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市場開放問題苦情処理推進会議第7回報告書(平成14年3月18日)

5-(1) 構造用集成材のJAS規格格付申請にかかる輸出国の試験データの受け入れ

○ 問題提起者:東京商工会議所

○ 所管省庁:農林水産省

○ 問題提起内容

外国産の構造用集成材について、JAS規格による格付申請をする場合、輸入業者において、輸出国の基準による性能表、物性等をJAS規格の基準に変換して申請することが求められている。(構造用集成材の日本農林規格)

また、構造用集成材に係るJAS制度は、任意の制度とはいえ、当該格付に合格しているか否かは、日本国内における当該物品の販売に大きな影響を与えることから、輸入品についても、実質的にはJAS規格に適合していることが求められている状況。

今般、ニュージーランド産構造用集成材について、ニュージーランド規格(NZS3603等)に適合しているものを、JAS規格へ適合させ輸入しようとしたところ、単位系、試験方法等の違いから、ニュージーランドの基準に基づく性能、物性等をJAS規格に変換することができないため、当該申請ができず、輸入を断念せざるを得なかったところ。

この申請については、現在のように、輸入業者に輸出国の基準からJAS規格への変換を求めるのではなく、登録格付機関等が輸出国の試験結果(性能値、物性等)を(単位等の変換をせずに)そのまま申請資料として受け入れてくれれば、上記のような事態とならず、円滑に輸入が行えたと思われる。

したがって、農林水産省は、輸入品に係るJAS規格への格付申請について、登録格付機関が当該輸出国の試験結果を(単位等の変換をせずに)そのまま申請資料として受理し、それを基に審査を行うことができるよう、必要な措置を講じてほしい。

また、ニュージーランドがJAS制度と同等の制度を有する国として認められていない理由及び今後の見通しにつき、教示願いたい。 

※<下記※1に対する東京商工会議所からの回答>

1.農水省からの問い合わせの文中"外国の規格に基づいて検査したデーターをJAS規格の格付けのための検査データーとして受け入れるような格付け方法は認めておらず......

1)製品の輸入後、登録格付機関が格付けを行う場合
2)製品の輸入前、現地において登録格付機関(又は登録外国格付機関)が格付けを行う場合"

と有りますが、私共は、前記したように初期においてその海外材が使用可能か否かの判断を、まず行わなくては成りません。その際その材料がJASのどの等級に該当するのか初期判断が必要に成るのですが、農水省の上記の文中にあるように初期判断のために必要となる海外データーによる格付けが認められていないため、私共独自でJAS規格に置き換えて比較しようと試みたのですが、結局比較はできませんでした。

2.又、1)の方法に付きましては、上図の検証が可能と判断され、かつ性能が合致するであろうという確信が有って輸入をした材料に付いて格付けを行う方法と考えます。

3.2)の方法に付きましては、前記のように現場の材料取付時期と輸入時間との狭間で仕事を行っている私共にとりましては、現地において格付けを行ってから輸入する時間が有りませんので、性能が満足されているかどうかの初期判断が重要となります。最終的な格付け取得は、現地にて製品の製造、海上輸送の時間とオーバーラップして行われます。この点をご理解頂きたい。

(再意見)

1.「初期判断」については、工場が行うか試験機関等に依頼するのではなく、政府機関等で、当該物資がJAS規格のどの等級に該当するかを大まかに示すことは可能ではないか。

要は単位変換の問題であり、上記サービスを政府機関等で行っても大きな負担とはならないのではないか。

2.農林水産省から在日ニュージーランド大使館に対し資料提出の要請を行った平成12年10月から既に1年以上が経過しており、今後のニュージーランドの対応予定等について、農林水産省から同国へ確認してほしい。

○ 所管省庁における対処方針

1 問題提起のあった格付方法について

問題提起では「輸入業者において、輸出国の基準による性能表、物性等をJAS規格の基準に変換して申請することが求められている」とされていますが、このような申請方法は、JAS法では認められていません。これは、「問題提起者に対する問い合わせ」の中で御説明しましたとおり※1、JAS法では我が国の国民のニーズに対応して制定したJAS規格に合致したもののみを格付けすることとされていますが、JAS規格と外国の規格とで要求する性能の項目・基準値やその試験方法が異なることから、外国の規格に基づいて検査したデータをJAS規格の格付のためのデータとして受け入れることや、外国の規格に基づいて格付けされた製品をJAS規格により格付けされたものとみなすことはできないためであります。

※1<問題提起者に対する問い合わせより抜粋>

頂いた問題提起については、第1パラ「JAS規格による格付申請をする場合、輸入業者において、輸出国の基準による性能表、物性等をJAS規格の基準に変換して申請することが求められている」としているが、JAS規格による格付では、JAS規格と外国の規格とで要求する性能の項目・基準値やその試験方法が異なることから、外国の規格に基づいて検査したデータをJAS規格の格付のための検査データとして受け入れるというような格付の方法は認めておらず、認定製造業者以外の外国製品についてのJAS規格による格付の方法としては、

1)製品の輸入後、登録格付機関が格付を行う場合
2)製品の輸入前、現地において登録格付機関(又は登録外国格付機関)が格付を行う場合

がある。いずれの場合も、これらの機関が検査を実施することにより格付を行うこととしており、御指摘のような基準の変換の問題は生じないものと考えており、事実の誤認があるのではないか。

2 「初期判断」について

貴所から頂いた回答(上記※)にある「初期判断」が格付を受ける前に、輸入しようとする製品がおおよそJAS規格に合致しているものかどうかを見極めておくための判断であるとすれば、JAS規格は公表されており、その中に各品質項目について試験方法及び基準値が記されていることから、工場自ら試験を行うか又は試験機関等に試験を依頼されて、JAS規格に定める基準値を満たすかどうかの判断をすることは可能と考えております。ただし、言うまでもなくこのような「判断」は正式な格付ではなく、この判断とは別に正規の格付を受ける必要があります。

3 JAS法で定めている外国製品に対する格付の方法

外国製品に関するJAS規格による格付の方法としては、

1)製品の輸入後、登録格付機関が格付を行う場合
2)製品の輸入前、現地において登録格付機関が格付を行う場合
3)旧JAS法に基づき、認定外国製造業者が登録格付機関により格付を受ける場合(この場合、指定外国検査機関による検査データに基づき登録格付機関が格付することが可能)
4)改正JAS法(平成12年6月施行)に基づき、外国の工場が登録認定機関により認定外国製造業者としての認定を受けて自ら格付を行う場合

があります。

今回問題提起のあった製品が旧JAS法に基づく認定外国製造業者の製品でないとすれば、JAS格付を受けるためには、上記 1)又は 2)により格付を受けることが可能です。また、4)により外国の工場が認定外国製造業者として認定されていれば、当該製造業者が製造した製品については、自ら格付を行うことができます。

4 ニュージーランドがJAS制度と同等の制度を有する国として認められていない理由及び今後の見通し

改正JAS法により、外国の機関についても、登録外国格付機関又は登録外国認定機関として登録することが可能となりました。ただし、当該外国が農林物資について日本農林規格による格付の制度と同等の水準あると認められる格付の制度を有している国として農林水産省令で定めるものに限っています。本件に関して、ニュージーランドについては、平成12年10月6日に同国の林産物格付制度とJAS制度の同等性審査の要請があったため、同月13日に農林水産省から在京ニュージーランド大使館に対し、同等性審査のための資料の提出を要請したところですが、現在までに資料の提出はありません。今後、ニュージーランド側より資料の提出があれば、同等性審査の手続を進めていく予定です。

(再対処方針)

1.これまで御説明したとおり、ニュージーランドの規格とJAS規格とでは、それぞれの規格が要求する品質の項目、試験方法等が異なっているため、単純に両規格を比較することは困難です。参考として構造用集成材についてのいくつかの項目について比較してみると、例えば、JAS規格の「接着の程度」の項目については、ニュージーランドの規格ではGlueline Integrityが該当すると考えられますが、試験片、試験方法、適合基準が異なっており、ニュージーランドの規格に適合している製品が必ずしもJAS規格に適合するとは言えません。

2.ニュージーランドの林産物に関する国の同等性審査については、平成14年1月29日に在京ニュージーランド大使館から同等性審査及び登録外国認定機関の申請手続につき問い合わせがあったため、同年1月31日及び2月4日に当方から在京ニュージーランド大使館担当官に対して、審査に必要な書類や同等性審査を求める林産物の種類の特定等について改めて御説明したところです。

(現在の検討状況)
問題提起者は当面この対処方針で了解。