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市場開放問題苦情処理推進会議第7回報告書(平成14年3月18日) [本部決定]

1-(3) 新たに導入された登録外国認定機関制度の活用(有機JAS)

○ 問題提起者:国内事業者

○ 所管省庁:農林水産省

○ 問題の背景

(1) 有機農産物及び有機農産物加工食品については、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律」(平成11年法律第108号)等により、平成13年4月1日以降、JAS規格による格付の表示(有機JASマーク)が付されていない場合には、「有機」等の表示ができないこととなった。(法第19条の10)

(2) 輸入農産物等の場合、この有機農産物等の格付を行う枠組みとして、登録外国認定機関※による認定を受けた外国の製造業者、生産行程管理者等が外国において格付を行うという枠組みが、改正法により新たに設けられた。
  ※ 「JAS制度と同等の格付制度を有する外国」において、日本国内の登録認定機関と同様の要件を満たす機関として農林水産大臣の登録を受けた法人

(3) しかし、この登録外国認定機関についてみると、上記(1)の表示規制が実施された平成13年4月1日以降も登録がなされず、法が当初予定していた枠組みを使うことはできない状況となっていた。※
  ※ 改正法は平成12年6月10日から施行され、平成13年4月1日の表示規制の実施前に、登録外国認定機関の登録は可能となっていたが、現実には、法施行後1年2か月を経過し、本件問題提起がなされた後の平成13年8月27日に初めて1機関が登録された。(平成14年2月22日現在、オーストラリアの機関が5機関、オーストリアの機関が1機関登録されている。)

○ 問題提起内容

 登録外国認定機関の登録の遅れにより、輸入業者等は、法が本来予定していた平成13年4月1日からの有機JASマーク貼付済み物資の輸入ができず、損害を被ったところであり、農林水産省は、新たに導入された登録外国認定機関制度の活用を図るため、以下の具体的措置を講ずるべきである。

(1) 標準処理期間の設定
ア 登録外国認定機関の登録に係る標準処理期間
 登録外国認定機関の登録申請後、登録されるまでの期間については、何ら目安がなく、当該機関の利用を予定している者にとって、その事業計画等が全く立てられない状況となっており、また、登録に要する期間が長期化することを懸念し、申請を思い止まっている機関もある。
 一方、行政手続法によれば、行政庁は、申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めることとされている。
 したがって、農林水産省は、行政手続法の趣旨を踏まえ、登録外国認定機関の登録申請から登録までの期間について、標準処理期間を設定すべきである。

イ 製造業者等の認定に係る標準処理期間
 外国の製造業者等において有機農産物等の格付を行えるよう、外国の製造業者等が登録外国認定機関から認定を受ける期間についても、何ら目安となるものがなく、製造業者、輸入業者等の事業計画の策定及び実施に当たり、著しい支障となっている。(この問題は、日本国内の登録認定機関が行う認定についても同じ。)
 したがって、登録外国認定機関(登録認定機関)が外国製造業者等を認定する期間について、標準処理期間を定めるよう各機関を促すべきである。

(2) 登録外国認定機関を増加させるための措置
ア 英語等による申請を認めるなど申請を容易にするための措置
 登録外国認定機関の登録申請を行おうとしたところ、申請に係る書類及び資料を全て日本語で提出するよう求められ、翻訳に要する費用だけでもかなりの金額になることが判明したため、登録申請に係る事務を中断している機関がある。
 農林水産省は、登録外国認定機関の増加を図る観点から、登録外国認定機関の登録申請について、英語等による申請を認めるなど、登録申請を容易にするための具体的措置を講ずるべきである。

イ 「JAS制度と同等制度を有する国」要件の緩和
 この要件について、農林水産省は、「厳正・客観的・公平な認定の確保、そのための相手国政府を通じた当該外国法人の管理・監督の必要性」を理由に当該要件は必要とするが、「厳正・客観的・公平な認定の確保」のための外国法人の管理・監督は、農林水産省自らが「国際的に信頼性が確立している機関」とする機関(IOAS:International Organic Accreditation Services)を通じても可能であり、「JAS制度と同等制度を有する国」を要件とする合理的理由とはならない。
 登録外国認定機関については、本来、当該機関が有する認定能力に着目すべきであり、農林水産省も「国際的に信頼性が確立している機関」とするIOASに登録されている外国法人については、例えば、輸入業者等からの要望が強いアメリカのOCIA(Organic Crop Improvement Association)等、現在「JAS制度と同等制度を有する国」に指定されていない国の外国法人についても、登録外国認定機関として登録される門戸を開くべきである。

○ 検討結果

(1) 標準処理期間の設定
ア 登録外国認定機関の登録に係る標準処理期間
 所管省は、登録認定機関及び登録外国認定機関の登録に係る行政手続法(平成5年法律第88号)第6条に規定する標準処理期間について、平成13年9月17日付け13総合第2500号で一部改正した「登録認定機関及び登録外国認定機関の登録、登録の更新、認定手数料及び認定業務規程の認可その他の監督に関する要領」の第10(標準処理期間)において、3か月以内と定めた。
 所管省は、今回の問題提起を契機として新たに登録外国認定機関等の登録に係る標準処理期間を定め、その期間を3か月以内と設定したが、その実行に当たっては、事務処理の効率化等を図り申請の迅速な処理に努めるべきである。

イ 製造業者等の認定に係る標準処理期間
 所管省は、登録認定機関又は登録外国認定機関が外国製造業者等を認定するにあたっての標準処理期間について、平成13年10月15日付け13総合第2896号総合食料局長通知にて各登録認定機関等に対し、標準処理期間を定めるよう努めるとともに、その内容を申請者に対し周知を図るよう連絡を行った。

(2) 登録外国認定機関を増加させるための措置
ア 英語等による申請を認めるなど申請を容易にするための措置
 登録外国認定機関の制度は、平成11年の法律改正により新たに導入された制度であり、所管省は、この新たな制度の利用が円滑に進むよう積極的な対策を講ずるべきである。
 そのための具体的方策の一つとして、登録外国認定機関の登録申請に当たっては、英語等による申請を認めることにより登録申請を容易にし、登録機関数を増やすことが考えられる。
 この点について、所管省は、我が国政府に申請されるものについて、我が国の国語(公用語)である日本語を用いることは当然であるとして、英語等による申請を認めていない。
 しかし、英語は既に世界の標準語となっており、また、EU諸国においては、母国語のほか、英語、仏語及び独語による申請を認めている。
以上を踏まえ、所管省においては、輸入業者等が円滑に登録外国認定機関を活用することができるよう登録外国認定機関の増加を図る観点から、登録申請に必要な書類等の一部について、英語による記載を認める等登録外国認定機関の登録を容易にするための具体的措置を検討すべきである。

イ 「JAS制度と同等制度を有する国」要件の緩和
 所管省は、厳正・客観的・公平な認定の確保、そのための相手国政府等を通じた当該外国法人の管理・監督等の必要性の観点から、登録外国認定機関となるためには、「JAS制度と同等制度を有する国」に属することが必要としている。
 このため、例えば、アメリカのOCIA等輸入業者等からの要望が強い機関についても、アメリカが「JAS制度と同等制度を有する国」として指定されていないことから、登録外国認定機関として登録されることは不可能な状況。
 しかし、「厳正・客観的・公平な認定の確保」は、「相手国政府」を通じた管理・監督だけでなく、所管省自身「国際的に信頼性が確立している機関」とするIOASを通じた管理・監督によっても可能であり、少なくともIOASに登録されている機関については、アメリカ等「JAS制度と同等制度を有する国」として指定されていない国の機関であっても、登録される門戸を開くべきである。
 本来、登録外国認定機関は、その機関が有する認定能力に着目すべきであり、その機関が属する国の制度にかかわらず、その機関の能力に応じ、登録外国認定機関として認められるべきものである。「JAS制度と同等制度を有する国」であることは、登録外国認定機関の適正管理のための担保にすぎず、同等制度を有する国であることを必須の要件とすることは、極めて硬直的な考え方である。
 また、建築基準法においても、国土交通大臣が承認する外国の「承認認定機関」に、外国の型式部材等製造業者の認定を行わせるスキームがあるが、JAS法と異なり、承認認定機関となるための要件として、我が国と同等制度を有する国に属する機関であることは必要とされていない。
 なお、「JAS制度と同等制度を有する国」として指定されているのは、オーストラリア及びEU諸国のみとなっているが、IOASには、オーストラリア、ドイツ、イタリア等のほか、アメリカ、ニュージーランド、イスラエル、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル等の機関が登録されている。
 以上を踏まえ、所管省においては、輸入業者等がJAS制度と同等性を有する国として指定されていない国の機関についても登録外国認定機関として活用することを可能にし、登録外国認定機関の適正な運営・監督を確保するため、「JAS制度と同等制度を有する国」を要件としないこと、またその場合には、国際的に信頼性が確立している機関(例えばIOAS)に登録されている機関を活用すること等JAS法の改正について検討し、必要な措置を講ずるべきである


OTO対策本部決定(平成14年3月20日) [報告書]

1-(3) 新たに導入された登録外国認定機関制度の活用(有機JAS)

有機農産物等について、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)に定められる登録外国認定機関制度の活用に関し、以下の対応を取る。

ア 今回の問題提起を契機として新たに登録外国認定機関等の登録に係る標準処理期間を定め、その期間を3か月以内と設定したが、その実行に当たっては、事務処理の効率化等を図り申請の迅速な処理に努める。

イ 輸入業者等が円滑に登録外国認定機関を活用することができるよう登録外国認定機関の増加を図る観点から、登録申請に必要な書類等の一部について、英語による記載を認める等登録外国認定機関の登録を容易にするための具体的措置を検討する。

ウ 輸入業者等がJAS制度と同等性を有する国として指定されていない国の機関についても登録外国認定機関として活用することを可能にし、登録外国認定機関の適正な運営・監督を確保するため、「JAS制度と同等制度を有する国」を要件としないこと、またその場合には、国際的に信頼性が確立している機関(例えばIOAS)に登録されている機関を活用すること等JAS法の改正について検討し、必要な措置を講ずる。