建物区分所有法の一部を改正する法律案に関する要綱案(案)

第1 共用部分の変更

共用部分の変更は,形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除き,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決するものとする(法第17条第1項関係)。

第2 管理組合,管理者及び規約等

1 共用部分等の維持・管理に関する訴訟における管理者の当事者適格等

  1. 管理者は,共用部分並びに法第21条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(以下「共用部分等」という。)について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領に関し,区分所有者を代理するものとする(法第26条第2項関係)。

  2. 管理者は,規約又は集会の決議により,1.の請求及び受領に関し,区分所有者のために,原告又は被告となることができるものとする(同条第4項関係)。

  3. 管理組合法人の代理権及び当事者適格に関しても,1.及び2.と同様の措置を講ずるものとする(法第47条第6項)。

2 管理組合の法人化の要件

第3条に規定する団体が法人となるための人数要件を撤廃するものとする(法第47条第1項関係)。

3 規約の適正化

規約は,各専有部分及び共用部分又は建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設(これらに関する権利を含む。)につき,その形状,面積,位置関係,使用目的及び利用状況並びに各区分所有者が支払った対価その他の事情を考慮して,各区分所有者の利害の衡平を害しないように定めなければならないものとする(注)。(法第30条第1項及び第2項関係)

(注)各区分所有者間の利害の衡平を害する内容の規約について,民法第90条が適用される場合の規範を具体化・明確化するものである。

第3 規約・議事録等及び集会・決議の電子化(IT化)

1 規約・議事録等の関係書類の電子化

  1. 規約,議事録等(以下「規約等」という。)の関係書類は,電磁的記録(電子的方式,磁気的法方式その他人の知覚によっては認識することができない方式により作成される記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成し,又は保管することができるものとする(法第33条,第42条,第45条関係)。

  2. 規約等を保管する者は,利害関係人の請求があったときは,正当な理由がある場合を除いて,次に掲げる閲覧を拒んではならないものとする。

    1. 規約等が書面で作成されているときは,当該書面の閲覧

    2. 規約等が電磁的記録で作成されているときは,当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの規約の保管場所における閲覧(法第33条第2項関係)

  3. 議事録が電磁的記録をもって作成されている場合は,当該電磁的記録に記録された情報については,議長及び集会に出席した区分所有者の二人が法務省令で定める署名に代わる措置を執らなければならないものとする(法第42条関係)。

  4. その他,規約等の電子化に伴う関係規定の整備をするものとする。

2 集会における電磁的方法による議決権行使

区分所有者は,規約又は集会の決議により,書面による議決権の行使に代えて,電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によって議決権を行使することができるものとする(法第39条関係)。

3 書面又は電磁的方法による決議

  1. 法律又は規約により集会の決議をすべき場合において,区分所有者全員の承諾があるときは,各区分所有者は,書面又は電磁的方法により決議をすることができるものとする。ただし,電磁的方法による決議に係る承諾については,法務省令で定めるところによるものとする(新設)。

  2. 法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については,区分所有者全員が,書面により合意をした場合のほか,電磁的方法により合意をした場合も,書面又は電磁的方法による決議があったものとみなすものとする。

  3. 書面又は電磁的方法による決議は,集会の決議と同一の効力を有するものとする。(法第45条関係)

第4 復旧

1 大規模滅失による復旧決議に賛成しなかった区分所有者の買取請求に対する買取人の指定

  1. 法第61条第5項の決議(以下「復旧決議」という。)があった場合において,復旧決議があった日から2週間を経過したときは,3.の場合を除き,その決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。以下「決議賛成者」という。)以外の区分所有者は,決議賛成者の全部又は一部に対し,建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができるものとする。

  2. 1.の請求を受けた決議賛成者は,当該請求があった日から2月以内に,他の決議賛成者の全部又は一部に対し,当該建物及びその敷地に関する権利を法第14条に定める割合に応じて時価で買い取るべきことを請求することができるものとする(注1)。

  3. 決議賛成者が復旧決議があった日から2週間以内に,全員の合意により買取指定者を指定し,かつ,買取指定者がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に書面で通知したときは,買取指定者に対してのみ1.の請求をすることができるものとする。

  4. 買取指定者が1.の請求についての債務の弁済をしないときは,決議賛成者は,連帯してその債務の弁済の責めに任ずるものとする。ただし,決議賛成者が買取指定者に資力があり,かつ,執行が容易であることを証明したときは,この限りでないものとする。

  5. 1.の請求を受けた買取指定者,2.の請求を受けた決議賛成者(注2)及び4.による債務についての履行の請求を受けた決議賛成者についても,当該買取指定者等の請求により裁判所が支払の期限の許与をすることができるものとする。(法第61条第7項及び第9項関係)

(注1)買取指定者の指定がされなかった場合の買取請求について,決議賛成者間の負担の衡平を図るために,買取請求を受けた決議賛成者は,他の決議賛成者に対し,当該建物及びその敷地に関する権利を共用部分の持分割合に応じて時価で再買取請求をできるものとするものである。

(注2)2.の請求についても,直ちにその履行をさせるのが不相当と認められる場合があることから,現行法第61条第9項に規定する期限の許与を認めることとするものである。

2 大規模滅失による復旧決議に賛成しなかった区分所有者の買取請求の行使期間

  1. 買取指定者の指定がされていないときは復旧決議をした集会の招集者が,買取指定者が指定されているときは当該買取指定者が,決議賛成者以外の区分所有者に対し,4月以上の期間を定めて,買取請求をするか否かを確答すべき旨を書面により催告することができるものとする。

  2. 決議賛成者以外の区分所有者は,1.の催告を受けた日から1.の期間を経過した後は,1の1.の請求をすることができないものとする。(法第61条第7項関係)

第5 建替え決議

1 建替え決議の要件

次のいずれかに該当するときは,集会において,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で,建物を取り壊し,かつ,当該建物の敷地若しくはその一部の土地又はその敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議をすることができるものとする(注1)(法第62条第1項関係)。

  1. 建物が新築された日から30年を経過したとき。

  2. 損傷,一部の滅失その他の事由により,建物の効用の維持又は回復(通常有すべき効用の確保を含む。)(注2)をするのに当該建物の価額を超える費用を要するに至つたとき。

(注1)客観的要件を設けずに多数決だけで建替え決議をすることができるものとすることはどうか。

(注2)2.の要件は,損傷,一部の滅失その他の事由によって,建物が建物としての社会経済的効用を果たすために社会通念上当然に保持すべき性能を欠いているときに,社会的経済的効用を果たし得るものとするために要する費用が建物の価額を超えるような場合には,建替え決議をすることができることとするものである。建物が建物としての社会経済的効用を果たすためには,建物が現に有している性能を維持することや,損傷,一部の滅失等によって損なわれた性能を元の状態に回復することだけでは足りず,社会通念上建築時の建物より高い性能を当然に確保すべき場合があると考えられる。「通常有すべき効用の確保を含む。」とは,こうした性能を確保するために要する費用が建物の価額を超えるような場合にも,建替え決議をすることができることを表現上より明確にしたものである。

2 招集通知の発出時期

1の決議を会議の目的に含む集会を招集するときは,当該集会の会日より少なくとも2月前(注)に招集の通知を発しなければならないものとする(新設)。

(注)集会の会日までの間に説明会を開催しなければならないとすること(後記4)を考慮して,招集通知の発出時期を集会の会日の2月前としたものである。

3 通知事項

2の場合において,集会の招集の通知をするときは,議案の要領のほか,次に掲げる事項をも通知しなければならないものとする(新設)。

  1. 1の1.に該当することを理由とする場合

    1. 1の1.に該当する事実

    2. 建物の効用の維持又は回復(通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の概算額

    3. 建物の修繕に関する計画が定められているときは,当該計画の内容

    4. 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額

  2. 1の2.に該当することを理由とする場合

    1. 1の2.に該当する事実

    2. 1.のエに掲げる事項

4 説明会の開催

2の集会を招集した者は,当該集会の会日までの間に,当該招集の通知事項に関する説明会を開催しなければならないものとする(新設)。

第6 団地内の建物の建替え承認決議

  1. 一団地内にある数棟の建物(以下単に「団地内建物」という。)の全部又は一部が専有部分のある建物であり,かつ,その団地内の一棟の建物(以下単に「一棟の建物」という。)の所在する土地(これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の団地建物所有者の共有に属する場合において,当該土地(これに関する権利を含む。)の共有者たる団地内建物の団地建物所有者で構成される団地管理組合又は団地管理組合法人の集会の承認を得たときは,当該一棟の建物の団地建物所有者は,当該一棟の建物を取り壊し,かつ,当該土地に新たに建物を建築することができるものとする。ただし,当該一棟の建物が専有部分のある建物である場合にあってはその区分所有者の全員の同意又はその建替え決議がある場合に,当該一棟の建物が専有部分のある建物以外の建物である場合にあってはその所有者の同意がある場合に限るものとする(注1)。

  2. 1.の建替え承認決議は,当該集会における議決権の4分の3以上の多数をもってしなければならないものとし,各団地建物所有者の議決権は,当該土地(これに関する権利を含む。)の持分の割合によるものとする。

  3. 1.ただし書の場合における当該一棟の建物の団地建物所有者は,1.本文の集会においては,当該一棟の建物の建替えに同意する旨の議決権を行使したものとみなすものとする(注2)。

  4. 1.の集会を招集するときは,法第35条第1項の通知は,当該集会の会日より少なくとも2月前(注3)に,新たに建築する建物の設計の概要(当該建物の当該土地内における位置を含む。)(注4)をも示して発しなければならないものとする。

  5. 1.の場合において,当該一棟の建物の建替えが,当該一棟の建物以外の建物(以下「当該建物」という。)の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは(注5),1.の建替え承認決議において,当該建物の団地建物所有者が有する議決権の合計の4分の3以上を有する者(当該建物が専有部分のある建物以外の建物である場合にあってはその所有者)が当該建替えに同意する旨の議決権を行使していることを要するものとする(注6)。

  6. 1.の場合において,建替えをする当該一棟の建物が二以上あるときは,当該二以上の建物の団地建物所有者は,各建物の団地建物所有者の合意(当該建物が専有部分のある建物である場合であって,当該建物について建替え決議があるときは,当該建替え決議をした集会において,当該二以上の建物について一括して1.の集会の承認に付する旨の決議があったことで足りる。)により,当該二以上の建物について一括して1.の集会の承認を得ることができるものとする(注7)。(新設)

(注1)団地内の数棟の建物の全部が区分所有建物である場合の建替えに限定せず,一部が区分所有建物である場合の建替えをも対象とするものである。

(注2)例えば,建替えをする団地内の一棟の建物が区分所有建物である場合には,全員合意による建替えと,建替え決議による建替えとが考えられるが,建替え決議による建替えの場合に,建替え決議に反対する当該建物の区分所有者が,1.の集会において,土地共有者の立場から建替えに同意しない旨の議決権を行使できるものとするのは,将来売渡請求権を行使されることにより土地の共有関係から排除されることが想定される者の意思を建替えの承認決議に反映させることになって合理的ではないと考えられることから,当該建物の区分所有者は,1.の集会においては,建替えに同意する旨の議決権を行使したものとみなすものとすることはどうか。

(注3)敷地共有者全体の意思決定を行う集会の準備期間として1月では十分ではないと考えられることから,2月とすることはどうか。

(注4)「新たに建築する建物の敷地内における位置」は,他の建物の団地建物所有者の主要な関心事項の一つであり,かつ,他の建物の建替えに特別の影響が及ぶか否かを判断する上で必要な情報と考えられることから,1.の集会の招集に際して通知すべき事項である「新たに建築する建物の設計の概要」に含まれることを明確にしたものである。

(注5)「他の建物の建替えに特別な影響を及ぼすべきとき」とは,建替えによって当該建物の規模が拡大し,他の建物に案分されるべき容積率を侵害すること等により,将来における他の建物の同様の建替えが制限される場合に限定されるという趣旨である。

(注6)「他の建物の建替えに特別な影響を及ぼすべきとき」において,特別の影響を受ける建物が区分所有建物である場合に,その区分所有者全員の承諾を必要とすると,(1)区分所有者が多数にのぼり,その全員から承認決議への同意を得るのは極めて困難な場合があること,(2)特別な影響を受ける建物の全区分所有者が有する当該土地の持分割合の4分の3以上を有する区分所有者が建替えの承認決議に同意している場合には,その内容の合理性が担保され,その建物の区分所有者に一方的に不利益が及ぶ状況は排除されると考えられることから,上記割合の区分所有者の同意があることを条件として,建替えができるものとすることはどうか。

(注7)建替えをする建物が2棟以上ある場合に,2以上の建物の建替えについても,一括して1の集会の承認決議をすることができるものとすることはどうか(なお,当該建物について建替え決議をする集会における一括して1の集会の承認に付する旨の決議の決議要件は,建替え決議の決議要件と同様(区分所有者及び議決権の5分の4以上の多数)とする。)。


内閣府 総合規制改革会議