平成14年7月3日(水)16:00〜17:40
永田町合同庁舎総合規制改革会議室
宮内義彦議長、奥谷禮子、神田秀樹、佐々木かをり、鈴木良男、清家篤、高原慶一朗、八田達夫、森稔、八代尚宏、米澤明憲の各委員
石原規制改革担当大臣、熊代内閣府副大臣
[内閣府]坂政策統括官、岡本審議官、中城審議官、竹内審議官、磯部審議官、宮川事務室長、長屋事務室次長
高部官房審議官、久元官房企画課長
山崎事務局長
川村経営局長、吉村農村振興局農村政策課長
田中総括審議官、石川私学部長、木曽国際課長、山根私学行政課長、義本行政改革推進室長、藤原視学官
各WG毎に関係省庁から資料に基づき説明が行われた後、意見交換が行われた。(●は質問・意見、→は質問・意見に対する回答等)
総務省官房審議官から質問事項に関して資料に基づき説明が行われた。概要は以下のとおり。
○ 「公の施設」については、かつての「営造物概念」に代えて、昭和38年の地方自治法改正で、地方特有の概念として設けられたものである。地方自治法第10条第2項で住民が地方公共団体の役務の提供を等しく受ける権利を有することが定められていることを受けて、地方自治法第244条第1項で「公の施設」概念が規定されており、同法第244条第2項及び第3項で、利用拒絶、不当な差別的取扱いを禁じていたり、同法第244条の4で不服申し立てについて規定されている。
○ 質問事項の1点目である「公の施設」についての明確化という指摘に関しては、地方自治法第244条第1項で「公の施設」に関する定義があり、ここで規定されていることについて、地方公共団体に説明している。地方公共団体の施設によるサービス提供は多様であり、公の施設が具体的に何たるかについて列挙方式にはなっていないが、一般的には、(1)住民の利用に供するためのもの、(2)当該地方公共団体の住民の利用に供するためのもの、(3)住民の福祉を増進する目的をもって設けるもの、(4)地方公共団体が設けるもの、(5)施設であること、これらに該当するものが「公の施設」であり、したがって、競輪場や試験研究機関、庁舎、あるいは国が設けるものなどは「公の施設」ではない。このような「公の施設」の定義に照らして、「公の施設」と位置付けるか否かのメルクマールは、住民との関係において地方公共団体が最終的な責任を持ってサービス提供をするか否かという点になってくると考えている。
○ 質問事項の2点目である「公の施設の管理委託」については、地方自治法第244条の2第3項に規定がある。この点については、アウトソーシングの流れもあり、平成12年3月に通知を発出する際に柔軟な解釈をすることとして、清掃、警備等事実上の業務を一括して業務に委託できることを示しているが、現状としては、個別の業務を寄せ集めて委託することと、地方自治法上の管理委託の概念の隙間は狭くなっている。したがって、管理委託をとることの大きな意味合いとしては、地方自治法第244条の2第4項以降にあるように、管理受託者になったときに利用料金制がとれるような仕組みになっている点である。
○ 「公の施設の管理委託」については、地方公共団体が責任を持って一定のサービスを提供するという枠組みの下で、その場合には地方公共団体がやるのと同じように、適正な管理が見込めるようにというかたちで法律上の仕組みはなっている。
○ 一方で、民間事業者の力を利用するやり方としては、施設を普通財産として民間事業者に貸し付ける方法や、業務を委託する方法でかなり民間の力を借りてやれることに現行でもなっている。
○ もっとも、「公の施設」は昭和38年にできた制度なので、「公の施設」という概念で現状のまま規律することについての適否については、我々としても中長期的に検討する必要があると感じている。
次いで、委員と総務省との間で意見交換が行われた。概要は以下のとおり。
● 244条の2が相当緩和されていることは承知しているが、管理というのは、権限みたいなもので事実上のものは入らないということだが、はじめて条文を読むと、事実上のものも入ってしまうように読め、民間業者も地方公共団体も遠慮しかねないので、より包括的に民間事業者に業務を開放していくためにも、料金決定権を除き管理委託可能なことを明らかにしていくべき。
また、そもそも、料金決定権についても、地方公共団体にとどめておかなければいけないのかという問題もある。民間が勝手に高い価格を設定してはいけないことはわかるが、それならば契約でプライスキャップにする一方、使用頻度に応じた割引料金の設定を受託者の判断で行えるようにしてもよいのではないか。
こういった点を踏まえれば、244条の2を見直さなくてはいけないのではないか。
→ たしかに「管理」という概念にはあいまいな部分があった。事実上の業務委託が広がって、管理委託とのすきまがなくなっている。その旨は、先ほども説明したとおり、既に平成12年3月に通知しているところではあるが、必要に応じてまた周知していきたい。
料金決定権については、条文を見ていただければわかるが、事務の性格上、条例事項として、議会の関与をセットにしている。公の施設は地方公共団体が責任をもって住民に対してサービス提供をするものであり、そのような考え方から料金決定について議会の議決にかからしめている。民間事業者への公共的支援を行う趣旨であれば、普通財産として民間事業者に貸与することも、補助金で対応することも可能。「管理」をどう考えるかについては、「公の施設」概念をどう考えるのかということと合せて考える必要がある。ただちに結論はでないが、検討してまいりたい。
● 古い行政の法律は、その後変化に合わせて、なるべく分かりやすくすることが必要。普通財産にするというのは方便であって、民間でできることについては官がやるべきではないという我々の基本的立場からすれば、この規定は、民間から入るなというものであり、方便ではなく、真っ正面から見直すべきである。料金会見録については、上限規制だけすればいい話である。民間業者の努力で安くできるのであればそれに越したことはないはずである。
→ 2点、発言させていただきたい。1点目は、「民間は入ってはいけないという条文になっている」という鈴木委員のお話であったが、公の施設を設ける分野において、個別法に規定がある場合を除き、民間がやってはいけないわけではない。例えば、文化ホールなどを民間がやってはいけないことは全くなく、民間が文化ホールを設置・運営しようと思えば現行制度でもできるはずである。そういう中で、地方公共団体が「自分でやる」と決めたときは、地方公共団体が責任を持って住民にサービス提供をやらなければいけない、という趣旨である。
2点目であるが、サービス提供は安くて合理的なものであればいい、という考え方はわかるが、地方公共団体では、「長」と「議会」の両者の役割分担、権限抑制の関係がある。料金設定についても、長が単独で決められるようになっておらず、議会の議決事項として整理している。これは、先の「長」と「議会」との役割分担、権限抑制の関係を踏まえてこのような仕組みにしている。
このように、住民の代表者である議会との関係をどのように整理するべきかという難しい問題もあり、いずれにせよ、十分、勉強させていただきたい。
司法制度改革推進本部事務局長から質問事項に関して資料に基づき説明が行われた。概要は以下のとおり。
○ 司法制度改革推進計画において、平成22年頃には司法試験合格者数を年間3,000人程度とすることを目指すとされているが、この3,000人は上限を意味するものではない。一国における適正な法曹人口は、その国の経済社会構造、法文化等様々な要素によって左右される。また隣接法律専門職も法的サービスを提供する主体として含めて考えるかどうかによっても変わってくる。平成22年以降の法曹人口については、その目標が達成された後に更なる増加も含めて検討していくことが適当と考えているところ。
○ プロセスを重視する法曹養成制度を整備することを踏まえて、法科大学院を経ていない者については、法科大学院修了者と同等の能力を有することを予備試験によって確認した上で、司法試験の受験を認める方向で検討している。本試験に関しては、法科大学院修了者も予備試験合格者も公平に扱われることは当然であるが、試験制度の公平性、客観性の要請上、予備試験の合格者数や予備試験合格者の本試験合格率を予め設定することは適切ではない。予備試験ルートにより法曹になる者の数を不当に制限することのないように、例えば、予備試験ルートの者と法科大学院修了者の司法試験の成績を比較する等継続的に検証する等の運用が必要であると考えており、関係機関との検討を行って参りたい。
○ 会社がグループ会社内の法律事務を有償で受託することについては、今後、司法制度改革推進計画に基づき検討することになるが、司法制度改革審議会の議論においては、資格のない企業法務に認めていいのか、親子会社といっても様々であり、どのような範囲で画するのかという問題もあり、実現するのは難しいという議論であったと承知している。
○ 会社から権限を付与された社員による訴訟代理は本人訴訟の延長という発想かと思われるが、そういう要望があるということは承知している。当事者のみならず、相手方当事者の利益保護を損なったり、迅速な訴訟手続の妨げになるおそれもある。司法制度改革審議会でも委員の一人からそういう提案があったが、こういう制度を設けると、形式的に権限を付与された社員を取り繕うなど、制度が悪用され非弁活動に悪用されかねないという反対論も強く、司法制度改革審議会意見には掲載されなかったところである。本件については、法律事務における企業法務の一環として検討は行っているところではあるが、以上のように難しい問題を含んでいる。
次いで、委員と司法制度改革推進本部との間で意見交換が行われた。概要は以下のとおり。
● 一番肝心な点は、司法の制度を需給調整の手段としてはならないということ。3,000人以上の増員については、平成22年まで待って決める必要はないと思われるが、平成22年まで待つというのは何故か。また、予備試験の合格者数を制限しないということを担保しておかないと、必ず、制限しようという動きが起きてくるので、事前にこれを防ぐための措置を担保しておくことが必要。まず、予備試験合格者数の制限をすることで需給調整をすることについてどう考えるか。望ましくないとするなら、それを防ぐための担保措置について具体的にどう考えるか。
→ 需給調整のために使ってはならないことについては、そのようなつもりはない。ただ、急激に増加させることについては、法曹養成の観点から対応できるかという懸念があり、段階的に増やしていくこととしている。将来的に3,000人を達成した時点で、社会情勢や隣接法律専門職種をどう位置づけるかも検討した上で、なお、必要という場合には、当然増やしていくものと理解している。
これから多くの法律家を社会に出していくにあたっては、しっかりとした教育を行って、多様な知識等をもって社会に出てほしいということでロースクールを構想している。予備試験ルートについても、将来法曹になったとき、社会に役に立ち国民に迷惑を掛けない資質を持った方になってほしいので、法科大学院修了者と同等の能力があるかどうかを予備試験でテストした上で、司法試験の本試験を受けてもらうという考えである。そういう関係から、数で需給調整するのは適正ではない。一定の水準を超える人はどうぞということになる。運用で極端に予備試験ルートの門が狭くなるということは避けなければならない。運用でどういう点を工夫していくかについては、まだ定まっているわけではない。工夫を重ねざるを得ない。
● 法科大学院修了の同等能力というのは非常に主観的な基準である。法科大学院の関係者にとっては、本試験を受ける人が少ないほどいいのだから、予備試験合格者数が利害関係者によって制限されないような担保措置が必要ではないか。前もって担保措置を決めておかないと、質の確保とか名目を付けて数の制限を行おうとする。
→ 試験だから、数を確保するために、たとえ成績の悪い人でも合格させていいのかという問題もある。具体的なアイデアはないが、運用上は、不当に予備試験合格者数を制限することのないようチェックすることが必要と考えている。
● 例えば、予備試験の合格者数を増やしていけば、司法試験の合格率は下がっていくのだから、予備試験合格者の司法試験合格率を、法科大学院修了者の司法試験合格率まで引き下げていくことはある程度客観的な基準といえるのではないか。
→ そういう意見があることは承知しているが、すべてそれだけで測れるかという点については確信はない。成績が極端に悪くても、数値に拘束されて合格させることが試験としていいかということもある。
● 法科大学院修了者と同じ合格率ということであれば、極端に低くなりようがないのではないか。予備試験合格者の司法試験合格率が法科大学院の合格率より高ければ、予備試験合格者数を絞っていると言わざるを得ないのではないか。
● 法科大学院修了者と同程度のレベルと言っても、法科大学院も様々なレベルがある。どの程度のレベルを念頭に置いているかを決めずに、法科大学院修了者と同レベルというのは恣意的ではないか。何のために予備試験をやるのか。本試験をやれば十分ではないか。
→ プロセスを重視して法科大学院で教育を行っていくが、司法試験は法科大学院での教育の一部をテストするもので、それ以外のところはテストしないので、法科大学院を経由しないものについては、司法試験でテストしない部分の能力も備えているかをチェックした上で、司法試験を受けてもらうということになる。これが予備試験が必要な理由である。法科大学院修了者と同程度の能力というのは、非常に難しい問題で、まだ、法科大学院ができていないので、大部分のところがどういう教育をするかを見ないと何とも言えない。
● 年度末の閣議決定で、予備試験合格者の司法試験合格率が法科大学院修了者の司法試験合格率を下回るというような数の担保を決めようとした場合、司法制度改革推進本部事務局としては反対するのか。
→ 回答はご勘弁いただきたい。
● 1回の試験だから間違った人を合格させてしまうというおそれがあるというなら、試験を変えればよい。本試験の内容を変えればよいことを予備試験で2回する必要はない。法律を利用する立場にたつのであれば、数を決めるのではなく、資格のある人を送り出せばよく、その後仕事としてやっていけるかどうかは、社会の需要で決まってくる。司法だけ、司法研修の定員があるからとかいって数を制限するのは全く時代に合わない。定員を決めて試験をするのではなく、資格試験にしてどんどん合格者を増やしていけばよい。社会のニーズに合わないほど数を絞りすぎているということと、試験の内容がよくないという2点で今の制度は問題である。試験の内容が悪いというのは、合格者数を絞ろうとするからだということもあるが。
● 会社から権限を付与された社員による訴訟代理について、本人訴訟の延長で、本人たる会社が指名する者でいいと言っているのだから、外部からそれを当人の利益保護のためにだめというのは、まさに既得権者の利益擁護と言えるのではないか。
→ 相手の当事者のことを考える必要がある。本人訴訟が認められているのではないかとの指摘もあるが、本人までだめというのはやはり無理がある。代理人についてまで、その能力は相手方や裁判所には分からない。むしろ、法曹人口を増やして企業内に法曹資格者が入っていけるようにすることで対応する必要がある。
● 今までは、法律というのは弁護士の独占物と考えられていたが、もうそうではないという発想に切り替える必要がある。相手に迷惑がかかるというのであれば、裁判官の訴訟指揮で排除すべきである。本人の場合は、能力があるとは限らないので、もっと相手に迷惑を掛ける可能性がある。それでも会社が授権したいなら、支配人にすればよいが、通常の代理権付与ではだめだというのでは矛盾であり、これを認めないのは、弁護士だけの法律に囲っておきたいという思想の現れであり、反省してもらいたい。
農林水産省経営局長から質問事項に関して資料に基づき説明が行われた。概要は以下のとおり。
○ 特区に関する基本理念や制度設計の方向性については、地域の特性を踏まえた多様な営農形態を推進していく観点から、農業特区についても地域の特性の発揮や地産地消の推進に資するものであれば、地域の活性化のために有効な手法と認められる。
○ 農地法の適用に関する特区について検討する場合には、4つの検討すべき問題、すなわち、特区において大規模な土地利用を可能とする政策的な公益性の問題、農地法の規制を特区においてのみ緩和することの合理性の問題、地方公共団体により指定や規制緩和を行うことと財産権の内容を法律で定めるとする憲法29条との関係の問題、及び農地転用等により具体的な障害が生じた場合にその除去や代替措置を地方公共団体が責任持って行うための法制上の仕組みの問題がある。これらは特区制度に共通する基本的な問題を含むものなので、内閣官房における特区通則法の検討と十分連携を図って参りたい。
○ 農地の取得・利用に関する規制改革については、水利用の円滑化や害虫駆除において地域全体の協力が必要という特性があるため、土地利用の形態が混乱することを防止して、農地の遊休化や乱開発、廃棄物の農地への投棄等の問題を惹起しないような担保措置を講ずる必要がある。
○ 農林水産省では、現在農業構造改革の一貫として、認定農業者への農地の利用集積や施策の集中を進めているところであるが、農地法の適用に関する特区を申請するに際しては、そのような認定農業者の合意も要件として必要となるのではないか。
○ 地方公共団体の発意により特区が設けられることを踏まえれば、当該地方公共団体内での農地の適正利用を地方公共団体が責任を持って確保できるための仕組みを考える必要があるのではないか。
○ いずれにしても、農業・農村の実態を踏まえつつ、また有識者の意見も伺いながら検討してまいりたいと考えている。
次いで、委員と農林水産省との間で意見交換が行われた。概要は以下のとおり。
● 農水省の立場は、農業特区の創設が地域の活性化につながるものであれば歓迎したいが、その際4つほど心配な点があるので、これらが全てクリアされるような十分な代償措置があれば賛成であると受け止めて良いか。問題は、代償措置をいかにして協力して考えていくかということであるが、その際にはどのような法体系にしていくかが重要。この点我々は、特区制度の創設に際し、あらゆる省庁に共通に適用できる通則法を制定すべきと考えており、各省庁が法改正を行ってそれを内閣で束ねるというのではなく、通則法の別表に色々な特区のケースを定めておき、その中から農林水産省が農業関係の特区としてできるものを選んでいくという、出来るだけ幅広い法律を設けるべきと考えている。農業特区についても、例えば農産物をその場で工場加工したいという市町村の要望などもあり、農水省だけの所管にとどまらない可能性がある。他省庁の管轄に及ぶようなものについて、関係省庁がどこまで協力できるかが重要である。
また、内閣官房に特区制度の推進室ができるとの報道があったが、企業経営や実態に通じた民間や地方公共団体の人材を積極的に活用することが必要である。
さらに、内閣官房に推進室ができても、引き続き本会議と密接に意見交換をして、できるだけ整合的に農業特区を設けていくことが必要である。
→ 農地の問題は農業団体など関係者が多いので、まず合理的な説明ができることが協議に入るための前提となる。また、農業だけの単独の特区とすることにこだわっていることはない。内閣の特区推進本部における人材の活用については、我々もホームページで幅広く意見を聴取しているところであるが、このように、より良い施策を作り上げていくのに幅広い方面から意見を聴くことは結構なことだと思う。また、総合規制改革会議との関係については、今後とも密接な協議を行っていきたい。
● 農業団体が懸念しているのは、農地が投機的所有の対象となることであろう。とすれば、北海道などは大規模農業経営にも向いているし、東京周辺と比べて地価高騰のおそれも少ないので、こういった投機的所有が起こり得ない地域で先行させれば、全国一斉に行うより、これらの団体が懸念する事態も防げるのではないか。
● 内閣の推進本部に民間人を参加させることにより、改革を行う雰囲気が高まるだろうということについては同意見である。
→ 色々な新しい動きがあることを踏まえて今後とも対応してまいりたい。
文部科学省大臣官房総括審議官及び私学部長から質問事項に関して資料に基づき説明が行われた。概要は以下のとおり。
○ 産学連携の推進については、新しい国立大学法人像についての調査検討会議の報告書が出されているが、この中で国立大学の法人化以降の教職員の身分は非公務員型にすることが示されており、現在この方針に沿って具体的な制度設計の作業を進めている。任期付教員の処遇改善についても、この報告書の中で任期付教員の給与を一定の要件の下に優遇すること等により任期制ポストへの異動を促進するなどの工夫も必要であるとされている。現在、国立大学における任期制の導入状況については、平成13年には99大学中55大学で導入されており、1666人が任期制の教官となっているところであって、まだ少数であるが、今後とも任期制の趣旨について各大学に理解を促してその活用を広めてまいりたい。
○ 私立学校審議会の見直しについては、同審議会は、地域の意見を反映するという性格のものではなく、所轄庁が私立学校の設置認可や学校法人の解散命令等の権限を行使するに当たって私学関係者の意見を十分に反映することにより権限行使の適正化を図るために設けられている組織であって、その趣旨を全国的に担保することから委員の構成等も含めて法律で規定をしている。なお、規制緩和推進3か年計画(改定)においても、構成員・運営を含む私立学校審議会のあり方を検討する旨が示されており、本年度中に結論を得るべく検討中である。
○ 教育における株式会社の参入については、学校は「公の性質」を有するものであり、利益追求を目的とする株式会社とは相容れないものである。また、現在18歳以下人口の減少から、学校間の過当競争が生じており、このような状況で株式会社の参入を認めると、業績悪化により廃止される学校も予想され、教育の安定性・継続性の確保の観点から社会的に大きな問題を発生させるおそれがある。なお、株式会社が学校法人を作って私立学校を設置する例は多く存在し、また、学校教育法第1条に規定するもの以外では、自由に教育事業を行うことができる。また、学校法人も様々な経済活動を行うことで、活性化が可能になっている。なお、学校・学校法人を作りやすくすることについては色々努力しており、現在、中央教育審議会等で学校・学校法人の認可基準の緩和について検討中である。
○ インターナショナルスクールに関する制度整備については、近年、インターナショナルスクール関係者だけでなく、政財界からも税制上の支援措置等についての要望がある。海外からの優秀な研究者・技術者を招聘するに当たっては、その子息の教育機関としてのインターナショナルスクールの振興が重要であると考えており、ご指摘を踏まえ、寄付に係る特例措置等の支援策等について検討してまいりたい。また、インターナショナルスクール卒業者の大学や高等学校への進学機会の拡大については、規制改革推進3か年計画(改定)においても、進学機会の拡大について平成14年度中に措置することとされているところであり、具体的中身について現在検討中。
次いで、委員と文部科学省との間で意見交換が行われた。概要は以下のとおり。
● 私立学校法は異常なまでに私立学校審議会の人数・構成に介入しているが、実際の運用の問題は別にして、制度としていかにも行き過ぎではないか。私立学校の自主性の確保や、教育の多様性の観点にそぐわないのではないか。同法10条は大幅な改正を行って、例えば、人数構成に立ち入ることなく「私学関係者、民間企業の経営者あるいは学識経験者の中から知事が選ぶ。」とすべきではないか。 規制緩和推進3か年計画(改定)の内容は、このような法改正も含めて検討するということなのか。
→ 現行の規定は、私学の自主性のあり方等を見ていく仕組みとしての私学審議会については全国的にある程度統一したものが求められると言う観点から来ているもの。他省庁所管の審議会でこのような枠組みを決めているものもあるし、他省庁との並びも考えつつ今後検討していく必要性もあるかと思う。
規制緩和推進3か年計画(改定)についてはご指摘のような点も念頭にはあるが、現在の委員構成やメンバーが私立学校の新規参入の障害になっているという意見も聴かれるので、まず実態を見ながらどのような工夫・修正の余地があるのかを検討しようというものである。
なお、実際に規定されている委員のバランスについて問題があるとは考えていない。私学の問題を私学関係者の意見を十分に聴いて決定するために、私学関係者が構成員の中に多く含まれていることは重要なことである。
● 私学の設置についてはより幅広い意見を聴くべきであるにもかかわらず、私学関係者の構成比率が4分の3以上に固定されているのは不都合であって、既に立法時の趣旨は当てはまらなくなっていることを示すのではないか。
→ 私立学校審議会には、私学の設置だけでなく、廃校・閉鎖命令等の不利益処分についても意見を聴くことになっている。私学関係者が少数しか参加していない場でそのようなことが審議されるのを防ぐという意味もある。
● 閉鎖命令等について私学関係者の意見を聴くことは当然必要であって、私学関係者を排除しろと言っているわけではない。法律で人数・構成まで関与することはいらないのではないかということ。
→ ご指摘のような意見はあるので、実態面の勉強を含めた研究を進めてまいりたい。
● 文部科学省が株式会社についてどういう理解をしているのか疑問。株式会社が利益を追求し、株主に配当するのは、今の大学が借金を抱えている状況においては、借金の金利と同じようなものである。配当した後の剰余金は、会社の継続性をもった発展のために積み立てられるものであって、それが他に使われてしまうということは、監査や業績公開がある株式会社では考えられないことである。また、株式会社が資本金1千万で設立可能であることを問題視するが、資本金1千万の会社が全て学校経営をして良いなどとは言っていない。補助金を受けるなら許可も必要であるし、どうしてそのようなことが考えられるのか。また、我々は、株式会社が大組織である点を活かして教育施設も充実させていくというイメージを持っているが、その課程で、教育方針についても変わるべきは変えていくもの。安易に教育方針を変えて目先の利益に走るなど株式会社のすることではないし、第一そんな学校に生徒はついていかない。また、株式会社の参入により業績悪化する学校が出ると言っているにもかかわらず、今後学校法人をより作りやすくするとしており、混乱しているのではないか。さらに、業績悪化による問題はセーフティネットを作って対応すべきもの。少子化の波は現在の学校法人にも及んでおり、セーフティネットの必要性は同様である。
→ 株式会社自体が悪いとは言っていない。利潤追求を目的とする株式会社制度が公教育を目指す学校制度と思想的に相容れないということである。
● 公共目的を持った事業を株式会社が行っている例は、電力、通信、運輸、教科書の出版など沢山ある。株式会社はそういう公共的なサービスを提供することで利益を上げるのであって、利益はサービス提供の副産物である。株式会社が他の事業と異なり教育という公益的な事業を行ってはいけない理由があるのか。
→ 株式会社が公益的な性格がないとは言わない。ただ学校教育は余剰資金を再投資してよりよい教育水準を目指していくものであり、今の株式会社とは相容れないものである。
● それは誤った認識である。株式会社も、より高い公共的サービスを提供することにより、より高い利益を得るものであり、全く同じ仕組みである。
事務局から、内閣官房において特区の推進室が7月5日に発足する旨の報告があった。これに対して、委員から民間人が加わることが必要であるとの意見が出され、石原大臣から、そのような意見があったことを内閣官房長官に伝えておく旨の発言がなされた。
また、事務局から、次回会議については7月11日9時から開催し、素案の審議を行うこと、その次の会議については7月23日15時から開催し、取りまとめの案文を最終的に審議して決定することとしたい旨説明があった。
以上
(文責 総合規制改革会議事務室)