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市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書(平成12年3月16日) [本部決定] [フォローアップ]

5-(1) 上陸審査基準の見直し

○ 問題提起者:駐日韓国大使館

○ 所管省庁:法務省

○ 問題の背景

(1) 我が国に入国し、又は我が国から出国する者の出入国の公正な管理を図ること等を目的として出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)が定められている。我が国に在留する外国人は、法第2条の2において、当該外国人に対する上陸許可若しくは当該外国人の取得に係る在留資格又はそれらの変更に係る在留資格をもって在留するものとされている。この在留資格は、多岐にわたる外国人の活動等をあらかじめ類型化し、どのような類型の外国人であれば入国・在留が可能であるかを明らかにしたものであり、出入国管理行政はこれを基本としている。在留資格は現在27種類が設けられており、それらは次のように大別される。

・その外国人が我が国で行う活動に着目して分類された在留資格

1) 外交(外国政府の大使等)、公用(外国政府の大使館の職員等)等6種類(法別表第一の一)
2) 投資・経営(外資系企業の経営者等)、法律・会計事務(弁護士等)等10種類(法別表第一の二)
3) 文化活動(日本文化の研究者等)等2種類(法別表第一の三)
4) 留学(大学等の学生)、就学(高校等の生徒)等4種類(法別表第一の四)
5) 特定活動(外交官等の家事使用人等)の1種類(法別表第一の五)

・その外国人の身分や地位に着目して分類された在留資格

永住者(法務大臣から永住の許可を受けた者)等4種類(法別表第二)。
更に、在留資格のうち、上記 2)(法別表第一の二)及び 4)(法別表第一の四)については、活動内容からみて我が国の産業及び国民生活に影響を与えるおそれがあることから、法第7条第1項第2号において、法務省令で定める上陸許可基準に適合しなければ我が国への上陸が認められないこととされている。

(2) 投資・経営の在留資格により我が国において行うことができる活動は、法別表第一の二において、「本邦において貿易その他の事業の経営を開始し若しくは本邦におけるこれらの事業に投資してその経営を行い若しくは当該事業の管理に従事し又は本邦においてこれらの事業の経営を開始した外国人若しくは本邦におけるこれらの事業に投資している外国人に代わってその経営を行い若しくは当該事業の管理に従事する活動」とされている。

また、出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令において、投資・経営の活動を行おうとする者の基準として、申請人が本邦において貿易その他の事業の経営を開始しようとする場合は、事業所として使用する施設が本邦に確保され、かつ2名以上の本邦に居住する者が常勤職員として従事して営まれる規模のものであることが必要とされている。

○ 問題提起内容

日本の法務省の上陸審査基準において、「投資・経営」の在留資格は、上陸許可申請者の属する外国企業の現地法人等が日本国内で2人以上の現地人(日本人の他、永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者及び特別永住者を含む。)を採用する場合のみ取得できるものと定められている。その理由について法務省は、本規定が日・米友好通商航海条約第1条(b)の「現在相当額の資本を投入している企業又は相当額の資本を投入中の企業の入国及び在留の許容」を具体化したものであり、第三国との関係においては最恵国待遇原則により全ての国に共通的に適用されるとしている。

しかし、日本の賃金水準を考えると法人設立の際に現地人を2人以上雇用するのは企業側にとって重い負担となる可能性もあり、例えば、ベンチャー企業等に対し「相当額の資本投入」の基準として現地人2人の雇用義務を適用するのは厳しいもので、雇用に関しては企業独自の判断で決めるようにするのが妥当と思われる。

この点に関して韓国では、同様の在留資格を与える際に「外国人投資促進法」等の関係法等において現地人の雇用を義務付けてはいない。

したがって、上陸審査基準上「投資・経営」の在留資格要件における現地人雇用義務条項を削除すべきである。

○ 検討結果

所管省は、当初、在留資格「投資・経営」に係る基準は、事業の安定性・継続性を確保するために必要なものであり、現時点の諸状況に照らしても妥当な要件であるとして、その運用も含めて見直しを行う必要はない、としていた。しかし、本プロセスを通じ所管省において検討した結果、(1) 必ずしも現地人2人の雇用がなくとも、「その程度の規模」の投資があれば、投資・経営者としての上陸が許可されるが、現行の審査基準の運用上、当該基準が現地人2人を雇用する「程度の規模」を要求しているその趣旨が徹底されていなかった面があることから、今後は、相当額の投資が行われていることが認められる場合には、現地人2人の雇用がなされなくとも、投資・経営での入国を許可する運用を行う、(2) 実用例を踏まえながら、できるだけ合理的な審査上のガイドラインを定める努力を行う、としたことは評価できる。

所管省においても認識しているとおり、2人の雇用がなくとも「その程度の規模」があれば入国を許可するとは具体的にどの程度の規模なのか、その判断のメルクマールがないため、各地方の入国管理局において2人の雇用がない場合の審査を行うことは事実上困難である。また、昨今の経営環境をみると、インターネットを介したビジネスなど、必ずしも2人を雇用しなくとも事業を継続して運営できる新しい事業形態の企業が増えており、対日投資促進の観点からもこれらの企業を積極的に受け入れる必要がある。

以上を踏まえ、所管省においては、在留資格「投資・経営」に関して、以下の対応を取るべきである。

(1) 在留資格「投資・経営」に係る基準においては、必ずしも現地人2人の雇用がなくとも、「その程度の規模」の投資があれば、投資・経営者としての上陸が許可されるが、現行の審査基準の運用上、その趣旨が徹底されていなかったことから、今後は、相当額の投資が行われている場合は現地人2人の雇用がなされなくとも「投資・経営」の在留資格での上陸を許可するよう早急に各地方の入国管理局にその趣旨を徹底すべきである。

(2) 2人以上の者が常勤職員として従事して営まれる規模を明確化するため、2人を雇用しない場合の合理的な審査上のガイドラインを平成12年中に作成すべきである。

(3) インターネットを介したビジネスなど、必ずしも2人を雇用しなくとも相当規模の事業を継続的、安定的に運営できる新しい事業形態の企業についても、対日投資促進の観点からこれらの企業を積極的に受け入れるべく、ガイドラインに基づいて、円滑な投資・経営者の入国・在留管理を行うべきである。


OTO対策本部決定(平成12年3月21日) [報告書] [フォローアップ]

5-(1) 上陸審査基準の見直し

在留資格「投資・経営」に関し、以下の対応を取る。

(1) 在留資格「投資・経営」に係る基準においては、必ずしも現地人2人の雇用がなくとも、「その程度の規模」の投資があれば、投資・経営者としての上陸が許可されるが、現行の審査基準の運用上、その趣旨が徹底されていなかったことから、今後は、相当額の投資が行われている場合は現地人2人の雇用がなされなくとも「投資・経営」の在留資格での上陸を許可するよう早急に各地方の入国管理局にその趣旨を徹底する。

(2) 2人以上の者が常勤職員として従事して営まれる規模を明確化するため、2人を雇用しない場合の合理的な審査上のガイドラインを平成12年中に作成する。

(3) インターネットを介したビジネスなど、必ずしも2人を雇用しなくとも相当規模の事業を継続的、安定的に運営できる新しい事業形態の企業についても、対日投資促進の観点からこれらの企業を積極的に受け入れるべく、ガイドラインに基づいて、円滑な投資・経営者の入国・在留管理を行う。


フォローアップ(平成12年12月7日) [報告書] [本部決定]

5-(1) 上陸審査基準の見直し

(1) 本部決定(1)について
本年2月29日付けをもって、必ずしも現地人2人の雇用がなくとも「その程度の規模」に相当する額の投資があれば「投資・経営」の在留資格での上陸を許可するよう各地方の入国管理局にその趣旨を徹底した。

(2) 本部決定(2)及び(3)について
在留資格「投資・決定」基準の「2人を雇用しない場合のガイドライン」については、本年中の作成を目指して検討中である。