第10回住宅・土地、公共工事WG 議事概要

1. 日時

平成14年11月27日(水)9:40〜12:00

2. 場所

永田町合同庁舎総合規制改革会議大会議室

3. 議題

(1) 法務省ヒアリング 「競売の実効性の確保について」

4. 出席者
(委員等)

八田主査、村山副主査、浅見専門委員、福井専門委員

(事務局)

福井審議官、千代参事官、下山企画官、事務室担当員

(法務省)

原田大臣官房審議官、民事局:筒井民事局付検事


議事概要

(1)法務省ヒアリング「競売の実効性の確保」について

(八田主査)今日のヒアリングについては、以前から話をしていたとおりに議事録をそちらに見ていただいた上で、公開することとしたい。構わないか。

(原田審議官)構わない。
 内覧制度、最低売却価額制度、占有権原を挙証しない占有者の失権効について現在の考え方、検討状況を説明したい。
 内覧制度導入については、法制審議会において、保全処分に基づき執行官が競売不動産を保管している場合、したがって占有者がいない場合であるが、これを対象に内覧制度を新たに創設する方向で検討している。これにより現況調査の充実、場合によっては現場の状況を写真だけでなくビデオ撮影してその情報を提供することと併せて、買受希望者が実際に執行官が保管している物件について内覧できることで、内覧の機会は拡充されるものと考える。これに加えて執行官保管の要件が大幅に緩和されるので、これにより、占有者が不穏な占有状況であれば、執行官保管の機会が増えることで、内覧制度の対象となる不動産が増加すると考えている。問題は、執行官保管でない物件について強制的に内覧させる制度を設けるべきであるとの意見であるが、競売物件については、自宅として住んでいる人もいれば賃貸マンションで賃借人が居住している場合もある。このような物件について強制的な内覧を実行するのは非常に難しい。本人たちが「どうぞ」と認めてくれればよいが、内覧制度を設ける以上は、その人が拒んだ場合にでも最終的には強制力を行使してでも中を見れる制度となるので、そこまでの制度を現在の我が国の状況で認めるということは、非常に抵抗が大きいし、国民的コンセンサスも得られないのではないかと思う。特に内覧制度を創設すると競争入札の公平性を確保するために、内覧希望者がどういうものであれ内覧を許さざるを得ないため、その弊害はとても大きい。この点については法制審議会においても、執行官保管の競売不動産に限り内覧を認めることで、コンセンサスが得られている状況である。
 最低売却価額については、今回は廃止をしないという方向で検討している。我が国の執行手続の最大の弊害である執行妨害がなくならない状況では、最低売却価額制度を廃止すると安値で競落することを狙う執行妨害を助長し、所有者、抵当権者の利益を害するおそれがある。最低売却価額については、アメリカの制度を引き合いに出し、アメリカでは最低売却価額制度がなく売却率も高いと指摘されてきた。我々もアメリカの制度というものが、それほど理想的なものなのか少し調べた。アメリカの場合は最低売却価額制度がないため、安値で売却によって債権回収が困難になることを防止するために、抵当権者が自己競落するのがほとんどである。しかも自己競落した不動産については、アメリカには市民の居住用不動産の取得促進プログラムというものがあり、連邦政府住宅都市開発局が目的不動産を買い上げたり、ローン・サービサーという民間企業が買い上げたりといった背景事情があって、第二市場が相当に整備されている状況の下で、これができている。したがって、アメリカの場合は、最初に自己競落しても、さらにそれを売って最終的な債権回収をすることになる。日本では最初の競売だけで、債権の満足が受けられるということで、こちらの方が単純で実効性も高いと思われる。仮に最低売却価額制度を廃止すると、金融機関が高値の売却を意図して安値でこれを買い受けて、二次市場で売却し利益を得るというおそれがある。アメリカでもこの問題点が指摘されていて、アメリカでは結局それを何とか防止するために、被担保債権との関係では、残存債務価額確定訴訟においては適正な価額によって売却されたという前提の訴訟を提起できることになっている。さらに債務者が場合によっては買戻しができるという制度も用意されている。このような後の手当てをしてまで最低売却価額を廃止するかどうかとなると、この部分だけ制度を単純に変えるだけではないので、このような背景となる事情を十分踏まえた上の相当な制度全体の見直しをする必要がある。ここまで一気に我が国の制度を、アメリカでも問題があるとされる制度と同じようなかたちにするのは適当ではない。法制審議会の意見でも、最低売却価額制度について議論を何度かしたが、裁判所、日弁連、不動産鑑定協会、全銀協、第二地銀協、法友会などほとんどのところが廃止に反対である。そのような中で、どうしても廃止しなければならないという実務界からの切実な要望がない中で、廃止することは適当でない。現実に最低売却価額があるから、不動産が売れないという状況の実証は十分にされていない。現在最低売却価額制度の運用が改善されており、その価額が高すぎて買受希望者が現れないとか、価額決定までに時間がかかり過ぎるとかの問題点は大幅に解消されていると思っている。
 執行官が現況調査に行った段階で占有者が占有権原を明らかにしない場合に占有権原を未来永劫主張できないかたちにするべきとの意見であるが、これについては、単に占有者が占有権原を明らかにしないというだけで、占有権原を完全に奪ってしまうということについては、今の我が国のように、きちんとした裁判手続による手続保障も必要であるという制度の下で、簡単に失効させてしまうのは難しい。もしそれをどうしても実現するというのであれば、執行手続の中でその実体法上の占有権原を確定するという手続を持ち込まなければならない。そうすると実体法上の占有権原を確定するということは、現在の制度の下では手続保障を十分にされなければならない。裁判所が占有者がきちんと意見を聞き、状況を把握し、証拠調べをし、裁判手続で確定する。最終的には裁判手続を確定することであるから、不服申し立ての機会も認めるまでの制度を執行手続の中に導入することになる。訴訟完結までは売却実施を留保せざるを得ないことになり、競売手続の著しい遅延要因となる。現実に執行官が行って占有権原の有無を調査するわけであるが、今回我々は短期賃貸借制度の廃止ということで検討しており、もし、これが実現すれば占有者が自らの占有権原を明らかにしない場合で、しかも占有権原が買受人に対抗できるというものは、ほとんどなくなる。例外的にあるとすれば、賃借人が最も優先する抵当権の設定前に占有を開始した場合であると思うが、これ自体はその認定が難しいものであるとは思わないので、容易に判断できると思われる。したがって、占有権原を失効する制度は導入する必要はない。

(八田主査)最低売却価額制度の廃止について、いろいろな団体から要望を聞いてきたけれども廃止の要望は出てこなかったと前回の説明でも、本日の説明でもあったが、例えば、債権回収会社の会社がいくつかあるが、そういうところから聞いているのか。

(原田審議官)これについては、中間試案を出して意見照会を行った。その時に最低売却価額制度を廃止するか否かを意見を求めた。ほとんどが反対であった。賛成というのは大阪弁護士会の一部、日本大学法学部の一部、貸金業協会の一部というところが・・。

(福井専門委員)そうではなくて、債権回収会社とか保証会社とかは意見照会したのか。

(筒井局付)債権回収業については、業界団体の方へ意見照会した。また、保証業界の団体に対しても意見照会している。

(福井専門委員)その結果は。

(筒井局付)今日は資料を持参していない。

(福井専門委員)債権回収とか保証会社は、きちんとした業界団体がないと聞いているが、どこにしたのか。要するに一般的に金融機関は債権譲渡して、保証会社にやらせる。保証会社は債権回収のコンサルティング会社とか代行会社にやらせる。全銀協と言われるが通常債権回収はしないし、そういう組織はない。債権回収の現場は全く別なところにある。そういうところに具体的な意見徴収のヒアリングしたとか、インタビューしたとか、直接間接に彼らの意見を聴取したことはあるのか。

(八田主査)例示で言えば、A会社とかB会社とかの債権回収を行っている会社がある。そういうところの意見徴収はしたのか。

(筒井局付)サービサーにも保証会社にも業界団体はある。

(福井専門委員)そこを呼んだのか。

(筒井局付)そこに対して意見照会をしている。

(福井専門委員)生の声を聞いたことはないのか。

(筒井局付)中間試案を説明して、意見があれば出して欲しいと業界団体には言ってある。

(福井専門委員)一番債権回収現場に近いところの業界から、直接話を聞いたことは一回もないということか。

(筒井局付)はい。

(原田審議官)こういう制度であるから、それを全てのところから個別的に意見を聞くということは理想的であるが、限られた時間の中で最大限の効果をあげるための意見照会であるので、中間試案を説明して意見を寄せてくださいということである。

(福井専門委員)最低売却価額について米国を調べたら、いろいろ問題があると言われたが、どこの誰に聞いたのか。

(原田審議官)これは、最高裁から米国に派遣された判事が、直接には調査した。

(福井専門委員)何という判事か。

(原田審議官)甲という判事が、例えば連邦政府住宅都市開発局や全米譲渡抵当銀行協会を訪問したり、競売事件に携わる多数の弁護士、裁判官、シェリフ等の裁判所職員並びに研究所職員にもインタビューをするというかたちで調査した。

(福井専門委員)その具体的なリストを出してもらいたい。何裁判所のどの判事とか、何という弁護士にとか。

(原田審議官)それは私どもが直接調査した訳ではないので。

(福井専門委員)多数のインタビューというのは証拠にならない。その人が言っているだけではないというのは、どうやって証明できるのか。具体的に教えて欲しい。

(原田審議官)しかしアメリカにおける制度の調査のやり方であるから、その信頼性が著しく低いということであればともかく、信頼できる裁判官が行って調査している訳であるから、その具体的な方法まで我々がどうこう言えることではない。

(福井専門委員)「競売の法と経済学」という書籍の中に、我々のやった調査した実体が載っているが、そこで具体名を出して、聞いた裁判官、弁護士、コンサルティング会社の具体名、日時まで特定してほとんどのものは当事者の校閲まで受けている。最低売却価額があるということはどの人も信じられない、なぜ日本ではそんなバカな制度を設けているのかということを言っている。
 しかもさらに言えば、その判事の方はワシントンの書記官として派遣されているのか、または判事として最高裁から派遣されているのか。

(原田審議官)裁判官である。

(福井専門委員)少し立場が違うのかもしれないが、我々の調査には、メリーランド州やワシントンDC等の裁判所や弁護士等を訪問するときは、裁判所から派遣された乙さんという書記官がほとんど調査先には同行した。我々の調査内容について誤りがあるか否かについても、その場で英語も堪能で現地の制度に精通している裁判所出身の書記官である乙さんの具体的な校閲を経ている。こういう認識でよいか、英語の聞き誤りはなかったのかを含めて、最低売却価額制度や内覧制度のところも含めて、我々の調査結果については、少なくとも生の情報に触れた裁判官出身の方が、アメリカではこういう実体であったと間違いないということを現実問題を聞き取った上で公表している。だからそれを否定されるのであれば、余程具体的な証拠を見せていただきたい。多数にインタビューしたというのは、一体誰のことなのかということを明確に示して教えて欲しい。

(筒井局付)今申し上げたのは。

(福井専門委員)ちょっと待ってください。制度全体をアメリカ型にする場合にはアメリカでも問題となっている制度にすべきでないと言われたが、アメリカでの問題として、例えば債務者の買戻しがある、安値で買い上げて高値で売却があるなどというのは、そういうような問題があることと、些事をとらえてこれが問題だというのはたやすい。日本のようなかたちで、一種の反社的会勢力が最低売却価額制度を食い物にして、最低売却価額があるために競売不成立を容易に実現できるという弊害と、アメリカのようにマフィアが一切執行妨害に関わっていない、当然最低売却価額がないというのが要因だという、アメリカの州ごとに違う制度はあっても、共通する認識の下での言われた些細な弊害と、利益不利益をそれぞれ国ごとの天秤にかけて、アメリカの方がまだ劣っているという主張なのか。

(原田審議官)アメリカの制度が完全でない、こういう問題があると指摘したものである。アメリカの制度を導入すれば全て上手くいく訳ではないと申し上げている。

(福井専門委員)それは分かるが、日本の制度の方が利益と不利益を差し引きしても、アメリカよりよいのだということを証明されたということか。

(原田審議官)別にアメリカの制度と日本の制度の二つを比べて、こちらを採るあちらを採るということではない。日本の制度に最低売却価額制度があって、それが非常に問題である。それでは最低売却価額制度が無ければ、本当に問題起きないのかというひとつの例示として、そういう指摘があると申し上げている。こちらの制度に完全に移る、こちらの制度の方が一方的に完全によいということを申し上げているのではない。

(福井専門委員)それは少し違うのではないか。先ほど言われたのは、アメリカの制度にも問題があるから、そういう制度を採るべきではないということは。日本の制度の方が優れているという主張の裏返しである。我々はアメリカのようにするべきだと言っている訳ではない。アメリカではこの制度で、現に弊害がないということを言っている。

(原田審議官)弊害がないと言われたので、弊害が指摘されていると申し上げている。

(福井専門委員)それは、我々はいろいろな反社会的な勢力の暗躍とか債権回収の実際上の金融再生、不良債権処理に果たすメリットとデメリットを比較した上で、まだましであると言っている。そこまで利益考量された上での主張とは思えない。何か問題があるからすべきでないということは直ちに導き出せない訳であるから、こちらの方が悪くて、こちらの方がまだましだというためには、こちらの制度の利益不利益の差し引きのプラス部分の方が、あちらの制度のプラス部分より、よりましだということまで主張されないと、ただ単に優劣に言及されているから、それは誤った方法論であるとの指摘である。

(原田審議官)優劣をどうこうというのではなく、弊害があるということを十分に認識する必要がある。

(福井専門委員)それはわかる。その弊害はアメリカでもいろいろな制度で回避している訳である。それを考慮しても、なおかつ日本の最低売却価額をとにかく残さなければならないという制度がよりましだということになるのか。

(原田審議官)日本でも、最低売却価額があるために売却率が低いのではないかとか、時間がかかるのではないかとの指摘があるが、これについても裁判所の実情からすると解決されていると思っている。

(八田主査)内覧制度に関して、一同に入札予定の人が会すると問題が起きるのは指摘のとおりであると思う。それで、私どもはアポイントメントを取るなどの提案をしてきた。それに対して、希望者多くなり過ぎると困るとの指摘もあった。そのような危惧に対しても対策はある。例えば、2日でアポイントメントを終わる人数であったら文句なくやる。それを超えた人数のときにはアポイントメントを先着順にして、あぶれた人に対してビデオを活用するということもあるかもしれない。いろいろな手をうてると思うし、ここでもいろいろな提案をしてきた。基本的には、2日間で十分な数であったら、それで内覧を許可するという提案に対してはどう思うか。

(原田審議官)完全に同意ベースで行うなら内覧を認めることもあると思うが、内覧を認めるということは、強制的な内覧ということになるので、そうすると現に自宅として利用している、家族が生活している、賃貸マンションとして居住しているところに、強制的な制度であれば、最終的に相手がNOと言っても立ち入れる、鍵を無理に開けるという制度は難しいと申し上げている。同意ベースで友好な関係の下で行われることは、相手が同意すればよい訳であるから、問題はそれほどない。その際に同意の中で一度に来られても困るということはあるかもしれない。申し上げたいのは、強制的に場合によっては鍵屋を連れて来て開けてでもというのは、さすがに我が国の制度では難しい。

(八田主査)言われることの側面はあるかもしれないので、既存のものまで適用しようということではなく、新しいものから、そういうことを了解上でやってくださいという制度にしたらよいのではないか。

(福井専門委員)それに補足すると、新しいものだけでよく、なおかつプライバシーの問題は言われるようなことはどうしてもある。利害に反する側面もある。しかし、それで占有者のプライバシーを全面的に守ることによって、中を見ることもできないで買わざるを得ない買受人がほとんどいない。ある意味縮みあがって、そんな市場に参入する人はいない。担保不動産の下落スパイラルが止まらない、資産デフレも止まらない、経済再生もままならない、ということにつながっていることの不利益との比較考量である。プライバシーの問題はあるというのは、重々承知しているが、それを補ってもまだ余りある政策メリットがあるはずだというのが、我々の提案である。そこまで検討されていないと前回のヒアリングでも明言されている。それは一方的判断で、両方を天秤にかけた上で、なおかつこれからの人に限ってという提案が、何の支障があるのかというのが我々の問題意識である。

(原田審議官)競売手続がきちんと行われるような制度をつくることの要請がある。もう一方で、居住者のプライバシーを侵害することがあってはならない。その調整の下で制度を仕組んで行くことは、そのとおりである。中を見たい、中がどうも変であると思われることは確かにある。その場合には執行官が取り上げてしまう。取り上げてしまう要件を緩和して、そこは両者の利益の調整の下で、執行官保管というものをかませてみるということにすれば、ひとつの利害調整になる。

(福井専門委員)その発想であると、執行官が取り上げてしまって、占有者の占有解除という方がまだましで、ちょっと立ち入らせてもらって、時間と日時を決めて中を見せてくださいというより、取り上げてしまうことがよりましだと言われるのは矛盾しているのではないか。

(原田審議官)そうではなくて、取り上げないところは、基本的には現況調査を充実させていくということである。ビデオ撮影等のかたちで行うことが両者の利害調整としては穏やかである。

(福井専門委員)ビデオは写真よりもましであるのは分かるが、一般の通常の不動産市場で、写真とビデオだけを見せてもらって、はい分かりました、何千万円かの不動産を買いましょうと言う人はいない。そこが出発点、原点であると思う。普通の人であれば、一般市場では絶対にしないことを強いる結果になっても、市場が冷え込んでも大丈夫なのかという弊害を考えれば、多少のプライバシーの侵害も、これからのことで予め同意したものに限ったものであれば、我慢していただくことがこれからの日本の経済社会のためでもある。

(原田審議官)予めの同意というのが、どういうかたちで確認するのかがひとつの問題である。どの段階で、誰が、どのように確認するのか、しかも予め同意だと言われているからといって、現実に同意していますと確認した上で行ったら、やはり嫌ですと言われた時に鍵を壊してでも入るのか。

(福井専門委員)そのために裁判所の執行部局がある。それが権力である。
 時間がないので、挙証権原の否定についてであるが、長期になったら挙証したい人が困るであろうとご親切に言われているように思える。それは前回のヒアリングまでに繰り返し申し上げているが、長くかかっても失権効を利用したいか、あるいは自分で証明できるから失権効は利用したくない、短くて証明できるから、自己責任で相手の権利を証明すると考えるか、それはまさに追い出したい人が、不法占有と考えてその人の占有を解きたい人の考え、判断でよいというのが、我々の主張である。時間がかかるから、長くかかるから失権効を許さないと法律でなぜ強制しなければならないのか。

(原田審議官)確認しておきたいのは、これは失権効の問題、つまり将来にわたって占有権原を奪ってしまう制度をつくるべきとの考えとして理解していいのか。

(福井専門委員)失権効というのは実体的に確定させなくても、現に行っているように執行現場では相手が証明しない限り、少なくとも占用解除をさせるということをバリエーションに含んでいる。

(原田審議官)それは、引渡命令で行っている。

(福井専門委員)その場合は、実際上相手の無権原を証明しない限り、出ていかせることができない。そこに問題であると思っている。それが出発点である。

(原田審議官)引渡命令というのは、まさに言われたようにその段階で相手が占有権原があるかどうか判断する手続としてある。それは不服申し立てがあって最高裁までいってという制度ではないが、現行でも占有権原のないものを明渡しさせる、執行妨害のために占有しているものから、引渡命令で明渡しをさせるというのは、容易にできる。制度を改善してきたので、そこは不都合が生じていることはない。

(福井専門委員)みなさんと違って、日々債権回収の方と連絡をとって情報収集していると、現に不都合はある。蟄居して出てこない人がいる、誰だかわからない。私が誰か当ててごらんという人がいる。それは失権効がないとどうしようもないということがある。

(原田審議官)問題は、引渡命令の相手方をどうするのかという話で、今言われたように、Aさんに命令を出して、実際に行ったらBさんだったというのが困るケースであるが、今回引渡命令は相手方は今現在占有しているものと特定して行おうとしている。

(福井専門委員)相手が権原ありかなしかで争点になって困っている例があるのだから、それは占有解除したい人の判断で使わせてあげてもよいのではないかというリーズナブルな提案である。
 最低売却価額のところについて最近は問題ないとのことであるが、繰り返し申し上げていることであるが、価額が高い安いの問題ではなくて、規制によって一定の価額に差が出ることによって、その価額を下回らせるような威嚇行為を行うことで、容易に不成立を招くことができる。我々の実体認識や債権回収の現場の方からの多くの声からすると、買受希望者がいなくて8割売れているということは何の意味もない。いざとなればいつでも流せるという風に、食いついた不動産についていつでもこの制度を利用して、入札不調ができるところに根源の問題がある。それは何とかなっているとの認識とはかけ離れた実体である。我々は空理空論で言っているのではなく、それこそ法務省と違って、現実の債権回収の現場や保証会社の方の切実なニーズを代弁しているつもりである。

(原田審議官)執行妨害についてはいろいろな形態があり、今言われた執行妨害が遍く蔓延していてほとんどであるというのは立証されていない。最低売却価額がなくなることによって、安値で競落することを狙う執行妨害が予想される。

(福井専門委員)そうであれば、高い人が札を入れることになる。

(八田主査)時間がないので、何かあれば。

(原田審議官)我々の方からは特には。

(福井専門委員)時間がないので最後にひとつ付け加えると、第一順位の抵当権者は、通常後順位抵当権者や所有者の利害も代表できるということを繰り返し言っているが、本日は何も答えがなかった。

(八田主査)本日はありがとうございました。

(原田審議官)ありがとうございました。

以上


内閣府 総合規制改革会議