OTOデータベース HOME

市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書(平成12年3月16日)

1-(5) 酪農産物輸入制度の改善

○ 問題提起者:駐日ニュージーランド大使館

○ 所管省庁:農林水産省

○ 問題提起内容

一般使用の指定酪農品(DDPGU:Designated Dairy Products for General Use)割当を例外として、他のすべての国内用酪農品関税割当は充当されていない。DDPGU割当(例えば、脱脂粉乳や他の固形物に適用)の場合、日本政府またはその代行者(農畜産振興事業団−ALIC)は、買い入れた輸入品を再販売する前に、「マークアップ」を課する。同事業団による割当管理は、特に輸出業者が日本の顧客と直接関係を樹立できないために、割当から最大限の利益を得るためのニュージーランドの能力を損ねる。

従って、我が国は下記を日本政府に要望する。
1) 市場アクセス機会が十分に得られるようにする一助として、DDPGU以外の酪農品の関税割当の管理をより透明度の高いものにする。
2) DDPGU割当等のもとで、ニュージーランドの輸出業者が日本の顧客と直接関 係を確立できるように、日本政府の現行の貿易制度を一方的に自由化する。

○ 所管省庁における対処方針

(1) 日本が行う乳製品についての関税割当制度を含む国境措置は、UR合意に基づいたものである。

(2) 関税割当制度の透明制の確保並びに枠消化率向上に向けた運用について

1) 特定用途向け指定乳製品等の関税割当は、その割当基準、申請者の資格要件等の必要な情報を関税割当公表、通産省弘報、インターネット等によって公表するとともに、NZに対しては、年2回開催される酪農品需給情報交換会議においてこれまでも相当な時間を費やして関税割当の運用等について説明しており、透明性の問題はないと考えている。
2) 枠の消化率向上に向けた取組としては、消化率の低い輸入業者について次年度の割当数量を削減する一方、消化率の高い輸入業者及び新規参入者への割当を増加する基本方針をとっている。1997年度から枠の残量を年度内に再申請できる制度を実施しているところである。
3) また、いくつかの関税割当枠が未消化となっている原因は、そもそも交渉の結果、需要を上回る枠が設定されている品目があったり、特定用途向け乳製品のうちの学校給食用や育児用は児童数、乳幼児数が減少していること、また、飼料用も家畜数の減少によるものなど、国内需要量の減少によるものである。

(3) 一般用途向け指定乳製品も含めた一方的な輸入自由化の要請について

1) 国家貿易品目については、農畜産業振興事業団はWTO協定上認められた国家貿易企業として、WTO協定の約束を誠実に実行しており、輸入される乳製品についても市場で求められているものを輸入している。
2) なお、国家貿易品目の輸入の際に同事業団が徴収するマークアップについてもWTO協定上認められているものである。

(その後の状況)
問題提起者は、所管省の対処方針に対し、

(1) 関税割当枠の未消化率は児童数の減少率を上回って拡大している、

(2) 未消化枠の再配分が不十分である、

(3) 割当枠が未消化である理由として、Basket quotas(その他の乳製品枠(参考))の消化率が悪い、

(4) 特定地域限定枠が輸入の障害になっている、

(5) 需要者割当てが輸入の障害になっている、

(6) 割当者名の非公表が輸入の阻害要因になっている、

とする反論を行った。

これに対して所管省では、平成12年4月に予定されている二国間協議においても引き続き議論したいとしているが、問題提起者の反論に対しては以下の通り回答。

(1) 学校給食用等の脱脂粉乳の低消化率の原因について、より詳細に分析した上で回答する。

(2) 年度当初の割当て後に残量がある場合、追加的に枠の申請ができる制度を97年度から採用し、十分に機能している。一度配分した枠の未消化分の再配分は運用上困難。

(3) Basket quotas(その他の乳製品枠)に関して、98年度はアイスクリーム需要者枠の消化率が悪かったが、次年度はこの実績を踏まえ枠の未消化を減するよう割当てを行っていく。

(4) 特定地域限定枠の対象となっている製品は現在沖縄にしか需要がないものである。

(5) 需要者割当の対象として当該原料の需要者はすべてカバーされている。

(6) 割当者の名前の公表は、ガット13条、割当者のプライバシー保護の観点から実施不可能である。

(備考)
本件は、日・NZ酪農品需給情報交換会議において、引き続き議論を深めていくことで両国の見解は一致している。

なお、所管省では、学校給食用等の脱脂粉乳の低消化率の原因を分析した上で、児童数減少のほか、米飯給食の普及等によるパン食需要の減少等によりパンの原料である脱脂粉乳の消化率も減少している旨問題提起者に回答した。