八代尚宏
少子・高齢化社会における介護・保育問題の共通項は、増える利用者のニーズに対して、サービスの供給量が量・質ともに立ち遅れにある。公的部門主体の供給体制では、消費者の選択肢が乏しいだけでなく、高コスト構造から大幅な予算増を前提としなければ供給を増やせない。民間企業を含む多様な経営主体の市場参入を促進することで、サービス供給の増大と消費者の多様な選択肢の拡大を図ることを目標とする。
構造改革の下での失業増加や働き方の多様化の下で、社会的セーフティネットの重要性が高まっている。現行の生活保護制度は、家族の扶養義務を優先するとともに、個人のプライバシー侵害の要素も多く、社会的弱者保護の機能を十分に果たしているとはいえない。
普遍的な生活保障の手段を強化することで、社会保険や失業給付等、特定分野の構造改革を促進することができる。また、短期間就業者を社会保険・雇用保険の対象に含めることで、セーフティネットの範囲を拡大するとともに、就業・非就業の決定に中立的な社会保険制度の構築が必要とされる。
介護・保育サービス市場の競争促進と消費者選択肢の拡大のために、現行の施設単位の公的補助を個人単位のバウチャー方式へと転換する等、大幅な改革案を総合規制改革会議の任期中の3年以内に固める。
抜本的な制度改革とともに、現行社会福祉事業法等の制度の枠内で、公設民営等の民間企業の活用に当たって障害となる規制の重点的な見直しを当面の優先課題とする。
特別養護老人ホームの個室化促進と特定入所施設等との介護報酬格差の是正(ホテルコストを含めた実費徴収)
民間企業への収容人数に応じた施設整備費助成・公共用地賃貸の容認・利益処分に関する規制の撤廃
ケアハウス・グループホーム等への公的支援を妨げている規制に焦点
施設要件(定員30名以上等)の緩和
社会福祉法人の設立認可に必要な資産(土地を基本財産として寄付)確保の要件
会計・理事長基準の緩和
情報公開基準の強化(職員数・施設長経歴等含む)
第三者評価システム
会計監査・公開の義務付け
全国一律基準から地域による多様化(待機児の多い地域における定員基準の弾力化等)
見直すべき認可保育所基準の内容(調理室等)・分園の活用
地方自治体における規制緩和の徹底化
行政財産の民間貸与等に関する地方自治法の改正。
利益処分規制等(通知)の廃止
公務員の保育士の民間保育所への出向
一定水準以上の認可外保育所利用者への支援(利用券・税控除の対象化等)
公立・社会福祉法人とそれ以外の経営主体への設備費助成のイーコールフィティング
家族の扶養義務範囲の見直し
医療扶助を保険料建て替えの介護保険方式に
住宅扶助の見直し
ホームレスへの対応
保護基準における所得制限の就業意欲抑制効果の見直し
雇用保険の雇用期間1年以上の制約撤廃
短期間就業・パートタイムへの社会保険の適用拡大