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市場開放問題苦情処理推進会議第6回報告書(平成12年3月16日) [フォローアップ]

8-(1) グルタルアルデヒドの変異原性確認試験方法の国際的整合化

○ 問題提起者:駐日米国大使館

○ 所管省庁:労働省

○ 問題提起内容

病院における消毒薬等として使用されるグルタルアルデヒド(以下「GA」という。)が、平成10年10月に、労働安全衛生法上、「強度の変異原性が認められた既存化学物質」とされたが、その試験方法は、in vitro試験結果のみによる判定と推測される。

一方、欧米諸国におけるGAの変異原性を確認する試験については、in vitro試験のみにより変異原性ありとは結論づけておらず、in vivo試験とin vitro試験の双方による総合判断を行い、その結果、変異原性については問題なしとされている。

したがって、我が国も、GAの変異原性については、試験方法の国際的整合化の観点から、諸外国の試験結果を受け入れ、問題なしとすべき。

(注)
in vitro試験:培養細胞に検体である化学物質を加えて培養し、染色体異常を調べる方法。
in vivo試験:ラットなどの生体内に検体である化学物質を投与し、細胞で染色 体異常を調べる方法。

○ 所管省庁における対処方針

労働省が行う有害性の調査制度は、がん原性に着目したものであり、労働安全衛生法第57条の4に基づいて行われている微生物を用いる変異原性試験(生体外(in vitro))と培養細胞を用いる染色体異常試験(in vitro)の2種類の試験は、がん原性の疑いのある物質を洗い出す(スクリーニング)ために行っているものである。この2つの有害性の調査の結果評価は、「変異原性」の有無として評価している。

この結果、変異原性があると評価された物質については、労働者の健康障害を予防するという見地から労働省労働基準局長通達で当該物質を周知するとともに、製造・取扱いの方法について指導を行うこととされているものであり、既に100以上の物質についてこれに沿って公表及び指導を行っている。労働省が行う変異原性試験結果の評価対象としては、in vitro試験のみで十分であると思料している。

しかしながら、これらの試験はがん原性の疑いのある物質を洗い出し(スクリーニング)する趣旨で行われていることから、当該物質についてがん原性が認められないことが明確になった場合については、別途検討することとする。

(その後の状況)
問題提起者は、労働省の対処方針を受け、グルタルアルデヒドのがん原性が認められないことを示しているとされる資料を、平成11年11月に所管省へ提出した。

これを受け所管省では、提出されたデータは、当該試験がOECD-GLP基準に適合した試験施設で行われていること及びOECDテストガイドラインにより実施された旨の明確な記載がなく、がん原性の有無を評価することが適当でないとし、更にこれを証明する書面等が必要であるとする回答を行った。

これを受け問題提起者において、所管省の求める資料を準備中。

(参考)
OECD(Organization for Economic Cooperation and Development:経済協力開発機構)が、OECD-テストガイドライン及びOECD-GLPを作成し、加盟各国がこれらを採用するよう勧告したことを受け、労働省では、昭和63年5月、法令改正を行い、新規化学物質の有害性の調査は、有害性の調査の基準(テストガイドライン)に従って行われることおよび当該有害性の調査は有害性の調査を行う試験施設等が具備すべき基準(GLP)に合致した試験施設等において行うべきこととした。


フォローアップ(平成12年12月7日) [報告書]

8-(1) グルタルアルデヒドの変異原性確認試験方法の国際的整合化

平成12年4月に問題提起者より労働省に提出されたNTP(米国国家毒性プログラム)が実施し、評価したがん原性試験結果等をもとに、専門家からその結果及び変異原性とがん原性の関連性等について意見を聞いた上で、平成12年8月に以下のとおり労働省としての見解を回答した。
(1)NTPが実施し、評価したがん原性試験結果は、有害性情報として利用できるものであるが、GAについては、労働省が委託して行った試験の結果について学識経験者の意見を聞いた上で変異原性が認められた化学物質としたものであり、今回提出された資料によってその評価が変更されるものではない。
(2)GAについては、必ずしもヒトに対するがん原性がないとは言えず、人体に健康影響を及ぼすと考えられる情報が得られていることを考慮して、労働衛生対策は、予防的な観点から考える必要がある。
(3)したがって、労働省は、GAを引き続き変異原性が認められた化学物質のリストに残すこととする。
(4)GAを譲渡・提供する事業者等がMSDSを作成する際の参考とするため、NTPが実施したがん原性試験の結果については、がん原性の証拠が認められないと評価されている旨、関係者に対して周知を行う。(中央労働災害防止協会安全衛生情報センターのホームページにより周知済み。)

これに対し、平成12年9月に問題提起者から面会して説明を求める旨の要望があり、平成12年10月に、改めて平成12年8月に回答した内容を説明した。
その際に、問題提起者からGAについてin vitro試験の結果とin vivo試験の結果の総合評価を行うこと及びGAのin vivo試験結果のNTPにおける評価について周知を行うことについて要望があり、平成12年11月に以下のとおり回答を行った。
1 「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」は、微生物を用いる変異原性試験とほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験等の結果及びその結果を踏まえた当該物質の取扱いについて学識経験者に意見を聴取し、これらの試験の結果、変異原性が認められるとされた化学物質を「変異原性が認められた化学物質」として周知し、予防的な観点から必要な措置を講じることを要請しているものであり、in vivoの変異原性試験の結果をもってその取扱いを変更することはできないものである。
2 GAに係るNTPのin vitroとin vivoの変異原性試験の結果の評価等については、その内容を周知することとする。
3 労働省においてin vivoの変異原性試験の結果の評価を行う考えはないが、OECDにおける化学物質の分類に関する国際調和等の動向を踏まえ、変異原性の評価の方法等について検討することは、今後の課題と考えている。
4 指針に表記している「原性が認められた化学物質」については、「微生物を用いる変異原性試験とほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験等の結果により評価された化学物質」という意味であることについて理解されるよう努めることとする。

(注)MADSとはMaterial Safety Data Sheets(化学物質等安全データシート)の略で、有害な化学物質について、物質名、供給者、有害性、取扱い上の注意、緊急時の措置などについて詳細かつ不可欠な情報を含んだ資料のことをいう。