2003/1/31
村山利栄
都市再生(住宅・土地・公共工事)関連の答申に挙げられた事項において、「検討」とされているものにつき、これまで改革の成果とその実効性を問う。 例えば、都市再生特別地区、緊急整備地域の件数、規制緩和の内容と実行、スピード等。
不動産売買価格の登記(法務省)。 不動産売買価格の開示については、「国土交通省を中心として法務省など関係省庁が連携して検討」、となっているが、登記簿に売買価格を明示することについて、法務省との調整がつかず、踏み込めていない。
借家制度の見直しについて、特に以下の検討事項の実現を促進。
再開発事業や建替えを正当事由とすること。
居住用定期借家契約の借主からの解約権の廃止。
居住用建物について、定期借家権への切替を認めること。
銀行本体での不動産関連業務の解禁(「金融」の「2.資産流動化の促進のための制度整備」で、要望事項として提出したが、見送られた)
銀行が貸出債権の回収として担保不動産を代物弁済または競落により取得することは法律上禁止されてはいないものの、営業用不動産でない所有不動産については、他業禁止規定の観点から銀行検査を通じて早期処分が求められている。このため、実際にはその所有は制限されている状態にある。一方、米国では、銀行が担保不動産を代物弁済として自ら取得することも、自ら競売することも可能であり、銀行が自ら取得した抵当流れ不動産は、営業用不動産と区別した別勘定(いわゆるOREO勘定)に計上することが認められている。各OREO物件は原則5年以内、最長10年以内に処分するように規定されている。 この点については、担保不動産の処分の選択肢を増やすことが不良債権問題の早期解決を側面支援することになるというべきである。 したがって、不良債権の処理促進の観点に加え、関連会社を用いて担保不動産管理、運営、処分を行った結果、かえって銀行経営の在り方に不透明要素を与えた過去の経緯もふまえ、銀行本体での不動産関連業務に関し、米国のOREO勘定のような制度の導入について検討を行い、結論を得るべきである。
資産流動化に資する倒産法制の整備(「金融」の「2.資産流動化の促進のための制度整備」の、(5)「倒産法制の整備」において、平成15年度中に検討、結論とされたが、内容、方向性が踏み込まれていない)
賃料債権の処分等についての効力制限規定の廃止:
賃料債権を引き当てにSPCを通じた資産流動化を実行しようとした場合、当該債権のSPCへの譲渡が「借賃の処分」に該当することにより、「破産宣告における当期および次期を除いて」維持できなくなる(破産法63条1項)。これはSPCを通じて本来流動化対象資産の信用力を賃貸人(オリジネーター)から切り離そうとした趣旨に反する。少なくともSPC法上のSPCを利用する場合には、当該規定の対象外になるよう法制度を整備すべきである。
適正価格による不動産の売却等に関する「否認」制度不適用の明文化:
債権者取消権(民法424条1項)に関して、相当対価での債務者財産の売却を「消費しやすい金銭に変わることにより共同担保としての効力を減じる」ことを理由に原則として詐害行為になるとした判例理論(大判明治36.2.13民170頁、最判昭和33.7.10新聞111号9頁)の影響により、財務状態の悪化した事業体の適正価格での資産売却等を法形式とする資産流動化手法による資金調達が事実上困難になっている。これは倒産法制における詐害否認(破産法72条1号、民事再生法127条1号、会社更生法78条1号)における管財人等による否認権行使の可能性について、投資家サイドに否認リスクの不透明さ・不安を抱かさせる。 上記判例理論については、そもそも適正価格での資産売却は債務者の総資産の変動を生じないことから、従前から有力な民法学者による取引の安全を害すること甚だしいとの批判がある。破綻前の資金調達手法を活性化するためには、倒産否認に関して適正価格での資産の売却等については適用のない旨明確にすべきである。
責任財産限定特約の有効性についての明記:
SPCを通じた資産流動化取引において、海外での実務で一般の責任財産限定特約の有効性を倒産法上明確にすべきである。現時点では契約上の特約の有効性について倒産手続において尊重されるかどうかについて判例が確立していない。少なくともSPC法上のSPCについては当該特約の有効性が法文上明確にされることにより取引の安定を図るべきである。
借地借家法の適用改正: 居住用については現行法を遵守。 事業用については、新規契約はすべて定期借家契約とし、既存契約に関しても定期借家権への切り替えをX年以内に行う事を義務付ける。 既存の借家権による賃貸契約では、将来キャッシュフローの計算が不可能であることから、不動産流動化(証券化)の際、リスクプレミアムの付加要因となり、将来価値を減耗させている。
ノンバンク社債法における資産流動化事例の適用排除:現行の「金融業者の貸付業務のための社債等の発行に関する法律」(いわゆるノンバンク社債法)は、出資法に基づく債券市場からの貸金業者の貸付資金調達の原則的禁止に対する例外として位置づけられている。そのうえで、同法施行令3条3号、同法施行規則2条2号イおよびロによって、貸金業者(同法の定義における「金融業者」)保有の貸付債権をSPC法上のSPC(特定目的会社)もしくは特別目的会社としてのSPC(典型的にはケイマン諸島法を準拠法とする免除会社)に譲渡した対価による資金調達手法も同法の規制対象とされている。 しかし、上記行為は貸金業者が保有資産をSPCという債券市場へ媒体を通じて貸付債権から金銭に転換するに過ぎず、ノンバンク社債法を出資法の禁止する貸付目的での新規資金調達の例外として位置づけた立法趣旨に鑑みると、過度の規制を生じていると考えられる。むしろ当該行為についてはノンバンク社債法の適用対象外であることを内閣府令に明文化し、ノンバンク社債法の本来の適用範囲に戻るよう調整すべきである。