○宮内主査 それでは、「大学・学部・学科の設置等の自由化」につきまして、意見交換をさせていただきたいと思います。お手元の資料2と、それから文部科学省提出資料の・でございます。
まず、本テーマにつきましては、当会議の資料2の1ページ目にもございますように、昨年の臨時国会におきまして学校教育法が改正され、大学の学部・学科を設置しようとした際には、学位や学問分野の種類の変更を伴わない場合に限り、認可に関わるのではなく、届出さえすれば足りるということになりました。
しかしながら、これだけ学問分野の融合領域が拡大している中で、設置自由化の基準が従来から縦割の学問分野とされている自体、残念ながら今回の文部科学省の措置は全く不十分であると言わざるを得ないのではなかろうかと思います。
今回の学校教育法の改正により、1、届出に不都合があった場合の大学に対する是正命令措置、また、2番目といたしまして、平成16年度からは第三者評価制度が導入されると、いわゆる事後チェックルールが整備されつつある中で、以前として設置認可という事前規制が存続されていると、こういうものの存続させる意義が小さいのではなかろうかというふうに思われるわけでございます。
そういう点も踏まえまして、その他の論点もございましょうが、これから本テーマにつきましては、意見交換をさせていただきたいと思います。
まず、前回と同じように文部科学省側からお考えにつきまして、御説明をちょうだいしたいと思います。
○玉井総括審議官 では、私の方から全般的に申し上げて、後で担当審議官の方から少し詳しく申し上げたいと思います。お手元の1枚紙で整理をさせていただきました。なお、先ほど主査がおっしゃいましたように、できるだけ資料を私どももまた心得て整理させていただきますので、決して何か隠そうとかそういうことは全くございませんので、御理解を賜りたいと思います。できるだけ簡潔にと思ったものですから、こういう形になっております。
まず、設置認可につきまして、基本的な考え方でございますが、これまで規制改革会議でずっと御議論をさせていただきましたように、先ほどの教育の質の問題でございますけれども、やはり教育の質が担保される必要があると考えております。その質はどういう形で担保されるかということが、世界的に見ますと大体大きく2つの方針がございまして、1つが大学の設置認可というチャーターというやり方と、それから事後評価というアクレディレーション、結局その組み合わせで成り立ってきているのが現実の大学のシステムでございます。私どもも、そういう組み合わせで十分考えなければいけないと思っておりますが、大きな流れとして事前規制ですべての水準を担保するのではなくて、むしろ事後評価をきちんとすることが大切になってきているということは、時代の大きな変化の中での認識があるわけでございます。
そこで、先ほども少し評価の問題を申し上げましたけれども、アメリカについては、アメリカという国の特有の歴史から評価について大変長い歴史を持っておりますけれども、ではヨーロッパはどうだというと、大体20年ぐらいの歴史といっていいのではなかろうかと思います。
日本は、大学設置基準の改正で自己点検、自己評価を始めて以来でございますから、10年余りという今のシステムでございます。大学のそういう評価のシステムを入れるために、いろんな積み重ねの中で今日まで来ているということでございます。
そこで、私どもはそういう両方の兼ね合わせ、そして評価を大切にしていくという考え方の中で進めてまいりました。
2番目でございますけれども、総合規制改革会議の御指摘でございますけれども、まさに大学が機動的に対応できるように簡素化を進める一方、自己点検・自己評価の義務化等を図り、その上でなお規制を一層緩和する方向で継続的な第三者評価というものをきちんと入れたらどうか、まさにこういう御指摘をいただいたわけでございまして、そういう御指摘に沿って私どもは昨年の臨時国会に学校教育法の改正を提案し、成立をさせたわけでございます。その学校教育法の改正の大きな中身というのが、2つございまして、学部・学科の設置認可についてはできるだけ弾力化を図る。つまり大きな基本のところが変わらなければ、できるだけ弾力的に届出で済ますようにしようということで、これはかなり大幅な弾力化だと私どもは思っております。もう一つは、御指摘にあった第三者評価というものをきちんと制度上位置づけていくということで、法律上そういう評価システムを明確に定めたわけでございます。それによって、この設置認可の弾力化は、平成15年度から、そして第三者評価は16年度から実施するということで、今大変な準備に追われているところでございます。私どもとしては、そういう制度改正の適切な運用に努めながら、状況を検証いたしまして、具体的な課題等が明らかになれば、また改善方策について検討するということは当然のことだと思っておりますけれども、まさに御指摘を受けながらこういうバランスの取れた形を私どもとしてはさせていただいたと思っておるわけでございます。
○木谷審議官 高等教育担当の審議官をしております、木谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、私の方から本日お示しいただきました、御会議としての考え方についての私どもの考え方も含めてお話をさせていただきたいと思います。
今、総括審議官から申しましたように、事前関与と事後チェックというものを組み合わせで進めておるということでございますが、御指摘の事前関与と事後チェックのどちらかだけでということでは、私どもは適切な質の担保というものは確保できないと考えておるわけでございます。つまり、これは諸外国におきましても、例えばアメリカでもそれぞれ各州が大学の設置認可ということをやっております。アクレディテーションもございますが、一方で設置認可もございまして、それぞれの州によって州の権限がございますので、かなりそれぞれの需要によって濃淡はございます。また、アイビーリーグなどがある東部の地域での設置認可というのは、かなり細かい厳しいものであるというふうなこともよく言われております。
○八代委員 お話の途中で恐縮ですが、もっと具体的に説明してもらわないと時間の無駄ですので、もう既に資料で御説明いただいたので、直接こちらが質問したことに対してお聞きするという形はいかがでしょうか。
○宮内主査 では、簡単に済ませていただけるんでしたら、もう少し。
○木谷審議官 わかりました。要は、私ども申し上げたいのは、やはりいかに事後チェックというものが進んでも、まず一つは国として、高等機関として最低限の質の保証というのは必要である。それから、先ほど教育の不可逆性というお話もございましたが、学生、消費者の保護という観点がやはり必要であるということでございます。それから、国際的な必要性や信用というものを確保するという意味でも、やはり事前の設置認可というものが必要であるというふうに考えております。
もう一つは、この一定の学位の種類、分野の変更があった場合のみ認可とし、それ以外は届出ということについて、学際的な領域への展開を妨げるのではないかというふうなお話もございますけれども、私どもはやはり基本的に大学の質の保証ということを考えます場合に、抽象的な大学というのは存在せず、それぞれ大学は基本的な目的というのがございます。どういう分野の人材を、どういうふうに教育していくのかという大枠というのがあるわけでございまして、その大枠に照らして、それに足る質の保証というものがあるということを判断するためには、やはり一定の枠を考えていく必要がある。それを学位の種類・分野というふうに私どもは整理をさせていただいたということでございまして、先ほど申しました、例えばアメリカのニューヨークのようなケースにおきましても、学位の種類・分野が変わると認可の変更というふうなことが必要になるという例もございますが、そのようなことをやっておるわけでございます。
ただ、そういう中で、学際的な領域への展開、確かに私ども示しておりますこの分野というものは、それだけを取りますと非常に伝統的な学問の枠組みということになってございます。しかしながら、それらを総合して、例えばここにも書いてございますが、理学部と農学部というものを基礎に新たにバイオサイエンス学部をつくっていくとか、そういう学際的な領域への展開というものは大いにできる、むしろ私どもはこういう形によってよる促進されるものであるというふうに考えておるということでございます。
時間もございませんので、簡潔に述べさせていただきました。
○宮内主査 ありがとうございました。それでは、委員の皆様方から、八代さん、どうぞ。
○八代委員 今、非常にアメリカの例について具体的に言われたのですが、例えばハーバード大学がニューヨーク州の設置認可を受けたという事実はあるのですか。そういうニューヨーク州ではこうだったというようなあいまいな言い方ではなくて、きちっとどこの大学が、どの州によってどう認可されたという例をもってお願いしたいと思います。州立大学が認可を受けるのは当たり前のことであって、完全な私立学校が、例えばハーバード大学、オックスフォード大学あるいは日本の慶応大学等ができたときに、文部省の設置認可を受けたかどうかということは、是非具体的な名前について資料をいただかないと、こんな例もあるというのは全然関係ないと思います。
もう一つは、やはり大事なのは、教育サービスの質については消費者が判断するという観点が、何回御説明を受けても全く出てこないわけで、すべて文部省が判断するということですか、やはりこのアクレディテーションの問題も利用者が判断するという観点が当然ながらあると思いますが、それについて後で確認させていただきたいと思います。
それから、これは基本的な考え方ですけれども、先ほどの学部・学科の問題でも、理学部の中で改変するのは構わない、あるいは農学部、理学部を基礎に新たなものをつくるのは構わない。しかし、例えば工学部の鉱山学科を廃止して、その代わり理学部で化学科をつくるということがなぜいけないのか。大学の質を保証するために大枠は必要だということですけれども、その大枠がなぜ既存の学部にそんなふうに限定されなければいけないのか、なぜそんなに狭く解釈しなければいけないのかという具体的理由についてお話をいただきたいと思います。
それから、今日は御説明がなかったわけでありますが、学校法人等も含めて、いまだに校地基準面積とか、校舎、校地の自己所有要件というのが、大学の設置基準の非常に大きな要素になっております。これは今後の都市部に便利な大学を作るというときの、非常に大きな妨げになっているわけです。特区ではそれが若干緩和されておりますけれども、依然として、例えば学生1人当たり10平方メートルがなければ学校を作ってはいけないということを、今、法律で改正するように考えておられるそうなんですが、なぜその10平方メートルなければ作ってはいけないのか。郊外に例えば1人当たり30平方メートルの学校を作る代わり、都市部には5平方メートルで作るといったような多様性をなぜ排除されるのか。きちんとこの学校は5平方メートルですよということを入学案内書に書き、それを見て学生が納得して入ってきたらいいわけであり、なぜ文部省がそんなところではだめだと門前払いをくらわすようなことをしなければいけないのか、なぜそれを情報公開して消費者に選ばせてはいけないのかということについて、具体的にお話願いたいと思います。
○宮内主査 どうぞ。
○木谷審議官 まず最初に、例えばハーバードはどうかということでございますが、御案内のとおりハーバードはアメリカという国ができる前から存在した大学でございまして、あそこはマサチューセッツだと思いますが、その後実際にどういう位置づけになっているかというのは、後ほど調べさせていただきますけれども、先ほど申しましたニューヨークの例というのは、これはニューヨークにおける私立大学の設置認可の話でございまして、州立大学の話を申し上げているわけではございません。現実にそういう法令というものがニューヨーク州にはあるということを申し上げたわけでございます。
その内容は、濃淡は先ほど申しましたようにございますけれども、例えばカリフォルニアにおいても、そういう私立大学についての消費者保護、学生保護、質の保証という観点からの設置認可制度というものがあるということでございます。
○八代委員 すみませんが、設置認可のある方だけ調べるのではなくて、ない方も同じように調べていただきたいと思います。
○木谷審議官 次に、消費者、学生の立場からの問題ということでございます。これは、私どもも、これからの大学はまさにユーザーである学生の立場というものを本当に尊重しなければならないことは非常に重要な視点ではないかと思っております。むしろ提供サイド、サプライサイドということではなくて、ユーザーのサイドということで、例えば先ほど申しました大学評価という場合にも、例えば評価員が学生からインタビューをするとか、あるいは各大学での学生評価というものをきちっと資料として提出いただくとか、そういうふうな形での評価というものを現在進めておりますし、今後そういうことを十分進めていかなければけならないと考えております。
ただ、一方で新たに大学に学部というものができる場合には、これは学生の評価といっても学生はまだいないわけでございますから、その場合に学生に最低限こういうふうなことで、これはきちっとした体制が整っているよということを保証する責任が、国としても、制度上必要であろうというふうに思っておるわけでございます。そういう立場で申し上げたわけでございます。
○八代委員 ちょっと誤解されているのですが、私は文部科学省に対して大学が示す資料を、同時に学生に対しても示せば、それでいいのではないかということを言っているわけであります。
○木谷審議官 いわゆる大学の各種の評価のプロセスについてできるだけ透明性を確保していく、その中で大学がいろんな資料、大学の教育、研究の現況というものを公表していくということは非常な大事なことだと思っておりますし、私ども設置基準等におきましても、そうした積極的な情報公開を義務づけるという形で、これからも指導を進めてまいりたいと思っております。
それから、例えば大枠というところで、工学部の鉱山学科というものを廃止して科学科というふうな話もございました。これはこちらのペーパーにも若干ございますけれども、私どもそういういわゆる改組・転換の場合に、例えば今まで工学であったけれども、それ以外の学部を作っていく、特に学際的な学部というものを作っていくという場合に、それはその分野が違うからといって、それはもう全部認可ということではなくて、そういう改組・転換の場合には、少なくともその新しくできる学部の教員の設置基準上認められる、必要とされる教員数の半分以上は、既存の学部の教員が当たるんだという場合には、これは届出でいいということをやっているわけでございます。
これはなぜかと申しますと、1つの大きな枠組み、そしてその中でいろいろ新しいものを作っていくというときに、その個別の新しい分野についての専門の先生というものが、必ずいなければならないというわけではないが、そういう方面まで含めた全体的な新しい学部を作っていくという構想力、企画力、そういうものがあるかどうかということだと思うわけでございます。したがって、それだけ半数の教員というものが移る、それだけの教員がいるという場合には、それは新しいところに展開していくという構想力、企画力というものもあるだろう、質もちゃんと担保されるだろうが、例えばある文学部の文学科しかないところが、医学部の医学科を作るというような場合には、それは今いる文学部の教官が、医学について、今後どういう構想を立て、今後どのようにやっていくかということについて、既存の大学の企画立案能力、構想力に委ねるということでは質の担保ができないだろうということでございます。そのメルクマールとして、1つはそういう分野というものを置き、もう一つは教員の2分の1というものを置いたということでございます。
最後に校地基準という話がございました。これは、大学というものについては、やはり一定のキャンパスというものがあって、そこに学生が集まって、学生と教官がコミュニケーションをする。あるいは…
○八代委員 すみません。質問に答えておられないので、それをなぜ学生が判断できないのかということなのです。キャンパスの広さは見ればわかるわけですから、わざわざ文部科学省がそんな基準を作らなくても、うちは狭い大学ですよ、その代わり便利な場所にあります、あるいはうちは広いけれども、不便な場所にありますということを開示して、それをなぜ学生が判断してはいけないのかということについてお聞きしたいわけです。
○木谷審議官 再三申し上げでおりますけれども、やはり基本的に高等教育機関として最低限の水準というものを保証することが必要であり、そういう意味から、最低限の基準でございますが、今回10平米という形にしました。これはこれまでの基準からいたしますと、校地の面積からしまして3分の1から4分の1というふうな、大幅な緩和でございます。
○八代委員 3分の1から4分の1に下げたことのどこが大幅な基準の改正なのですか。なぜそれを大幅と考えるかということを是非お聞きしたい。なぜ学生に任せてはいけないのか、そこだけについてお答え願いたいと思います。なぜそうした不動産基準を撤廃してはいけないのか。
○合田課長 高等教育企画課長の合田でございます。御指摘の趣旨は、十分私どもも理解できると思っております。しかし高等教育と言えども、消費者がきちんと判断して、評価して、選びとっていくということを基本に考えていかなければいけない。そういう方向で我々もこれまで考えてまいりました。行き着くところは、やはり大学に関する情報というものが、どれだけ消費者側に十分に適切に伝達されるかどうかというところに、つまるところはかかってくるのではないか、そういう意味では我々として大学に関する様々な情報の公開が非常に重要だと考えております。
今度の第三者評価の仕組みも、事後チェックということもございますけれども、そういう大学に関する適切な情報の公開ということも非常に大きな狙いの1つでございます。しかし、それにしても結局すべての情報が完全に消費者に十分に提供されるということは非常に難しいと思います。大学という看板をかけている以上は、学生さんが一々詳しく調べて、調べなかったのは自分が悪いというような……
○八代委員 繰り返し言わせていただきますが、うちの大学は狭いということをきちっとパンフレットに書くような規制を定めたら、それで代替できるのではないかということを言っているわけです。
○合田課長 そういう場合に、ある程度一定の条件のルール、このルールはクリアされているということをあらかじめ明示するということなんだろうと思います。
○木谷審議官 もう一つ付け加えますと、仮に情報が全部提供されている、具体的にはいろんな校地の問題に限らず記述されていたとしても、私どもは先ほど来申し上げておりますように、やはり国際的な通用性のある、国際的に見て大学という信用性を確保するために必要最低限こういう質は担保されていますということは必要だと思います。学生の判断というと、学生の中には、学位さえくれればいいやというふうに思うこともあるかもしれません。
○八代委員 ここでは、教育の内容についてではなくて、学校の不動産の基準だけについて今、聞いているわけです。
○木谷審議官 教育というのは、当然施設・設備というものがないとできないわけですから、そういうものをちゃんと持っているか、そして継続的・安定的にそういうものをやっていける基盤というものを持っているのかということで、それは単に教育の中身と全く関係ないという問題ではないと私は思っております。
○八代委員 それをなぜ文部科学省が決めなければいけないかということを繰り返し聞いているんです。ですから、きちっと情報公開を担保した上で学生が判断してなぜいけないのか、なぜ5平米ではいけないのか、それを学生が判断する能力がないというふうに文部科学省は考えておられるわけですね。これは確認ですけれども。
○木谷審議官 繰り返しになりますけれども、私どもとしては高等教育機関として最低限の質ということについて、国としてきちっとした基準というものを定めなければならない、そうでなければ日本の大学の国際的な信用もなくしてしまうということを申し上げております。
○宮内主査 どうぞ。
○稲葉専門委員 ひとつ問題を変えさせていただきたいと思うのですが、文科省は一方で大学の個性化・多様化ということを非常に強調されておりますが、これは本当に大事なことだと思います。ところが、こういう基準で個性化・多様化を進めようとすると認可が要る。先ほど極端な事例を出されましたけれども、文学部の先生方が医学部を作るというのはちょっと考えられない話で、そうではなくて隣接の学問領域の融合とか統合、あるいはニッチをねらってというのが多いと思います。その隣接というのは、ここで書かれているような分類の中での隣接ではなくて、領域をまたがるような隣接がとても多いのです。
例えば、私の大学の専攻は、地理学ですけれども、ここに出ている各分野のほとんどに関わっているんですね。昔からある学問分野なんですが、それがこういうふうに文学部系に置かれると、何だこれという感じになってしまうんです。そういうように隣接というのはいろいろあるわけなんです。
一方で一所懸命多様化・個性化を進めなさいと言っておいて、一方でそれを進めようとすると認可が要るよというのは、何か冷したり温めたりしているような気がするんですが、その点どう思いますか。
○木谷審議官 おっしゃるとおりだと思います。この分野の分類というのは、非常に伝統的な分類になっております。恐らく今後ずっと学問体系のいろんな再編というものが起こってくれば、そういうものに応じて、長期的に変わっていく可能性というのは大いにある思います。
ただ、現時点である程度体系的なものとして整理されているものとしては、やはりいろんな学会の状況を見ましても、こういうものが基本になっているものですから、一応こういうことにしておりますけれども、それらがいろいろ組み合わさって総合的な学部を作っていくということは、先ほども申しましたように、農学部と理学部でバイオというふうなことを申しましたけれども、更に例えば農学部と工学部と経営学部とかが一緒になって、環境情報何とか学部とか、あるいは法学部と経済学部で総合政策学部とか、そういうことは届出で……
○稲葉専門委員 私がお聞きしているのは、そういう創意工夫とこの基準が違ったときに、創意工夫すれば認可が必要で、この範囲であれば認可が要らないんだという理由は何ですか、というよりも、それが個性化・多様化と矛盾しているんじゃないですかとお聞きしているんです。
○木谷審議官 改組・転換でやっていくという場合に、既存の教員が2分の1以上で作っていくというものは届出でできるわけです。現実に、最近の認可の例を見てみましても、正直申しまして、例えば新しく文学部なり法学部なりを作っている例はございません。地域政策部なり、環境情報学部なり、国際文化学部なり、そういうものばかりでございます。こういう分類は、1つの枠組みではあるけれども、いろんな改組・転換で、あるいはそういうものをまたがるものとして申請をいただくということは、これは勿論自由と言いますか、現実に先取りしてそういう形でどんどん大学というのはできているというのが現状でございますし、私どもこういうものを作るということを既存の伝統的なものに押し込めるつもりは毛頭ありませんし、実際にそんなことには絶対にならないというふうに思っております。
○稲葉専門委員 それでは、もう一つお伺いしますけれども、そうならないと今言われたけれども、大学の先生方は超保守的な集団なんですよ。ですから、そういう新しいことをやろうとすれば、必ず反対する人がいっぱい出てくる、その人たちが文部科学省の認可を後ろ盾にして頑張るという実態があるわけなんです。
例えばこういう実態を御存じでしょうか。文部科学省に認可、あるいは届出でも事前届出なら大して変わりないですけれども、それがあるために、国立大学でも私立大学でも、例えば理事会とか評議会とか、あるいは教授会とかが、そういう問題にどう対応するかということだけに時間を取られてしまって、本体の教育とか研究の中身を改善することへのエネルギーがむしろ少なくなってしまっている。そういう実態を御存じですか。
○木谷審議官 個別の実態について、全部承知しておるわけではございませんけれども、勿論各大学においてまず教育論として、大学としてどうするかという基本理念をまずいろいろ考えていく、その際に制度的にはどうなるんだろうというふうな議論というのは、当然あるだろうと思っております。
ただ、やはり基本はその大学としての本当の教育理念、経営理念、そういうものが中心だろうと思いますし、私どもとしては今回このような制度改正に当たりまして、この規定の趣旨、そういうものについては、先日も事前の説明ということで各大学いろいろ諸準備をされておりますので、そういうことは説明申し上げておりますし、そういった既存のものに押し込めるとか、そういうことには絶対ならないんだ、むしろ大いに活発に議論してほしいということは十分誤解ないようにと思っております。
○稲葉専門委員 改めて念を押しますけれども、今のような学際領域で新しい学部・学科を作っていく、あるいはその隙間をねらって作っていくという場合には、2分の1以上が元の教員で占められていれば認可は要らないということですか。
そうすると、今現に行われている認可はほとんど皆そういうことになるんじゃないか。だから認可は要らないというのと同じ意味になると解していいですか。つまりこれは空振り規定であると。実際には、2分の1以上の先生が関与しないで新しい学部を作るということは、新設を除いてあまり考えられないので、これは一応こういうふうには書いてあるけれども、実際には届出でほとんど済むのたという説明をしていただけますか。
○木谷審議官 現実に出てきてみないとわかりませんが、おっしゃるとおり相当部分が届出になると思います。その点で今までとは全く違うのであって、例えば総合大学であればほとんどの分野は可能になってくるわけです。
○稲葉専門委員 しかし、届出であっても事前届出だと、大学を合理化するという意味では、あまり効果がないと思います。ただ、それは今の議論を超えていますから、それ以上は言いません。
もう一つは、先ほどからのお話で、質の高い、適正な質の担保、最低の質の担保ということを随分言われましたけれども、これを私はどうも信用できない。例を示しますと、私はある国立大学に社会情報学部を作ったときに、3年目から行ったんです。これは審査を受けているわけです。ところが、非常に大事な科目がない。どうしてこういうものがないのかと私が指摘したところ、申請した方も気が付かなかったかもしれないし、文科省の方でも見逃したというような話なんですね。
ところが、それを改善しようと思ったらものすごいエネルギーが要って、とにかくスタートしたんだから、4年間、学部が完成するまではこのままいかなければいけないという説明で、なかなか改善できない。4年過ぎた後も、改善するのに苦労しましたけれども、そういう影響力があるわけです。
だから、質の担保とおっしゃるけれども、事前規制というものは密室で行われているわけです。事後規制になるとある程度オープンの場で行われるから、きちんと皆さんの適切な意見が反映されるけれども、事前規制というものは当事者と、それから審査する側の密室の判断で決まってしまうのです。そうなると、特に新しい分野について判断するのは大変なんじゃないですか。具体例を示すのは嫌だから今は言いませんけれども、示せば皆びっくりするようなミスがあるわけです。そういうことがありうるわけですが、それを気が付いたときに、言わば自浄能力によって直していくことができない仕組みになっている。ミスに気が付いたとき、さっと改めることができない仕組みになってしまうことが、私は事前規制の非常に大きな問題だと思うんです。だから、その辺をどう考えていただいているのかなと思うんですが。
○木谷審議官 そのような例はわかりませんが、私ども設置認可の際には御存じのように設置審議会の中に各種の専門委員会がございまして、近年のようにいろんな新しい総合分野が出てまいりますと、それに対応していろんな専門委員会の先生方を集めた形でそれに対応できるような、そういう委員会を特別に組織して審査するとか、そういうふう努力をしておるわけでございます。そうしたことで、今後とも引き続き実際の運用における努力はしていかないといけないと思います。
もう一つは、実際に認可されてしまった後、そういうミスがあって直せない云々というお話がございましたが、これは決して直せないとかそういう話ではなく、逆に通常一旦大学を設置認可したときに、4年間最後までの全部の教官が最初にいなくても、あるいは施設・設備も年次的に段階的に整備していくというようなこともできるというふうなことでやっていけるわけです。したがって、これは最低限やっていっていただかなければ困る。
ところが、実際に始まってくると、そういう計画が履行されないとか、そういうふうなことがないように、事情変更によって新たにむしろ充実するということで、その計画を変えるということはきちんと届出をいただくということでできるという運用をしておるつもりでございます。
○稲葉専門委員 現場ではそういうふうに受け止めていないので、文部科学省から認可を受けたことは金科玉条と考えている人が非常に多いので、こういうことを踏まえた上で規制を緩和していただきたいということでございます。
○宮内主査 福井さん、どうぞ。
○福井専門委員 先ほどの校地面積ですけれども、もともと校舎の面積の3倍以上というのを、学生1人当たり10平米に変えられたということなんですが、この旧基準と新基準について、例えば外国で同種の例があるとか、アメリカの何とか州でこういう基準があるとか、あるいはこれについて実際のニーズ調査をして、学生が1人当たり10平米ぐらいを欲しているというような具体的な実態があれば教えていただきたいのですけれども。
○木谷審議官 今、現時点で把握してございません。
○福井専門委員 ということは、これは各国を調べた上のものでもなく、実態を調査した上のものでもない基準ということですか。2つとも。
○木谷審議官 ですから、外国の状況ということについて申し上げると、外国で例えばこんなふうな例があるということは、私どもは承知しておりません。
○福井専門委員 ですから、端的に答えていただきたいんですが、要するに、この10平米とか校舎の3倍以上基準というのは、外国の例や、あるいは日本の学生のニーズ実態を踏まえたものではないということについて、イエスかノーかどっちでしょうか。
○木谷審議官 現実の日本の大学の校地の状況などを考慮に入れて考えたものです。
○福井専門委員 外国の基準と学生の実態についての考慮の方はどちらなんですか。
○木谷審議官 特にこの問題について、外国の例、あるいは学生からアンケートを取るとか、そういうふうなことはしておりません。
○福井専門委員 これも是非、さっき外国の州の事例をお調べいただくというお話が出ましたので、例えばアメリカの代表的な州を5つばかり選んでいただいて、至急、例えばニューヨーク、メイン、カリフォルニア、ミネソタ、ウィスコンシンとか、どこでもいいですから、典型的な州でこういう校地の規制があるのであれば、何平米と決めているのか、あるいはないのであればない旨是非御調査をいただけませんでしょうか。
それで、もう一つさっきの新設学科の場合に届出か認可かという件ですけれども、例えば工学部に機械工学科と電気工学科の2学科があるという大学が、建築学科をつくる場合には、これは無条件で届出なのですか。
○木谷審議官 そのとおりです。
○福井専門委員 例えば、工学部の化学工学科を持つ大学が理学部の化学科を作るという場合には、どうなるのですか。
○木谷審議官 これは先ほど申しましたように、いわゆる2分の1ルールというのが適用になるということでございまして、科学部科学工学科の教員が新しいところの教員の2分の1以上を構成するということで作られるということであれば、届出で……
○福井専門委員 ちょっと奇妙だと思うのは、関連性ということから言うと、例えば機械工学、電気工学の教員が建築工学を教えられるような人と兼ねられるとか、あるいはそのノウハウを生かせるということはあり得ないのです。全く別ものの領域です。同じ工学とはいってもですね。一方で、工学部にあろうが、理学部にあろうが、化学工学なり、あるいは化学というのは、はっきり言って同じことをやっているわけです。そういう意味ではノウハウも蓄積があるし、人的にも極めて密接な協力関係が築ける。そうすると、より密接な方についてより厳しい基準を課して、より関係のない方についてよりフリーな基準を課しているということの合理性は何でしょうか。
○木谷審議官 先ほど申しましたように、この学問分類というのは、ある意味で非常に伝統的なということでございまして、長期的に見ればそういったものが学会の動向などに応じて変わっていくということはあると思います。
ただ、現時点で考えていった場合、それから私どもが考えておりますのは、その新しい学科を作ったときに、例えば機械なり電気なり、工学科の教員が建築学科の主要科目を教えられるということは勿論考えていないわけでございまして、ただ工学というのは非常に伝統的に1つの学問体系としてきちっとあるわけでございまして、そういうものを持っているというところで、そこの教官集団としてそれは建築というものを視野に入れて、新しい構想・企画というものができると、では建築の先生で……
○福井専門委員 だって関係ないというふうにおっしゃって、その人たちが関係ないことの企画・構想をきちんとできるということの論拠は何ですか。
○木谷審議官 関係ないということではなくて……
○福井専門委員 機械工学、電気工学の教員は、建築工学で重なる部分はないのですよ。ないにもかかわらず、その人たちに企画の力があるという論拠がわからないのですけれども。
○木谷審議官 全く重ならないわけでもないと思うんです。例えば、工学という分野の基礎工学的な分野というものもあると思います。ですから、基本的には工学という……
○福井専門委員 建築学科の先生に電気工学とか機械工学の専門家がいる大学があったら教えてほしいのです。私、建築の学位も持っていますから知っていますけれども。
○木谷審議官 ですから、私はその機械とか電気の先生が、建築のメインの専門科目を教えることができるというようなことを言っているのではなくて、ただ工学という学問体系の中で、そういう分野を企画・構想する力はある。そして、必要な教員というものをきちっとリクルートしていく、そういうことを委ねても質の担保はできるという判断をするということなんです。
○福井専門委員 さっきお答えで、工学部とか文学部とか理学部というのは伝統的な枠組みなので時代に合わない部分もあるとおっしゃいましたね。時代に合わないけれども、工学とか文学とか、ある意味では伝統的にそういう傘があるからその傘に入っているというだけで、実際の学問分野での協業というのは、学部の枠とか学科の枠を超えて、どんどん別の形で発展しているのです。例えば、心理学と医学とは今は非常に密接に関係があるとか、場合によると工学分野の都市計画と法律分野なども実質的には一体的な研究がなされているとか、幾らでもそういうものがあるのです。
だから、工学部とか理学部何学科というような学科とか学部の領域というのは、あくまでも名称であって、分類概念であって、そこに何か道具性を持たせて、ある学部であったり学科であることが、直ちに何かものすごく違う効果をもたらすというようことを、本来想定したものではないはずなのです。学位というのはあくまでも印ですから、その印の付け方によって教員の半分かどうか、そうじゃないかということが、突如分かれ目になってくるのはおかしい。しかも今の例で端的に申し上げたとおり、むしろ逆転するようなおかしなことを要求することが起きるわけですね。だとしたら、やはり学部とか学科を、学位を基準にして、そういう途方もない要件が付加されるか、緩和されるかが変わってくるような、そういう基準を設けるのは妥当ではないということにはなりませんでしょうか。
○合田課長 御指摘の御趣旨よくわかります。むしろですからこれは17に分けてございますけれども、今お話のあった建築学科のような場合でも、工学という大きな傘の中に入ってさえいれば、そこのところはもう届出で処理をしましょうということをはっきりわかりやすく皆さんに知っていただくというためのカテゴリーだというふうにお考えいただいた方がいいと思います。
実際には、先ほど稲葉先生から御指摘がありましたように、現実に新しくできてくる学部というのは、そういう隣接分野にいろいろ展開をしてくるわけでございまして、子ども学部でございますとか、あるいは知的財産学部でございますとか、キャリアデザイン学部とか、そういったような形で展開をしてくるということであると思います。
その場合に、そういったようなものを、おそらくはほとんどの場合届出ですましていけるだろうというふうに思っておりますけれども、しかしその場合にも全く何の目安もなく、現場の窓口の裁量で決めるといったようなことでは具合が悪いので、そこで2分の1というルールを決めているわけでございますけれども、この2分の1も、例えば理学部科学科というのが20人の先生で構成されるとして、その20人の半分の10人ということを申し上げいるわけではなくて、設置基準上その科学科をつくるときの最低基準上の人数の半分ということでございますから、既存の組織の中に新しい形のものを構想していくコアになる人たちが何人かおられれば、その隣接分野への展開はかなり自由にやっていただけるようになると思っております。
この点については、私どもも十分その趣旨を徹底をさせていただきまして、先ほど稲葉先生から御指摘のあったような、各大学の中で文部科学省が非常に難しいことを言うという、非常に強い、今まで私どもの不徳のいたすところだと思いますけれども、そういう観念がありますので、今回はそういうことを大幅に変えていくんだということを十分に徹底させていきたいというふうに思っております。
○福井専門委員 どれぐらい支障になるかどうかということは、いろいろ実態によって、あるいはそのときどきによって変わると思うのですが、やはり重要なことは基準として存在していると一人歩きしますし、出回りますから、幾ら合田課長がこれは柔軟ですよとおっしゃっても、やはり現場で受け止めるときに文部科学省の基準というものはバイブルのように通用するのです。非常に重い意味がありますので、勿論実際上はどうかということはともかくとしても、現実に非常にクリティカルな効果を持つ場面があり得る以上、そういう具体的な支障が起きないような基準に最初から変えておいていただくということが必要だと思うのです。大方はいいから、少数の例外は無視してもいいですよということにはならないので、やはりこういう基準があるせいで柔軟な学科新設などが阻まれる1%の可能性でもあるとしたら、それはむしろ変えていただた方がいい、届出に端的にしていただいた方がいいということになると思うんです。
伝統的分類概念についてですが、それ自体に合理性がないということは認めておられるわけですから、だったらもう基本的にそこに大きな効果を持たせて、道具概念として金科玉条にするのはやめて、基本的に全部廃止にしていただく。これは名称だけの問題だというふうに突き進んでいただかないと首尾一貫しないのではないかと思います。
○木谷審議官 繰り返しになりますけれども、伝統的な概念であるけれども、しかし現時点においても学会の状況を見てみましても、それぞれのそういう体系というのは今も一番中心にはなっている。そして、そういうものがいろいろ集まって、いろんな新しい学際領域というのはそれぞれ工夫によって、いろんな関係の方々が一緒になって新しいものを切り開いていくと、そういうようなスタイルになっているわけですね。
したがって、例として理学部とか工学部とか農学部とか書いておりますが、現実にもう既に御覧いただきますよう、多くの大学がそもそも、例えば総合理工学部であるとか、総合政策学部であるとか、そういうふうなことになっているわけです。つまりそういう場合にどう考えるかというと、例えば理工学部であればそれは理学と工学の両方の分野にまたがっているものだと、したがってその分野の中でいろいろ展開するのは当然自由だし、更にはほかのところとまたくっついて新しく展開していくいうのも自由だと。
したがって、これまで学部と何々学部というのが一緒のようなことで申し上げましたけれども、これはあくまで分野でございまして、法学なりそういう伝統的な分野としてはやっておりますけれども、現実の大学にある多くの学部はもうこれらを幾つかまたがった分野で……
○福井専門委員 そういう話ではなくて、今の論点は要するに、こういう伝統的な分類に重大な効果を持たせることを維持するのかどうかということです。維持しないと合理性がないというのであれば、ここでは時間がないので、もし絶対に必要だということであれば、さっきの事例に即して機械工学と電気工学の専門家が建築学科の企画構想をする方がより適切に判断できて、工学部の化学工学科の教員が理学部化学科をつくるときの方がより適切に企画構想ができないという実態が本当にあるということについて、論拠を示して、後でペーパーをいただけませんでしょうか。
○稲葉専門委員 もう一つ質問なんですけれども、この分類というのは、どういう形でオーソライズされて、どこでどういう効力を持っているんでしょうか。それは後で資料として、どういう形で定められて、どんな効力を持っているのかということをお聞かせ願いたいと思います。
もう一点、今の御説明でちょっと満足できないのが、こういう既存の学界同士が一緒になって新しいのを作っていこうという場合はいいのですが、そうではなくて全く新しいニーズに対応していく場合には、既存の学界は言わば抵抗勢力になるわけです。その抵抗勢力が、文部科学省の考え方を基に、新しい展開をすることに猛烈に反対するわけなので、その実態をよくつかんでいただけたら、こういう区分はしない方がいいんじゃないかと思うのですが、その点よろしくお願いいたします。
○宮内主査 それでは、まず森さん、それから福井さん。
○森委員 先ほどの校地の問題に戻りますけれども、特区の場合には所有してなくてもいいというふうに、2月27日にお決めになっているようですが、特区ならよくて一般的にはいけないというふうに考えられている理由は何なのでしょうか。
海外の事例でも、自己所有でなければいけないというふうに決めている国と、決めていない国とを是非今度出していただきたいんですが、借りているのではいけなくて、持ってなくてはいけないと、ましてや校地という土地を持っていても何もならないので、使える建物があるかどうかが問題なのではないかと思いますし、ついでに申し上げますと、大学が少なくて学生が多いという時代がありましたね。そのときは、大学という看板を掲げれば学生が来て授業料が取れましたが、そういう時代ではなくなって、もう学生がいなくなっているときに、文部科学省がまだ一生懸命こういう資格を満たしていなければだめですよと頑張っていなければならないという、そういう時代ではもうなくなっている。ですから、せっかく特区で認められたんなら全国に一律にそれを認めていったらいいんじゃないかと私は思うんですが、そうなさらない理由があるならお聞かせいただきたいと思っております。
○玉井総括審議官 これは自己所有要件の問題ですね。これとは別に校地そのものの問題ですと専門職大学院というところだったんですけれども、それは要するに専門職社会人というときに果たして校地まで必要なのかということで、特区制度という試みでございますから、私どもは基本的には先ほど来議論になっていましたけれども、必要最小限の質を担保するものとして、施設だとか校舎、校地、必要最小限に必要なんじゃないかと思っております。ただし、時代の変化によって、よく見直していかなければならないと思って全国的に緩和を図ろうと、同時に特区制度ということでの地域の試みでございましたので、そこで専門職大学院の場合には校地がなくてもいいんではないかと、これをまずやってみようと考えたわけです。
それから、自己所有要件でございますが、これは専門職大学院に限らず、今回特区制度の趣旨、第1次提案、つまり去年の提案に基づくものでございますが、第1次提案のときには、これは実は自己所有要件の撤廃は専門職大学院と考えておりましたが、それを今度の第2次提案におきまして広げていったわけです。やはり地域のニーズに応じてというのは、自己所有が困難な地域がありますし、そしてよりその地域のニーズに応じていろんな柔軟にやりたいというニーズが現にありましたので、それを試みとしてやってみようということでございます。
なお特区制度につきましては、今回の基本的な考え方として評価を入れて、そして特区でやってみて、それでいいものがあればまた全国展開するし、まだ逆に問題があればまた見直していくというのが特区制度でありますので、私どもとしては特区制度の実際の動きをよく見させていただきたいと思っております。
○森委員 地域の事情とおっしゃいますけれども、大学生というのは日本中から来るので、どの地域に来るか、その地域がどうであるかということは関係がないと思うんです。だから、ある特定の地域で認めるということは、要するにそこの地域の人しか行ってはいけないという大学の場合認めるという意味ならわかりますけれども、そうではないんだとすると何も意味はないんではないかと思うんです。
○玉井総括審議官 具体に出てまいりましたものを個別具体に見ますと、それぞれの地域に応じての、特別なニーズでの御指摘がございましたので、まさにそれが特区制度によるということで、私どもとしてはできるだけその発意は生かしたいということでやっていました。
おっしゃるとおり、全国ベースでどうするかという議論も常にあるわけでございまして、したがってこの規制改革会議でもこういう要件の緩和について、更に見直すべしという御指摘もありますので、それはそれで私ども考えさせていただきたいと思っております。
○森委員 是非お願いしたいと思います。特区というのは、地域の繁栄のために至急お願いしたいという意味であって、ここだけでお願いしたいという意味ではないと思うんです。それをなかなか認めていただけないから、例外として認めていただこうといっているのだけれども、この場合1つ認めれば全部同じことではないか、学生はどこからでも来るんですからね。そういう意味で、自己矛盾になっているんじゃないでしょうか。やはり一般則にするべきではないでしょうか。
○宮内主査 時間がまいりましたので、それではあと福井さんと鈴木さん、手短かにお願いします。
○福井専門委員 2点資料をお願いできればと思いますが、先ほどの学位分野の変更を伴うか否かで届出か認可がというような、別に届出という用語や認可という用語はどうでもいいんですけれども、その学位分野の変更を伴うか否かによって、手続に重大な差異が生じるような諸外国の例をお示しいただきたいと思います。
もう一点は、前半の方の話題ですけれども、さっきも触れましたが、1949年の法務省回答によると、ややもすれば特定の宗教等に左右されやすい傾向があるために、慈善教育、博愛の事業について制約を設けたのであり、政教分離原則、公金の乱費を防ぐのが89条の目的であるという記述があります。これが政府見解として生きていると理解しているのですけれども、生きているとすれば、さっき宗教学校に補助金を出しておりますと、堂々と御答弁がありましたけれども、その運用はこの政府見解と抵触するのか否か、しないとすればその理由は何かということについて、後ほど書面で御教示いただきたいと思います。
○鈴木副主査 話を聞いておりまして、この問題は、どうも文部科学省の方が分が悪そうで、校地要件を維持することはかなり難しいなという感想を持ったのですけれども、それはそれとしまして、届出ということは行政手続法によると、届出をする義務を持つ者の届出が相手方の官庁に到達したときに届出をするという義務が完了すると書いてあるだけなんです。ところが、霞が関では不思議なことに、事前届出ということでこれをやっておって、私も随分事前届出制を普通のいわゆる事後届出、本来の届出にすることをやってきたのですが、今いった場合の届出ですけれども、2つ種類があると思うのです。1つは工学部の中で建築学科をつくるときの届出、もう一つは2分の1要件のようなものをやるときの届出。それぞれについて一体どういう事前事項をチェックしているのか、つまり何を見ておられるのか、それを資料で出していただきたいと思います。何を審査しておられるのですかということです。
○宮内主査 八田委員、どうぞ。
○八田委員 2つポイントがあるんですから、先ほどからお話出て来たことで、情報公開を徹底して、そしてユーザーに判断させるという道が1つあるんではないかということなんですが、それは民間に任せておいてもできないですね。官が強力に情報公開を要求して、しかもその情報の審議をいつもチェックするといった仕組みが必要だと思います。それをどう判断するかは官はやる必要なく、情報だけは出させるといった仕組みが、例えば認可とかそういうところに、これから強化させていくお考えがあるのかどうかということなんです。今までのお話を伺っていると、すべてそこにかかっているように思います。特にこれはホームページという道具がありますし、もし必要ならば、先ほどの校地はなんか非常に簡単なことで、文部科学省の方でホームページに全部の学校の校地を載せればいいわけですから、それは簡単です。
それに対しての反論として、高校生がそんな情報を全部見れないということなんですが、全くそんなことないと思います。アメリカの大学で学生が応募するときの状況で、日本より恵まれているなと思うのは、大学で平均のクラスの人数、それから最大の人数、先生の学歴、そういうものについて細かいリストに載ったものが商業的に、例えばUSニュースワールドリポートのようなものが、シーズンになるといっぱいリストを出してくる。そしていろんなランクを出すということなんです。それは基になる情報が公開されているということが必要で、そういうことがもし日本でできれば、おそらくアメリカ以上にそういう民間の情報機関が、有効な情報を提供するようになると思うんです。
例えば、先ほどのお話のようなことで、例えばホームエコノミックス、家政学のようなことをずっとやって論文を書いてこられたとして、その方が新設の経済学部で国際金融論を論じられるというとき、今までの設置審だと設置審の専門委員がそれを見てこれはおかしいんじゃないかと、この先生はだめですよということを言ってきたんですが、そんなことを言う必要はないのであって、情報を出して、全教官の履歴書、業績表を出させれば、それは学生が評価しなくてもどこかの会社がちゃんと見て、これは相当いいかげんなところだよということを言えると思うんです。
先ほどのどこの学部で何をつくるかということも、おそらくそういう履歴書、業績表の情報公開で済むことではないかと思います。それが一点。私は意見として申し上げているんではなくて、そういう情報公開についてどういうふうな措置を今後お取りなるか、書面でも結構ですから、お知らせいただきたいと思います。
もう一つは、外国との信用性ということをおっしゃいましたけれども、これはそういう情報公開ができていれば完備することだと思います。日本語であっても、それは必ず英訳されていくと思います。それが1つです。
それから、私自身アメリカの大学で教えていて、日本の大学から応募してくる学生に奨学金を出すか出さないかという判断を選考委員会がやるときに、聞いたことがない大学から推薦状が来ると、そういうときにはやはり日本人の私に聞きにくるんですね。この大学はどのぐらいの評価をしたらいいか、ここの先生の推薦状はどの程度評価できるだろうか、この成績表はどうだろうか。それがインドの場合には、インドの先生に聞くわけです。この学校は有名な大学ですよと言ったら、それを評価に入れるんです。そういうことがあるわけで、それは日本の大学を出ていれば何でもいいというわけではなくて、それは二次的な選考がありますから、二次的な選択ができるような基礎データをプロバイスすることが、外国のことについても重要だろうと思います。
したがって、繰り返しになりますが、情報の公開についてこれからの方針を文書でお知らせいただければありがたいです。
○宮内主査 時間がまいりましたので、もし何か特にコメントがございましたら、よろしゅうございましょうか。
非常に長時間にわたりまして、何度も何度も同じような議論をさせていただいて、大変恐縮でございます。今日のお話をお聞きしながら、相当認識が違うなという感じを持って終わることは誠に残念ではございますけれども、時代は変化しており、そしてそれに従って規制も変えていくんだという言葉もございました。規制があることが時代の変化を止めてしまうということもございますので、そういう御認識であれば是非前倒しに、そしてユーザー中心の選択肢の多い世界をつくっていくということに御理解を賜れれば非常にありがたいと思います。今後とも、意見の相違もございますが、意見交換の機会を持たせていただきまして、少しでもすり合わせさせていただきたいと思っているわけでございます。
今日はそういう中で、大変御多忙のところ、玉井総括審議官始め皆様おいでいただきましたこと、心から感謝いたしまして、本日のヒアリングを終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
(文部科学省関係者退室)