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市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書(平成12年3月16日) [フォローアップ]

2-(2) 化粧品のラベル表示方法の変更及び化粧品規制制度改正の実施スケジュールの明確化

○ 問題提起者:経済団体連合会

○ 所管省庁:厚生省

○ 問題提起内容

(1) 化粧品のラベル表示方法の変更

化粧品に関して薬事法による表示規制を改正し、既に許可を得た製造業者または輸入販売業者が、自社名のみの記載による販売を希望する販売業者のために製造または輸入する場合には、1) 許可業者と販売業者が連名で事前に所管省庁に届け出ることにより、販売業者名に届け出に係る記号を併記すること、または、2)販売業者名に許可業者の許可番号を併記すること、等の方法により、製造物責任の所在を十分明確化したうえで、販売業者名のみの記載による販売も可能とすべきである。

厚生省の対処方針には、「安全性情報の一元的な管理」のために「製品に製造(輸入販売)業者の名称等の記載を求めている」とあるが、実際には、販売業者と製造(輸入販売)業者の両方が表示されているケースも多く、その場合、製品の安全性や品質に問題があった際に、消費者が連絡を取るのはおおむね販売業者である。その理由は、その製品に関する事業責任会社として販売業者名が製造(輸入販売)業者名よりも大きく表示され、かつ電話番号も販売業者の番号が表示されるからである。すなわち現行制度の下でも、消費者からの安全性情報の、販売業者から製造(輸入販売)業者への伝達が、事実上行なわれているに過ぎず、法的に担保されているわけではない。

従って、販売業者から製造(輸入販売)業者への市販後における副作用等に関する安全性情報の伝達を法的に義務づければ、販売業者の名称のみを記載した場合であっても、製造(輸入販売)業者による関連情報の管理が可能となる。消費者との関連では、多くの場合、製造物責任を第一義的に負うのは販売業者であるため、消費者が、販売業者と直接連絡できる体制を確保しておけば、問題はないと考えられる。

また、上述の1)または2)等の方法を取れば、製造責任者を行政サイドが把握することができる。

食品に関しては、既に食品衛生法の下で、表示業者は販売業者のみで足りるとされているが、製造物責任が行政及び消費者の観点から支障をきたしている事例はない。

(2) 化粧品規制制度改正の実施スケジュールの明確化

現在、厚生省において化粧品規制制度の改正作業がおこなわれているとのことだが、具体的な実施スケジュール及び手順が開示されていない。平成10年12月のOTO対策本部決定に基づき「実施スケジュール・手順を明確化した上で」改正作業を行うべきである。

○ 所管省庁における対処方針

(1) 化粧品のラベル表示方法の変更

化粧品は、人の身体に塗擦、散布等によって使用することを目的としたものであるため、保健衛生上の観点から、業として化粧品を製造又は輸入する際には薬事法に基づく許可を必要としている。

また、薬事法上、化粧品において何らかの不具合が生じた場合、健康被害の拡大を防止し、製品の回収等の必要な安全対策を行うため、製造(輸入販売)業者は製造(輸入販売)したことに伴う義務として副作用報告義務、回収報告義務等を課している。

これは、市販後における副作用等の安全性情報を一元的に管理するため、製品の内容・特性について熟知している製造(輸入販売)業者に課している。

市販後の製品の安全性や品質上の問題は、消費者が実際に使用することで判明する場合が多く、問題が生じた際には消費者が直接責任者に連絡を取れる体制を取ってこそ、迅速な対応が可能なものである。そのためには製造物責任者を行政が把握するだけでなく、消費者にも明示する必要があり、製品には製造(輸入販売)業者の名称等の記載を求めている。

したがって、許可を受けている業者の名称等を直接の容器に記載せず販売することは、保健衛生上の観点より困難である。

なお、化粧品の直接の容器等に販売業者の名称のみを記載した場合、このような情報は販売業者のみが知り得る立場になるが、販売業者と製造(輸入販売)業者の間の情報伝達には法的な担保はなく、販売業者が得た情報が製造(輸入販売)業者に確実に伝わるとは限らない。

しかしながら、米国商工会議所(ACCJ)、欧州ビジネス協議会(EBC)及び国内企業の代表からの要望を受けつつ、製造(輸入販売)業者が、より手間やコストを掛けずに許可が取得できるよう、薬事法上の許可を取得する際の試験設備、責任技術者の要件や許可業者間の委受託製造の範囲等について、その運用の在り方の見直しについて検討することとしており、平成12年度末までに実施を予定している化粧品規制の全面的な見直しとあわせて検討を行っているところである。

(2) 化粧品規制制度改正の実施スケジュールの明確化

平成10年度からの政府規制緩和推進計画に従い、平成12年度末までに実施予定である。具体的には、今年度末には新たな制度の案を示し、WTO通報、パブリックコメントの聴取等を行った上で、関係法令等の改正を行い、一定の準備期間を設けた上で、平成12年度末までに新たな制度を実施することとしている。

(備考)
問題提起者において検討中。

(委員意見)
本件については、委員から、「厚生省は安全性情報を一元的に管理する必要を強調しているが、厚生省の管理下の製造業者がまとめて整理してくる情報のみ受け入れるのは行政の怠慢である。化粧品による被害を防ぐ必要は大いにあるが、消費者が実際に使用することで判明する場合が多いのが実態なのだから、製造物責任法(PL法)に基づく提訴を勧奨して、その事実に基づいて厚生省が対応する方が有効である。」等とする意見が出された。これに対し所管省は、「薬事法上、製造物の責任の所在を明らかにするため企業には一元的に情報を整理した上で、当局に報告を求めている。一方、化粧品の安全性に関して消費者や医療機関等から厚生省が直接得た情報があれば、適宜対応することとしている。化粧品は予見し得ない未知の副作用もあり得、このような副作用は基本的にはPL法上は免責されるが、薬事法では副作用の報告等を義務付けており、両法では法の目的が異なる。」等とする回答を行ったが、委員から「規制緩和を強力に進める一方で消費者の生活を守るのは、旧来の法律の墨守ではなく、独禁法とPL法の強力な運用と社会への浸透である。」等とする再意見が付された。


フォローアップ(平成12年12月7日) [報告書]

2-(2) 化粧品のラベル表示方法の変更及び化粧品規制制度改正の実施スケジュールの明確化

化粧品製造(輸入販売)業者が、より手間やコストを掛けずに許可が取得できるよう、薬事法上の許可を取得する際の試験設備、責任技術者の要件や許可業者間の委受託製造の範囲等について、その運用の在り方の見直しについて検討することとしており、平成12年度末までに実施を予定している化粧品規制の全面的な見直しとあわせて検討を行っているところである。
化粧品の規制制度改正については、今年度4月から、その制度案に関してのパブリックコメントの聴取を行い、5月にはWTO通報を行ったところである。その上で、薬事法施行規則の改正等を9月29日付で公布し、平成13年4月1日より施行することとしている。