2002.06.11
新規事業創出WG
主査 神田秀樹
国の経済の活性化に資するような新規事業の創出・運営を支援するためのインフラ整備として、大胆な規制改革を行う。
「新規事業」の定義としては、(1)「歴史が浅い」こと、(2)「小規模」であること(規模拡大を志向するベンチャー型事業を含む)を念頭におく。
既存大企業の再編により作り出された企業を「新規事業」とみるかという問題があるが、この点については、当WGの作業の拡散を避ける観点から、当面は、(3)「新しいビジネスモデル」を伴う場合(企業)に限定して考える。
(1)(2)(3)であるがゆえに規制上不利な扱いを受けている分野について、そのような規制の撤廃をめざすとともに、(1)(2)(3)の新規事業の創出・運営を支援するような規制改革を志向する。
証券取引法上の開示規制の見直し(私募ルールの見直し等)
有限責任投資事業組合制度(ベンチャーキャピタル制度)の拡大
個人保証の見直し(差押禁止財産の範囲拡大等)
コミットメントラインの対象企業の拡大
動産・債権担保法制の創設(米国のファイリング制度類似の制度の創設)
企業組合制度の改正
LLC、有限会社、株式会社の諸形態を「連続利用」可能な形に整理・整備
新事業創出促進法の改正(商法の特例の検討)
新事業創出促進法の改正(たとえば定款認証手続の廃止等)
各種手続のワンストップサービス化
サービス分野でのルール整備
証券取引法上の強制公開買付規制(3分の1ルール)の見直し
政府調達制度の見直し〔検討中〕
新規事業等に関する特例措置の創設〔検討中〕
裁量労働制度の改革(企画業務型裁量労働制の対象拡大等)
労働者派遣制度の改革(派遣期間の撤廃、派遣対象業務の拡大等)
有期雇用契約制度の改革(適用範囲の拡大と契約期間制限の緩和等)
大学教員の勤務条件の弾力化等〔検討中〕
学校校外教育を認定する制度の創設等〔検討中〕
小中学校の改革
コミュニティスクールの支援
インターナショナルスクールの支援
'02.06.11
官製市場見直しWG
主査 鈴木良男
多様化する国民のニーズに対応し、安価で良質な財やサービスの提供を確保するため、多様な主体が各々の分野に参入することを可能にする。
「利用者の選択」を重視した競争が平等に行われることを促進し、市場全体の活性化につなげる。
公共部門は必ずしも公共サービスの提供者である必要はなく、民営化、民間委託、PFI等の様々な手法を活用し、公共サービスの提供主体が市場の中で競争にさらされる仕組みを促進することにより、国民にとっての公共サービスの満足度を高める。
参入制約をなくし、多様な運営主体による財・サービスの提供が行われることにより、多元化・多様化した国民ニーズに応じる。どの運営主体のものを選択するかは、利用者・国民が判断。
「株式会社」という経営形態の有するメリットに着目し、現在参入を制限されており、かつ、相当の市場規模があり経済活性化に資すると考えうる医療、福祉、教育、農業分野について、株式会社形態による市場参入の門戸を開放・拡大を図る。
市場参入制約分野では、しばしば「儲け主義に走ることは、利用者の利便性を損なう」と決め付け、新たな参入を拒んでいるが、競争制限的環境が非効率を産んでいること等を勘案し、「儲けるか否かではなく、利用者のニーズを提供することが善である」というパラダイムの転換を行う。
医療法第7条5項「営利を目的として開設しようとするものに対しては病院の開設の許可を与えないことができる」の廃止
「会社組織による病院経営は認めない」こととしている昭和25年の事務次官通知等の廃止。
老人福祉法15条において禁止されている特養への株式会社参入を認める。
ケアハウスへの参入が認められる株式会社の要件の緩和
社会人教育に特化した大学のニーズが高いことを踏まえ、モジュール型履修を可能にするなど新たなニーズに対応した学習制度を認めるとともに、株式会社等による学校経営を認め、多様化する教育ニーズへの対応を図る。
中長期的に農業の競争力を向上させるべく、農業の担い手として積極的に法人を活用する。具体的には、農業生産法人の要件を緩和し、農地の転用・転売の規制措置を講じることを前提に、資金調達、研究開発、労働管理等の面で優位性のある株式会社の全面的な参入を認める。
医療法人等における債券発行による資金調達手段の多様化。
行政関与の可否に関する基準は、平成8年に行政改革委員会において、
(1)公共財、(2)外部性、(3)市場の不完全性、
(4)独占力、(5)自然(地域)独占、(6)公平の確保
といった「市場の失敗」による基準を提示しているが、これに行政の非効率、責任の不明確、既得権益の擁護といった「政府の失敗」を比較考量するとともに、極力費用便益分析等を導入し対象を限定することが必要。
なお、上記基準では、基本原則として「民間でできるものは民間に委ねる」という考え方を示しているが、現在においては、「民間でできるものには官が入らない」という考え方に転換するべきか。
行政関与の必要性が確認されたものでも、すべての役割を公共が担う必要はなく、1)制度設計、2)サービスの基準設定とモニター、3)住民等へのサービスの提供 の内、どの役割を担うかを検証することが重要。
民間への移管の形態としては、
民営化(方式としては、1)事業譲渡、2)いったん株式会社化して株式を公開することにより完全民営化に至る、という方法がある)
公設民営型
業務運営委託(包括的、部分的)
といった方法が考えられるが、各事業・事務の固有の特性、地域事情等実態を踏まえつつ、積極的な民間への移管を実施することが必要。
官から民への移管に関する手法は、民営化、PFI(Private Finance Initiative)、民間委託(PPP(Public Private Partnership))など多岐に渡るが、個々の公共インフラ、公共サービス事業を各手法に当てはめることにより、それぞれの移管を阻害する規制を抽出・撤廃することを検討するとともに、PFIやPPPを推進させるための制度設計が必要。
「公の施設」の管理の担い手を、受託する主体の属性によって限定するのではなく、公共サービス提供方法を多様化するべく、民間事業者への管理委託を可能とすることが必要。
法の目的である住民の施設利用の確保については、自治体と公共サービス提供者間の契約によって担保するとともに、競争入札等により公共性の確保、効率化の推進を図る。
平成13年の水道法改正(平成14年4月施行)により、技術的な運営を一括して民間委託可能となったが、一層の効率化を図るためには、管理を含めた包括的委託を可能(明確化)にすることが必要。
更には、下水道についても民間への管理を含めた包括委託を可能にすることによる事業の効率化を推進し、上下水道の一体的運営による事業の効率化を推進。
また、公営ガス事業については、更なる民営化等の推進を図る。
PFIを実効性あるものにするためには、多段階の事業者選定方式を明確に認容することが必要。
医療、福祉、教育等様々な分野で、公的機関と民間事業者が、同一市場におけるサービスの供給者として併存しているが、供給者間での競争を活発化させ、品質の向上やダイナミックな参入退出を促し、サービスの受給者の満足度を高めるためには、供給者間の競争条件を均衡させることが必要。
立法趣旨は前段との関連等から宗教性の排除であると思慮。
行為を規制する関連法令が適用されることをもって、「公の支配」に属するとの解釈できることから、株式会社等への支援が可能となり、新たな参入主体も容認される。
介護や保育などの今日的な福祉サービスは慈善・博愛と解する必要はない。
補助金や税の優遇適用は、主として提供主体の属性にもとづく制度設計が行われているが、公共サービスの提供方法を多様化するためには、サービスの内容に対して補助金や税制等の優遇適用を行う制度設計の実現が必要。
福祉、教育分野など、公的供給者と民間供給者が併存している分野においては、公的供給者を基本とした機関補助が行われているが、利用者選択の拡大と公的供給者の効率化を図るべく、利用者補助(バウチャー)の導入を図る。
以上
平成14年6月11日
ビジネス・生活インフラ整備WG
公益事業(ネットワーク事業)、司法制度改革、都心高度化等の国民生活及び産業活動の基盤を形成する分野における規制改革の推進により、各分野における料金の低廉化、サービスの多様化・質的向上等を促進し、もって国民生活の質的向上、我が国の産業競争力の向上・経済活性化を図る。
新規参入を促進するための市場開放の推進(参入規制(需給調整条項)の見直し、有限希少な公共財の配分の実現、新規参入者を一定程度育成するための非対称規制等)
既存事業者間の相互参入及び業種を超えた相互参入の促進と公正有効競争確保のための環境整備(他業種における市場支配力等に着目した非対称規制等)
卸市場の整備
会計分離、情報遮断の徹底等(構造的分離または非構造的分離)
エッセンシャルファシリティの利用条件の策定(提供義務、設備のアンバンドル、ネットワーク関連情報の公平な提供、公正かつ透明な根拠に基づく低廉な利用料金等)
エッセンシャルファシリティ・インフラの整備促進
ガイドラインに基づく現行紛争処理手続を含めた競争監視の在り方の見直し(透明性、処理の迅速性等について検証)
専門的な第三者機関の設置等(専門性の確保、政策担当部署からの独立の確保、ルール作りとの連携)
公正取引委員会の機能強化(専門的第三者機関との競争促進、独禁法被疑事実申告に関する処理の迅速化等)
新司法試験合格者数について、平成22年の3,000人達成後も更なる拡大が図られるよう、新司法試験を制度設計、運用する。
法科大学院非修了者であっても、能力があれば新司法試験に合格できるよう、法科大学院修了者との間で平等な取扱いをされるようにする。
国際企業法務、知的財産権等に強い法律家の育成を促すため、これらの専門分野に特化した法科大学院が設立しやすいように法科大学院の設置基準を定める。
法科大学院の定員について、需給調整となるような抑制的対応がとられないようにする。
弁護士法72条の法律事務の範囲の明確化のための措置に関して、法律サービスへのアクセス改善、競争促進の観点から検討を行う(親会社が子会社の法律事務を受託できるようにする等)。
建築物の火災予防等に関する規制について、建築基準法、消防法等に重畳的な規定がある場合等に、整理・合理化を推進。規定の目的・必要性が不明確な場合等に、説明責任が果たせるよう、その明確化と性能規定化を推進。
新設・改築に係る自動車専用道路等に限定されている現行の立体道路制度について、一般道路や既存の道路についても適用できるよう制度を拡充。
航空機離発着の安全性を確保する観点から、空港からの距離・角度に応じて規定されている建築物の高さ制限(いわゆる「制限表面」)について、近年の航空機性能の向上を踏まえ合理化を推進。
夜間都市景観の向上を図る観点から、航空障害灯等に係る規制の合理化を一層推進。
以上
清家篤(慶應義塾大学)
事前規制緩和を促進するために不可欠。
多くの社会的規制は、消費者や労働者の被るなんらかのリスクに対し事前に対処しようとするもの。
従って事前規制緩和を進めるには、事前規制の存在根拠となっているリスクを別の手段で軽減するかあるいはそれに対して事後的に対処する方策を示すことが不可欠。
事後チェックルールが、規制緩和による消費者利益の向上をより確かなものにする。
事後チェックの重要な柱である情報公開は、事前規制緩和による消費者選択の拡大を、より有意義なものとするために不可欠。
※ こうした事後チェックは様々な分野で、様々な方法がありうる。またすでに存在するものを強化することもありうるし新たな仕組みを必要とする場合もある。
当WGではこのうち事後チェックの方法として、情報公開、第三者評価、苦情・紛争処理の問題を当面の重点検討課題とする。
消費者・利用者の的確な選択に資する情報公開、監視に資する情報公開
各分野を通じて積極的に推進すべき。コストに比べて多大な効果を期待しうる。知りたいときに知りたい情報を入手できることがポイント。
サービス内容・手続きに関する情報、サービスの提供主体に関する情報(組織・財務・運営情報)、評価に関する情報(第三者による評価情報と自己評価情報、事故情報・クレーム情報を含む。)等。
事業者自らを基本とするとともに、行政機関、苦情処理機関、評価機関等による体系的な提供(サンクションとしての企業名の公表等の情報公開を含む)。
アクセス・情報検索を容易にできることが重要(HPの活用等)。別途個別の公開要請に応じるための窓口整備。
公開に当たっての第三者情報(企業情報等)の取扱い。自己に不利益な情報をいかに公開させるか。
消費者・利用者自らが的確な評価・判断を行い難いものについて、専門家の評価によって選択肢を実質的に提供する機能。事業者の自己改善の手段。
司法に比べて、簡易迅速廉価な救済手段。
苦情処理・紛争処理機関の拡充、活性化
個別的解決と再発防止、未然防止のあり方。事業者、消費者に対する周知徹底等、通報者保護の検討
情報提供のあり方(企業情報の取扱いとの調整)
OTOとの連携強化。事前相談業務の充実。
事前規制と事後規制の強弱の組み合わせにより、4つの類型に分けられる。我が国に多い事前強・事後弱のタイプは、事後チェックを整備することにより、事前規制を緩和する方向に。また、事前・事後規制とも緩和できるものはそれを推進していくことが重要。
他方、例えば直接人の生命・安全にかかわる問題等、事前規制を維持するとともに事後チェックも強化すべきものもある。
事後チェックのあり方についても、行政、民間(NPO等)、司法等の主体があり得、その役割分担をどう考えるか。
既存制度の厳格な適用・積極的な活用(行政手続法、ノーアクションレター、パブリックコメント等)
国の規制とは別途の民民規制、地方規制への対処の考え方。
基準認証、資格制度の横断的見直しへの取組み。
平成14年6月11日
規制改革特区WG
一定期間後の全国展開を前提に、特定地域に限定して実験的に規制改革を実施すること。もって、全国的な規制改革を推進し、日本全体の経済活性化を図ること。
なお、規制改革は恒常的に促進されるべきものであり、特区において実験的に行われていることを理由として、全国的な規制改革の歩みを止めることがあってはならない。
民間の提案を最大限活用して地方公共団体が自発的に立案し、それを最大限に尊重・支援する形で、経済活性化に必要なさまざまな規制に関する特例措置を設ける制度とし、予め国が選択したメニューだけに限定するという手法はとらないこと。
特区制度に関する検討対象は、一定の基準を満たす範囲内で可能な限り幅広いものとすること。
国による税の減免や補助金等、従来型の財政措置は用いないこと。
個別的な規制の特例措置は、地方公共団体の責任をもって実施すること。
特区制度が対象とする規制は可能な限り幅広いものとするとの基本理念からすれば、具体的な規制を予め列挙しないことが望ましいが、法制化作業の効率化の観点から、「特例措置を講じることが可能な規制を、予め法律上、一定の基準を満たす範囲内で可能な限り幅広に列挙しておき、この中から地方公共団体が選択・申請し、国が認定する通則法形式」を基本とする。
本来、地域により「異なるものに異なる扱いをする」場合には、「等しいものに異なる扱いをする」という不平等の問題は生じない。
「等しいものに対して異なる取扱いをする」こと、すなわち特区の内外で異なる規制を導入しても、特区として選択された区域の活性化が公益上必要という政策上の合理性があれば、法の下の平等の観点から問題はない。
特区制度の対象となる規制には不可逆的なもの(一度導入した場合に元に戻すことが困難なもの)も含みうるが、以下の措置を担保できれば、こうした仕組みを立法化することにも合理性があるものと考えられる。
講じられた規制の特例措置について、評価機関による一定の期間後の評価を行った上で、具体的な障害が生じなかった場合は、当然に全国へ展開する又は当該地域において継続して実験を行い得る仕組み。
講じられた規制の特例措置について、具体的な障害が生じた場合には、決定の取り消し等により特例措置を停止できる仕組み。
必要な代替措置が講じられること(規制改革による直接的な影響の及ぶ範囲が特区内で完結しない場合など)。
特区の認定に当たっては、規制改革の実験を行うという特区制度の趣旨を踏まえ、その地域で実験を行う合理的な根拠(比較優位性)がある地域を特区の対象地域として認定することを基本とする。具体的には、ある地域が、その固有の資源(自然的・歴史的条件、施設や技術、財産の集積等)を活かしつつ、当該規制改革を全国展開することにより我が国全体の経済活性化に貢献するか否かを検証するための実験を行うことの意義を持つと認められることなどを判断材料とする。
具体的な地域の範囲は、特例措置を講じようとする規制の特質、具体的な事業内容等によって異なりうるが、指定最小単位は、原則として、市町村の範囲とする。また、地方公共団体から一つの事業の実施に当たり複数の規制の特例措置が提案された場合も同様とする。
特区制度の対象となる規制は、「規制改革3か年計画(改定)」に掲げられている全項目及び地方公共団体等から要望のある事項を検討対象とするが、実験的手法としての特区制度に馴染む規制を選択する際には、以下の基準等を前提とした上で、個々の規制ごとに内閣主導により個別・具体的に政策判断する必要がある。
例えば、以下のような基準に該当する場合は、特区制度の対象外とすべきではないか。
なお、生命・身体・健康、公序良俗、消費者保護等に関する規制であるというだけで特例の対象外とすべきではない。これらは、個別の特区認定の際に、代替措置等が十分であるかどうかによって判断すべきものである。
外交・防衛など国の主権に関するもの
条約に基づく国の義務の履行を妨げるもの
刑法に関するもの
規制改革による直接的な影響の及ぶ範囲が特区内で完結せず、かつ、所要の代償措置による対応が不可能なもの
なお、特区制度の対象となる規制は、固定的なものとせず、地方公共団体等の申請により、毎年、追加しうることなどの旨を明らかにしておく。
申請主体(都道府県と市町村の関係、民間の関与の在り方など)
申請の形式とその内容など
認定主体
住民・議会及び他の地方公共団体の意思の反映
法律ではなく、政省令や通達等を対象とした特例措置の在り方
特例措置を講じた後の評価方法(体制)
民間の提案の活用に関する情報の徹底的な開示など、地方公共団体の申請までの過程における透明性の確保
「都市再生本部」方式など、内閣において、各省の総合調整を行いやすい形で特区の推進母体を設ける。
推進母体では、各地方公共団体からの申請を受け付け、これらを最大限尊重しつつ、特区を推進する観点から認定できる体制を整備する。
対象とすべき規制の選択に先立ち、オープンな形で広く要望を募り、各地方公共団体等からの提案を受け付ける。
推進母体における今後の検討に際し、総合規制改革会議は、推進母体に対し、その活動状況を注視しつつ、必要に応じ、意見を述べるものとする。
地方公共団体等から提案のあった具体例、又は想定される例については、可能な限り多くを示す。
特区制度に関する申請主体については、当面、地方公共団体とするが、民間への拡大の可能性について、引き続き検討する。