(1)農林水産省から資料に基づき説明
(2)意見交換
(奥谷)一番の問題は生産と消費のマッチングの欠如という点である。特に農村において独占的地位を利用して幅広く事業を営んでいる農協については、他の企業の発展、成長を阻害している要因となっている。このような農協に関する改革についてどう考えているのか。
(林)特区に関する問題とは別の問題と解してよいか。
(奥谷)いや、特区に関連してくる問題であると考える。
(林)2年前に信用事業のあり方を中心に農協改革の関連法が成立しているところ。これと併せて、営農指導を事業の一番目に位置付け農協事業のあり方の再構築を図るべきであるとの考え方に立って対応している。農協については、農業従事者が経済的な弱者であるという側面に鑑み、協同組合としての独占禁止法上の特別の位置付けは必要である。しかしながら、現在、農協が内外から諸々の批判を受けているという状況でもあるので、課題、改善方策について検討するための研究会を発足させたところである。今後、農業関係者のみならず外部の流通・消費者サイドの方からも自由な御議論、御指摘を頂き、今後の農協のあり方について、年度末までに検討して参りたい。
(奥谷)今、「弱者」という言い方をされたが、そうした発想はおかしいのではないか。補助、助成金を受けているわけだから、一般のサラリーマンと比して補助を受けている分、弱者という捉え方はおかしい。他の企業の発展、成長を阻害しているという要素についてはどう考えるのか。
(林)検討を始めたばかりなので、いかなる方向で議論が収斂することになるのか、予断をもって申し上げることは出来ないが、枠をはめて議論をしているわけではない。委員御指摘のような点があるとすれば、その点も踏まえつつ研究会の俎上に載せて議論頂くこととしたい。
(福井)市民農園について、所有権を取得しないと開設できないのか。そうでなければ、開設者を絞った元来の意図は何か。消費者保護という視点に基づくものであるとの理解でよいか。
(吉村)賃借による市民農園の開設も可能。なお、開設者を絞っている意図はそのとおり。
(福井)株式会社の参入の件について、ここでいう「農地」とは、例えば、酪農においてはどういうものが対象に含まれるのか。具体的な範囲についてお答え頂きたい。
(林)農地及び採草放牧地が対象となっている。
(福井)前回農協がお越しになり、「株式会社になるとまずいことが生じるから絶対に反対だ」という議論を展開されている。儲からなければ引き揚げる、誰もが転売できるということに対して歯止めがかけられないという極めてドグマティックな反対論を展開されているが、どうお考えか。この内容についてはホームページにも掲載されている。
(林)農業関係者は、企業参入に際して、投機の対象になりはしないか、水利用等に際して地元との円滑な関係という観点から支障が生じるのではないかという懸念は有している。団体もかような懸念を率直に表明されたのではないかと考える。ただし、現在、遊休地(21万ha)が発生している状況にも留意しつつ、そのような懸念があっても、これを払拭しうるような措置を講じつつ、特区を地域の活性化につなげていくという方向を選択したい。
(福井)農協におかれては、投機的な農地所有を制度により抑えられるか否か問題であるため、いかなる代替措置も受け入れられない、という「そもそも論」を繰り返し主張されていた。今後、農協等の全国団体が絶対反対と言い続けた場合において農水省としてはどのように対応されるのか。
(林)可能な限り理解を得ることが必要であると考えており、農業団体も特区を全く認められないというよりは、懸念に対して、安心できる代償がなされるのであれば、絶対的に反対するものではないという考え方である旨、理解している。いずれにせよ、関係者の御理解を頂けるよう、努力して参りたい。
(福井)先日のやりとりについて特記すべきことを申し上げれば、「投機は土地利用規制を厳格化することにより抑制されうる。個人農家についても土地利用転換、耕作放棄はありうる。このため、土地利用規制を厳格化した上で株式会社を参入させるという制度改正について、何か問題があるのか」と訊いたところ、「現在の個人農家の耕作放棄はそのままにしつつも、株式会社については入れてくれるな。」という基本的な主張が繰り返されている。しかしながら、これは明らかに目的が違うのではないか。農業生産力向上のための制度改正ということであれば、この主張は、決して生産力の向上にはつながらない。個人農家の所得保障、生活保障のために現行制度を守ってくれというに等しい主張であると受け止められた。この点については、農林水産省におかれても十分整理した上で、何のための特区か、何のための農政かという点について関連団体とも意見交換し、意思疎通をして頂きたい。ねじ曲がった制度改正が行われることがないよう、よろしくお願いしたい。
(鈴木)農業分野については、「入ってきてくれたらこんなに有り難い話はない」という話だと思う。すなわち、農業は生産性の低いビジネスであり、この分野に投資するというのは、あまり想定されない。地縁、血縁を前提とした考え方自体については、これを前提とする限り、「今後、農業はどうなるのか」という問題に突き当たる。地域で同意を取らなければならないといった要件を課すことになれば、誰も入ってこない。要件など取っ払うぐらいの心がけが必要という点を申し上げておきたい。
(八代)農協との意見交換でも申し上げたが、農地転用規制はむしろ強化すべきである。
農業をやっているふりをしている農家があまりに多い。株式会社の参入が投機に結びつくというのであれば、当然のことながら、それは農地転用規制の強化によって対応すべきである。しかしながら、この点については農協はむしろ「及び腰」であり、個人財産権の保護、農地転用規制は憲法違反であるという議論が現に行われているのは極めて奇異である。農業生産力を高めるためには、農地保有者にかかわらず、農地転用を厳しくすべし。その上で積極的に農業をやろうとしている人について、きちんと対応していくのが農水省のスタンスではないか。確認の意味も込めて申し上げておきたい。
(林)鈴木委員のご指摘について、48件もの御提案があったことについては、地域の農業や経済が立ち行かなくなるのではないかという危機感の顕れであり、これら御提案に対して積極的に対応していきたいと考えている。一方、地域によっては、株式会社の参入によって問題が生じるのではないかとの懸念の感情が存在することも否定できない。特区の活用により、地域においてどのような問題が生じるのか、一般化することが適切なのか否かという点については、検証がなされるということなので、まずは取りかかってみるということではないかと考えている。また、これ以外の点について、農地法の見直しにも着手している。昨年3月に農地法を改正したばかりではないかという声もある中で、新たな状況の変化、要請を踏まえつつ、何が必要なのかという点については十分に検討したい。
(吉村)農地転用規制について簡潔に申し上げる。当該規制には一定の目的があるわけだが、他の土地利用規制とのバランスにも留意する必要がある。例えば、株式会社という新たな主体が入ってくるからという立論は規制の目的にはならない。この点には十分注意する必要がある。
(福井)具体的な指摘として、農業生産法人の要件緩和について、実際上興味があって力がある株式会社による参入が妨げられることのないよう、是非とも御配慮頂きたい。
(八代)ある特定の土地について、これを農地にするからこそ税が減免され、補助金が支出されているのにもかかわらず、それを、ある日突然、宅地に転用し、キャピタルゲインを得るということが現に行われている。特区制度がそのようなことに悪用されては極めて問題である。このような事態に至ることのないようにして頂きたい。