる大型のX線検査装置の導入が有効であると考えられる。
通関時間の短縮については、予備審査制度、平成12年度に導入予定の簡易申告制度を利用すれば有効とのことであるので、その周知、利用促進に努めるべきである。

以上を踏まえ、所管省においては、コンテナ貨物に係る税関検査体制の改善に関し、以下の対応を取るべきである。

(1) 全量取出検査について、同検査に係る費用負担と通関時間の短縮を図り、かつ、社会悪物品を摘発するという双方の要請を満たすことのできる方策として、コンテナを輸送トラックに載せたまま内部の貨物を透視検査できる大型のX線検査装置を早急に導入すべきである。

(2) 輸入貨物に対する税関での通関時間の短縮に資する、予備審査制度及び平成12年度に導入予定の簡易申告制度の周知に努め、その利用を促進すべきである。


OTO対策本部決定(平成12年3月21日) [報告書] [フォローアップ]

4-(1) コンテナ貨物に係る税関検査体制の改善

コンテナ貨物に係る税関検査体制の改善に関し、以下の対応を取る。

(1) 全量取出検査について、同検査に係る費用負担と通関時間の短縮を図り、かつ、社会悪物品を摘発するという双方の要請を満たすことのできる方策として、コンテナを輸送トラックに載せたまま内部の貨物を透視検査できる大型のX線検査装置を早急に導入する。

(2) 輸入貨物に対する税関での通関時間の短縮に資する、予備審査制度及び平成12年度に導入予定の簡易申告制度の周知に努め、その利用を促進する。


フォローアップ(平成12年12月7日) [報告書] [本部決定]

4-(1) コンテナ貨物に係る税関検査体制の改善

(1) 大型X線検査装置を横浜税関に導入することとしている(平成12年度中導入予定)。

(2) 予備審査制度及び簡易申告制度のリーフレットを作成するとともに、制度の概要を大蔵省(税関)ホームページの「カスタムアンサー」に掲載しているところである。 特に、簡易申告制度については、平成12年3月の導入を控え、制度の周知及び利用者の促進を図るため、全国の税関で外部説明会を開催しているところであり、本年10月31日現在で延べ178回実施(出席者数延べ7,835人)し、さらに、これら説明会で出された質問等をQ&A方式でまとめ、インターネットに掲載しているところである。