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市場開放問題苦情処理推進会議第7回報告書(平成14年3月18日)

1-(1) 紡績用洗い上げ獣毛輸入時のくん蒸について

○ 問題提起者:名古屋商工会議所

○ 所管省庁:農林水産省

○ 問題提起内容

1.指定検疫物(動物、その死体又は骨肉卵皮毛類等で農林水産大臣が指定するもの)を輸入する場合は、輸出国政府機関により発行された家畜伝染病の病原体をひろげるおそれがない旨の検査証明書が添付され、かつ、輸入検査(家畜伝染病の病原体をひろげるおそれの有無についての検査)によりその安全性が確認されることが求められており(家畜伝染病予防法第37条、第40条等)、当該輸入検査の結果、当該物資が家畜伝染病の病原体に汚染し又は汚染しているおそれがある等の場合には、当該物資を焼却、消毒等することが求められている。(同法第46条)
この指定検疫物としては、家畜伝染病予防法施行規則第45条により、偶蹄類の動物、馬、鶏、犬及び兎等並びにその皮及び毛等が指定されている。
また、消毒の方法については、毛等の場合、ホルマリン水による消毒が規定されているところ。(同施行規則別表第1)

2.上記輸入検査及び当該検査に基づく消毒の具体的運用として、名古屋港及び名古屋空港を所管する動物検疫所においては、以下の取り扱いがなされている。
洗い上げ羊毛(Scoured Wool)や洗い上げ山羊毛(Scoured Goat Hair)を輸入する場合は、汚れたものであっても、また、輸出国に関係なく、殆どくん蒸は不要との扱いがなされる。
一方、洗い上げ兎毛(Scoured Rabbit Hair)、洗い上げカシミヤ整毛(Scoured & Dehaired Cashmere Hair)、洗い上げキャメル整毛(Scoured & Dehaired Camel Hair)等を輸入する場合、例えばドイツのOIE(Office International des Epizooties)基準に適合している旨の公的証明書(Official Veterinary Certificate)が添付されている等、日本と同等の検査基準・レベルを有すると思われる、イギリス、ドイツ、フランス、スイス等先進ヨーロッパ各国政府機関の衛生証明を受けているものであっても、全てホルマリン水によるくん蒸が求められる状況。

3.洗い上げ兎毛等についても、くん蒸不要とするよう、名古屋港及び名古屋空港を所管する動物検疫所の担当官に対し、その要求どおり、洗い上げ工程及び使用洗剤等の資料を提出し、洗い上げ羊毛等と比べその清潔度に遜色はない旨の説明を行ったが、依然として洗い上げ兎毛等については、くん蒸を行わないと輸入できない状況。
また、上記説明の際、当該動物検疫所のある担当官からは、「(その担当官が)在職する限り、過去に輸入実績のない獣毛は再くん蒸なしでは輸入許可は絶対しない。」と極言されているところ。

4.しかし、上記ヨーロッパ各国からの洗い上げ兎毛等は、1)その製造過程において、幾度も高熱乾燥処理され、完全に無菌状態となっており、また、2)その衛生状態についても、日本と同等の検査基準・レベルを有すると思われるヨーロッパ各国政府機関の衛生証明を受けているものであり、更に 3)ホルマリン処理された原料については、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」(昭和48年第112号)に基づく政令において、乳幼児肌着類等への使用が禁止されているなど、ホルマリンは人体にとって有害な物質であり、本来、その使用は極力控えるべきものであることから、上記3.のような動物検疫所の対応は、不合理なものと考える。

5.したがって、農林水産省は、洗い上げ兎毛等について、1)その輸送中に新たな汚染の可能性がない場合には、ヨーロッパ各国政府機関の検査結果をそのまま受け入れ、くん蒸を行わないよう必要な措置を講ずること、また、2)輸入検査における具体的基準を明示し、くん蒸が必要となる場合には、その理由を明示するとともに、輸入業者等が今後どのようにすれば、くん蒸不要の物資として輸入することができるかを明確かつ丁寧に説示すること。
更に、3)当該物資の輸入検査及びくん蒸に係る費用は、輸入数量に関係なく定額の設定となっているが、数量により要する経費は異なるはずであるから、商品見本等少量の輸入に係る費用については、少額の価格設定としてほしい。

(再意見)

1.繰り返しとなるが、ヨーロッパ各国から輸入する洗い上げ兎毛等は、消毒不要との扱いがなされている洗い上げ羊毛と同様の洗浄工程で製造されており、洗い上げ兎毛等を洗い上げ羊毛等と区別して取り扱い、消毒等を必要とする合理的理由はない。
既に、動物検疫所の担当官の指示どおり、洗浄工程等病原体の殺滅に係る資料を提出し説明を行っており、農林水産省は、直ちに洗い上げ兎毛等についも消毒等を不要とする措置を採るべきである。

2.農林水産省からの回答においては、今後の具体的スケジュール及び具体的対処内容が明らかでなく、現行処理と大差なく単に表現を変えただけとしか受け取れない。
さらに、本事例において、農林水産省は、具体的にどのような点について、洗い上げ兎毛等の病原体殺滅程度が洗い上げ羊毛等に比べ劣るとみなし、消毒等を要求したのか、その具体的理由も明らかでない。
したがって、農林水産省は、上記具体的スケジュール、具体的対処内容及び本事例について消毒を求めた具体的理由を明らかにすべきである。

○ 所管省庁における対処方針

1.洗い上げ兎毛の輸送中に新たな汚染の可能性がない場合には、ヨーロッパ各国政府機関の検査結果をそのまま受け入れ、くん蒸を行わないよう必要な措置を講ずることについて

(1)兎毛を含む獣毛類の輸入検査については、家畜伝染病予防法に基づき、家畜の伝染性疾病の病原体をひろげる恐れがないことを確かめ、または信ずる旨の輸出国政府機関の証明書に係る違反の有無と現物との照合、確認及び家畜伝染病予防法で定められている家畜伝染病と届出伝染病(以下「監視伝染病」と総称する。)の病原体をひろげる恐れの有無について検査を行っており、ヨーロッパ各国政府機関が発行する検査証明書及びその証明内容を受け入れているところである。

(2)さらに、獣毛類については、検査の結果、監視伝染病の発生している等家畜衛生上の問題のある地域で生産、発送あるいは経由した場合及びその加工、梱包及び輸送等の際に監視伝染病の病原体に汚染された恐れがある場合、我が国への監視伝染病の侵入防止を図るため、消毒を実施しているものであり、家畜防疫上これらの消毒を廃止することは出来ない。

(3)しかしながら、洗い上げ獣毛については、輸出検査証明書及び輸入者等から提出される説明書等から、加工工程において監視伝染病の病原体が殺滅されることが確認できる場合は、くん蒸等消毒の措置は実施していない。

(4)本事例に係る加工処理については、輸入申請時に提示された内容だけでは病原体の殺滅効果が充分に担保されず、消毒を実施したところである。今後は輸入者等と緊密に連絡をとり、加工工程等必要な情報も入手し、消毒の実施の有無について迅速な処理に努めて参りたい。

2.輸入検査における具体的基準を明示し、くん蒸が必要となる場合には、その理由を明示するとともに、輸入業者等が今後どのようにすれば、くん蒸不要の物資として輸入することができるかを明確かつ丁寧に説示することについて

(1)消毒等の実施についての具体的基準としては、昭和56年7月29日付け「輸入畜産物消毒基準について」(動物検疫所長通知)により明示されている。今後とも、くん蒸の実施に当っては、輸入者等と一層緊密な連絡を取ることとし、明確、且つ、適切な対応に努めて参りたい。

(2)なお、消毒方法については家畜伝染病予防法の消毒基準に準じて実施しており、獣毛類の消毒にはフォルマリンガスくん蒸が適当とされており、現在これに取って代わる適切なる消毒方法については見当たらない状況である。

3.当該物資の輸入検査及びくん蒸に係る費用は、輸入数量に関係なく定額の設定となっているが、数量により要する費用は異なるはずであるから、商品見本等少量の輸入に係る費用については、小額の価格設定としてほしいことについて

(1)輸入検査に係る費用について動物検疫の検査に係る費用は、要求していない。

(2)消毒に係る費用について輸入検査の結果に基づき、家畜防疫官の指示に従い、物品の所有者が消毒を実施することとされている。

(再対処方針)

1. 獣毛類については、家畜伝染病予防法に基づく輸入検査が義務付けられており同法施行規則第45条の規定により、指定検疫物として牛、豚、馬、めん羊、山羊、兎等の獣毛類が規定されている。

2. これら獣毛類については、監視伝染病の発生のある地域から我が国に輸入される場合、その発生状況を考慮し、我が国への監視伝染病の病原体の侵入防止を図るため、昭和56年7月29日付け「輸入畜産物消毒基準について」(動物検疫所長通知。以下「消毒基準」という。)に基づき消毒を実施している。

3. 本事例に係る加工処理については、輸入検査時に提示された内容だけでは病原体が十分不活化されていることが確認できず、消毒を実施したところであるが、これまでに提出された資料等をもとに専門家の意見も交え検討したところ、兎毛の消毒対象として いる病原体が不活化される効果が確認できたところである。

4. このことから、今後、当該加工処理されたことが輸出検査証明書等により確認できる兎毛については、消毒の必要のないものとして取り扱うこととする。

5. また、今回兎毛以外ものについても言及があったが、従来より検査証明書及び輸入者からの説明書等により、加工工程において監視伝染病の病原体が不活化されることが確認できる場合は、くん蒸等の消毒の必要のないものとして取り扱っており、今後とも輸入者等と緊密な連絡をとり的確かつ迅速な処理に努めて参りたい。

(現在の検討状況)
再対処方針の具体的内容等ついて農林水産省に最終確認中。