平成13年7月10日(火)
厚生労働省
昨今、企業の経営環境が激しく変化する一方で、労働者側からも労働条件の良い、働きがいのある職場に円滑に移動できることが求められている。また、雇用情勢が悪化する中で、ミスマッチを解消し、就業促進を図ることが必要。
このため、能力開発の推進、労働移動円滑化のための需給調整機能の強化等を図る。
職業能力開発については、(1)委託訓練等民間活力を活かした公共職業訓練の拡充、(2)教育訓練給付制度の重点的、機動的運用等を推進。
職業紹介事業制度については、改正職業安定法の施行状況等を踏まえ、施行3年後(平成14年12月)に制度全体の見直しの検討を行う予定。
年齢差別を禁止することについては、我が国の雇用慣行にも関わる大きな問題であることから、今回の改正による努力義務を出発点に、社会全体の合意を形成しつつ、検討を進めていくべき問題。
解雇基準の明確化については、基本的に望ましい方向であるが、今後関係者間において慎重に合意形成を図っていく必要。また、併せて司法機関における最終的な紛争処理の迅速化や、裁判外の個別紛争処理システムの整備・機能強化を図ることも必要。
近年、企業においては、専門的、創造的な業務が増大する一方、労働者の就業意識や価値観も多様化していることから、様々な働き方を選択できるような環境や、パート、派遣労働のような雇用形態でも安心して就業できる環境を整備していくことが必要。
有期労働契約については、拡大についてのニーズを把握し、見直しに取り組む予定。
労働者派遣事業制度については、改正労働者派遣法の施行状況等を踏まえ、施行3年後(平成14年12月)に制度全体の見直しの検討を行う予定。
専門業務型裁量労働制については、具体的な意見要望を踏まえつつ対象業務の範囲の拡大について検討を行う予定。
雇用形態の多様化に対応した社会保険制度の在り方については、今後費用の増加が見込まれる社会保障の支え手を増やす観点からも重要な課題。年金制度等における適用の在り方や被扶養配偶者の取扱いについては、平成12年に設置した「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」の議論を踏まえ、平成16年までに行うこととなっている次期財政再計算に向けて検討を行う予定。
医療に関する情報提供の推進は、患者による医療機関の選択を行うため極めて重要であり、積極的に推進。
医療の質の向上と効率化を図るため、医療のIT化を図る。このため、今年度中に医療のIT化に関するグランドデザインを描き、医療のIT化を推進。
審査支払事務の効率化を図るため、レセプト電算処理を進める。このため、
病名マスター等の見直し等一層利用しやすい環境整備に努めるとともに、
大病院の導入実例など具体的な事務効率化のメリットを示し、参加の促進を図る。
EBMの推進、電子カルテの普及、日本医療機能評価機構による医療機能評価の実施については、積極的に推進。
医療機関の広告については、医療法を改正し、本年3月に広告規制の緩和を行ったところ。今後も広告できる事項を具体的に列挙する方式(ポジティブリスト方式)に基づき、客観性がある情報など検証可能な事項については、対象を拡大。(個別の事項ごとに検証が必要であり、広告を原則自由化するネガティブリスト化は困難)
医療機関の経営情報の開示については、一律に義務付けることは困難。
レセプト電算処理を原則とすることについては、
現在、全レセプトに占める磁気レセプトの割合が0.4%にとどまっている現状で、一挙に普及を図ることは実際上困難。
原則電子化したとしても、例外的な紙による請求が残り、実態上は改善しない。
レセプト電算処理のメリットを示すこと等により医療機関の自発的な参加を促すことやより使いやすいシステムに改善していくことが先決。
診療報酬については、患者に良質かつ適切な医療を効率的に提供する観点から、出来高払い、包括払いのそれぞれの長所、短所を踏まえつつ、その最善の組み合わせを目指していく。
急性期入院医療の診断群別定額払い方式については、中医協での議論を踏まえ、平成10年11月より、5年をめどとして、国立病院等10病院において、試行事業を実施しているところであり、診療 報酬上の評価のあり方等の検討は、その結果を踏まえて行う必要がある。
また、本年4月より、DRGを用いた診療内容の分析を行う観点から、現在民間病院等52病院の参加も得て、定額払いを伴わない形での調査を開始したところである。
公的医療保険制度の守備範囲については、医学医術の進歩を積極的に取り入れることを含め、国民医療として必要とされるものはすべて対象とするという原則で運営されてきており、この原則は今後も堅持するべきもの。
また、保険診療とその他の診療の自由な組み合わせを認めることは、不当な患者負担の増大を招く可能性があり、適当でない。
他方、保険診療とその他の診療の調整を図ることが適当なものについては、現在、特定療養費制度に位置づけられており、今後とも、その積極的活用を図ることは考えられる。
保険者が自主的に被保険者のために様々な取組を行えるよう、保険者機能の在り方を見直すことは、重要な検討課題であると認識。
診療報酬の審査支払を適正かつ効率的に行うために支払基金は必要であるが、保険者自らが審査支払を行うことについては、今後十分検討。
全国約20万の保険医療機関等と約1万3千の保険者等との間における、年間7億5千万件にのぼる診療報酬請求の審査支払の事務を、適正かつ効率的に実施するため、支払基金が審査支払事務を実施。
保険者が本来審査の権能を有することは現行法上規定されており、保険者と医療機関との間で、支払基金を通さず審査支払を行うことを合意し、保険者自らがレセプトの審査支払を行うことについては、支払基金の審査支払システムを阻害しないこと等を前提に、対応を検討。
医療機関の経営の近代化・効率化の促進、医療機関相互の競争促進や患者本位の医療サービスの実現を図ることが重要。
医療機関の経営に関する規制の在り方については、医療法人制度の在り方を含め、幅広く検討をしてまいりたい。
医療は、国民の生命や健康に関わる問題であり、かつ、サービス提供者と利用者との情報の格差が大きく、患者自身が必要なサービスを事前に十分判断・選択することが困難であることから、非営利の原則を堅持することは不可欠と考える。
営利企業の参入を認めることは、収益性の高い部分に集中し、コストのかかる患者が敬遠されるおそれや、医療費の高騰を招きかねないことなどから、適当でないと考える。
また、比較的営利企業の病院が多いとされるアメリカにおいても、必ずしも営利企業の病院が効率的であるという実証的データはないものと承知。
医療法人の理事長要件については、平成10年に医師以外の者が理事長になるための要件緩和を図ったところであるが、今後、更に見直しに向け検討。
医療材料にかかる保険償還価格の設定方式については、内外価格差への対応も含め、適正な評価を行う観点から、現在中医協で検討しているところ。
要介護者に対応できるようなケアハウスについて、規制改革推進3か年計画に沿って、公設民営方式を含め、関係省庁と連携をとりつつ、民間企業等による経営参入を検討しているところ。
民間企業への施設整備費補助については、「慈善、教育又は博愛の事業」の施設整備に関する公的補助は「公の支配に属する者」以外の者に対しては支弁してはならないとする憲法第89条との関係を整理する必要がある。なお、介護報酬や利用者の自己負担はサービスの類型ごとに決められており、指摘されているような、経営主体による差は存在しない。
ケアハウスの民間参入については、規制改革推進3か年計画に沿って、公設民営方式を含め、関係省庁と連携をとりつつ検討しているところである。
特別養護老人ホームと同様の要介護者に対応できるようなケアハウスについて、十分な経済的基盤と人的資源を有する民間法人等が都道府県知事の許可を受けて運営できるよう検討する。
グループホームについては、主体による参入規制はないが、適切なサービス提供を行わない事業者の例も指摘されており、ケアの質の確保が重要な課題となっていることから、情報公開や職員の研修受講の義務づけ、市町村の関与などに関する一定の規制を設けたところ。
社会福祉法人は、事業を廃止した場合にはその財産は最終的には国庫に帰属するなど様々な規制・監督を受けていることにかんがみ、施設整備費補助、税制上の優遇措置などが講じられているところであり、今後とも社会福祉事業を安定かつ継続して行っていくために必要なものと考える。一方こうした規制・監督の下にない民間企業を社会福祉法人と同様に取扱うことは困難である。なお、民間企業への施設整備費補助については、「慈善、教育又は博愛事業の施設整備に関する公的補助は、公の支配に属する者以外の者に対して支弁することを禁止している」憲法第89条との関係を整理する必要がある。
介護サービスの評価に関しては、利用者が自らのニーズに合致した事業所を評価・選択する際に活用できるようなチェックリストを作成しているところ。
待機児童解消のほか、利用者の多様な保育ニーズに対応するため、必要な規制緩和を実施。しかしながら、保育サービスの提供は、第一に子どもの幸せを考えて行われるべきであり、児童の処遇の低下を招く規制緩和については、慎重な検討が必要。
認可保育所基準の弾力化(定員基準、設備設置基準、株式会社の利益処分規制等)
定員基準の引下げ、都市部における設備設置基準の弾力化等については、既に実施。
株式会社が剰余金を配当に用いることについて、禁止はしていない。
保育バウチャー制度の確立による施設補助から利用者補助への転換(認可外保育施設利用者への直接補助)
利用者への直接補助については、仕組みにもよるが、次のような問題がある。
保育サービスについての市町村の関与が曖昧になるとともに、市町村や国の財政責任の在り方についての抜本的な議論につながるおそれ。
待機解消に直接つながらず、需給逼迫の場合、自己負担が高騰するおそれ。
市町村及び保育所に大きな追加的コストが生じるおそれ。また、利用者が直接施設に申込むことに伴い、現在と比べ、市町村による待機児童の把握やニーズへの対応が困難になる。
設置主体制限の撤廃等の規制緩和により、昨年23件の認可外保育施設が認可保育所へ移行。引き続き、認可外保育施設の認可化を促進。
保育所の情報開示義務、監視体制の強化、第三者評価制度確立
平成10年の児童福祉法改正により、市町村による保育所情報の提供、保育所による保育に関する情報提供を規定。国としても、本年2月から各種子育て情報をインターネットで提供。
児童福祉法において、都道府県等に保育所に対する児童福祉施設最低基準の遵守についての検査・監督権限が付与。
保育サービスの評価については、専門・公正な評価者の養成やチェックリストを作成中。
保育・教育行政の一元化
幼稚園と保育所は機能を異にし、各制度の中で充実を図ることとして いる。
厚生労働・文部科学両省においては、両施設の連携を強化し、地域の実情に応じた設置・運営が可能となるよう、施設の共用化の指針策定、幼稚園教育要領と保育所保育指針の整合性確保などを進めている。
社会福祉基礎構造改革の一環として、昨年、利用者の立場に立って多様で質の高い福祉サービスを提供するため、社会福祉法人の設立要件の緩和や利用事業に係る収入に関して使途制限を撤廃するなどの措置を講じたところ。
なお、社会福祉法人の規制を検討するに当たっては、事業の継続性、安定性、更には社会福祉法人本来の性格である非営利性、公共性にも配慮していくことも必要。
(資産要件の緩和)
社会福祉法人が社会福祉事業を継続的・安定的に経営するために、一定の資産を所有することは必要。
しかしながら、地域におけるきめ細かな福祉活動の支援や、多様な主体が社会福祉法人として福祉サービスの提供を行えるよう、特別養護老人ホームや小規模な障害者通所授産施設等を経営する場合については、民間からの土地の賃借を認めるなどの要件の緩和を行っている。
この他、小規模な障害者通所授産施設やホームヘルプ事業の経営を目的として法人を設立する場合についての資産要件を緩和している(通常1億円を1千万円に)。
(情報公開)
情報公開については、昨年の社会福祉事業法の改正により、収支決算書、事業報告書、監事の意見書等の公開を社会福祉法人に対して義務付けたところ。
また、会計監査についても、公認会計士、税理士等の外部監査の積極的利用について指導を行っているところ。
(社会福祉協議会の独立性・中立性)
社会福祉協議会が行うサービス利用者を支援する地域福祉権利擁護事業や利用者保護のための苦情解決については、第三者から構成される運営適正化委員会を設置して行っており、また、その事務局には独立性・中立性を担保するために専従の事務職員を配置し、事業者としての社会福祉協議会とは一線を画しているところ。
生活保護制度の在り方については、社会福祉事業法等の改正に際しての国会附帯決議において、介護保険制度全般の見直しの際に検討することとされており、今後、セーフティネットとしての機能、自立支援機能、保護水準、扶養の取扱い等、広汎な論点について、さらに検討を進めていく。
扶養義務者のうち扶養履行を求める範囲については、民法の規定との関係、今日の社会実態等を踏まえ、今後検討していく。
医療扶助について、病気になった際に福祉事務所への手続を求めることは、医療扶助は全額公費負担により行われるものであり、福祉事務所が予め医療の要否を判断する必要があるため、不可欠。休日、夜間等の場合は、医療費の支払をすることなく受診できる対応を、自治体に対し要請している。
なお、医療扶助を国民健康保険制度で行うことについては、40歳以上の全国民を一律に対象とする介護保険制度とは異なり、国民健康保険に負担が集中することから、不適当。
ホームレスであるか否かを問わず、真に生活に困窮する方々については生活保護が適用されることは当然。今後とも、こうした取扱いの徹底を図っていく。