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市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書(平成12年3月16日)

1-(2) 植物検疫基準の緩和(キウイフルーツ)

○ 問題提起者:駐日ニュージーランド大使館

○ 所管省庁:農林水産省

○ 問題提起内容

日本の植物検疫官が日本の57の非検疫害虫リストに含まれていない有機体(オーガニズム)を輸入品に認めた場合、必ずくん蒸が求められる。ニュージーランド産キーウィフルーツに貯蔵中によく生じる有機体が発見された場合、日本にそれに匹敵する有機体があり、しかもそれらは有効な防除プログラムの対象ではないにもかかわらず、くん蒸が求められるが、植物防疫の観点から輸入品にくん蒸を求める科学的根拠は全くない。くん蒸はキーウィフルーツの貯蔵寿命を短くするとともに、くん蒸の残留物に対する消費者の懸念を呼び起こしかねない。これは、ニュージーランドから輸入したキーウィフルーツに対する差別という結果をもたらす。ニュージーランドから輸入したキーウィフルーツにくん蒸が求められる割合は増えており、1996年には1出荷当たり平均13%前後のロットであったが、97年には30%、98年には40−43%になっている。99年に関しては、今年6月からくん蒸率は80%前後になっている。

くん蒸要件は、輸入果実に害虫が発見された場合、その害虫が日本にいないか、あるいは日本にいても有効な防除プログラムの対象になっている場合のみ、適用されるべきである。

○ 所管省庁における対処方針

(1) 近年におけるニュージーランド産キウイフルーツの検査不合格率(件数ベース) は、96年は24.3%であったものが、99年(1〜6月)は、71.1%に増加している。

不合格の理由は、フラーバラゾウムシ、アザミウマ等の検疫有害動植物が発見されていることによるが、特にフラーバラゾウムシの発見事例が大半を占めている。フラーバラゾウムシ発見率(件数ベース)は、96年は19.1%であったものが、99年(1〜6月)は61.9%に増加している。

フラーバラゾウムシは、樹皮の割れ目や果実のヘタ部などに卵を隠すように産卵するため、キウイフルーツにおいても、果実のヘタ部に付着した卵塊が発見されており、特に本年に入って発見率が激増している。

(2) フラーバラゾウムシは、我が国未発生であることから、「検疫有害動植物」(植物防疫法第5条の2)に該当しており、キウイフルーツの他カンキツ類やリンゴ、ナシ等の果樹、バラ等の花木類やキク等の草花等、非常に多くの植物の害虫として知られ、我が国でも侵入を警戒する重要な害虫として、厳重な輸入検疫の対象としているところである。

また、アザミウマ等については、我が国の一部に未発生の種類があるとともに、我が国に発生している種類であっても我が国における果樹の重要害虫として防除の対象となっていること等から、「検疫有害動植物」に該当する。

このように、これらニュージーランド産キウイフルーツのくん蒸の対象となっている害虫は、今回の問題提起にあるように通常貯蔵中によく発生する病害虫ではなく、我が国の農業生産上重要な害虫となりうる種類であって、くん蒸措置は正当な科学的根拠に基づくものであり、また国際基準にも合致したものである。

(その後の状況)
問題提起者は、所管省の対処方針に対し、

(1) 非検疫有害動植物のリスト化ではなく検疫有害動植物のリスト化をすべきである、

(2) フラーバラゾウムシが本当に日本に生息していないかどうか、

などとする反論を行った。

これに対して所管省では、問題提起者の反論に対して以下の通り回答。

(1) ニュージーランドとは輸入検疫制度に相違があることからリストの作り方についても相違があると認識している。ニュージーランドは新たに農産物の輸入希望があった場合には、当該国の当該植物に付着する病害虫のPRA(危険度解析)が終了するまで輸入許可が出されないと承知している。この制度の下では、PRAの終わった病害虫のうち危険なものを順次検疫有害動植物リストに追加する一方、PRAの終わっていない病害虫が付着する農産物の輸入を認めないことで検疫上の安全を確保している。一方、我が国は、輸入禁止及び栽培地検査対象の病害虫の付着するおそれのある植物以外の植物類はすべて輸入が可能であるというきわめて透明性のある制度を採用している。しかしながら、国内農業に重大な影響を及ぼす可能性のある未知の病害虫を含む10万種以上とも言われる有害動植物の国内への侵入・定着を回避するためには、検疫有害動植物を、非検疫有害動植物リストに挙げられている有害動植物以外のものとして示すことが必要であり、また右方式が有効に機能するものとの考え方に基づき採用しているものである。このことから、両国制度の根本的な違いを抜きにして、リストの作り方だけを取り上げて議論することは適当ではない。

(2) フラーバラゾウムシは日本には分布していなかったが、近年、ごく限られたほ場で発見されたことから、国費を投入して防除を行うとともに、輸入検疫においては今まで以上に厳重な検査により新たな侵入防止に万全を期することとしている。

(備考)
本件は、二国間協議の場で引き続き議論を深めることで両国の見解は一致している。