平成13年7月10日
環境省
循環型社会の構築に向けて、廃棄物の適正処理及びリサイクルの推進が図られるような規制の見直しが必要。
廃棄物の定義、一般廃棄物・産業廃棄物の区分の見直し
拡大生産者責任の導入・強化
デポジット制の導入
リサイクルに係る廃棄物処理法上の業・施設許可に係る見直し
不法投棄跡地等の修復対策に関し、費用負担、責任分担、技術開発の促進や環境修復ビジネスの明確化のための立法
廃棄物処分場のひっ迫(一般廃棄物12.3年分、産業廃棄物3.3年分)
多発・悪質化する不法投棄と大都市圏・地方の対立の深刻化(平成11年度の不法投棄は1,049件、43.3万トン)
廃棄物処理に係る住民の不信の増大(産廃施設反対紛争件数235件(平成8年までの10年間))
が問題化。
このため、大量生産・大量消費・大量廃棄型/自己利益型・無責任型のゴミ社会を、排出事業者や製造事業者の自己責任徹底型の循環型社会に変革する観点から、廃棄物・リサイクル関連法制度の所要の見直しを行うことが必要。
リデュース(抑制)・リユース(再使用)・リサイクル(再利用)の更なる拡大等、廃棄物処理・リサイクルにおける製造事業者の役割の強化
廃棄物の発生抑制、リサイクル促進等に向けて、一層の市場原理を活用した経済的インセンティブの付与
自己責任徹底型の廃棄物処理への構造改革による優良な廃棄物処理・リサイクル業者の育成
大都市圏の廃棄物処理体制の確保による国全体の廃棄物処理体制の再構築
廃棄物の不法投棄の撲滅による国民の信頼の確保
不法投棄の原状回復の費用負担ルールの徹底と不法投棄跡地等における環境修復・浄化の促進
廃棄物の定義・区分の見直しについては、その処理責任のあり方と合わせて、中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会において、本年夏から検討を開始する予定。
定義については、リサイクル名目で不適正処理が行われる事例(豊島事件、フィリピンへの不正輸出事件等)が跡を絶たないこと等を踏まえ、検討を行うことが必要。
廃棄物は、処理責任の所在により区分。現行制度では、一般廃棄物は市町村に、産業廃棄物は排出事業者に処理責任が課されているところ。
今後の方向としては、事業系一般廃棄物について産業廃棄物として排出事業者の責任分担を拡大すること、製造事業者に処理責任を負わせることが適当なものについては製造事業者に責任を課すことが考えられる。
EPR(拡大生産者責任)の強化等、廃棄物のリサイクルに係る国際的潮流を踏まえた視点での対応が必要。リサイクル分野の発展に伴い、地方公共団体の負担については軽減することが一つの方向性。
廃棄物の処理・リサイクルコストについて、排出時ではなく製品価格へ内部化する等、製造事業者の役割を強化しつつ、市場原理を一層活用してリサイクルを促進するための規制の見直しが必要。
デポジット制度の導入(例:消費者が使用済み製品を販売店に返却した場合に売却時の預かり金を返却する制度を個別リサイクル法に適用すること等)等、リサイクル促進のための経済的措置の活用が課題。
廃棄物の再生処理(リサイクル)促進の観点から設けられている業や処理施設に係る許可を不要とする仕組み(業の許可に係る特例制度や再生利用認定制度)を一層適切かつ積極的に運用。
廃棄物の適正処理・リサイクル促進等をさらに効率的に進める観点から、一般廃棄物及び産業廃棄物の処理施設等に係る許可手続きの簡素化等について、今後検討。
リサイクル施設等の立地促進の観点から、都市計画関連法による規制のあり方についても見直しが必要。
家庭ごみの有料化や従量制の手数料等の導入による個人の動機づけ、製造事業者等による廃棄物の引取りやリサイクル施設の整備等を検討。
産業廃棄物の不法投棄の多発等を踏まえ、以下の対策について検討することが重点課題。
廃棄物埋立跡地、不法投棄地、汚染土壌等の環境修復の費用負担(埋立税や基金など)、責任分担(産業廃棄物流出県、製造事業者など)の見直し
環境修復の技術開発や環境修復ビジネスの促進に向けた制度化の検討
不法投棄の「かくれみの」となりがちな自社保管等の自社処理、残土処理に関する規制
廃棄物処分場のひっ迫
産業廃棄物は3.3年分
多発・悪質化する不法投棄と大都市圏・地方の対立の深刻化
平成11年度の不法投棄は1,049件、43.3万トン
廃棄物処理に係る住民の不信の増大
大量生産・大量消費・大量廃棄型/自己利益型・無責任型ゴミ社会
→ 自己責任徹底型の循環型社会に変革するための所要の見直し
廃棄物の定義、一般廃棄物と産業廃棄物の区分
廃棄物の処理責任のあり方とあわせて、本年夏から検討を開始
定義については、リサイクル名目による不適正処理の事例の多発等を踏まえた検討が必要
区分については、排出事業者や製造事業者の責任分担を拡大・強化する方向
EPR(拡大生産者責任)の強化
リサイクル促進のための経済的措置の活用
デポジット制度の導入等
リサイクルに係る廃棄物処理法上の業・施設許可に係る見直し
業や処理施設の許可に係る特例制度を適切かつ積極的に運用
適正処理・リサイクル促進等の観点から、許可手続の簡素化等を検討
一般廃棄物の減量の推進
家庭ごみの有料化等の導入、製造事業者による廃棄物の引取り等を検討
不法投棄対策及び不法投棄跡地等の環境修復対策の強化
埋立跡地等の環境修復の費用負担、責任分担等を検討
環境省では、企業メンバー、会計士、学識経験者等からなる検討会で議論を重ね、平成12年5月に環境会計に関する総合的なガイドラインを策定した。また、ガイドラインの充実のために国内外の動向を網羅的に整理した「ガイドブック」を作成するとともに、国際的な議論にも積極的に参画している。
また、環境会計情報を含む情報提供手法として、環境報告書についても、平成12年2月にガイドラインを策定したところ。
環境会計という手法は、比較的新しい手法であり、今後検討すべき課題も多く、また、実際に環境会計を導入している企業や環境報告書を公表している企業等の数も、未だ限られている。従って、環境会計及び環境会計情報を含む環境報告書のあり方についての一定のルールを確立するとともに、それを導入する企業の数の拡大や、第三者機関による監査も含めたその内容の信頼性確保を図るための制度的枠組を検討してまいりたい。
市街地における土地取引の円滑化(及びそれに伴う不動産取引の流動化)等のために、土壌汚染対策に係る立法を早急に行うことが必要。
市街地の土壌汚染対策に関し、浄化責任の明確化、情報開示の実施、調査手続きの明確化のための立法
近年、企業の工場跡地等の再開発や事業者による自主的な汚染調査により、土壌汚染の判明件数が増加している。このような状況を踏まえ、昨年12月から、学識経験者等から成る「土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会」(水環境部長委嘱)において、人の健康の保護及び生活環境の保全の観点から、土壌環境保全対策のために必要な制度の在り方の調査・検討を行っている。
主な検討課題としては、(1)暴露経路(土壌の直接摂取、地下水への溶出等)と対象物質の考え方、(2)暴露経路ごとの規制基準の在り方、(3)汚染防止のための措置の在り方、(4)汚染地の把握方法、(5)汚染に係る改善措置の在り方、(6)汚染情報の登録・公開の仕組み、(7)自主的な改善措置の促進 等がある。
この検討会の場を中心に、上記の検討課題についてできるだけ早く検討を進め、その結果をもとに、制度化を念頭に入れた取組を進めてまいりたいと考えている。
この検討に際しては、人の健康の保護及び生活環境の保全の観点から考えることが重要であると考えている。なお、制度化の検討に際しては、土地取引の円滑化にも資するよう、調査方法、浄化の在り方、情報の取扱い等を検討することとしている。
京都議定書批准に備え、我が国として二酸化炭素排出の削減に向けた取組を行うことが必要。
発生させない努力をしている人に対してインセンティブを与える仕組みの検討。特に税については、環境税への一本化。
我が国の平成11年度の温室効果ガス排出量は、京都議定書の基準年に比し、約6.8%増加しており、京都議定書の6%削減目標達成のためには、一層の国 内対策の推進が必要。
環境税等の経済的手法は、市場メカニズムを前提とし、経済インセンティブの付与を介して各主体の経済合理性に沿った行動を誘導することによって政策目的を達成しようとする手法であり、地球温暖化対策においても、その有効性が期待されている。
このため、中央環境審議会において、環境税等の経済的手法を含めた各種政策手法の組み合わせによる政策パッケージについて審議を行っており、経済的手法の具体的仕組みも含めた国内制度の在り方を示していくこととしている。
中央環境審議会地球環境部会目標シナリオ達成小委員会の中間取りまとめ(平成13年7月9日)によると、数量モデルによる炭素税の経済性評価の結果は以下のとおりである。
炭素トンあたり1万3千円〜3万5千円程度の炭素税の課税によって、2010年における二酸化炭素排出量を1990年比2%減とすることが可能である。※
また、炭素トンあたり3千円という低額の課税であっても、その税収約1兆円を二酸化炭素排出削減技術導入のための補助金として最適に還流することができれば、炭素トンあたり3万円の炭素税と同程度の導入インセンティブ効果を発揮する。
したがって、御指摘の既存のエネルギー関係税制を環境税(炭素含有量に応じた課税体系)に一本化する場合、上記のとおり、現状より炭素トンあたり3千円以上の課税を行い、その税収のうち約1兆円を二酸化炭素排出削減のために用いれば、1990年比2%以上の削減が可能となることとなる。
また、同中間取りまとめによると、二酸化炭素以外のガスについても、その潜在的な技術的最大削減可能量は、基準年比−4%程度を見込むことができるとしている。炭素税による2%削減と併せれば、目標の6%程度の削減を達成できることとなる。
※地球温暖化対策推進大綱(平成10年6月地球温暖化対策推進本部決定)では、温室効果ガスの排出量を1990年比で−0.5%の水準にまで削減し(なお、1999年比では−7.2%となる。)、国内の森林等の温室効果ガスの吸収分としてカウントできる量は、国際交渉の結果によるがその純吸収量を3.7%と推計し、残りは京都メカニズムを活用して、日本の6%削減目標を達成することとしている。
平成12年度補正予算により、ヒートアイランド現象の実態把握と対策効果の把握に必要なシミュレーションモデルの開発を実施。
平成13年度には、汎用性のあるシミュレーションモデルを用い、ヒートアイランド現象の実態把握に努める。
ヒートアイランド現象の緩和には、人工廃熱の低減、地表面被覆の改善、緑化、都市内空気移流の円滑化(いわゆる「風の道」)等の対策を総合的に講ずることが必要であることから、環境省では、ヒートアイランド対策ガイドラインの作成に着手することとしており、他省とも連携して検討を進める。
総合的な立法化については、その検討過程で、必要性も含め検討する。
野生生物の生息地(干潟、河川域等)の保全・復元、外来種の移入による生態系の破壊防止などを内容とする「自然との共生を目指す国家戦略」を策定し、これを実現するための立法その他の仕組みが必要。
森林、河川、干潟、藻場などの生態系が健全に維持されることは、人間生活に様々な恵みや潤いをもたらすだけでなく、人類の存続の基盤を確保する上でも重要。
しかし、近年、自然林や自然海岸、干潟などの減少、身近な里地・里山の改変が進んでおり、これに伴い様々な野生生物の絶滅の危険性も増大。
「自然と共生する社会の実現」は、総理所信にも掲げられているように、政府が取り組むべき重要課題の一つ。
このため、各省庁が一体となって、生態系の保全・再生により一層取り組むとともに、こうした取組を幅広い国民の参加を得て推進するため、自然との共生を目指す国家戦略の策定が不可欠。
平成13年度中を目途に新「生物多様性国家戦略」の見直し作業を、関係省庁連絡会議等により行っているところ。
生態系の保全・再生の視点からの制度・事業の見直し
生態系の保全・再生の観点から、既存制度や事業のあり方の見直しを進め、政府一体となった各種施策の取組を推進。
生態系の保全・再生を徹底する観点からの制度の再評価・見直し(景観重視の国立公園制度の見直し等)
失われた生態系を積極的に再生・修復するため、各省庁共同で「自然再生型公共事業」の実施をはじめ、国家戦略に基づく各省庁の施策を推進。
都市における干潟や森の再生、直線河川の蛇行化など、各省共同による自然再生型公共事業の推進
各省連携の下で、生態系の保全・再生のための国民参加による環境教育や技術開発の推進
地域レベルの計画作りなど地方の取組を支援
環境アセスメントは、事業者が自ら環境影響を調査・予測し、対応策を考えるセルフコントロールの仕組みであり、幅広く柔軟な対応が可能なシステム。
環境アセスメントにおいては、その客観性、信頼性を確保するため、調査結果等の情報を公表し、環境保全の見地からの意見を有する者や地方公共団体、環境省等からの意見聴取の手続を設けている。
「規制改革についての見解」(平成12年12月、行政改革推進本部規制改革委員会とりまとめ)や「規制改革推進3カ年計画」(平成13年3月30日閣議決定)においても、環境アセスメントの充実、上位計画や政策における環境配慮のあり方の検討について言及されているところ。
環境影響評価法(平成9年6月公布)は、平成11年6月に全面施行され、2年を経過したところ。
環境アセスメントの中心となる手続は、調査等の結果を公表し、様々な主体から意見を聴く準備書手続、評価書手続であるが、環境影響評価法では、その前に方法書手続を新たに設け、事業の場所や内容に応じて適切な環境影響評価の設計を行うこと(スコーピング)を導入した。これにより、調査等の大幅な手戻りを防ぎ、メリハリの利いた環境アセスメントを行うことができる仕組みとなった。
今後、スコーピングを十分活用し、効果的な環境アセスメントの実施を図っていくことが重要。
方法書段階【環境アセスの設計、意見聴取】
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調査・予測・評価
↓
準備書・評価書段階【調査結果等の公表、意見聴取】
また、環境影響評価法に基づき、実効性のある環境アセスメントの実施がなされるよう、制度の趣旨の普及と関係者のバックアップが必要。このため、次のような措置を講じることが重要。
行政関係者、事業者、住民等に対して制度の趣旨の十分な普及
最新の調査・予測・評価技術や環境保全対策に係る知見、環境情報などの収集整理、事業者や地方公共団体が活用できる形での情報提供
環境アセスメント実施後のフォローアップと再評価
複数事業の広域的・累積的影響を評価し、早い段階から効果的な環境保全対策を講ずるためには、個別の事業計画、実施に枠組みを与えることになる計画(上位計画)や政策に対する環境アセスメント(戦略的環境アセスメント)を導入することが重要。諸外国や先進地方自治体でも取組が開始されており、わが国における導入に向け検討を進める。