(1)総務省から資料に基づき説明
(2)意見交換
(八代)もともと総務省、特に旧自治省は自治体の活動を支援することが主たる業務であるが、これまで自治体のニーズが総務省に届いていない面があり、それが特区の提案に顕在化しているのではないか。今回、特区で対応していただいたり全国的な規制改革に結びつけていただいた点はありがたいと思う。その時、速やかに全国ベースで対応するもの、具体的には次期通常国会等において関連法令を改正するとか、実施時期だけでなく内容がかなり明確になっているものについては特区で対応していただく必要はないわけであるが、例えば石油コンビナートのレイアウト規制は特区と全国の両にらみで検討していただくという話があったが、その他についてもこの考えを広げていただければありがたい。
まず、公の施設の管理受託者の範囲拡大について、公の施設は住民による平等な利用の観点から管理委託の対象が限定されている。これは他の規制改革の分野でも言える話であるが、株式会社であれば不安であるが、公益法人や第3セクターであれば安心できるという経営主体で区別されているわけで、必ずしもパフォーマンスをきちんと評価した上で本当に住民の利益になっているかという観点からの法体系にはなっていない。そのためいろいろな不都合が起こっている。実際第3セクターは評判もあまりよくないし、第3セクターを作るに当たっての自治体の負担も大きい。そういう意味で、第3セクター以外の民間企業へのアウトソーシングができれば非常に住民の利益にもなると考えられる。このことについては、次期通常国会において管理受託者の範囲を株式会社等の民間事業者にまで拡大するということだが、問題は拡大する中身であって、法律で形式的に範囲を拡大しても実質的に拡大できない付帯条件が入っている場合が往々にしてある。具体的な条件の中身をできるだけ明確に示していただければありがたい。つまり、第3セクターにできることは全て株式会社等にもできるのかを後でお話しいただきたい。
次に民間企業による行政財産の占有・使用の推進についてであるが、これはいくつもの自治体から要望が出ていることから、必ずしも誤解というわけでなく、やはり何らかの不都合があるのではないか。つまり、目的外使用の許可を取得すればいいとのことではあったが、できればいちいち許可を取らずに自治体の自発的な裁量の範囲でできないものなのか。この点についてせっかく自治体からのニーズもあるのだから、個別に説得するというのではなく、是非自治体が使いやすいようにどこの自治体でもいちいちお伺いを立てなくてもできる方法で考えていただきたい。実際やるときにはいろいろ細かい問題はあると考えられるから、まず特区で実験してみて支障がなければ全国に拡大するという観点からすれば、このような手続き的なものは特区に最もふさわしいと思う。
さらに、ガソリンスタンドにおける水素ステーションの併設についてであるが、既に諸外国や日本国内において様々な実験結果があるとすれば、わざわざ改めて公益法人を使って政府自らが実験をしてその結果が出るまで待たなければならないのであろうか。今はまさにスピードの時代であって、技術的には対応できても行政的なアセスメントが十分はないために産業化が遅れるということであればまさに時間のロスである。できる限り早い時期に所要の措置を講じるということであるので、是非その点は宜しくお願いしたい。
(檜木)先ほど地方公務員の件は特区になじまないとの話があったが、自治体からの要望にも兼業規制に関して短時間労働の許可については柔軟な対応をして欲しいというのがあった。当方からの検討要請としてお願いしているので、それに対する対応をお願いしたい。
(藤原)公の施設の管理受託者の拡大の範囲に関して、第3セクターでできることは通常の株式会社でもできるのかという指摘についてお答えする。公の施設の管理受託者の拡大については各方面からも御指摘をいただき、さらに総合規制改革会議でも御指摘いただきここまで来たものであり、具体的な法案の中身はこれから詰めるわけであるが、第3セクターだから無制限にできることとしているわけでもなく、議会の関与や地方公共団体の監査委員による監査の問題があり、第3セクターに対しても、さらに拡大していくかを含めて検討させていただきたい。現在、成案を得ているわけではないが、現時点において一部のものだけをやるところから出発しているわけではない。
(八代)それは、先ほど私が申し上げた、第3セクターができることは株式会社にもできるということなのか。
(藤原)そこから議論が出発しているということである。
次に、行政財産の貸付けの問題であるが、必ずしも国にお伺いを立てないとできないわけではない。今日お示しした資料にもあるように、民間に使っていただければという公有財産もあり、そうしたものは普通財産に位置づけていただければいいと思う。我々の情報提供が十分でなかったことに原因があるのかも知れないが、必ずしも個別に国に相談してもらわないといけないという制度ではなく、地方公共団体でやっていただければいい。
(八代)行政財産を普通財産に転換することはそう簡単にできないと聞いているが、その点はどうなっているのか。
(藤原)地方公共団体の場合、行政財産から普通財産への転換は地方公共団体の長の判断であるから、そう厳密な制約があるということではない。
(渕上)次に、産学官連携による研究開発事業に係る問題についてであるが、いくつか地方公共団体からの要望を具体的に聞いてみると、非常に幅広く、共同研究に近いものから、ベンチャー企業への参画、公立病院の医者になるというものもあったが、兼業は公務以外の私的なことと概念的には整理できる。今の要望は、公務すべき勤務時間内に兼業を認めて欲しいということであるが、これは公務をさておき兼業を優先することになるわけで、政策的に非常に推進すべきものという位置づけをしない限りなかなか難しい。仮にそのような位置づけをする場合、どういった要件で、どういった手続きで認めるべきかという問題がある。さらに文部科学省や地方公共団体の要望を具体的につっこんで聞いてみて、どういった形で整理ができるのかをさらに検討してまいりたい。
(八代)この点について、若干、説明させていただくと、地方公共団体からの要望というのは、何でもフルタイムの公務員だけでやっていたらコストもかかるし行政サービスのニーズにも応えられない、そういう意味でもっと弾力的に民間の人を使いたい。その時に、今のままではアルバイト的な非常勤職員としてしか使えないという制約がある。もう少し責任を持って仕事をしてもらえるような形で民間の人を活用したい。また公務員が民間の仕事と兼業することを自由にしたい、地方公務員でも地方公共団体の責任で弾力的に全国一律ではなくやっていきたいという要望だと理解している。先ほどおっしゃった勤務時間内に兼業をすると公務に差し障りがあるというのは、まさにブルーカラーの働き方を想定している。しかし、ホワイトカラーで特に知識労働者であれば一時間当たり何をするというのではなく、ある程度裁量労働の範囲があるのではないか。もしその人がきちんと公務をやっていないのであれば、それは評価の段階でチェックすべきであって、何時から何時までは外で働いてはいけないというのはあまりにも形式すぎるのではないか。確かにこの点を無秩序にすれば問題が起こるが、国ではなく地方公共団体が責任を持って管理することを認めてほしいという要望はもっともだと思う。これから検討するとのことであるが、できるだけ自治体の要望に添うような形で、公務員の働き方について検討していただきたい。国家公務員は一律というのは当たり前だと思うが、地方公務員は地方の特性に応じていろんな働き方があると思うが、いかがか。
(久元)任命権者が自分の判断で職員の身分取扱いを決めるのは適当ではない。地方自治の本旨にも十分配慮しながら、職員の身分取扱いとか服務の基準等については根本基準を定めるという考え方で地方公務員法ができており、そこが出発点であり、根本基準ではないものについては地方公共団体の長、任命権者の判断が広範にある。例えば、職務専念義務は法律上のものであるが、職務専念義務の免除は条例に委ねる、条例からさらに長の判断に委ねる部分がある。身分取扱いの基本的な考え方として、一般職員については、一般職員の職務の内容を問わず、原則として任用や身分保障や服務については、徴税、消防、教員、地下鉄の運転手かを問わず一律にかけて、その上で必要な特例を設けていくというのが今の基本的な公務員制度の考え方である。その基本的な部分については、いろいろと公務員制度の議論があるが、大方の理解が得られていると思う。
(八代)私はそうは思わない。それがまさに問題であり、例えば保育所の保母さんが年功賃金であるため保育所のコストがかかり、これがニーズに応じた保育所のサービスができない一つの原因になっているとか、地方の公営バスの運転手の給与体系が一般職の地方公務員と同じであるため、やはり地方のバス事業が成り立たない。これはあらゆる行政改革の基本であるが、それを当たり前のものと考えていただいては困るわけで、直していく必要がある。しかし、直すには時間がかかるし、いろいろな問題があるので、まずは特区ベースでやってみてどんな弊害があるかを見た上で全国ベースでやるとすれば、これは最も典型的な特区を必要とするテーマだと思うが、いかがか。
(久元)保母さんの問題、地方のバスの運転手の問題については現に問題があることは事実であるが、これは制度が支障になっているのではない。都営バスの運転手の給与体系は一般職と同じではなくむしろ別にすべきというのが地方公営企業法の考え方である。最近減ってきてはいるが、地方公共団体の中には、一般公務員と同じ給与体系で雇用しているところもある。これは運用に問題がある。保育所の保母さんの問題については、多くの地方公共団体で、民間委託や非常勤職員の雇用という形で対応している。さきほどの短期間勤務職員の話に戻るが、地方公務員法に基づき、常勤の一般職の勤務形態を原則としながら非常勤の嘱託、臨時的な任用があり、さらに任期付きの任用を導入するなど、社会の状況の変化に対応して任用の在り方も多様化してきている。同時にさきほども話があったように国家公務員、地方公務員を問わず職務は与えられたことを遂行するためにあるのだから基本原則はそこにあるわけで、任命者に委ねられている部分は相当あるものの、基本から大きく逸脱する、例えば職員としての勤務をしないで長の命令で全然違うことをしていれば住民監査請求の対象となるであろう。現実にそういう例もあるので、広範に現場の判断に委ねられているものの公務優先の原則は貫かれなければならない。
(八代)まさに住民監査とかにもっと委ねられればいいのではないか。そういう事前規制というか総務省のやられている規制はなるべく緩めて現場の事後規制を強化するのが規制改革の一般的な考え方だと思う。
時間がないので、最後に一点お聞きするが、特別職というものがあって、特定の学識者であれば民間の方でも公務員に近い働き方ができるというわけであるが、特定の学識者というのが審議会の委員みたいなイメージで使われているみたいであるが、それをもう少し拡大して、例えば20年ぐらいサラリーマンとして勤務した人であればある程度の公務員の仕事ができるといった拡大解釈をすることはできないものか。
(久元)地方公務員法第3条第3項第3号にいう非常勤職員のことを言われていると思うが、現実には相当広範に使われている。むしろ問題は、そういう職員の処遇が一般職の常勤の職員と異なっていることにある。例えば、地方公務員法は適用にならないし、退職手当や年金や医療保険の適用関係にも違いがある。それは公務員の範囲をどういうふうに考えたらいいかという根幹にかかわる部分である。常勤の一般職の職員を原則としながら違う形のものを入れつつある。さらに進んで、短時間の一般的な勤務職員を入れたらどうかということについては、地方公務員法上は非常勤の一般職の公務員を任用することは制度上可能であるが、それはほとんど使われていない。この点については、ずっと昔から議論されているが、国家公務員制度の関係とか、年金医療については、例えば民間のサラリーマンでも厚生年金に加入できるのは一定の勤務時間以上、パートでは加入できないなど、いろんな観点から問題があり、このことはもう少し社会情勢の変化の中で民間と同じ問題として議論していかなければならない。、これは非常に奥行きのある官民共通の問題であるので、公務員制度固有の問題もあろう。特区についてだけ取り上げてやることはなじまない。ただし、問題意識は持っている。
(八代)民間企業はアウトソーシングしてリストラを一生懸命しているが、地方公務員も同じことをしなければならない。それができるような状態に持っていけるように努力して欲しい。
(檜木)さきほど最後にそもそも特区になじまないという話があったが、多くの地方公共団体から産学連携の話で最後の実質的な障害はここだと聞いている。さきほど時間の問題というお話があったが、公務優先ということであれば時間ということで考えていけばいい話だし、一律ということであれば任用についても知識・経験を有する者というのは特別に扱っているわけではないということなので、さらにご検討宜しくお願いしたい。